ロマンの木曜日 2014年2月6日
 

日本で二番目に古い商店街の洋食屋の『なぜか?』の謎を解く

古い商店街の一角にある、気になるお店
古い商店街の一角にある、気になるお店
先日、東京・新御徒町にある『日本で二番目に古い商店街』、佐竹商店街に行きました。
その歴史ゆえの、最近はやりの「レトロ風」ではないリアルなレトロというか端的に言えばちょっと古ぼけた感じというか、まさに昔ながらの商店街といった風情がある、味わい深い素敵な商店街です。

そんな商店街で、ちょっと気になる洋食屋さんの謎に迫ってきました。
1980年北海道生まれ。 気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。

日本で二番目に古い商店街

「日本で二番目に古い」という、自信があるのか謙虚なのか微妙なラインのキャッチフレーズが特徴の商店街、佐竹商店街。
都営地下鉄大江戸線、つくばエクスプレスの新御徒町駅のすぐそばです。
佐竹商店街。
佐竹商店街。
江戸時代、このあたりに久保田藩(秋田藩)藩主・佐竹氏の江戸屋敷があったことが、その名の由来のようです。
アーケードに、こういうトリビアがいくつも掛かっている。
アーケードに、こういうトリビアがいくつも掛かっている。
「日本で二番目」と聞き、往年の特撮ドラマ『快傑ズバット』で主人公が敵に向かっていうセリフ、「ただし!その腕前、日本じゃあ二番目だ」を思い出しました。
じゃあ一番は?と問われたら、ズバットの場合は自分を指さしますが、佐竹商店街は一番として金沢の片町商店街を挙げています。
日本で初めて商店街として組合を作ったのが片町商店街で、佐竹商店街は片町に続き二番目に組合を作ったんだそうです。へー。

「なぜか?クロケット」

商店街自体おもしろいのですが、その中でも私がとりわけ気になったお店は『なぜか?クロケット』という洋食屋さん。
『なぜか?croquette』外観。
『なぜか?croquette』外観。
まず気になったのは、その店名。
croquetteはフランス語表記なのに「なぜか」は日本語なの?とか、「なぜか?」ってこっちが聞きたいよ!とか、まぁ細かいことですが、何か気にさせる雰囲気がありました。
そして、お店の作りも気になる。
正面は木の扉、横に窓があるものの曇りガラスで中の様子が全然見えません。
木の扉に曇りガラスが、昔のスナックとかバーのイメージ。
木の扉に曇りガラスが、昔のスナックとかバーのイメージ。
お肉屋さんのカウンターっぽい。
お肉屋さんのカウンターっぽい。
カキフライ始めたそうです。
カキフライ始めたそうです。
店名の『クロケット』はコロッケのことだし、正面の向かって右側に揚げ物の販売スペースらしきものがあるし、掲げられたメニューの内容から考えると、テイクアウトもしている揚げ物中心の洋食屋さんでしょうか。
ただ、ちょっと視線を上にやってみると、さらに気になる表示が。
2階?しゃぶしゃぶにすきやき?
2階?しゃぶしゃぶにすきやき?
2階への入口の雑居ビル感がすごい。
2階への入口の雑居ビル感がすごい。
洋食屋さんかと思いきや、しゃぶしゃぶやすきやきも作っていて、明らかに1階とつながっていない2階席も存在するらしい。
すごく興味をそそられます。が、このお店、すごく入りにくいです。
日頃一人で入るのは牛丼、ファーストフード、ドーナツ屋くらいという偏った食生活のせいかもしれませんが、こういう中の雰囲気が分からないお店は怖いんです。
頑固親父が出てくるか萌え系メイドが出てくるか、せめて入店前に把握しておきたいじゃないですか。怖い人にぼったくられるかもしれないし。

