特集 2014年2月21日

レストラン街のゴージャス物体を探せ!

デパートのレストラン街のエスカレーター前にこういうものあるよね!って話です
デパートのレストラン街のエスカレーター前にこういうものあるよね!って話です
先日ひさしぶりにデパートのレストランで食事をした。

そこで気づいた。こういうレストランフロアって、真ん中がぽっかりあいてて、そこになぜかゴージャスな感じの物体が置かれてるよな!って。

何のことやらわからないと思います。説明します。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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ゴージャスの時代

説明もなにも、上のイラストのようなものなのだが(稚拙な絵で申し訳ない。パース狂ってるし)。これで「ああ、あれね」って分かってはいただけないだろうか。だめか。

ほら、あるじゃない。こう、最上階でエレベーターあるいはエスカレーター降りると(たいていレストラン街って最上階だよね)、その前の空間がなんだかぽっかりと空いていて、そこにオブジェやらベンチやらがどーんと置いてある、あれ。

あれを愛でたい。探して回ろう。
デパート銀座といえば、銀座だ。ここなら効率よくレストラン街巡りができる。
デパート銀座といえば、銀座だ。ここなら効率よくレストラン街巡りができる。
まずはニューメルサ。日本で最初に「ビル内に専門店街を作る」というコンセプトで始まった、名鉄による商業施設「メルサ」の銀座における拠点。1977年開業。そしてこれは「かわいいビル」だ!
まずはニューメルサ。日本で最初に「ビル内に専門店街を作る」というコンセプトで始まった、名鉄による商業施設「メルサ」の銀座における拠点。1977年開業。そしてこれは「かわいいビル」だ!
まずはニューメルサ。日本で最初に「ビル内に専門店街を作る」というコンセプトで始まった、名鉄による商業施設「メルサ」の銀座における拠点。1977年開業。そしてこれは「かわいいビル」だ!
「建て書き」を見るとその実態はかなり渋いビル名。
建て書き」を見るとその実態はかなり渋いビル名。
まずは銀座の「ニューメルサ」。三越や高島屋といった周辺にある商業施設に比較すると文字通りニューなビルだが、それでも1977年生まれ。『「ニュー」のつく時代』にも登場したニュー物件のマスターピースである。期待ができる。
なんとなく期待できる雰囲気のエントランス。
なんとなく期待できる雰囲気のエントランス。
なぜこれが期待できるのかというと、ニューメルサは真新しいビルではないからだ。

ぼくのみるところ、70年代で「ゴージャス」の時代は終わった(参考→「あのハトヤに行ってみた」)。だからある程度歴史あるビルのレストラン街にしかゴージャス物件はないはず。そういうことなのだ。

すばらしいゴージャス物体

で、予想に違わずニューメルサにはあった!
理想通りのゴージャス物体。すてき!
理想通りのゴージャス物体。すてき!
どうだろう。この絵に描いたような「レストラン街ゴージャス物体」は!

絵に描いたような、というか絵に描いてるんだけど。いや、実在しますよほんとに。

この物体に対する理解と興味は、なかなかご理解いただけないと思うので、より解説性を重視したイラストでお送りする次第。ぼくも学生時代多少建築の手ほどきを受けた人間。スケッチぐらい描ける!(とはいえ、かなりてきとうです。すまん)

この物体のなにが魅力かというと、それはもう上のスケッチに描き込んでしまっているのだが、つまりこの「謎の存在感」にぐっとくるのだ。

素材は大理石。いちおう機能的にはベンチなのだが彫刻的なオブジェ感がすごい。真ん中には謎の造花。そしてエスカレーター前のぽっかりとした空間に置かれているさま。
ひとつ下の階もレストラン街で、そこにもちゃんとあった!しかもちょっとだけデザインが異なるバージョン。うれしい。
ひとつ下の階もレストラン街で、そこにもちゃんとあった!しかもちょっとだけデザインが異なるバージョン。うれしい。
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なぜレストラン街にぽっかり空間があるのか

銀座・ニューメルサの入り口にあったフロアガイドより。みるからにぽっかりと空いている。
銀座・ニューメルサの入り口にあったフロアガイドより。みるからにぽっかりと空いている。
思うに、ゴージャス物体が置かれるのは、そういうものがないとなんか寂しくなっちゃうからだ。

