特集 2013年10月4日

全然知らない人に招待されて海外に行く

知らない人に招待されて中国のテレビに出ました!
知らない人に招待されて中国のテレビに出ました!
海外旅行には様々な心配がある。言葉の問題や治安など挙げればキリがない。そんな海外旅行が全然知らない人からの招待だとしたらどうだろう。心配レベルは格段にアップする。

近年はSNSの発達などで家にいながらも世界とつながっており、全く面識のない人からメッセージを受け取ることも少なくない。その海外からのメッセージが「こっちのテレビに出ない?」という招待状。心配だ。絶対に騙されている気がする。でも、その招待を受けてみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

中国からのメッセージ

海外に行ってみたいとは多くの人が思うことだ。しかし、飛行機代や言葉の問題などそこには多くの壁が存在する。お金を持っていれば飛行機代はクリアできるし、英語が話せれば言葉の問題も多くは解決するだろう。ただしそれらはなかなか解決しない問題でもある。
解決するメールが来ました!
解決するメールが来ました!
8月のある日、「The invitation」という件名のメールが私に届いた。中国のテレビ局の人が私を中国に招待したいという内容だ。さらにやり取りしたところ飛行機代も出すし、通訳も付くという。いきなり多くの問題が解決した。

最後の問題は騙されているのではという治安的な問題だ。気がついたら内蔵が一つなくなっていたみたいなことはないだろうか。だって海外だ。なくはない。
差出人が文字化けみたいな感じがなんだか怖い!
差出人が文字化けみたいな感じがなんだか怖い!
中国のテレビに出演して欲しいという招待。芸能人でもない私をわざわざ呼ぶだろうか。知り合いからの紹介などではない。相手との面識はゼロだ。

相手の情報は深センテレビジョンのディレクターだけであり名前も分からない。恐怖である。1+1=2くらい分かりやすく怪しい。お互いがオンライン翻訳サービスを駆使してメールを書くので怪しさが倍増である。
でも、行くことにしました!
でも、行くことにしました!

あーんをテレビでする

先日、私は「一人で彼女にあーんしてもらっている写真を撮る方法」という記事を書いた。一人なのだけど彼女に食べ物を口に運んでもらうという内容の記事だ。これが非常に受けた。正しくは日本以外で非常に受けた。日本ではそんなにだった。
こういう内容の記事です!
こういう内容の記事です!
この記事が勝手に翻訳され台湾や中国、アメリカやヨーロッパなどで紹介された。日本では特に何もなかったけれど。これを見た中国のテレビ局が番組で実践して欲しいという招待だった。家族に話したら全員が「騙されている」で一致した。久しぶりに家族が一つになった瞬間だった。
でも、行くことにしました!
でも、行くことにしました!
怪しい感じもしたが中国デビューも悪くないと思い、柔らかい壁にボールを投げるようなどっちつかずなメールをオンライン翻訳サービスを駆使して返していたら、撮影日は決まるし、飛行機のチケットは届くしで本当に行くことになった。3泊4日。意外に長い。初恋よりもドキドキして家を出た。本当に心配だったのだ。
飛行機に乗ったらズボンが破けていたことを思い出した。先行きが悪い!
飛行機に乗ったらズボンが破けていたことを思い出した。先行きが悪い!
メールのやり取りは先にも書いたようにオンライン翻訳サービスを駆使している。私の出る番組について聞いたら「私達のからのスターのゲストの憶測がどなたこそ本当の撮影は一人の写真をの主人公? 過程の中に希望あなたは配合してあなたのいくつかの経典撮影動作」だそうだ。なんだか心配である。
でも、香港に到着しました!
でも、香港に到着しました!

