特集 2013年10月28日

電動ドリルでスパゲッティを食べると便利

ほら便利
ほら便利
電動ドリルの便利さときたらない。

買って実際に使ってみるまで、僕は正直あなどっていた。穴あけもネジ締めも、キリやドライバーを使えば手でできる。大工仕事でもするならともかく、たまに小さな工作を作るくらいの僕には必要ないのでは。

それが買ってみたらどうだ。毎回5分かけて空けていた塩ビパイプの穴が、10秒で空けられる。素早く空けられるので数をこなすことができ、穴で点線を書いていけば切断だってできる。そのうえドリルをドライバーに付け替えればネジも締められる。完全に魔法だ。世界が一変した。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

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さらなるポテンシャルを

これが僕の人生に大きなインパクトを与えてくれた、電動ドリル。
3年ほど愛用している
3年ほど愛用している
写真のドリル、ビックカメラで5,000円くらいで買ったつもりだったが、いまネットで値段調べたら2,480円であった。そういわれてみると、値段に惹かれて買ったような覚えもある。便利すぎて自分の中で価格の見積りが上がっていた。

ドリルの何がいいって、先が変えられるのがいい。
いろんな先(ビット)を付け替えられる
いろんな先(ビット)を付け替えられる
これのおかげで穴あけ、ネジ締め、そして下穴を空けての切断と、いろんな用途に使えるのだ。
先端はネジになっていて、開いたり
先端はネジになっていて、開いたり
閉じたりする。このネジ部分は「チャック」と呼ばれている
閉じたりする。このネジ部分は「チャック」と呼ばれている
とはいえ、僕は工作を作るときしかドリルに触っていない。月に1回くらいのことだ。もったいない。ドリルの持つ無限の可能性を生かせていないんじゃないか。うちの子の隠れた才能をもっと見つけてあげたい。
もうドリルだけじゃない
もうドリルだけじゃない

カトラリーとしてのドリル

まずは、食卓で役だってもらおう。
これまでもっぱら趣味に使ってきたドリルが、衣食住の現場に活躍の場を広げるのだ。ますます生活に欠かせない存在になってくるぞ。
今日のランチはスパゲッティで
今日のランチはスパゲッティで
食器はもちろんドリル
食器はもちろんドリル
ドリルといえば回転、回転といえばスパゲッティのフォークである。

チャック部分はもともと六角形のものをくわえ込むようにできているのだが、平たいフォークも突っ込んでみれば意外に安定した。

その活躍ぶりはGIFアニメで見ていただこう。
ま、魔法だ…。
ま、魔法だ…。
あまりにスムーズに巻けていくので、あらかじめ巻いたものをほどきながら撮影し、逆再生しているみたいだ。でも違う。これちゃんと巻いてるのだ。
食器をカチャカチャいわせず電動で一気に巻くのがこれからのイタリアンのマナー
食器をカチャカチャいわせず電動で一気に巻くのがこれからのイタリアンのマナー
もちろん巻くだけではない。口に入れて飲み込むところまでがスパゲッティです。
顔がすごい伸びた
顔がすごい伸びた
うおっ、食べにくい…。

ごめん。白状すると記事タイトルはハッタリだ。正確には「電動ドリルでスパゲッティを食べると(巻くとこだけ)便利」である。 遠いのだ。フォークの全長にくわえ、ドリル本体の長さも加わる。長すぎる。

くわえて、手から正面に向かって伸びるフォーク。まっすぐすぎるのだ。
実はこの角度が超大事だったのである
実はこの角度が超大事だったのである
ピストル型でしかも長い。ライフル銃を自分に向けるところを想像してもらえれば食べにくさが伝わるだろうか。

ただ発想を変えれば、対面の人にスパゲッティを食べさせる場合は、超食べさせやすい可能性がある。「あーん」である。
つきあい始めの仲むつまじい恋人たちであれば、ドリルを持ってイタリア料理店に行くといいかもしれない。

ドリルでクッキング

ところで、さっきのスパゲッティの横に添えられていたスクランブルエッグ。
あれも、実はドリルの力で作られたものなのだ。
食卓を制した(?)ドリルが、こんどはキッチンにまで進出。
玉子を混ぜる棒
玉子を混ぜる棒
何という名前なのか知らないが、玉子を混ぜる棒である。泡立て器のミニチュア版みたいなやつだ。これをドリルにつけてみよう。
高速回転+微妙な上下運動
高速回転+微妙な上下運動
持ち手側の先端が少し太くなっているためネジがしっかり締まらず、回転させるとちょっと上下にぶれる。
これで生卵を
これで生卵を
混ぜる
混ぜる
今までもっぱら「(穴を)空ける」「(ネジを)締める」だけをしてきたこのドリル。生まれて初めての「混ぜる」にも、全く申し分のないパフォーマンスを発揮してくれた。
超混ざる
超混ざる
上下にブレる動きが、むしろ黄身と白身の撹拌に役立っている。
ドリルで混ぜた玉子の満月のような美しさよ
ドリルで混ぜた玉子の満月のような美しさよ
ドリルでの玉子混ぜは完全に成功。こうやってうまくいってしまうと記事としてはオチがない、というのがちょっと悩みどころではある。
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電動歯ブラシ