じゃあなんでそういうものが必要になるぽっかりとした空間があるのか。考えてみた。以下はぼくの推測だ。
日本橋三越本店のフロアガイドより。レストラン階を普通の売り場階と比較すると、その特殊性が見えてくる。
日本橋三越本店のフロアガイドより。レストラン階を普通の売り場階と比較すると、その特殊性が見えてくる。
エスカレーター前のぽっかり空間はレストランフロアに特有だ。それはおそらく、厨房施設をフロアの真ん中に置くことができないからだ。

ガスや換気装置、給配水などの設備はビルの外周にしか置くことができないのではないか。結果として、フロアの真ん中が空いてしまう。

エスカレーターの前にある、というのはエスカレーターが導線上フロアの真ん中に置かれるので、結果的にそうなる。

たぶんそういうことだろうと思う。

こうなるとおのずと店舗数が少なくなる。おそらく単位面積当たりの売り上げというものが重要になるだろうから、そうすると高級料理店じゃないとデパートのビルには入れない。

以前からなんでデパートのレストランは高いんだろう?と思っていたけれどそういうことか(って、ぜんぶただの推測なんですが)。

とはいえなかなかゴージャス物体がない

銀座三越のフロアガイドより。まさにぽっかり!広大なぽっかり!
銀座三越のフロアガイドより。まさにぽっかり!広大なぽっかり!
ニューメルサのゴージャス物体ぶりにすっかり良い気分になったぼくだが、すぐに難航する。

これ以降なかなかゴージャス物体がみつからなかったのだ。

ぽっかり空間自体はいろいろなデパートにあった。たとえば上のフロアガイド。名門銀座三越のレストラン街だ。セオリー通りにかなり広大なぽっかり空間があるものの…
絶好のゴージャス日和であるのにもかかわらず、そつなく手堅くまとめてきた。
絶好のゴージャス日和であるのにもかかわらず、そつなく手堅くまとめてきた。
下のレストランフロアも、もったいないことを。
下のレストランフロアも、もったいないことを。
ご覧の通り、ふつうに良い雰囲気なのだ。でもゴージャスほしかった。 良い雰囲気で文句を言う人間はぼくぐらいのものだと思う。

その歴史をさかのぼれば延宝元年にまでさかのぼる三越。しかしこのレストランフロアが入っている東館はついさきごろ2010年にできたばかり。やはりこの年代にゴージャスを求めるのは無理だったか。

こう、どーんと大理石で迫ってきていただきたかった。
銀座松屋は、なんとぽっかり空間を壁で囲って、ユーティリティースペースとしているようだった。フロアガイドを見ても、謎のエリアになっている。
銀座松屋は、なんとぽっかり空間を壁で囲って、ユーティリティースペースとしているようだった。フロアガイドを見ても、謎のエリアになっている。
ところでその松屋の1階入り口って、横が完全にあいているのに一部扉がついてて、なんのために?っていつも思う。
ところでその松屋の1階入り口って、横が完全にあいているのに一部扉がついてて、なんのために?っていつも思う。
マロニエゲートは敷地の制約上、そもそも店舗が全て壁際に置かれているため、ぽっかり空間が存在しなかった!
マロニエゲートは敷地の制約上、そもそも店舗が全て壁際に置かれているため、ぽっかり空間が存在しなかった!
気を取り直して銀座プランタンに行くも…
気を取り直して銀座プランタンに行くも…
なんとレストランフロアが存在しなかった!
なんとレストランフロアが存在しなかった!
時刻もまさに夕食時。空腹と、ゴージャス物体が見つからない焦りとで、じりじりしてきた銀座の夜。
2007年開業と、こちらも新しい有楽町イトシア。ゴージャスとは無縁だろうとあまり期待していなかったが、なんとぽっかりすらしていなかった!
2007年開業と、こちらも新しい有楽町イトシア。ゴージャスとは無縁だろうとあまり期待していなかったが、なんとぽっかりすらしていなかった!
上のイトシアのレストランフロアにもゴージャス物体はなかったのだが、そもそもぽっかり空間がなかった。いいのか!可能なのか?と思って見てみるとスイーツ店や輸入菓子店など厨房を必要としない店がくだんの場所に並んでいるではないか。なるほどー。きっと今後はこういう場所を無駄にしないレイアウトが主流になっていくのだろうなー。

