特集 2013年12月18日

日本の世界一ぶりを自慢される「世界一展」がすごい

粉末に見えますが一粒一粒が全部バネ!
粉末に見えますが一粒一粒が全部バネ!
「世界一展」というタイトルの展示があるときいて、てっきりギネスブック的な、世界一爪が長い男とか、世界一大きい太巻きとか、そういうのが見られるのかと思ったがどうも違うらしいのだ。

そういうのじゃないらしいぞ、と思って見に行って、会場にあったのが上の写真、超ちっちゃいバネである。一体どういうことですか。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

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動機は浅薄

内覧会っていう制度があるのだ。美術館とか博物館とかで、一般公開前に関係者や報道を集めて、展示をお披露目する。今回たまたまその内覧会に招待してもらったので、やったー!と思ってまんまと取材に来ている。
音楽の演奏があったり
音楽の演奏があったり
テープカットとかある
テープカットとかある
内覧会にくるとこういうちょっとした式典があっておもしろいんだけど、最大の醍醐味は、やはり一般公開前のすいた会場で展示を見られるところにある。よし、今回もゆったり見るぞ、と思っていざ会場に行ってみると…。
激混み!!
激混み!!
むしろすごい人であった。

協賛企業が多い

それもそのはず、入り口付近に掲示されたプレートを見ると、すごい数の企業が協賛しているのだった。この関係者がみんな招待されてると思うと、そりゃ人数も多いはずだ。
それもそのはず、入り口付近に掲示されたプレートを見ると、すごい数の企業が協賛しているのだった。この関係者がみんな招待されてると思うと、そりゃ人数も多いはずだ。
さてこの展示、どういった趣旨のものかというと、「日本の「モノづくり」と、その歴史的・文化的背景に焦点をあてる企画展」だそうだ。ちょっとわかりにくいので筆者が体験した感想を一言で言うと「いいとこだけ凝縮した展示会」である。
このサイトでもよく展示会のレポートを載せているけど、展示会ってまあ楽しいものなのだ。自分の知らない業界の最先端技術が見られる。えっ、こういう方向に進化してるの!?っていうおどろき。
会場入り口。なお、展示風景を撮り忘れたので、今後は寄りの写真しかありません!!(すいません!!)
会場入り口。なお、展示風景を撮り忘れたので、今後は寄りの写真しかありません!!(すいません!!)
ただ展示会にしても、全ブースもれなく驚くべき展示ということはなくて、大体想定内だな、っていうものも多い。そういうのがたくさんあって、一部にさっき言ったようなキラリと光る驚きがある。じゃあそのキラリと光る驚きだけを集めて、ひとつの展示場に集めてみたらどうだろうか。それをやった結果が、この会場なのだった。

イカ釣りからガン発見まで

前置きはこのくらいにして、展示品の紹介をしていきます。たとえばこんな驚くべきプロダクトが。
イカ釣り機
イカ釣り機
単にイカがかかったら引っ張り挙げる、というだけのものじゃない。漁師の手先の技術をコンピューター制御で再現、イカ釣りに革命をもたらしたとのこと。しかもすごいのが、一人で同時に64台制御できるらしい。マルチタスクにも限度がある!
木造自転車
木造自転車
これは木造船を作る技術を使った、木造自転車。展示品なので実際に持つことは出来なかったけど、重そうに見えてなんとカーボンフレームより軽いとのこと。こういう「匠」って感じの加工は、日本のお家芸という感じがする。
一見普通のスカートに見えますが…
一見普通のスカートに見えますが…
これは一見して何がすごいのかわかんなかったものの、説明きいて思わず声が出てしまった。
まずこの柄、プリントじゃなくて織物である。そして、こんなにカラフルなのに、途中で糸を交換してないのだ。

キモとなっているのは、いろんな色の糸を自由な長さでつなげられる技術。そうして作られたしましまの1本の糸を縦糸にして、織られた生地なのだそうだ
こういうふうに糸の途中で色を変えられる
こういうふうに糸の途中で色を変えられる
余談になりますが宇宙刑事ギャバンみたいな名前の洗剤
余談になりますが宇宙刑事ギャバンみたいな名前の洗剤
製品だけじゃなくて素材系もある
製品だけじゃなくて素材系もある
上の写真は「超高純度鉄」。さびない、やわらかい、と一般的な鉄のイメージを覆す性質を持つ。「世界の標準物質としての認定を受けています」って書いてあって「なんだかわからないけどなんかすごいぞ!」と思った。(展示会を楽しむにはこの感覚が大事)
画面が異常にかっこいいことで話題になった</a>、対サイバー攻撃アラートシステム「DAEDALUS-VIZ」も展示中
画面が異常にかっこいいことで話題になった、対サイバー攻撃アラートシステム「DAEDALUS-VIZ」も展示中
こちらは(5)の液体が、反応すると(6)の蛍光色になります。これは…
こちらは(5)の液体が、反応すると(6)の蛍光色になります。これは…
これはがん細胞にスプレーすると光るという試薬。1mm以下のがんでも発見できるとか!
この脇には「パンダのがんを見つけよう」パネルがあって…
この脇には「パンダのがんを見つけよう」パネルがあって…
光に当てるとがんのパンダだけ光るというブラックジョークみたいな展示
光に当てるとがんのパンダだけ光るというブラックジョークみたいな展示
こちらはファスナー。上に載ってるのは大きさ比較用のスマートフォンと10円玉
こちらはファスナー。上に載ってるのは大きさ比較用のスマートフォンと10円玉
これは世界一大きいファスナーと小さいファスナー。小さいほうは人形の洋服なんかに使われていて、大きいほうは宇宙服などに使われているとのこと。

