特集 2013年12月25日

あえて魚を食べない築地うまいものめぐり

「築地といえば」という固定観念を否定します
「築地といえば」という固定観念を否定します
あえて魚を食べない築地うまいものめぐり
東京都中央区の築地市場。主に魚介類の取引においては、世界一の規模とも言われる市場だ。

10年ほど前から築地市場を見学する観光客が増え、それに伴いテレビや雑誌などのマスメディアで市場周辺の飲食店がクローズアップされる機会もふえた。

その場合、つねに「海鮮丼」や「寿司」といった、魚介類を使った料理ばかりが取り上げられることが多い。

たしかに、築地の魚はうまい。うまいけれどそれ以外にもおいしいものはいっぱいある。今回は、築地市場であえて魚介類を使わない料理を食べあるきしたい。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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まずは場外の人気ラーメン店へ

まだ夜も明け切らない午前5時30分、築地へ向かう。
築地場内はこの時間帯が、いちばん忙しい
築地場内はこの時間帯が、いちばん忙しい
場外の店舗は、この時間から開いている
場外の店舗は、この時間から開いている
築地には「場内」と「場外」というエリアの区分がある。「場内」とは築地市場そのもののことで「場外」とは築地市場に隣接した商店街のエリアをさしていう。

最初に向かったのはその場外の「もんぜき通り」にあるラーメン店「井上」。

もんぜき通りにあるラーメン店ではいちばん有名な店だ。
もんぜき通りで一番人気のあるラーメン店
もんぜき通りで一番人気のあるラーメン店
アーケードになっている歩道で立ち食いするタイプのラーメン店だ
アーケードになっている歩道で立ち食いするタイプのラーメン店だ
このもんぜき通りは場外でも新大橋通りという大通りに面しているため、夜が明ける時刻になると観光客でごった返しはじめるのだが、この時間帯はまだ人通りも少ない。

井上は朝から昼まではいつもながい行列ができ、食べるのに結構待たなければならないのだが、明け方は待たずにすぐラーメンが出てくる。
チャーシューがたっぷり乗った「ラーメン」650円
チャーシューがたっぷり乗った「ラーメン」650円
スッキリしたスープが特徴の昭和系ラーメン。チャーシューも量が多く、満足度が高い。カイワレのピリッとしたアクセントも実にいい。

同行してくれた地主くんも、あまりのうまさにカメラがブレる
同行してくれた地主くんも、あまりのうまさにカメラがブレる
ラーメンのうまさもさることながら、じゃっかん車道にはみ出しぎみな飲食スペースなどのインパクトは大きい。

どこに行っても小ぎれいな東京の町にはめずらしい野趣あふれるラーメン店だ。井上に関しては、ラーメンのうまさを味わうとともに、この雰囲気もしっかりと楽しみたいところだ。
アーケードの下でラーメンをすする
アーケードの下でラーメンをすする
今後、さらにうまいものを食べることを見越して、同行してくれたデイリーポータルZライターの地主くんとともに1杯のラーメンを二人でわけて食べた。

この時点ではまだ余裕があった。あと4軒ぐらいは軽くはしごできるな。などとのんきに話をしていた。
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安心できるうまさのカレー

続いて訪れたのは場内の飲食店が集中する一画。「ふぢの」という中華料理店だ。ここはシュウマイがうまいのだが、しかし……。
あーっ!
あーっ!
エビが乗ってる!
エビが乗ってる!
しまった! ふぢののシュウマイ、エビがのっかってた。 あえて魚介類は食べない。という今回のルールに抵触してしまった。

これは仕方がないので予定変更し、近くの「中栄」のカレーを食べることにした。中栄は大正元年創業の老舗カレー店だ。
インド人風キャラクターがキュート
インド人風キャラクターがキュート
それぞれ、インドカレーとビーフカレーを注文
それぞれ、インドカレーとビーフカレーを注文
500円ならば大した量でもないだろうと、思わず二人してそれぞれ印度カレー、ビーフカレーを注文した。いや、してしまったといった方がいいかもしれない。

出てきたブツをみて驚いた。
はい、ズドーン。湯気でカメラのレンズも曇る
はい、ズドーン。湯気でカメラのレンズも曇る
量が、多い。

店としてはこれ一皿で満足できる量を出してるわけだから、すでにラーメンを半分食べてきているとか、これから何軒か食べに行こうと思ってるといったような、こちらの事情なんて知ったこっちゃないから容赦がない。

そして悲しいことに、このカレーがしっかりうまい。

奇をてらったカレーではないのだが。伝統的で安心できるうまさのカレーだ。
みんなこうやって食べている
みんなこうやって食べている
中栄のカレーは、細く千切りされたキャベツをカレーに絡めつつ食べるひとが多い。キャベツのシャキシャキとした食感がカレーに意外とあうのだ。
安心できるうまさのカレー
安心できるうまさのカレー

かなり限界に近づいてきた

けっこうお腹いっぱい
けっこうお腹いっぱい
ラーメン半分とカレーひと皿。すでに腹は張り気味なのだが、2軒だけでは食べあるきにはならない。

ここはインターバルとして、喫茶店で軽食をとることに。場内にある喫茶店「センリ軒」に向かった。

中栄と同じく、このセンリ軒も魚河岸が日本橋にあった大正時代からの老舗喫茶店だ。
隣の海鮮丼屋のきらびやかさに比べると地味な佇まい
隣の海鮮丼屋のきらびやかさに比べると地味な佇まい
若干煤けた感じの店内では、どうみても観光客ではないおっちゃんたちが、スポーツ紙片手に軽めの朝食を静かにとっている。

