特集 2013年10月29日

真水の池にもクラゲがいる

その名も「マミズクラゲ」!
その名も「マミズクラゲ」!
漢字で「海月」とも書くようにクラゲは海に暮らす生き物である。
と、思いがちだが実は淡水の池にもいないことはないのだ。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

真水のクラゲは神出鬼没

淡水のクラゲは毎年8~9月に限って出没する。期間限定というだけでも観察のハードルが若干高いのだが、さらに困ったことには出現する場所が定まっていないのだ。
これはミズクラゲというよく見られる海のクラゲ。
これはミズクラゲというよく見られる海のクラゲ。
ふと気が付くと山中の湖に沸いていることもあるし、突如として街中の防火漕に大量発生していることもある。さらには金魚や熱帯魚を飼っている屋内の水槽に出現することすらあるという神出鬼没さである。
逆に数年間連続で同じ池に現れたりもするが、ある年にパタッといなくなるというパターンもしばしば。妖怪のようだ。
何の変哲もない池で目撃情報が!
何の変哲もない池で目撃情報が!

意外と見つからない…

今年の九月、そんなクラゲの目撃情報が突然耳に飛び込んできた。話を聞いてみるとなかなかアクセスしやすい場所だ。またとないチャンス。これは行かなければなるまい。
水面を見つめながらひたすら歩く
水面を見つめながらひたすら歩く
勇んで足を運んだものの、クラゲの姿はなかなか見つからない。それもそのはず、お目当てのクラゲは見慣れた海産種に比べて小さいのだ。
また、大発生すれば水面を埋め尽くすこともあるそうだが、今回は残念ながら数が少ないようだ。

水面の乱反射をカットする偏光サングラスを試してみるも、視界が暗くなりすぎて役に立たず。
水面の乱反射をカットする偏光サングラスを試してみるも、視界が暗くなりすぎて役に立たず。
御存じの通り、クラゲの体は大部分が透き通っている。その上小さいので、日が強く差すと水面の反射で見えない。かといって物陰では暗すぎて探せない。
水面を見つめ始めて10分ほど経った頃、うまい具合に空を雲が覆った。ここぞとばかりに目を凝らすと、岸から1メートルほどの場所にふわふわと漂う白いものを見つけた。
おおっ!
おおっ!

小さいけれどすごく綺麗!

クラゲだ!やっと見つけた!
しかし、予想に反してこのクラゲ、よく動く。しかもリズミカルな動きの中にさりげなくイレギュラーなアクションを織り交ぜてきやがるので、とても写真を撮りにくい。
水上からの撮影は難しいと判断し、防水デジカメを沈めて水中撮影を試みる。
これが真水に棲むクラゲ
これが真水に棲むクラゲ
ようやくまともな写真が撮れた。
真水に暮らすこのクラゲの名は「マミズクラゲ」。そのまんまである。
透明な「傘」の部分は直径2センチほどで、真上から覗き込むと白い器官が十字に体内へ納まっている様子がわかる。よく見るとクラゲ最大の特徴である触手もたっぷりワサワサ生えている。
まあ触手の多いこと多いこと
まあ触手の多いこと多いこと
ちなみにクラゲとはいえ人を刺したりはしない、というかできないらしい。

傘の透明感がすごい
傘の透明感がすごい
水中での基本的な動きは、わずかな水流に流されながら傘を動かして浮上し、水面に到達すると脱力して水底へ沈む。そして底に着いたらまた慌てて水面へ…というセットの繰り返し。意外にせわしない。クラゲのくせにデスクワークメインの会社員よりも運動量が多そうだ。

水上から観察していて一番目立つのは十字になっている体内の器官
水上から観察していて一番目立つのは十字になっている体内の器官
なんでもこのマミズクラゲはもともと日本にいた生物ではないらしい。どうやら中国の長江あたりからやってきたのではないかという説が有力らしいが、その時期や経路ははっきりしていないそうだ。
目立たないながらもなかなか綺麗な生物だ。
目立たないながらもなかなか綺麗な生物だ。
そもそも知ってて探しに行ったのだが、それでも「池にクラゲが!」という違和感はなかなか衝撃的かつ感動的だった。

触手の短い個体も
触手の短い個体も
今回はなんとか5匹のマミズクラゲの姿を確認することが出来た。
発生地へ出向けばもっと簡単にたくさん見つかると思っていたが、少しばかり運が無かったようだ。いや、気まぐれなマミズクラゲが相手なのだから、姿を見られただけ幸運なのかもしれない。

水面まで泳いだら、今度は傘を下に向けて沈み…
水面まで泳いだら、今度は傘を下に向けて沈み…
水底に着いたら数秒間デロ~ンと脱力。この瞬間がなんだかかわいい。
水底に着いたら数秒間デロ~ンと脱力。この瞬間がなんだかかわいい。
見た目でわかるとおり、マミズクラゲはとてもデリケートである。一時的に捕まえて観察する場合は優しく、優し~く掬い採ってやる。ちょっとした水流も、小さな気泡すらも大敵である。
ペットボトルに入れると細部も観察しやすかった。
ペットボトルに入れると細部も観察しやすかった。
べたべたと写真を並べてきたが、これだけでは実際の動きを想像することは難しい。僕もそうであったように。というわけで捕まえたマミズクラゲを池に帰す場面を動画で撮影しておいた。あまり綺麗な映像ではないが、参考程度に見てもらえると嬉しい。

次はあなたの町に現れるかもしれない…

ほとんどクラゲの写真だけで終わってしまった。しかし、クラゲの美しさ以外に伝えるべき点があまり思いつかなかったので、これはこれで正解だろう。
先ほどもちらっと触れたが、マミズクラゲはあちらこちらの水場に出現する。来年はあなたの町にやってくるかもしれないのだ。見てみたい人はインターネットなどを駆使して対マミズクラゲアンテナをばっちり張っておこう。
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