特集 2013年12月12日

財布もケータイも持たずに、知らないところに行く

ものすごく不安な気持ちになります!
ものすごく不安な気持ちになります!
全然知らないところに行っても、財布とケータイがあればなんとかなる。

スマートフォンなら、インターネットにつながるし、GPS機能が付いた地図も使える。

お金を持っていれば、そうして調べた後に様々なサービスや商品を購入することが可能だ。

それじゃあ逆に、その二つを持たないで出かけたらどうなるんだろう。そういうところで一人の人間としての、真の価値が発揮される気がする。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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> 個人サイト ふしぎ指圧

要は手ぶらということ

本当は何も持って行きたくないんだが、一応撮影用にカメラと三脚とメモとペンだけ持ってゆく。

目指すのは足立区の「舎人公園」。一度行ってみたかった。それにお金がなくてもそれなりに楽しめそう。

ところで、お金を持たないので、電車に乗れない。原付スクーターで行くことにする。舎人公園までは、車で20分くらいだという。
財布持たないと免許証忘れそうになるね
財布持たないと免許証忘れそうになるね
出発地と目的地。そんなに遠くないのがよくわかる
出発地と目的地。そんなに遠くないのがよくわかる
いつもならスマートフォンでグーグルマップを確認しながら行くところだが、今回はそれもない。出発前に地図をよく読み、完全に理解した。JR川口駅まで行って、そこから東に向かえばいい。

金がないとにかく心配

バイクで走りだした途端に心配になってきた。早い。

何かのビジネス本で「大事な交渉ごとの時は財布にお金をパンパンにしておけ」というのを読んだことがある。そうすると、気持ちに余裕ができて、うまくいくんだそうだ。

こんなことでうまくいくかよ、と読んだその時は思った。けれどもその逆のことをしてみるとよくわかる。
途中でバイクの燃料が切れたらどうしようもなくなるんじゃないか
途中でバイクの燃料が切れたらどうしようもなくなるんじゃないか
準備がないときって出だしが一番不安である
準備がないときって出だしが一番不安である
途中で腹ペコになっても何にも買えない。だから出発前にたらふく昼飯を食べた。
珍来のチャーシューメン
珍来のチャーシューメン
もうあんな風に自分の金で好きな物買って食べることが、しばらくできないんだ…。まだお腹いっぱいなのに、つらさだけ先取りしてしまう。
洋服買取の店が目についた
洋服買取の店が目についた
本気でお金が必要になったら、古着屋に今着ている物を買い取ってもらうのもいいかもしれない。

正直、お金が必要になる状況があまり想像できない。でも、自分がお金がなくて泣きそうになっているところは簡単に想像できてしまう。自分で自分に被害妄想みたいなことばかり湧いてきてすごい。
!

一方通行にやられる

よく知らなかったが、川口駅の東の方は、一方通行道路が多い。
狙った方向に行けない
狙った方向に行けない
そして「この道をまっすぐ行けば着くだろう」という道が車両進入禁止になっていて
そして「この道をまっすぐ行けば着くだろう」という道が車両進入禁止になっていて
道なりに行ってみたらこれがどう見ても目的地の舎人公園とは全然別の方向に行かざるをえないような道に出てしまい
道なりに行ってみたらこれがどう見ても目的地の舎人公園とは全然別の方向に行かざるをえないような道に出てしまい
目的地と90度くらい違う場所、赤羽についてしまった
目的地と90度くらい違う場所、赤羽についてしまった
いまここ
いまここ
信じられない。赤羽についてしまった。

川口の人が舎人公園に行こうとして赤羽に来てしまう、というのをわかりやすくいうと、東京の人が仙台に行こうとして金沢に行ってしまう、というくらい違う。

スマートフォンがあればグーグルマップを見るところなんだけれども、ない。持ってない。

まさかこの企画、いつまでたっても目的地にたどり着けない、ということにならないだろうな?

(注:なります)
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東の方に行きたい

川を一度超えてしまったが、ここから東の方に行けば、足立区の方にいける橋があるんじゃないだろうか。
(注:もっと南下しないとないです。環七までいかないとムリ)

そう思って、脇道に入ってみる。
子供がボール遊びしているような住宅地入った
子供がボール遊びしているような住宅地入った
わからない
わからない
川沿いの道は発見した。しかし、行けども行けどもそれっぽい橋は見つからない。

(注:そんなものはそもそも無い)
北区の清掃工場が見える
北区の清掃工場が見える
行きたい場所も方向もわかっている。けれども目の前に広がっている道は全然見当違いの方向にしかつながっていないし、そこを進むしかない。

まるで青春の真っただ中のような焦燥感だ。本当に空が青い。

環七が怖い

環七の交差点まで来てしまった
環七の交差点まで来てしまった
環七がショック
環七がショック
東に行く橋が見つからないまま、南の方に来すぎてしまった。

(注:だからここまで来ないと橋はない)