食べたあとはハミガキだ。虫歯になって歯医者に行って初めて登場するイメージのあるドリルだが、実は虫歯予防にも役に立つかもしれない。
100均で買ったこの歯ブラシが、
100均で買ったこの歯ブラシが、
電動歯ブラシに!
電動歯ブラシに!
うん、わかる。君が言いたいことは言わなくてもわかる。
「電動歯ブラシってそんな動きじゃない」だろう。
でもやってみると意外にこっちの方が磨きやすいという可能性もある。試してみないとわからないのではないか。
いざ。
いざ。
あががががが
あががががが
完全に未体験ゾーンであった。
顔が上に引っ張られるのだ。引っ張られるというか、歯ブラシが回転してるのでそれに押し出されて顔が上に行ってしまう。歯は歯でも、歯ブラシじゃなくて歯車の方の原理である。
うまいこと言えたことに気をよくして図解します
うまいこと言えたことに気をよくして図解します
前歯のハミガキにはむいてないようだ。だが人間には奥歯がある。奥歯なら磨きやすいかもしれない。
ががががが
ががががが
なんていうか、「裏返った洗車機」という感じだ。洗車機って車が中に入るけど、こっちは口の中に入れる。
中からグリグリやられていると、自分の意志で歯を磨いている気がしない。完全に「襲われている」感じだ。

そういえば磨きやすいかどうかはともかく、そもそも水場で使って大丈夫なのかという問題もあった。濡れた手で漏電して、下手すりゃ大惨事では。危ないところだった…。

ミミカキ

せっかくだから身体張ったやつをもう一つくらいやってみよう。
なんだかわかりますかね
なんだかわかりますかね
綿棒です
綿棒です
電動歯ブラシというのはあるが電動ミミカキというのはきいたことがない。新機軸だろう。
ただ、Jの字になったミミカキはあまりに危険と判断し、綿棒にした。
少しづつ耳に入れていく
少しづつ耳に入れていく
これ、歯ブラシの漏電みたいにあとから気づくタイプの危険ではなく、すごくわかりやすく危険だ。くれぐれも内耳を痛めないよう、ここは慎重に行きたい。
※言うまでもないと思いますが真似しないでください
とちゅう顔をゆがめているのはモーターから急に異音がして驚き、死を覚悟したためです
とちゅう顔をゆがめているのはモーターから急に異音がして驚き、死を覚悟したためです
あまりの恐ろしさに、耳の穴の一番外側を軽く撫でるだけにとどめておいた。

気持ちいいかどうかはわからなかった。緊張感が高すぎて意識がそっちに向かないのだ。人生で一番殺伐としたミミカキ体験だった。

ちなみにドリルミミカキは時間と共にその恐ろしさを増す。ドリルが重いため、だんだん手がプルプルしてくるのだ。ここで手元が狂ったら!!と思うと、もはや手のひらは汗だくだ。そして更に手が滑りやすくなる。
危なかったー
危なかったー
あとミミカキしてるときの体勢がロシアンルーレットとほぼ同じなのも手に汗握る一因かもしれない。
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アメなめ機

いかん、ドリルの用途を貪欲に広げようとするあまり、危険行為に走ってしまった。
これではドリル博士も喜ばないだろう。(ドリル博士というのは電動ドリルの発明者を調べずにあてずっぽうで言ったものです)

平和利用を心がけよう。
チュッパチャプス
チュッパチャプス
関係ないけどこれ、中が緑色のココナッツみたいな絵が描いてあるけど、何味なんだろう。
回すと色が変わってきれい
回すと色が変わってきれい
検索してみると、回転式のチュッパチャップスはもうすでに商品化されているようだ。

ただしこちらとら550回転である。トルク9.4Nmだ。安物のドリルといえど、子供だましのおもちゃとは格が違うのだ。
口に入れる
口に入れる
んん
んん
まず低速で回すと、ハテこれは回すの意味あるのか、という感じ。普通にアメを舐めているのとそんなに変わらない。
しいて言えば舌のやり場が無くなって、口の中が疲れるくらい。

ただ口の中に唾液をたくさんためて、高速回転するとすごいことになる。
猛烈な勢いでアメが溶けていくのだ。
超濃厚な「チュッパチャップス液」が口の中に広がる。
すごい!
すごい!
アメっておいしいけど、ずっと舐めてると単調なのが玉にキズだと思う。
その点、このドリルチャップスなら変速付き。トリガーの引き具合でスピード(=甘さ)が調整でき、単調なアメ生活にメリハリが生まれるのだ。