初の中国で怪しい人たち

出演する番組は「男左女右」という番組名らしい。番組名からも怪しさを感じる。ただ空港にはドライバーが待っているそうだ。高待遇。そのままどこかに連れて行かれる恐怖もあるが、空港に誰もいなくて途方に暮れるよりはいい。
誰もいない! 不安!
誰もいない! 不安!
香港空港から深センのテレビ局への移動。ドライバーさんがいると聞いていたので、その移動方法は調べていなかった。なのに空港の出口にドライバーさんがいない。不安である。不安のバーゲンセールである。さて、どうしたものかと途方に暮れる。それと「中国で地主さんが大人気で」と聞いていたが出待ちはいなかった。当たり前だけど。
ドライバーさんがいた!
ドライバーさんがいた!
15分ほど探してやっとドライバーに出会えた。嬉しかったがドライバーは信用していいか悩む顔。ただ私も日本ではそのような顔の分類なので思い切って信じることにした。

もちろんキチンとしたドライバーの方で、曇った空の下に高い建物が並ぶ街を彼の運転する車は快適に走った。香港から深センへ。一時間ほどの旅である。
香港の街並
香港の街並
そして、深センのテレビ局へ!
そして、深センのテレビ局へ!
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来てよかった!

騙されたのではないかと散々疑ってきたが無事に本当にテレビ局に到着した。しかも美人通訳さんが待っていた。瞬時に来てよかった! と思う。さっきまでの騙されたがふっとんだ。これからならもはや騙されてもいい気がしてくる。美人の魔力である。むしろ騙してください、だ。
美人通訳の况さん! 好きです
美人通訳の况さん! 好きです
今回の日程は3泊4日。初日が打ち合わせで、2日目がリハーサル、3日目が撮影本番で、4日目に帰る。長い。でも、その期間は美人通訳さんと一緒と思えば楽しいものだ。日本にいたらこんな美人には相手されないだろう。中国に来てよかった。中国はいい国である。
スタジオ見学もした。本格的だ
スタジオ見学もした。本格的だ
深センテレビは日本で言えば地方局に当たる。「岩手めんこいテレビ」とか「さくらんぼテレビ」とかだ。しかし香港がお隣ということもあり海外から人を招きやすく、中国のテレビ局としては自由な番組を作れるポジションにあるらしい。

しかも飛行機代、ホテル代、食事代などは全て払ってくれるという。騙していると思ってごめんなさいという気持ちでいっぱいだ。美人通訳さんもいるし。好きです。
ホテルもかつてないほど豪華だった
ホテルもかつてないほど豪華だった

番組内容とデート

番組名は「男左女右」と分かっていたが内容は先述通りメールではよく分からなかった。改めて聞くとクイズ番組で、私はそのクイズの出題者らしい。
このパネルの向こうに四組のカップルがいて、
このパネルの向こうに四組のカップルがいて、
実はカップルではないのは誰? というクイズです!
実はカップルではないのは誰? というクイズです!
一部に穴が空いたパネルの向こうに4組のカップルがいて、その内1組はカップルではない。彼女の部分も一人でやっている。それは誰でしょう? というクイズだ。もちろん私がその役目である。このために中国に招待されたのだ。中国の景気のよさを感じる。
日本から来ました!
日本から来ました!
ほかの三組はベトナム、中国、韓国とアジアが集結している。他にも多くの人がいるところでディレクターが「日本人の彼氏が欲しい人?」と聞いてくれたが0人だった。もしかして海外ではモテるのではと思っていたがそうでもないらしい。美に対する感覚はアジアでは共通しているようだ。
でも、通訳さんがいるからいいや! 好きです
でも、通訳さんがいるからいいや! 好きです
あとで撮った写真を確認するとかなり数の通訳さんの写真があった。通訳さんの案内で深センも歩いた。デートだ。私の走馬灯には彼女が出てくることだろう。ちなみに彼女は日本にいた期間が長く日本語はペラペラである。私が照れてモジモジして日本語があまりペラペラでなかったのが今となっては悔やまれる。
深センの市役所は大きい!
深センの市役所は大きい!