商店街を訪れる機会は何度かありつつも、『なぜか?クロケット』には入れないまま時が過ぎました。

客足が途絶えない人気店みたいです。

友人に、こんなお店があって…という話をすると意外と面白がってくれて、お店に同行してくれることになりました。
友人も店名に疑問を感じたようで、
「だって、クロケットってあれでしょ?イギリスの上流階級の人がやってるs球技。」
と言っていましたが、それはクリケット。
ということで、さっそくおじゃまします。
ということで、さっそくおじゃまします。
入ってみて驚いたのは、入りにくい雰囲気に古ぼけた(失礼)な外観にも関わらず、店内が満席だったこと。
カウンター6〜7席、4人掛けのテーブル席が2つあるだけのこじんまりした店内ですが、2〜30代から60代くらいまでの幅広い客層で、カウンターまでしっかりと埋まっていました。
私たちがお店にいる間も、何人かのお客さんが出ていっては新しくお客さんが入ってきて、常に客足が途絶えない感じで、結構な人気店のようです。
勝手に「変人店主のさびれた洋食屋」みたいなお店を想像していましたが、なめててすみませんでした。
カウンターにぎっしり貼られたメニュー。
カウンターにぎっしり貼られたメニュー。
「おかあさん」と呼びたくなるようなご婦人二人が手際よく作業していて、主にキッチンで調理をする方と主に接客をする方とに分かれているようでした。
価格もご飯・味噌汁・お新香付きで680〜1,000円くらいと、お手頃価格です。
揚げ物のバリエーションは豊富だし、それ以外にもハンバーグやしょうが焼き、カレーもあって、目移りしてしまいます。
せっかくなので、『本日のサービスランチ』の中から選ぼうかと思ったら、隣に座っていた常連らしきお客さんが
「『本日の』って書いてるけど、毎日同じだよ」
と言っていました。へー、そうなんですねぇ。

それと、この日は29日で、ドアに「9の日ランチサービス」という貼り紙があったのですが、9の日ってなんだと思います?
ニク(29)の日から「9」を取ったんじゃない?とか、いやいや、それなら29日のサービスにすればいいだろうとか、友人との間で議論を戦わせていたのですが、これについても常連らしき人のスペシャルヒントがありました。
もともとそんなに高くないのにさらに100円引きになる9の日サービスランチ。
もともとそんなに高くないのにさらに100円引きになる9の日サービスランチ。
いわく、
「9はクロケットだからキュウなんだよ」

そうなんだ!とすっかり謎が解けた気分で、聞き返したりお店のおかあさんに確認したりしなかったのですが、今原稿を書きながら「クロケットだからキュウ」は『ク』ロケットで9ということなのか、cro『q』uetteから9なのか、という疑問が渦巻いています。
次行くときに確認してきます。

フライが、普通に、すごく美味しい。

豊富なメニューから、友人は店名を冠した「クロケット定食」、私はアジフライ+コロッケ定食をオーダー。
注文してから揚げてくれるので10分ほど待ちますが、店内に漂う油の匂いやじゅわーというフライを揚げる音にわくわくしながら「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」を見ていたらあっという間です。本日のゲストは俳優の六角精児さんでした。
あっという間にやってきたアジコロ定食。680円。
あっという間にやってきたアジコロ定食。680円。
アジフライというと、普通は開きか三枚おろしで作られた、薄めでカリっとしたフライだと思うのですが、こちらのアジフライはまるまるとしてジューシーでした。
カリっとしたのもいいけど、肉厚なアジフライも美味しかったです。
カリっとしたのもいいけど、肉厚なアジフライも美味しかったです。
また、クロケット定食は一口カツ、コロッケ、メンチカツという揚げ物界の三大ヒーローが一皿に集まった、揚げ物好きの妄想が具現化したような定食です。
写真撮らせてと頼んだけど、早々にカツに箸を伸ばしてました。クロケット定食800円。
写真撮らせてと頼んだけど、早々にカツに箸を伸ばしてました。クロケット定食800円。
変わった味付けだとか奇抜な演出があるわけではないのですが、どれもごく普通で、すごく美味しいフライでした。
揚げたてを出してくれるので、衣はサクサクというよりもザックザクといった感じのカリカリ具合で、中の具材も奇をてらったところがなくて素直に美味しいです。
特に印象深いのがコロッケです。
普通のじゃがいものコロッケだけど口当たりがとてもなめらかで、すごく美味しかったです。日頃家で食べているコロッケと同じ材料ですが、何か違います。さすが店名がクロケットだけのことはある。
そして、「何か」としか言えない語彙の貧困さが恨めしい。
コロッケ。ソースかけすぎたけど美味しかったです。
コロッケ。ソースかけすぎたけど美味しかったです。
この味で、ボリュームもあって、お値段もリーズナブル(さらに今日は100円引き!)となれば、これは人気があるのもうなずけます。
変なお店かと思っていたら、普通に美味しいお店のレポートになってしまいました。

で、「なぜか?」って何?

