はっけんの水曜日 2013年10月2日
 

秘密のトンネルで黒部ダムの中に潜入!

ついに、ついにこの場所に立ったぞ
ついに、ついにこの場所に立ったぞ
高さ日本一の黒部ダムは、関西電力が水力発電用に建設したアーチダムで、年間100万人近くが訪れる一大観光スポットでもある。

その建設時のさまざまなドラマは、映画やテレビなどでよく取り上げられることもあって、ダムとしての知名度は群を抜いている。

そんな黒部ダムで、なんと通常入ることのできないダムの内部を見学させてもらってきた。それも、通常一般人は通れないルートでダムに向かって。

ひとりのダム好きの夢がいま、叶った。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。 個人サイト:ダムサイト

黒部ダムへの「第3のルート」

黒部ダムは、長野県との県境に近い富山県の北アルプスの中にあって、自然保護や駐車場を造るスペースがない、といった理由でマイカーで行くことができない。

その代わり、長野県側は大町市の扇沢というところから、今では珍しいトロリーバス(電線から電気を取って走る電気バス)に乗って行くか、富山県側は富山地方鉄道の立山駅から、ケーブルカーやバスやロープウェイ、トロリーバスなどを乗り継いで向かう。
長野県の扇沢からは
長野県の扇沢からは
このトロリーバスでダムへ一直線
このトロリーバスでダムへ一直線
富山県の立山駅からはケーブルカー、
富山県の立山駅からはケーブルカー、
路線バス(車窓)、
路線バス(車窓)、
トロリーバス、
トロリーバス、
ロープウェイ(車窓)、
ロープウェイ(車窓)、
最後にもう一度ケーブルカーに乗ると
最後にもう一度ケーブルカーに乗ると
ようやく黒部ダムに着く
ようやく黒部ダムに着く
通常、黒部ダムに行くことができるルートはこの2つだ。

もうひとつ、昨年、当サイトライターの木村さんが通った、黒部峡谷鉄道の終点欅平駅から黒部川沿いの登山道を歩いて遡る、という方法もあるけど、道のりがあまりに険しく、とても「通常」使うことができるルートではないため、ここでは数に入れないでおく(木村さんも「命がけ」と書いているくらいだし)。

でも、欅平駅から黒部川に沿って黒部ダムまで続くこの険しい登山道の地下に、実は延々とトンネルが通っている。もともとは昭和初期から黒部川に建設がはじまった発電所の工事のために掘られたトンネルで、現在は黒部川沿いのダムや発電所へ作業員の方が行き来したり、工事用の物資を運ぶために使われているのだ。
黒部ダムに向かう3ルート。赤いピンが黒部ダムで、青いピンが扇沢、緑のピンが立山駅、黄色のピンが欅平駅。今回通るのは黄色いルート。
今回、ダムの専門家の方々がこのルートを通って黒部ダムの視察に行くことになり、なんと僕も誘ってもらったので参加してきた。

これはひとりのダム好きにとって夢のような機会である。

黒部峡谷鉄道で欅平へ

というわけで、黒部川沿いを上流に向かって走る黒部峡谷鉄道の始発駅、宇奈月駅にやってきた。
トロッコ列車の始発駅
トロッコ列車の始発駅
ここからトロッコ列車に乗って、まずは終点の欅平駅を目指す。