国際問題の起こり方

深センはいま伸びている地域で建物はどれも大きい。そんな場所に私はよく馴染んだ。当たり前のように中国語で話しかけれ、「日本人です」というと「本当か?」と疑われた。京都(日本)の薬局でも外国人と思われ英語で対応されたことがある。日本人ばなれした顔なのだ。
リハーサル中の一枚
リハーサル中の一枚
2日目はみっちりとリハーサルだった。前日の打ち合わせを元に台本ができている。私は言葉がわからないので美人通訳からそれらを教えてもらう。同じクイズに出演する他のカップルもいい人たち。国際問題がいろいろあるけれどここにはそれはないのだ。
国際問題が起きました!
国際問題が起きました!
リハーサルで僕が一人で彼女とイチャイチャしている様子を見たいとテレビ局の人に言われて日本から持って来ていたカツラで実演した。休憩中にそのカツラを韓国の方がかぶったら女性がどっと集まり、私のカツラで人気者になっていた。

国際問題はこのようにして起きるのだ。キッカケはいろいろなのだ。特に女性問題は大きいらしい。もはやひがみである。
女性に囲まれると国際問題は解決する(私の目がキラキラしてる!)
女性に囲まれると国際問題は解決する(私の目がキラキラしてる!)
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安い男

そんな国際問題が起きたリハーサルは12時間ほど続いた。出番はワンコーナーなのだけれど長い。パネルに顔を突っ込み、私以外の3組は本当のカップルなのでどれだけ女性が偽物に見えるか、私はどれだけ自分の手が女性に見えるかの調整を行う。
他はこんな感じで楽しそうだけど、
他はこんな感じで楽しそうだけど、
私はひとり
私はひとり
私の一人であーんの肝は写真であること。しかし、ここではパントマイムが求められる。写真ではないのだ。パネルがあり顔と手だけしか見えないとはいえ、本当に彼女の手のように見えているのか心配でならない。さらにあーん以外もと言われる。
これを写真でなくマイムでと言われる(記事はコチラ!)
これを写真でなくマイムでと言われる(記事はコチラ!
若干不機嫌!
若干不機嫌!
これが先ほど国際問題が起きたカツラの件だ。不機嫌にならないことが自慢の私だけれど、さすがに不機嫌になった。パネルもなくなり完全にパントマイムである。そんな技術はない。通訳さんも勘違いしてますね、と私のフォローをしてくれた。好きです。

それを加味しても不機嫌である。しかしギャラとして500元(8000円)もらえることが発覚。とたんに「何でもします!」となった。こんな自分が嫌だ。安い。
ノリノリでやる!
ノリノリでやる!

本番当日!

当日も朝からリハーサルの続きをして、その後は化粧やネイルサロンという流れ。記事では自分でやっていたマニュキアをネイルサロンでやってくれるらしい。生まれて初めてのネイルサロン。今後も行かないと思うので貴重な体験だ。
人生初ネイルサロン
人生初ネイルサロン
ネイルサロンの人やそこに同行したテレビ局の人が私の職業を聞く。海外で紹介された記事を読むとどうやら私はフォトグラファーらしいので「フォトグラファーです」と自信を持って答えた。だったら撮って、と言われたが、そのような写真はカメラの性能まかせの普通の写真しか撮れない。やっぱりフォトグラファーじゃないな、と思い直した。
完成!
完成!
ちなみに私のTシャツには当サイトの名前が入っている。ただしテレビ局の人は「デイリーポータルZ」を知らず、しきりに「いかがわしいサイトではないのか?」と聞いた。転載された記事は知っているけれど、元の記事は知らないのだ。大丈夫、と諭していよいよ本番。日本を発って60時間。中国デビューの収録だ。
始まりました!
始まりました!
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中国デビュー