ここで終わるのも何ですので、最後にお店のおかあさんにお話を聞いてみました。
調理を担当されていた方がご店主のようです。

--すぐ満席になっちゃいますけど、2階席はないんですか?
「あ、2階席は、今エアコンが壊れてるから開けてないのよ。ごめんなさいね」

確かに、ご婦人ふたりでまわしているお店で2階席まであったら大変ですし、2階席を開けていないことには納得です。
ただ、理由が『エアコンが壊れてる』というのは少々意外でした。
扉は開いてるけど、オープンしてない2階席への階段。
扉は開いてるけど、オープンしてない2階席への階段。
--2階席が開いてないということは、しゃぶしゃぶとかすきやきは今やってないんですか?
ランチが良い感じだったら、しゃぶしゃぶも食べてみたいと思ってました。
ランチが良い感じだったら、しゃぶしゃぶも食べてみたいと思ってました。
「今はランチの営業だけ。夜までやるのは大変だし」
--そういえば、入り口の横に持ち帰り販売っぽいカウンターがありますけど。
「前はやってたんだけど、今は人もいないしやめちゃった。」
--そうなんですか。確かにお二人だと大変そうですね。
人波が途切れたところでソース補充する接客担当のおかあさん。
人波が途切れたところでソース補充する接客担当のおかあさん。
--ああいうカウンターがあるということは、もともとはお肉屋さんだったんですか?
「そう。肉屋の惣菜といえばコロッケでしょう?だから、店名にも『クロケット』って付けたの。コロッケっていう意味」
--その店名なんですけど、『クロケット』の意味は分かるんですが、『なぜか?』は何なんですか?
「『なぜか?』は、子供が付けたのよ。」
--お子さんが?
「最初は『クロケット』だけだったんだけどね。以前はしゃぶしゃぶもやってたから、子供に『何でうちはしゃぶしゃぶ屋なのにコロッケなんだ』って言われて。それで、あとから『なぜか?』を付けたの」
--へぇ!お子さんの素朴な疑問がそんなことに!
言われてみると、フォントの感じが全然違うし後付けっぽいかもしれない。
言われてみると、フォントの感じが全然違うし後付けっぽいかもしれない。
ここまではよかったのですが、このお店のことをインターネットの記事として載せてもいいですか?と質問したところ、意外なお話を聞いてしまいました。

「載せてくれるのはいいんだけど、うち、閉店しちゃうからねぇ」

おかあさんは現在78歳とそこそこご高齢で、お子さんがべつのお仕事をされていることもあり、お店を続けていくのも大変になってきたということで、近々お店を閉めることを決めているそうです。
「いつですか?!」と聞いてみましたが、そう遠くないうちに、ということでしたので、少しでも気になった方は、なるべく早めにお店に行ってみてください。
そして、ご家庭のとは何か違うコロッケを是非お試しください!

名前と見た目に反して、普通にいいお店でした

イロモノ的なお店なのかと疑いつつ入ってみたら、揚げ物がすごく美味しい普通にいいお店でした。
いい出会いができたと思ったのにすでにお別れが決まっているだなんて、さよならだけが人生だ、という言葉が深く心に突き刺さります。

ただ、『なぜか?』の謎は解けましたが、「9の日」の謎と何であんなに入りにくい外観なのかという点について聞くのを忘れていたので、これらの謎を解くためにも、閉店までに、またうかがってみようと思います。
おかあさんに「こんなおばさん撮らないでー」と言われたので、代わりに店内にあったサインを撮ってきました。誰のサインだろう。
おかあさんに「こんなおばさん撮らないでー」と言われたので、代わりに店内にあったサインを撮ってきました。誰のサインだろう。
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