特集 2014年1月21日

おいしい水のおいしさを見える化する

おいしさを見える化しました。
おいしさを見える化しました。
水の味を表現する言い方がいくつかある。

丸い、甘い、硬い、などなど。

僕は正直ひとつも言い当てられないので、悔しくて科学に頼ることにしました。

水のおいしさを見える化します。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:「世界一の朝食」を食べに行く

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

水の味がわからない

こういうことを書くとどんだけ味覚オンチだ、って思われそうで嫌なのだけれど、水の味の違いがさっぱりわからない。

「おいしい水」と言われる水をペットボトルで買うと、ほー、確かにうまいなー、とは思うんだけれど、家で水道の水を飲んでもうまいと思ってしまうから信用ならないのだ。
飲み比べるため、たくさんの水を買ってきました。
飲み比べるため、たくさんの水を買ってきました。
最近では水道の水をそのまま飲まないって人が増えているらしく、先日も何かの集まりで僕が家の蛇口から水そのまま飲んでます、って話をしたら「え!」って顔をされた。

その反応を見て逆に僕が「え!」って思った。なんでだ。水道の水、おいしいだろう。

というかそもそも味のない水においしいとかおいしくないとかあるのだろうか。

今回は「おいしい」とされるいろいろな水を飲み比べて違いを感じたい。感じた上で、そのおいしさを見える化したいと思います。

見える化その1:座標で表す

水のおいしさを見える化するため、まずは自分の感覚にしたがって味わった水を座標の上に置いていくことにした。
普通こういう分け方しないのかな。
普通こういう分け方しないのかな。
飲む。
飲む。
市販の水を飲み比べて、座標に並べていく。
ここぞと思ったところに置いていく。
ここぞと思ったところに置いていく。
いつもは違いなどわからない僕でもさすがに同時にいくつか飲み比べれば何か感じるんじゃないかと思うのだ。甘いとか丸いとか、一度でいいから通っぽいこと言ってみたい。

今回のラインナップはこちら。

南アルプスの天然水

ザ・おいしい水
ザ・おいしい水
どこにでも売られている一般的な水である。

水は他と味が比べられるよう、少しずつ口に含んでみる。評価は完全に主観です。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:おいしい

びっくりするほど書くことがない。だって水ってまあおいしいんだけれど、おいしいって言ってもステーキおいしいとか寿司おいしいとかの「おいしい」とは別だろう。休みの日に急に「や!おいしい水が飲みたいぞ!」って買に行ったりしないもの。

しかしまだ一種類目である、他も飲み比べてみよう。

東京水(東京の水道水)

水道水をわざわざボトルに詰めて売るとはこれいかに。
水道水をわざわざボトルに詰めて売るとはこれいかに。
おいしいと言われる東京の水道水である。このサイズで100円する。会社の手洗い場からも出ているのに、と思うと買うときモヤモヤした。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:おいしい

この評価、いるか?疑問を抱きつつ、感じた味を座標に落とし込んでいく。
これはどこかなー。
これはどこかなー。

奥多摩天然水

!
東京にはおいしい天然水も存在するらしい。その中の一つ、奥多摩の天然水。天然のカルシウムを多く含む水です、とボトルには書かれていた。500mlのペットボトルで130円はなかなかの金額である。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:おいしい

御蔵の源水

もう一つ、東京の天然水より。
もう一つ、東京の天然水より。
~御蔵島の湧水は、太古の原生林の奥深くをゆっくりと流れ、長い歳月を経て湧き出てきた軟水です~(ボトルの裏側より)

すごいスケールのでかいことが書いてある。ありがたみも加わり500mlで198円は今回のラインナップで最高値。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:おいしい

これはどうも高い=うまい、みたいな単純な話ではないかもしれないぞ。
すでにわかんなくなってきた。
すでにわかんなくなってきた。

パラディーゾナチュラルミネラルウォーター

ボトルがセクシー。
ボトルがセクシー。
何も知らずにスーパーで一番高い水を買ってきたら炭酸水だった。確かこのサイズ(330ml)で160円くらいした。

これまで飲んできた水たちが無味無臭だったのに対し、まあこれも水なので無味無臭なんだけど、それでも炭酸が入っているので刺激的ではある。その変化が今の僕には最高のうまみとして感じられた。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:すごいおいしい
硬さの判断はかなり悩みますね。
硬さの判断はかなり悩みますね。

い・ろ・は・す

ポピュラーな水代表。
ポピュラーな水代表。
ペットボトルがぺこぺこしている水、いろはす。僕は貧乏性なので普段コンビニとかではめったに水を買わないのだけれど、どうしても買うことになったらこれのミカンとかの味がついているやつを選ぶ。特に理由はないけど、おいしい気がするから。

味:特にない
におい:特にない
おいしさ:おいしい
…。
…。
結果。
結果。

【結果】違わない

炭酸の入った「パラディーゾ」が頭一つ分おいしかった以外、横一列である。どれもおいしい。硬さは、なんとなくこう感じた。

ちなみに水の他にも僕がおいしいと思う飲み物を参考までに追加してみた。
大好きなソルティライチである。
大好きなソルティライチである。
別格。
別格。
見える化どころかよけいに見えなくなった気もする。やはり水のおいしさは難しい。

