フェティッシュの火曜日 2013年11月26日
 

物置からひいおじいちゃんにまつわる資料が大量に出てきた

値段の検討がつかなさすぎるわれわれ

「茶箱1つ分くらいであればできれば宅配便で送っていただければ見ますよ」というところを無理にお願いして(ありがとうございます!!)古書業この道15年の永森さんに祖母宅まで直においでいただくことができた。
分かる範囲でジャンルに分けて広げておいた。ライター西村さん(右)は古いものが好きすぎてこの日も来てくれています
分かる範囲でジャンルに分けて広げておいた。ライター西村さん(右)は古いものが好きすぎてこの日も来てくれています
祖母や父は、古書店に引き受けてもらって追々誰かに役に立ててもらえたらもうお金はいいというスタンスだ。

しかし「お金はいい」という前にお金になるものなのかどうかがまったく分からない。

普通に考えて、ウィキペディアに載っていたとしてもたとえば友人のひいおじいちゃんの弔電とか大量にいらないだろう。どちらかというと私などは0円派であった。
さくさくと全体を見ていく
さくさくと全体を見ていく

思い出される黒歴史

実は祖母と私には古書店に対し恥ずかしい思い出があるのだ。

10年ほど前だろうか。祖母宅で幅を利かせていた大叔父の古書(概ねが純文学)を処分しようということになった。

作家の全集が5揃いくらいと、古い文庫本が大量にあった。

なんか古いし値が付くんじゃないのかね?! とわざわざ古書店の方にきてもらったところ、どうにも買い取りかねるといわれてしまったのだ。
今回、あのときのことを久しぶりに祖母とともに思い出してまたしょんぼりした
今回、あのときのことを久しぶりに祖母とともに思い出してまたしょんぼりした
なんとかと頼んで1000円で全部持って行ってもらえることにはなった。あんまり私達がしょんぼりしているので同情してくれたのかもしれない。

どうも全体的に価値のないものや状態の悪いものばかりだったようだ。

あのときもらった1000円のぴらっとした頼りなさを思い出す。
そんなことを思い出していたら西村さんが資料のなかから真っ黒で古そうな5円玉を見つけた。しかし平成元年のもの。なに…
そんなことを思い出していたら西村さんが資料のなかから真っ黒で古そうな5円玉を見つけた。しかし平成元年のもの。なに…

「すげえ……」

そうして祖母、父、私はなにもいい出せず永森さんを眺めるかそうでなければ黙ってまた資料を見たりぼんやりしていた。

一方、純然たるギャラリーとして参加している西村さんは自由だ。

「いくらくらいになりますかね」
「値ってついたりするんですかね」
「これなんか、どうですかね」

ちょっかい出しまくりである。
自分が気になる部分の解説まで求めるアグレッシブさ
自分が気になる部分の解説まで求めるアグレッシブさ
しかし永森さんもはっきりとした答えは出さず、かといっていい加減な受け答えをするわけでもなく、なにか上手にかわす感じである。

いよいよ、どうなのかが分からない。

しかし、15分くらいしたあたりだろうか。その永森さんがぼそっと、確かにこういったのだ。

「すげえ……」
あの後、さらにこまごましたものの出てきていた。生命保険の領収書とか(これに対して「すげえ…」っていったわけではないです)
あの後、さらにこまごましたものの出てきていた。生命保険の領収書とか(これに対して「すげえ…」っていったわけではないです)
あれ、いま「すげえ…」っていいました?! ぼそっと独り言で「すげえ…」っていいました?!

全く期待していなかったのだが、もしかしてもしかするのだろうか。

だって独り言で「すげえ…」って、マンガでいったら主人公が何らかの超絶プレーをしたのを見たザコキャラがいうセリフですよ!