この黒部峡谷鉄道も、もともとは黒部川の水力発電所建設工事のために敷かれた線路なので、今日は1日で黒部川の水力発電史をほぼすべてたどることになる。
こんどの列車がどういう編成か分かる
こんどの列車がどういう編成か分かる
小さいけどいかにも山登ります!という機関車
小さいけどいかにも山登ります!という機関車
僕たちの乗ったトロッコ列車はどうやら関係者専用の便らしく、黒部ダム見学の一行以外は、作業服とヘルメット姿で大きな荷物を背負った工事関係者や、発電所の職員さんたちで占められていた。制服を着た駅売店のお姉さんらしき方もいた。
トロッコなので客車は小さい
トロッコなので客車は小さい
なんと今日の僕たち社客です
なんと今日の僕たち社客です
やがて時間になり、鮮やかなオレンジ色の機関車に引かれた小さなトロッコ列車は、ゆっくり宇奈月駅を発車した。これから終点の欅平まで、およそ1時間20分の旅だ。
まずダムと橋が見えてくる
まずダムと橋が見えてくる
出発するとまず見えてくるのが、黒部川のいちばん下流に造られているダム、国交省の宇奈月ダムだ。湖を跨ぐ赤い橋とダムに見とれていると、ダム湖畔にヨーロッパのお城のような建物が見えてくる。
湖畔にヨーロッパのお城風の建物
湖畔にヨーロッパのお城風の建物
これはなんと水力発電所の建物。トロッコの線路が分岐した先が発電所のシャッターの中に入って行ってるのが、なぜだか分からないけど身悶えするほどいい。きっと交換する部品などを直接搬入できるのだ。
トロッコの本線から分岐した線路が発電所に
トロッコの本線から分岐した線路が発電所に
遊園地のライドにもこういうとこあるよね
遊園地のライドにもこういうとこあるよね
その少し先には、対岸に温泉施設が見えた。黒部川を遡る自動車用の道路はここまで、これより上流はこのトロッコ列車でなければたどり着けないのだ。
でも温泉より砂防ダム群のすごさに目が行ってしまう
でも温泉より砂防ダム群のすごさに目が行ってしまう
黒部峡谷鉄道はレールの幅がふつうのJR在来線の7割程度しかなく、客車もとても小さいのだけど、そのぶんくねくねした急カーブや小さなトンネルを抜けて、川沿いを上流に向かってぐいぐい進んで行く。
半径の小さいカーブを抜けて行く
半径の小さいカーブを抜けて行く
その先では巨大な発電所の建物と、そこに向かって川を渡っている赤い小さな橋が見えてきた。
何のことはない、小さな橋にしか見えないが
何のことはない、小さな橋にしか見えないが
案内してくれている関西電力の方の話によると、この橋は実は小さなダムの上に架かっているらしい。つまり河原の土砂の下にはダムが埋まっているということだ。

このダムも以前は発電所に水を送る役割があったのだけど廃止され、その後平成7年に豪雨で大洪水が起き、そのとき上流から流れてきた土砂によって川底が10メートルも上がり、完全に埋まってしまった、とのことだった。

ダムが埋まっている橋の部分の上流側と下流側でまったく段差がない、という土砂の量。日本屈指の急流、黒部川の凄まじさを垣間見た思いである。
一時はこの発電所の下の石垣部分がほとんど埋まったらしい
一時はこの発電所の下の石垣部分がほとんど埋まったらしい
単線なので途中駅ですれ違う
単線なので途中駅ですれ違う
車掌席だって、なんかいいなあ
車掌席だって、なんかいいなあ
いちばん後ろについてるこの貨車もかわいくていい
いちばん後ろについてるこの貨車もかわいくていい
単線を走るトロッコ列車は、途中駅で上から降りてくる列車と行き違いながら、さらに上流を目指して進んだ。

途中の小屋平駅では、ホームの向こうに発電用ダムのひとつである小屋平ダムの上半身だけ見ることができる。列車が停まっている間に降りて撮影してきたいのだけど、この駅は関係者専用なので降りられず。
あの柵のところから写真撮りたい!
あの柵のところから写真撮りたい!
でもダムのまわりの建物は
でもダムのまわりの建物は
なんだかすごくかっこいい
なんだかすごくかっこいい
僕の次の目標はこのダムの全身を眺めることにしようと心に誓った。

そんなこんなで車窓の右に左に大興奮しているうち、終点の欅平駅に着いた。本来は乗客は皆ここで列車を降りるのだけど、僕たちはこのまま続く線路を先に進み、普段は関係者以外乗ることのできないルートを通ってさらに上流に進むのだ。
黒部峡谷鉄道の終点、欅平駅に到着
黒部峡谷鉄道の終点、欅平駅に到着
僕たちの乗ってきた列車にもかわいい貨車がついていた
僕たちの乗ってきた列車にもかわいい貨車がついていた
いつの間にか編成が減らされ、別の機関車に付け換えられた列車は、欅平駅の先にあるトンネルに入って行った。
まだ線路は続くけどこの先は通常立入り禁止
まだ線路は続くけどこの先は通常立入り禁止

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