奥ではナンバープレートみたいなのがついた例の帽子をかぶったおっちゃんが持ち帰りのトーストを注文している。
遠慮してスープとヒレカツサンドを一つづつ注文
遠慮してスープとヒレカツサンドを一つづつ注文
あまりたくさんは食べられないので、半熟卵入りクリームシチューと、ヒレカツサンドをひとつづつ注文。
半熟卵入りクリームシチュー(550円)
半熟卵入りクリームシチュー(550円)
クリームシチューに半熟卵という取り合わせは、病人に精をつけさせる食べ物のようでもある。半熟卵を少しづつ崩しながらクリームシチューと合わせて食べるとうまい。
ヒレカツサンド(600円)
ヒレカツサンド(600円)
まい泉のかつサンドと違い、センリ軒のヒレカツサンドは表面が軽く焼いてあるので、サク、ふわ、サク、じゅわという複雑な食感が面白くてうまい。
地主くんは、いちいち飛び上がって「うまい」という
地主くんは、いちいち飛び上がって「うまい」という
なんとかシチューとヒレカツサンドを平らげた我々は、すでにお互い無口になっていた。

もちろん、ヒレカツサンドもシチューもうまかったのだが、いかんせん胃袋の容量が限界に近くなってきている。

毎月一回はスィーツを食べ放題しているという地主君でさえ「もう1軒が限界かも」というレベルだ。
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気力でもう1軒行く

次に向かったのは築地場内の「鳥藤(とりとう)」だ。
すでにこの時間で満席、ぼくの胃も満席に近い
すでにこの時間で満席、ぼくの胃も満席に近い
鳥藤はもともと鶏肉の卸問屋だったのだが、10年ほど前に築地場外に鶏肉料理専門の店舗を出店。その後、築地場内にも進出したという比較的新しい店だ。
マスコミに紹介されるときは「塩親子丼」が取り上げられることが多いが、今回ぼくはぼんじり丼、地主くんは鳥めしを頼んだ。
場内限定の「鳥めし」(700円)
場内限定の「鳥めし」(700円)
地主君の頼んだ鳥めしは、少し味付けが濃い目のやわらかい鶏肉がご飯に合っていて実にうまい。うまいのだが、量はたっぷりある。当初「うまい!」とかいってパクパク食べていた地主くんも、半分まで食べた時点で「正直つらい」とこぼしはじめ、だんだん目から精気がぬけてきはじめた。
精気が抜けた目をしている
精気が抜けた目をしている
しかし「写真撮るよ」と声をかけるとこの笑顔である。
正直若干イラッとしてしまう
正直若干イラッとしてしまう
ところでぼくの頼んだぼんじり丼はこちらだ。
ぼんじり丼(680円)
ぼんじり丼(680円)
ぼんじりとは尻尾の周りの肉で、ちょっと脂分が多い場所でもある。半熟卵を切り崩しながらぼんじりにからめつつ食べると油っぽさがまろやかになってうまい。紅しょうがのアクセントもよい。

しかし、すでにラーメン、カレー、シチュー、カツサンドと朝飯とは思えないボリュームの食事を経てきた我々にとって「気楽なうまいものめぐり」という次元ではなく、量との戦いにシフトしてきた。

鳥藤の丼をそれぞれ食べきったあと、どちらからいうこともなく、いったん家に帰って休もうという話になった。
これ以上食べると口からいろいろ出そうです!
これ以上食べると口からいろいろ出そうです!
わかった、家に帰って休んでから最後の1軒に行こう。

最後の砦、和風スパゲッティ

家で3時間ほど休憩し、腹を落ち着かせたあと、最後の目的地「フォーシーズン」に向かった。

ビルの2階にある
ビルの2階にある
この店は、築地場外市場のどまんなかにあるビルの2階にある喫茶店だ。

喫茶店というものの、軽食のたぐいは充実しており、焼きスパなどのちょっと変わったメニューも多い。

その中でもぼくが特におすすめしたいのが和風スパゲッティだ。とにかく写真を見ていただきたい。
大葉がモッサー!
大葉がモッサー!
見た目のインパクトがすごい。ボキャブラ天国で言ったらバカパクに貼られちゃうタイプのダジャレだ。

これでもかというほどの大葉。しかし、この大葉が実にさわやかでうまいのだ。
中身は醤油味のスパゲッティ
中身は醤油味のスパゲッティ
うまい!
うまい!
醤油味のパスタに、大量の大葉とその下の刻み海苔の風味がうまく組み合わさって、味に立体的な奥行きが生まれている。
自分でも何を言ってるのかよくわからないけれど、つまりはうまいということである。
うまさの表現に「立体的な奥行き」ってフレーズを使ってみたかっただけでした!
うまさの表現に「立体的な奥行き」ってフレーズを使ってみたかっただけでした!

以上、あえて魚介類を避けて築地のうまいものを食べ歩いてみた

築地は舌の超えた食のプロがあつまる土地柄ゆえ、魚介類に限らず、洋食や中華でもうまいものが多いのだ。

しかし心残りなのは、今回紹介したいと思っていた店の半分以下しか紹介できなかったことだ。本当はもっとあるのだが、胃袋の限界が先に来てしまった。

築地での食事は無理して食べあるきしない方がいいというのが、無理して食べあるきした我々からのアドバイスである。
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