しかしこれではあまりにあまりなので、次は科学的に「おいしい」を見極めたいと思います。
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見える化その2:科学的に判定する

案の定というか、飲み比べたところで水の味の違いはほとんどわからなかった。

そんな折、おいしい水検査セットというパッケージを見つけた。「おいしさを数値で見てみよう」と書かれている。これぞまさに見える化である、すばらしい。
説得力が詰まっている。
説得力が詰まっている。
中にはこういう試薬が入っています。
中にはこういう試薬が入っています。
検査方法は簡単。検査したい水を試薬の入ったチューブで吸い取るだけ。しばらくすると試薬が水のおいしさに反応して色を変える。
試薬の入ったチューブで。
試薬の入ったチューブで。
こうやって水を採取します。
こうやって水を採取します。
少し置くと数値によって色が変わる。
少し置くと数値によって色が変わる。
この試薬で先ほど座標化した時に試した水の残りを判定していく。ひとつずつ慎重に採取していくと、もう飲み物ではなく試料である。
エビアンの発色の良さに驚いた。高い硬度に反応しているようです。
エビアンの発色の良さに驚いた。高い硬度に反応しているようです。
結果でました。
結果でました。
「おいしい水検査セット」で測ることができるのは残留塩素と全硬度の二種類。水のおいしさを決める要因は他にもいろいろあるらしいのだけれど、代表的な味の差はこの二つが影響しているらしい。共に多い方が色が濃く出ている。かといって少ない方がうまい、と言い切れないのが難しいところだけれど。

わかりやすいよう、反応の差が特に大きかった硬度順に並べ替えてみた。
「硬い」順に並べ替えてみました。左に行くほど硬いです。
「硬い」順に並べ替えてみました。左に行くほど硬いです。
ひとつだけグラスに入っているのはうちの水道の水である。
まさかのおれんちの水道水が硬さ2位。
まさかのおれんちの水道水が硬さ2位。
うちの水、エビアンに準じる硬さである。そして残留塩素はピカイチ。
うちの水、エビアンに準じる硬さである。そして残留塩素はピカイチ。
これまで普通に飲んでいたうちの水道水だが、こうしてみると売られている水とずいぶん味が違うはずである。本当だろうか、ともう一度水道水を飲んでみたが、冷たくてやっぱりおいしかった。

あらためてひとつずつ反応した色を見ていこう。
いろはす以降、分類としては軟水といえる。
いろはす以降、分類としては軟水といえる。
この辺になってくるとかなり軟らかい。東京の天然水は軟水なのだ。
この辺になってくるとかなり軟らかい。東京の天然水は軟水なのだ。
ソルティライチはミネラルたっぷりなのでバリ硬かと思ったら一番低く出た。水じゃないので参考まで。
ソルティライチはミネラルたっぷりなのでバリ硬かと思ったら一番低く出た。水じゃないので参考まで。
残留塩素については我が家の水道がトップクラスであり、その他の水からはほとんど検出されなかった。まあそりゃそうだろう。東京水からもほとんど検出されなかったのは不思議だが。これについては少ない方がやっぱりうまいのだろう。
これでも基準値の範囲内である。ちなみに特に塩素っぽさを感じたことはありません。
これでも基準値の範囲内である。ちなみに特に塩素っぽさを感じたことはありません。
いろはすからもほんのかすかに検出。
いろはすからもほんのかすかに検出。
その他の水からはほとんど検出されず。
その他の水からはほとんど検出されず。
試薬を使った検査は他の水の影響がないよう、採取用のコップを毎回洗って拭いて乾かしてから使っている。それでももしかしたらうちの水道水に含まれる塩素が影響を与えていることがあるのかもしれない。あくまで簡易的な検査なのでそのあたりは寛容にお願いします。

とはいえ、これでなんとなく水のおいしさについての判断基準が見えてきた。僕がいつもおいしいおいしい言いながら飲んでいた水道水は、実はエビアンと同じくらい硬度があって、残留塩素も市販の水に比べて多かったのだ。南アルプスや東京の天然水はかなり軟水。御蔵島の水は高いだけあるのか一番の軟らかさをマークしていた。軟らかい水好きにはたまらないだろう。

やっぱり売られている水は水道水に比べておいしいのだ、きっと。

僕はこれからも水道水飲みますけど

ちなみに僕が感覚で乗せた座標と試薬による検査とを見比べてみると、硬度についてはエビアンしかあたっていなかった。おかしい。でも南アルプスと御蔵島の水はなんとなく軟らかい気がしたので、これを感じられただけで進歩ではある。

価格との兼ね合いもあるけど、バランスよくおいしいのは南アルプスの天然水なのかもしれないですね。硬いのが好きな人はエビアンか水道水をどうぞ。
やっぱりぜんぶうまい。
やっぱりぜんぶうまい。
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