このファスナーは手にとって触ってみることができるんだけど、小さいほうは開け閉めするとショリショリ、大きいほうはゴリゴリっとした感じで、感覚の違いもおもしろい。
これは医療機器のMRI(体を輪切りにした画像を撮る機器)ですが
これは医療機器のMRI(体を輪切りにした画像を撮る機器)ですが
静音化がこの製品のウリなんだけど、なんと静音化前はジェット機並みの騒音が出ていたらしい。
この製品のすごさの前に、病院でジェット機並みの騒音が出てたという事実が驚きである。それを90%以下に抑えたという。

やはり小さいものは得意

日本の技術というと小型化が得意なイメージがある。電卓とか、携帯電話とかね。そんなイメージどおり、この展示にも極小のものがたくさんある。
すごい小さい自転車模型
すごい小さい自転車模型
タイヤの直径が0.085mm。さらに、もはや写真では見えないんだけど、フレーム部分に極小で文字が書かれている。小さいだけでなく、特殊な機械を使わずに金属加工の一般的な機械で作られてる、というのがすごいところらしい。
これもまためちゃくちゃ小さいクワガタ
これもまためちゃくちゃ小さいクワガタ
見える?クワガタというよりノミサイズ
見える?クワガタというよりノミサイズ
自転車よりさらに小さいクワガタ。こちらは樹脂製で、型抜きで作られてるらしい。厚みわずか0.02mm!
こっちは極小プリント。
こっちは極小プリント。
右に「It's a small world」って書いた紙が貼ってあるのが見えると思う。で、その左側のレンズつきケースの中に入ってるホコリみたいな点、あそこにまったく同じものが印刷されているのだ。(左は大きさ比較のスマートフォン)
これ。世界地図の日本のへん。
これ。世界地図の日本のへん。
超精密な印刷が出来るインクジェットプリンタなのだそうだ。そんなの印刷しても見えないよ!と思ったら、人間が読むんじゃなくて電子基板を作るときに使うらしい。なるほど…!
砂金かな?と思った?
砂金かな、と思った?
比較用の被写体を入れ忘れたけど、ビンの底の直径は10円玉くらいのサイズかな。中に入っている砂金っぽいやつ、実は一粒一粒が全部、バネ。
顕微鏡越しにみるイカダモ…ではなく、極小バネ
顕微鏡越しにみるイカダモ…ではなく、極小バネ
もうこのくらいになると何に使うんだかすら想像もつかないんだけど、これもやっぱり「なんかすごい」。

小さいものが得意古い製品の展示も

さて、この展示の趣旨は単なるすごいもの自慢ではなくて、日本のものづくりの「歴史的・文化的背景を考える」というところにあるそうだ。そういうわけなので展示は最先端のものばかりじゃなくて、古いものもたくさん展示されている。
これは世界初の液晶つきポケット電卓
これは世界初の液晶つきポケット電卓
初代ウォークマンも
初代ウォークマンも
もっとさかのぼって明治時代の電球。こうしてみるとフィラメントがでかい!
もっとさかのぼって明治時代の電球。こうしてみるとフィラメントがでかい!
さらに古いもので、和菓子屋さんの見本帳(年代は書いてなかった)
さらに古いもので、和菓子屋さんの見本帳(年代は書いてなかった)
古いものから新しいものまで一緒にみてみると、日本のこういうすごい技術は最近になって始ったものじゃなくて、日本人って昔からこういうの好きだったんだな、と思う。「ものづくり」は「物好き」の行き着くところなんじゃないだろうか。
そして展示のエピローグ。展示を見て「へー」と思ったら、出口にあるブースで拍手をしてみよう。すると…
そして展示のエピローグ。展示をみて「へー」と思ったら、出口にあるブースで拍手をしてみよう。すると…
自分の写真が投影されて展示の一部に
自分の写真が投影されて展示の一部に
たぶん僕が画面のどこかにいますので、行った方は探してみてください。

「なんかすごい」感

こういう展示を見ると、僕は2種類の「すごい!」を感じる。
ひとつめの「すごい!」は、便利そうとか使ってみたいとか、そういう、言ってみれば自分との利害関係にかかわる感覚。
もうひとつは「鉄の純度が高くてなんかすごい!」「クワガタが小さくてなんかすごい!」みたいな、自分との関係度外視で、対象自体に感じる「なんかすごい」感。

僕は後者の感じが好きで、すごくエンタテインメントであると思う。そんな感覚を満喫できた展示だった。
超どうでもいい話ですが、イカ釣り機の展示台の中にメモ帳落とした
超どうでもいい話ですが、イカ釣り機の展示台の中にメモ帳落とした
マジックハンドで取ってもらいました。すいません…
マジックハンドで取ってもらいました。すいません…

「THE 世界一展」

科学未来館にて開催中
2013年12月7日(土)~2014年5月6日(火・祝)
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