この番組は台湾の歌手と中国のタレントが司会を務め、回答者はおそらく中国のアイドルである。通訳さんに聞いたがこっちの芸能事情には疎いので、多分そうだと教えてくれた。好きです。夜9時頃から放送される一時間半のゴールデンの番組である(生放送ではない)。
盛り上がっています
盛り上がっています
収録は一度休憩をはさむ以外は通しで行われ後から編集が行われる。4時間以上収録は行われていた。私の出番は後半なので始めるまでは結構暇だ。

盛り上がっている声は聞こえるが言葉が分からないおかげなのか緊張が全くない。その間に通訳さんもお化粧をしてさらに綺麗になっていた。好きです。来てよかったと心から思う。好きです。
いよいよ出番です!
いよいよ出番です!
幕が上がりパネルが回答者の前に現れた。回答者はここからカップルを一人で演じている人を当てるのだ。そこそこ盛り上がっているようで、白熱したやり取りが行われている。

質問もあって彼女とのエピソードを話したりした。他の三組は知らないが私の彼女とのエピソードは嘘である。「仕事が忙しく…彼女が心配して……」という嘘エピソード。全部嘘だ。彼女はもちろん、仕事も全然忙しくない。
嘘エピソードを話す
嘘エピソードを話す
回答者はどうやら2番と4番で迷っているそうだが結果的に「4番」ということになった。4番は私だ。前に呼ばれ、不正解だったら打ってください、と言われていた白い煙の出る筒を渡される。正解なので握手することになるのだけれど、それよりも回答者の身長が高いことに意識は集中していた。
身長高い!
身長高い!
正解なので筒を置いて握手をした!
正解なので筒を置いて握手をした!
正解したチームの女性がなぜか悲しい顔をしていた
正解したチームの女性がなぜか悲しい顔をしていた

テレビで話します!

正解だったので筒を置き身長の高い女性と握手をした。会場は盛り上がっている。その後にパネルの向こうにいた三組のカップルが出てくる。手をつないで。私はひとり。さらに私だけTシャツにジーパンなのでスタッフのようである。あとでスタッフの方にそう言われた。確かにそうだ。
スタッフを探せ!
スタッフを探せ!
その後に私の自己紹介。中国語でしたのでなかなかに難しく「ホイリャン」という「恵亮」の部分が出てこない。司会の方にちょっと待って、とジェスチャーをする。動きが海外のタレントのようにオーバー。人は海外に行くと動きが大きくなるらしい。ハリウッド俳優に並んだ瞬間だ。
待って、待って
待って、待って
その後にあーん写真を紹介される
その後にあーん写真を紹介される
「なんでこれをしようと思ったのか?」と聞かれたので「モテないから」と言うと、「カッコいい顔なのに」と司会者が言う。生まれる国を間違ったかな、と答えたが前日にディレクターの質問によりモテないことは分かっている。ただしそう言った司会者は台湾の方なので台湾に行ってみようと決断した。希望は台湾にあるのだ。
放送を見たらこれで終了だった
放送を見たらこれで終了だった
司会者が「深センは美人が多いでしょ」と言うので、「その通り! 通訳さんが美人。好きだ!」と告白したり、カツラを使ったパントマイムをしたり、いろいろしたが全てカットになっていた。私が映っていたのは合計で3分くらい。3泊4日で3分。中国は絶対に景気がいいのだと思う。
翌朝のホテルからの風景。曇っていた
翌朝のホテルからの風景。曇っていた

中国好きです!

絶対に騙されていると思った中国への招待だったけれど、素晴らしいものだった。お弁当は二日連続で二つもらえるし、どこに行くのにもドライバーさんがいるし、通訳さんは美人だ。好きです。ホテルも今までで一番豪華なところだった。海外なのに勢いよくシャワーが出るのだ。

放送を見ると3分だったけれど、コーナーの担当ディレクターはその収録の様子を喜んでくれたいたようなのでよしとしていいのではないだろうか。なにより騙されなかったことがよかった。一番の思い出は通訳さんと食事に行ったことだけど。好きです。
デイリーの文字がバッチリ映っていた!
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