ロマンの木曜日 2014年7月3日
 

昆布の乾燥に嚥下の様子 〜素人が行く食品工学の世界

航空機の技術でコンブを乾かす?

まず最初に講演テーマ「乾燥現象の数値シミュレーションについて(コンブ・そば粉の乾燥を例として)」を発表されたのは岩手大学工学部機械システム工学科の船崎健一さん(「先生」と呼ぶには私の専門性が低すぎるのでここは「さん」づけにさせていただきたくお願いいたします!)。
主な研究テーマは、航空エンジン?!
主な研究テーマは、航空エンジン?!
講演内容をざっくりいうと、

航空機や人体の血流のシミュレーションが専門の岩手大学工学部のチームが、熱移動や気流のシミュレーション実績を生かし、震災以降競争力の強化が求められている三陸の漁業をバックアップすべくコンブやそば粉の乾燥を効率化させるためのシミュレーションを実施、効率を改善させた。

というもの。

すでにお分かりかと思うが、この講演の素人としての見どころは「飛行機やロケットのエンジンまわりのシミュレーションが、コンブの乾燥にいきるのか!」という部分につきる。
かっこいい!
かっこいい!
この研究のおかげでこれまで生産者が忙しいなかでなかなか工夫をこらすことが難しかった乾燥工程にかかる時間や燃料費もカットできたそうである。

船崎さんはシミュレーション用のデータを集めるためコンブ乾燥の現場をおとずれてまず「シミュレーションする前に気流の観点から体感的に効率が良くなさそうな部分が分かった」ともおっしゃっていた。

この、別の業界からスペシャリストを連れてきてその専門性が問題を解決するってほとんど「美味しんぼ」の世界である。
仕切り板の設置が有効と判明
仕切り板の設置が有効と判明
ちなみにシミュレーションにあたる実験の際には模擬昆布として水にひたしたキッチンペーパーを用いたそうだ。

模擬昆布!

ここにこなければ一生聞くことのできなかった言葉だ。正直、これが聞けただけで来てよかったと思った。

また「コンブを吊り下げた状態でのシミュレーションとなるとこれがまた難しい」というお話もあった。生産者が平置きではなく吊り下げて乾かすことだってあるだろう、あるんだろうな。

身近なことが本気で科学されているのだということがじわじわ伝わってくる。
「擬似昆布乾燥棚」、声に出して読みたい日本語である
「擬似昆布乾燥棚」、声に出して読みたい日本語である

ヨーグルトに混ぜるソースをどこから入れようか

ブルガリアヨーグルトでおなじみの株式会社明治からは技術開発研究所の神谷哲さんが登壇。

タイトルを「食品製造におけるコンピュータシミュレーションの活用事例 〜ブルガリアヨーグルトの攪拌・混合から生体における嚥下現象まで〜」とした講演が大盛況だった。
書いてあることは難しいのだが、ブルガリアヨーグルトたちが並ぶのがかわいくてなごむ
書いてあることは難しいのだが、ブルガリアヨーグルトたちが並ぶのがかわいくてなごむ
ざっくり言うと、テーマは2つ。

これまではメーカー単体で製造工程についてシミュレーションすることが難しかったのが技術革新で行えるようになってきており、その一例としてヨーグルトへの果肉ソースの効率的な混合方法をコンピュータシミュレーションによって可視化し導き出した。

また嚥下(食べ物の飲み込み)をシミュレーションするための装置を開発、噛み砕いたあとの食べ物がどのように飲み下されるかが分かってきた。


ということだった。
色が緑色になっている部分がヨーグルトとソースが「均一混合」されている状態
色が緑色になっている部分がヨーグルトとソースが「均一混合」されている状態
ヨーグルトへの果肉ソースの攪拌シミュレーションは、それによって壁面の穴から注入する現行のやり方ではなく、ノズルを真ん中まで入れて注入する方法がよく混ざるということが分かったらしい。

今後ブルガリアヨーグルトを食べる際はぜひ思い出してその均一な混ざりぶりを堪能したい。

誤嚥を防ぎたい、だから嚥下がいま熱い

2つめのテーマは食品の飲み込みである「嚥下」のシミュレーション。

食品業界で、いま嚥下は注目のトピックなのだそうだ。というのも、高齢者の死因に多い肺炎が誤嚥といって、誤って気道に食べ物入れてしまうことから起こることが多いそうなのだ。

誤嚥を防ぐには飲み込みやすい食品の開発が必要である。それで嚥下に注目が集まっているという。
スライドは難しいものもあったものの、お話は素人にも分かりやすい。「濡れ性」ってまた初めて聞く言葉
スライドは難しいものもあったものの、お話は素人にも分かりやすく進行された。「濡れ性」ってまた初めて聞く言葉
明治では、すでにブルガリアヨーグルトが介護の現場などで飲み込みやすいタイプの食品であることが分かっているため、その価値をさらに正確に検証したいということでこの研究に着手したということだった。
時間の経過ごとにどのように嚥下されているかが分かる
時間の経過ごとにどのように嚥下されているかが分かる
現在までに2人の人の喉のシミュレーション用モデルを2年をかけて開発している。

飲み込む際にどれだけ圧力と時間がかかっているか、食塊(また良い専門用語が出ましたぞ)がどのような形状になるかが分かるようになっているという。
世界初の3次元嚥下動態シミュレータ“Swallow Vision(R)”の画像。水がドバドバしていて、ヨーグルトはスルッといってる のが分かる
世界初の3次元嚥下動態シミュレータ“Swallow Vision(R)”の画像。水がドバドバしていて、ヨーグルトはスルッといってる のが分かる
その結果、飲み込みの際多くの飛まつを伴う水にくらべ、ひとかたまりになって飲み込まれゆくヨーグルトが誤嚥されにくいということが分かった。水って結構飲み込みにくいのだ。

ただし、のみこみやすさがイコールのどごしの「良さ」として官能的な評価できるかどうかはまだリンクさせられていないということだった(のみこみの速さについては、いわゆる「キレ」につながっているのではというお話もあった)。

飲み込む、という動作だけをこんなに長期にわたり研究し、そして注目を集めているということにはかなり目が開いた(カッ!)。
こちらも“Swallow Vision(R)”より。飲み込みを科学する表現に等高線が使われるとは
こちらも“Swallow Vision(R)”より。飲み込みを科学する表現に等高線が使われるとは
時間もお金もハンパなくかかる分野のようだが会場の興奮度も高く嚥下がこれからグイグイくるトピックであるということは私にも熱をもって伝わった。

今のうちに注目しておけば、近い将来自慢できるかもしれない。

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