このセリフを聞けただけで正直私としては大満足といっても過言ではない。満腹だ。寝ていいですか。

もうしばらくかかりますので 1932年〜33年ごろの東京陸軍幼年学校の写真をご覧ください

さて、うっかり横になりそうなところだが上体を起こそう。その後もしばらく永森さんによる検分タイムは続いた。

待っているだけなのも手持ちぶさたですし、この合間に今回あわせて出てきた亡くなった祖父(伝太郎さんの息子ですな)の手による1932年、14歳のときに入った幼年学校時代の写真アルバムをご紹介します。
左が祖父(それにしても知らん家のひいおじいちゃんやらおじいちゃんばかりが出てくる記事で重ね重ね恐縮です)
左が祖父(それにしても知らん家のひいおじいちゃんやらおじいちゃんばかりが出てくる記事で重ね重ね恐縮です)
運動会の写真。フランス班、ロシヤ班、というのは外国語の専攻ごとに学年縦割りでチーム分けされていたのだそう
運動会の写真。フランス班、ロシヤ班、というのは外国語の専攻ごとに学年縦割りでチーム分けされていたのだそう
祖父はロシヤゴ班だったらしく、この運動会では負けた模様
祖父はロシヤゴ班だったらしく、この運動会では負けた模様
「職員ノ釣上ゲ競争」とあった。バケツやら浮き輪やら味噌樽やらを釣竿で釣る競技か
「職員ノ釣上ゲ競争」とあった。バケツやら浮き輪やら味噌樽やらを釣竿で釣る競技か
マンガ競争……?!
マンガ競争……?!
先生をおぶって走るらしき競技もあった。おんぶされているのは校長さん
先生をおぶって走るらしき競技もあった。おんぶされているのは校長さん
校長先生、「水泳地」ではこのような立派な写真もあった
校長先生、「水泳地」ではこのような立派な写真もあった
生徒のみなさんも体の良さがハンパない
生徒のみなさんも体の良さがハンパない
全員どうかという笑顔。「あとの戦争で亡くなった方もだいぶいらしゃったわね〜」という祖母のひと言で我にかえる
全員どうかという笑顔。「あとの戦争で亡くなった方もだいぶいらしゃったわね〜」という祖母のひと言で我にかえる
祖父は元気なうちは毎年必ず一冊は写真アルバムを作っていた。添えられたコメントの文字も美しく私は祖父が作った一族のアルバムを見るのがいまも大好きなのだ。

あの達筆さ、マメさは子どもの頃からのものだったのか。

じゅ、10万円

さて、しみじみしている間に永森さんも出土品の全体を見終えたようである。

まずありがたかったのは、こちらで必要のなもの以外の全てを引き取っていただけるということ。

個人的な写真や形見の類はすでに除いてあったが、電報や書類が引き取ってもらえるとは。
これからはちゃんとしたところで保管してもらえるかと思うとありがたい
これからはちゃんとしたところで保管してもらえるかと思うとありがたい
そして、すでに冒頭でも書いたとおり驚くべきことに引き取り金額が10万円だったのである。

これは資料が資料としてまとまっていること(葬儀のものが写真も書類もきちんとひとまとまりになっている)が大きかったようだ。これ、間違いなくマメだった祖父のおかげである。

研究者の方や趣味で明治末期から昭和初期のことを調べている方に需要があるらしい。
この金額には祖母も驚いてへなへな〜っとした
この金額には祖母も驚いてへなへな〜っとした
役立つ形で引き受けていただけたらお金はいいですから、といっていた祖母と父だったが、いざ10万となるとやはりうれしそうで、よかったよかった、である。
受け取った現金、どこへ行ったかと思ったらお仏壇に上がっていた
受け取った現金、どこへ行ったかと思ったらお仏壇に上がっていた

最後に判明する有名な禿頭

ちなみにずっと外野を固めてくれていた西村さんもせっかくだからということで資料の一部、古書的にはあまり価値がないといわれていた新聞記事の切り抜きの巻物を引き取ってくれ、しかも自宅でちゃんと読んだそうだ。

どこからわくんだそのエネルギー。しかしありがたい。

そして一番の見どころとして以下のように報告してくれた。この西村さんのメールが私にとっての今回の物置騒動を締めくくるものとなったのでここに転載して本稿を終えようと思います。

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古賀連隊長(伝太郎さんのこと※古賀注)は士官学校時代から髪の毛が一本もなく「禿さん」として有名だったそうです。

「古賀聯隊長(こがれんたいてう)は有名なヤカン頭で一夜岡野さん(※救援に赴いた横浜での宿泊先)の座敷でぐつすりねこんでゐた處(ところ)眞暗闇のため副官にヤカン頭を踏まれビツクリして飛び起き「こんな明るい電燈(頭)を踏むやつは誰ヂヤ」と怒鳴り一同を大笑ひさせたといふ挿話もある」
確かに最初に写真を見たときから毛がないなあとは思っていた
確かに最初に写真を見たときから毛がないなあとは思っていた

物置、すごい

物置のガラクタにおもしろいものがあったらともくろんではいたものの、こういうことになるとは思わなかった。

10万円が舞い込んだり、全く知らなかった曽祖父の人生や祖父、祖母の若いころにふれたりいろいろあったが、今だに当時のことをなんでもよく覚えている祖母の口から改めて昔のことを聞けたのが一番よかった。

でもこれだけなんでも覚えている祖母がなんで賞味期限切れ切れのジュースを後生大事に保管していたのかも不思議なのだった(気持ちは分かるけど)。
祖母宅の花瓶代わりのマグカップが20年以上前の合併で現在はその名前のない太陽神戸銀行のノベルティだった。なにしろ全体的に古い
祖母宅の花瓶代わりのマグカップが20年以上前の合併で現在はその名前のない太陽神戸銀行のノベルティだった。なにしろ全体的に古い

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