いつものアメをちょっとおいしく味わえる方法だが、ただしこれも持ってる手がすごく疲れる。腕の筋トレをしながらアメをなめたい際に最適だろう。
ちなみに抹茶ラテ味でした
ちなみに抹茶ラテ味でした

電動うちわ

次はこれだ。
妙に色が派手なのはうちわがオフシーズンのため売ってなく、アイドルの応援うちわの材料として売られてるのを買ってきたからです
妙に色が派手なのはうちわがオフシーズンのため売ってなく、アイドルの応援うちわの材料として売られてるのを買ってきたからです
先が太くてチャックに入らないのでリューター(電動の削り工具)で削った
先が太くてチャックに入らないのでリューター(電動の削り工具)で削った
うちわを電動工具に入れるために電動工具で削る。急に「何やってんだ俺」感の高いメタな作業で、ちょっと我に返る。
妙にバカっぽいビジュアルのものができた
妙にバカっぽいビジュアルのものができた
回すとさらにIQが低い
回すとさらにIQが低い
本家とは動きが違う。うちわで仰ぐときって普通は往復だからね。とはいえ意外とこっちの動きの方がいいという可能性もあるし、試してみなければわからない。さっそく仰いでみよう。(さっき歯ブラシで失敗したのと同じ展開)
むむ
むむ

微風だが涼しい。……と思うのはおそらくいまが秋で、涼しさに飢えてないからだ。夏だったらダメだこりゃって思うだろう。

普通のうちわと違って、180度全方位に風が吹くのが特徴。手元で動いてるのに全身に風があたって不思議な感じはする

そよ風の気持ちよさを感じられると言えなくもないのだが、終始ウォーンってすごいモーター音がしてるのが難点か。
その微風ぶりはコピー用紙がそよぎ方でご察しください
その微風ぶりはコピー用紙がそよぎ方でご察しください

お菓子作りに

食に始まったこの実験は最後に食に戻る。
1ページ目で使った玉子混ぜ棒が泡立て器のアマチュア版みたいなルックスだったので、ここではフルサイズの泡立て器を使ってみよう。
これを
これを
こう
こう
一瞬で装着したように見えるが、持ち手を削ってチャックに差すのに30分かかった。最初から手で生クリーム混ぜていればすでにホイップし終わってる時間である。
生クリームを
生クリームを
混ぜていきます
混ぜていきます
玉子に引き続き、これはかなりいいように思える。
よく泡立ってる
よく泡立ってる
よく泡立ってるのだが、30分かけて柄を削ったことを考えると、心のどこかに「こういう機械、もうあるよな…」というむなしさが沸かないでもない。

ただどの家にも電動ホイッパーがあるわけではないだろう。大工さんだって子供の誕生日にケーキを作りたくなることがあるはずだ。
だんだんとろみがついてきてた
だんだんとろみがついてきてた
あと始めてから気づいたのだが、僕は自分ひとりで生クリームを泡立てたことがなく、このドリルホイッパーがどれほどの使い勝手なのかちょっと評価できないのだ。

そもそもこの牛乳みたいなやつを混ぜるだけで本当にあんな固形になるの?おかしくない?やり方が間違ってるんじゃないかと、途中で不安になって3回くらいネットで調べた。
フルパワーで長時間運用するなとだけ書いてあり、どうなるか書いてないのが怖い
フルパワーで長時間運用するなとだけ書いてあり、どうなるか書いてないのが怖い
なんだかんだで15分くらい混ぜ続けただろうか。
だんだん固まってきて
だんだん固まってきて
クリームだ!
クリームだ!
うまい。
うまい。
これ正解?正解???

よくわかんないまま、盛りつけてみた。
すこいコレジャナイ感
すこいコレジャナイ感
わかってる。まずケーキじゃなくてドーナツなのがおかしい、それはわかってる。あと絞り出すやつがなかったのでビニール袋の角切ってやったから変になったのもわかってる。あと生クリームがどう見ても緩いのもわかってる。

でもそれは全部、僕の非なのだ。責めるなら俺を責めろ。ドリルのせいじゃない。ドリルがホイップクリームに向いてないということじゃない!
ドリルは悪くない!
ドリルは悪くない!

スパゲッティが楽しい

いろいろ試したけど、おすすめ度としては断然スパゲッティだ。決して食べやすいわけじゃないんだけど、ギューンって高速で巻けるのがすごくおもしろい。巻いたらフォーク抜いて手で食べればいいと思う。

というわけで、これからも電動ドリルを(主に工作に)愛用していきたいと思います。
最後のドーナツ、味はちゃんとおいしかった
最後のドーナツ、味はちゃんとおいしかった
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