はっけんの水曜日 2013年11月20日
 

魔法びんはかつてなぜ花柄だったのか?

日本で売れなかった魔法びん

しかし、明治・大正の時代。国産の魔法びんはとても高価なもので、庶民に手の届くシロモノではなかった。

したがって、日本国内ではほぼ売れず、もっぱら欧米の植民地であった東南アジアなどに輸出された。

東南アジアでは生水をそのまま飲むと危険なため、植民地の欧米人は沸かした水で紅茶やコーヒーを飲む、その時に魔法びんが必需品だったのだ。

魔法びん会社が象や虎、孔雀などの動物を商標にしているのは、当時、外国人に向けてわかりやすい商標として動物を採用したためだと言われている。
市川兄弟社の商標は象。のちの象印マホービンである
市川兄弟社の商標は象。のちの象印マホービンである
見覚えのあるやつが出てきた
見覚えのあるやつが出てきた

日本で魔法びんが売れるようになったきっかけ

終戦後、日本では相変わらず魔法びんはあまり売れてなかった。しかし、1958年(昭和33年)大阪で発明されたある商品が発売されたおかげで、魔法びんが徐々に売れるようになってきた。

大阪で発明されたその商品とは「チキンラーメン」だ。
魔法びんもチキンラーメンも大阪の産業というところがおもしろい
魔法びんもチキンラーメンも大阪の産業というところがおもしろい
チキンラーメンを作るために魔法びんが売れた。それまであまり売れなかった魔法びんがすこしづつ売れはじめるきっかけとなった。

ここで思い出すのが『オバケのQ太郎』や『ドラえもん』など、藤子不二雄作品に出てくる小池さんのことだ。

小池さんはいつもインスタントラーメンばかり食べているのだが、ラーメンを作るとき、魔法びんから丼にお湯を注いでいた。

家にあるオバQを確認したところ、やはりその通りであった。
どんぶりとラーメンの袋とともに魔法びんが!(てんとう虫コミックス『オバケのQ太郎』5巻より)
どんぶりとラーメンの袋とともに魔法びんが!(てんとう虫コミックス『オバケのQ太郎』5巻より)
描かれている魔法びんと展示してある魔法びんがそっくりすぎてちょっとビックリしたけれど、こんなところにも魔法びんの普及の様子を見てとれるのが面白い。
そっくりだなー
そっくりだなー
その後、じょじょに魔法びんは日本でも売れていき、花柄魔法びんブームへと続くのである。

魔法びんだけではなかった象印マホービン

象印マホービンといえば、もちろん魔法びんで有名だが、その他にも炊飯器や電子ジャーなどをイメージすることが多い。
しかし、過去にはちょっと変わったものも作って販売していた。

記念館にはその輝かしい栄光と挫折の歴史も展示してある。

中でも目を引いたのはこれだ。
家庭用寿司製造機
家庭用寿司製造機
ーーこれ、すごいですね、家庭用の寿司製造機って、手で握ったほうが早いような気もしますけど……。
「ですよね(笑)でもそれ、企画書きったの私なんです」
上司がどうしてもやりたいっていうから仕方なく……
上司がどうしてもやりたいっていうから仕方なく……
ーーえ、そうなんですか! 失礼しました……。
「私は売れないって言ったんですが、上司が「どうしてもやる」っていうので仕方なく企画書作ったんですが……案の定うれなかったんです」

ーーそうですか……
「これは完全OEM生産だったんですが、どこが作ってたと思います?」

ーーまったく想像つかないです。
「オーディオテクニカさんなんです」

ーーえーっ!
「びっくりしますよね? でも実はオーディオテクニカさんは回転寿司チェーン店にあるような業務用の寿司製造機を今でも作られてるんですよね」

ーーということは、寿司製造機の技術は無駄にならずに済んだということなんですね
「そういうことになりますね」

確かにオーディオテクニカでは寿司製造機を今でも販売している。

あのオーディオテクニカが寿司ロボット。意外な一面が意外すぎて目が点になるパターンのやつである。

そしてもう一つ気になったのはこちらの商品だ
すぐつかる浅漬をつける時間さえも待てないせっかち向けの商品
すぐつかる浅漬をつける時間さえも待てないせっかち向けの商品
「スピードつけもの器はやづけくん」だ。

ーーこれは……スピードつけものってどういうことなんでしょう?
「これもね、私が企画書切ったんです、中に野菜と漬物の素を入れてテコの原理で空気を抜いていって真空にするんですね、で、プシュッと空気を入れると野菜に漬物の素が浸透して早く漬物がつかるという商品だったんですが……売れませんでした」

ーーそうなんですか? 今売ってたらちょっと欲しい気がします
「8000円ぐらいするんですよ」

ーーけっこうしますね……それだったら30分ぐらい待って普通につけるかな……。

今、たまたま売れなかった商品を二つ紹介してしまい、失敗ばかりしてるようなイメージになってしまうと申し訳ないので、現在でも現役で使われている象印商品もいくつか紹介しておきたい。
ホテルのバイキングでよく見かけるスープ温め器。この商品はほぼすべてが象印製らしい
ホテルのバイキングでよく見かけるスープ温め器。この商品はほぼすべてが象印製らしい
福祉施設などに給食を運ぶための配食保温容器
福祉施設などに給食を運ぶための配食保温容器

花柄の魔法びんを見るだけのつもりだったが……

花柄の魔法びんがなぜ流行したのか? ぼくは花柄魔法びんの流行は、テレビの普及と密接に関わっていたのではないかと考えた。
では、なぜいま花柄の魔法びんは少ないのか? 山口さんは「飽きたんじゃないですかね?」とのことだった。

たしかに、味の濃いものばかり食べてると飽きるもんなぁと、妙に納得した。
日本で初めて「魔法瓶」という言葉が使われた新聞記事
日本で初めて「魔法瓶」という言葉が使われた新聞記事

取材協力
まほうびん記念館
〒530-8511
大阪市北区天満1丁目20番5号
(象印マホービン株式会社 本社1F)
http://www.zojirushi.co.jp/corp/kinenkan/index.html
事前予約制となっているので、電話で問い合わせてください。

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