ちしきの金曜日 2014年4月4日
 

日比谷線に乗って炭鉱へ行く感じ〜池島すてき!〜

ここは未来の団地なんじゃないか

なんで本土と違って団地が残ってるのかというと、それはもうここにほとんど人が住んでいないからだ。つまり、住民のための建て替えを行う必要がない。

これって、今はめずらしいことだけど、今後ほかの団地でも起こることなのではないか。つまり未来の団地だこれは!と思ってはっとしたわけだ。

いわゆる限界集落と呼ばれるような場所ではすでに現実のことになっているのだろうけど、池島の場合はほぼ「炭鉱という単機能の離島」という箱庭のような場所なだけにこの未来的状況が際立つ。

今後池島をどうするかは、今後日本の地方都市の街をどうするか、という実験と言える。ぼくが冒頭で「この島を廃虚ととらえるべきではない」と書いたのはそういうことだ。

お、なんかぼく良いこと言ってないか?そうでもないか?そうでもないか。

あと、ここの団地の「由緒正しい高度経済成長期っぷり」を実感したのは、池島の谷間にある集落を見たときだ。
島の中央北側の一角に、絵に描いたような谷戸地形があり、そこにだけ団地じゃない家屋があった。
島の中央北側の一角に、絵に描いたような谷戸地形があり、そこにだけ団地じゃない家屋があった。
小さな、まるで絵本に出てきそうな「ザ・谷」っていう感じの地形の底に集落があった。島の中でここだけ雰囲気が違って、不思議な感じ。地形的に隔絶されているのもさることながら、ここだけ団地じゃないのだ。

きけば、ここは炭鉱開発される以前からの集落だという。ずっと昔から漁業と農業をここで営んできた人たちがいた。
降りてみた。いきなり炭鉱じゃなくて、ふつうの島っぽい光景に。そして地形好きとしては足元のこのコンクリートが気になる。ははん、これは…
降りてみた。いきなり炭鉱じゃなくて、ふつうの島っぽい光景に。そして地形好きとしては足元のこのコンクリートが気になる。ははん、これは…
谷筋に沿って歩くと、ほらやっぱり!これは川の跡だ。暗渠好きにはたまらない。まさかここで魅力的な暗渠に出会うとは思わなかった。池島、つくづくすてきだ。
谷筋に沿って歩くと、ほらやっぱり!これは川の跡だ。暗渠好きにはたまらない。まさかここで魅力的な暗渠に出会うとは思わなかった。池島、つくづくすてきだ。
池島に観光に来た方は多いが、暗渠を愛でた人は今までいなかったのではないか。
地形図で見ると、こんな。島に降った雨が集まって海にそそいだ結果出来た谷、といったところだろうか。(国土地理院「基盤地図情報数値標高モデル」のデータを
地形図で見ると、こんな。島に降った雨が集まって海にそそいだ結果出来た谷、といったところだろうか。(国土地理院「基盤地図情報数値標高モデル」のデータを "Simple DEM Viewer" で表示・キャプチャ・加筆)
良い感じの路地と建築。この集落には、炭鉱開発後飲み屋や風俗店など繁華街が形成され、毎晩賑わったという。やはりそういう猥雑な部分は団地の外の古いエリアに形成されるのだね。おもしろい。
良い感じの路地と建築。この集落には、炭鉱開発後飲み屋や風俗店など繁華街が形成され、毎晩賑わったという。やはりそういう猥雑な部分は団地の外の古いエリアに形成されるのだね。おもしろい。
何が「由緒正しい高度経済成長期っぷり」かというと「昔からの集落が存在していたところに、高度経済成長期になって新しい産業と共に大規模な団地が山の上に一気に建つ」ってこれまさにニュータウン開発と同じじゃないか! ってことだ。典型的な集合住宅開発が地形の特徴と共に分かりやすく保存されている。ここは近代のミニチュアか。

「閉山した炭鉱」と聞けばだれもが「今は失われたかつての産業」を連想し、そこから歴史を語るが、実は過去の前に大過去があるのだ。さっき「ここは団地の未来だ」と書いたが、ここには近代化の時代を中心に、大過去から未来までが離島にパッケージされている。これは奇跡的なことだと思う。
前出の地形図でいちばん高い場所から見た団地群。(大きな画像はこちら)
前出の地形図でいちばん高い場所から見た団地群。(大きな画像はこちら
この歴史の流れと未来とが風景として残っているという点で、池島は軍艦島とは一線を画すと思う。繰り返しになるが、軍艦島はある一時点の廃虚だが、池島は廃虚ではないのだ。

よりロマンチックに考えてみれば、石炭というものそのものが超大過去の産物だ。日本で撮れる石炭はヨーロッパや中国のものと比べてとても新しいが、それでも数千万年前の樹木が地中で変化してできたもの。

前に「都市の密度を支えるには、後背に巨大な供給地が必要だ」と書いたが、それは地理的な規模だけでなく時間的なことも含んでいるのだ。

…おお!なんか今回の記事はやたら高尚じゃないか!?そうでもないか?
ちなみに池島いちばんの見どころはこの団地。ちょーーーーーかっこいい!これのプラモデル欲しい!(大きな画像はこちら)
ちなみに池島いちばんの見どころはこの団地。ちょーーーーーかっこいい!これのプラモデル欲しい!(大きな画像はこちら
この風景があらわれたとき、思わず「うおおお!」って声が出たよ。
この風景があらわれたとき、思わず「うおおお!」って声が出たよ。
1960年代初めのころの建築だそうです。設計者誰だろう。たぶんのりのりでデザインしたはず。かっこよすぎる!(大きな画像はこちら)
1960年代初めのころの建築だそうです。設計者誰だろう。たぶんのりのりでデザインしたはず。かっこよすぎる!(大きな画像はこちら

また近いうち行くぞ、池島!

個人的には完全に廃虚化している軍艦島はあまり好きではない。池島のほうがエキサイティングだと思う。この記事で書いたのがその理由だ。

ぼくは工場や団地を「すてき!」と言い張ってきた人間だが、それはこれらを廃虚にしたくないからだ。

廃虚とはその時代の風景に価値を見いだせなかった敗北の証明だと思っている。彼女に「別れよう」って言われてから優しくしても手遅れなのだ。つきあっているときから、それをふつうだと思わずに大事にしないと。って、何の話だっけ。

また近いうち行くぞ、池島!

個人的には完全に廃虚化している軍艦島はあまり好きではない。池島のほうがエキサイティングだと思う。この記事で書いたのがその理由だ。

ぼくは工場や団地を「すてき!」と言い張ってきた人間だが、それはこれらを廃虚にしたくないからだ。

廃虚とはその時代の風景に価値を見いだせなかった敗北の証明だと思っている。彼女に「別れよう」って言われてから優しくしても手遅れなのだ。つきあっているときから、それをふつうだと思わずに大事にしないと。って、何の話だっけ。
とはいえ、結局池島でも風景に価値を見出されることなくあっさりと構造物が解体中。なげかわしい。見に行くならお早めに!
とはいえ、結局池島でも風景に価値を見出されることなくあっさりと構造物が解体中。なげかわしい。見に行くならお早めに!

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