遠回りし過ぎて笑ってしまう。ともかく、ここを東に行けばいいはずだ。
(注:早い段階でUターンしておけばよかった)
走っていると、ほどなくして足立区に入った。舎人公園に近づいている。
今までの人生の中で足立区の表示がこんなにうれしいことがあったか!
今までの人生の中で足立区の表示がこんなにうれしいことがあったか!
と、思いきや道なりに進んでいくとまた川口市に入ってしまった。
あ…あれ?
あ…あれ?
戻っちゃったようで不安だが、足立区と川口市の境のあたりまでは来れたということだろう。

(注:この認識は合っている)

しかし、難しいのはここからだ。大雑把な方向はわかっているので、近づくことはできる。でも、詳細な場所はわからないので、近くをぐるぐるしてしまいそうだ。

(注:この考えも合っていて、この後実際にそうなる)

そういえば、出る前に地図をよく見て「完璧に覚えた!」って思ったっけ。なんでそんな風に思えるんだろう。愚かだ。
やがて方向表示に「舎人」の文字を発見
やがて方向表示に「舎人」の文字を発見

正直途方に暮れている

ところで、数学の問題で「組合せのパターンを求める」ってやつがあるだろう。
この場合は49通り。
この場合は49通り。
(注:後からよく考えたら49通りにならない気がする)
でもそれは出発地から目的地まで、一切戻らないという条件つきだ。現実にこういうところで迷ったら、何度も同じところ行ったり来たりするから、無限通りだと思う。


もっというと、途中で挫折する、目的地が変わる、事故にあう、というのも多分無限通りにある。さっきの無限と組み合わせて、無限×無限…。その無限を超えた無限の真っただ中にいるのが今の僕である。
何だかわからない恐さ
何だかわからない恐さ
とかなんとか考えていたら「舎人駅」に着いた。ここから舎人公園はすぐそこだったはず。

(注:たしかにすぐそこなんだけれども、実はもう通り過ぎている)
思わずガッツポーズが出る
思わずガッツポーズが出る
そしてこの後、ミジンコの作ったあみだクジのような細かい遠回りを繰り返し、ようやく本題の舎人公園に着いた
そしてこの後、ミジンコの作ったあみだクジのような細かい遠回りを繰り返し、ようやく本題の舎人公園に着いた
後から記憶とカメラの写真を合わせると、多分だいたいこんなルートを通っていたようだ
後から記憶とカメラの写真を合わせると、多分だいたいこんなルートを通っていたようだ
いったん広告です

ここが舎人公園だ!!

最初20分くらいで来る予定だったのだが、90分くらいかかった。でも、体感としては3時間くらいはバイクに乗っていたような気がする。
すごく広い。開放感ある
すごく広い。開放感ある
池では釣りをしている人多数
池では釣りをしている人多数
子供向けに「そりすべりゲレンデ」があって、みんな狂ったような声を上げて楽しんでいた
子供向けに「そりすべりゲレンデ」があって、みんな狂ったような声を上げて楽しんでいた

ちょっと休憩

ここまで来てかなり疲労がたまっている。公演であそぶというよりも、ちょっと休憩したい。
こういうところでコーヒーでも飲んだら最高に気持ちいいだろう
こういうところでコーヒーでも飲んだら最高に気持ちいいだろう
お金がないから缶コーヒーも買えない。この自由に物が買えない感じ、どこか子供のころに戻ったみたいだ。でもそんなにうれしくはない。
想像の中で一人芝居するという技
想像の中で一人芝居するという技
天気がいいので手ごろな木の陰で、ちょっと横になることにした。
気持ちいい
気持ちいい
12月だけどそんなに寒くない
12月だけどそんなに寒くない
………
………
…気が付いたらこのまま30分くらい熟睡してしまった。今日はもうダメだし帰ろうと思う。
帰ろうとしたらベンチが目についた
帰ろうとしたらベンチが目についた
ベンチにすごくいいことが書いてある
ベンチにすごくいいことが書いてある
ここまで読んでくれたみんなにも、僕の失敗を許す心が生まれてほしいなと思う。

知らないところに行くのなら財布もケータイも絶対に必要!

これが全てである。目的地に着くだけでいっぱいいっぱいになってしまった。今となってはなんでこんなことをやってみようと思ったのかよくわからない。ちなみに帰りは遠回りせずに30分くらいで家についた。

よく、下らなくても面白くて笑える記事を「バカ記事」といって、みんなよろこんで話題にする。でもこの記事はバカ記事でもなくて、ただ単にバカな人が書いた記事になってしまった。
なんでかわからないけれども、その辺に落ちているマンガ雑誌をもらっちゃおうか、すごく迷った。お金が全然ないと物を拾いたくなるのかもしれない
なんでかわからないけれども、その辺に落ちているマンガ雑誌をもらっちゃおうか、すごく迷った。お金が全然ないと物を拾いたくなるのかもしれない
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