いや、感心している場合ではない。なんとしてももうひとつぐらいゴージャス物体を見たい。
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日本橋へ

こちらも新しい(2004年開業)「COREDO 日本橋」。あまり期待せずに行った。
こちらも新しい(2004年開業)「COREDO 日本橋」。あまり期待せずに行った。
銀座に見切りをつけ(銀座コアなども見てみたがだめだった)、日本橋へ。そろそろどうにかしないと腹ぺこだ。

まずはいちおう「COREDO 日本橋」へ。この物件は、このエリアでは2000年代に入ってから初めての大規模な再開発として、その後今に至る再開発ブームのきっかけともなったという、まさに今どき新参ものなだけに、「ゴージャス」など期待できなかった。

そもそもこのビル、下は商業施設だが、高層部は賃貸オフィスといういわゆる複合ビルで、純粋デパートでもないのだ。地下は日本橋駅コンコースにつながってるしー。

とまあ、ぜんぜん期待していなかったのだが、レストランフロアに行ってみてびっくり!
そもそもフロアがなかった!
そもそもフロアがなかった!
どうせ店を入れることができないのなら吹き抜けてしまえ、ということか。最強のぽっかり空間といえばその通りだが、もちろんぼくが求めているぽっかりはこういうことではない。

イトシアといい、やはり最近のレストランフロアはいろいろ考えているなあ。

いやだから感心している場合ではない。

でもだいじょうぶ。この先に日本を代表する老舗百貨店が2つ待ち構えているではないか。
そう、日本橋高島屋!
そう、日本橋高島屋!
その創業1831年という老舗中の老舗。現在の建築は1933年完成。百貨店建築としては初の重要文化財指定を受けている。もはやゴージャスと言うのもはばかられるぐらいの格式だ。さて、レストランフロアに向かってみよう。
おっと!最上階ではなくて地下か!これはちょっとまずいか?
おっと!最上階ではなくて地下か!これはちょっとまずいか?
まず、地下っていうケースもあるのか!とびっくりした。食料品フロアではなく、あくまでレストランフロアが地下。これはめずらしい。

めずらしいけど、ぼくの「設備を壁際にしか置けないから」という仮説でいくと、地下だとぽっかりしない可能性もある。

さてどうなっているか…?
惜しい。実に惜しい。
惜しい。実に惜しい。
惜しかった。空間は良い感じだった。ちゃんとぽっかりしてた。

ただ、置かれている什器はぜんぜんゴージャスじゃない。たしかにいいものだったが。

あとソフトクリームのあれはよかった。あれはいいものだ。

ともあれここ、おそらく昔はゴージャスなものが置かれていたのではないか。そんな雰囲気だった。もっとはやくに見ておくべきだったかもしれない。

逆に言うと、もしかしたら冒頭のニューメルサのゴージャス物体も、撤去される可能性があるということか。だとしたらその時はぼくにくださいあの物体。

最後、あとひとつだけ

さて、もうひとつの日本橋の老舗百貨店はもちろん日本橋三越だ。
ただ、時間切れで新館の方しか訪れることができなかった。
ただ、時間切れで新館の方しか訪れることができなかった。
前出の「レストランフロアがなぜぽっかりするか」の説明ですでにここにはぽっかりがあることはわかっている。さて、その実態は?
おお!良い感じだ!樹がすごい!
おお!良い感じだ!樹がすごい!
うん、わるくない!なかなかのもの。

正直、ベンチはモダンな雰囲気で「ゴージャス」ではないが、あきらかにかなりお金をかけて手入れをしている生の樹木が数本植えてあるのは迫力があった。

まあ、ニューメルサの造花もいいんだけどね。っていうかぼくの本当の好みからいうと造花の方がぐっとくるけど。

ともあれ「レストラン街特有のぽっかり空間をなんとか埋めよう」という気概のレベルの高さは充分満足のいくものであった。

ゴージャス物体情報お待ちしております

今回は銀座~日本橋だけだったが、今後他の街のデパートも見てみようと思う。いいゴージャス物体を見つけた方は、ぜひご一報ください。

【告知】2014年2月28日(金)イベント『団地団』やります

脚本家・小説家・漫画家とともにしゃべり倒す「団地団」。またトークイベントを行います。今回ぼくからは「あだち去」と「なぜ魔美ちゃんはハダカなのか」の話をする予定。

イベントの詳しい情報は→こちら
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