フェティッシュの火曜日 2014年7月1日
 

生きた化石「カブトエビ」はあまりおいしくない

カブトガニではございません
カブトガニではございません
カブトエビという水棲生物がいる。名前の似ているカブトガニと同じく太古の昔からその姿を変えていない、いわゆる「生きた化石」である。

生きた化石と呼ばれるだけあって、これがなかなか古代感あふれるかっこいい生物なのだ。太古のロマンに会いに行ってきた。そして太古のロマンを食べてきた。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。
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姿を見せるのは年に1〜2か月

僕がこの生き物に出会うきっかけとなったのは小学生の時分に親に頼んで購読させてもらっていた学研の「科学」なる月刊誌だった。なんと付録教材として「卵」が添えられていたのだ。孵して飼えと言うのである。

生物の卵を雑誌の付録にと聞くとちょっといろいろ不安になる。だがこのカブトエビは「休眠卵」という長期の乾燥保存に耐える卵を産むのだ。そのおかげでふりかけのようにパウチに詰めて付録にだってできるというわけだ。実際、僕の場合も無事に孵化して楽しく飼うことができた。
カブトエビは初夏の田んぼにいる
カブトエビは初夏の田んぼにいる
乾燥に強い卵を産むというのは、水が干上がりがちな水域で繁殖するのに適応した特徴だ。本来は雨の多い時期にだけできる水たまりのような環境で大昔から細々と代を重ねてきたのだろう。しかし、今の時代には定期的に水が張り、そして干上がるカブトエビにうってつけの人工的な環境がたっぷりとある。水田である。

この生きた化石にまた会いたくなってしまったので6月下旬のある日、僕は関西地方のとある田園地帯へと足を運んだ。
田んぼにはカエルと
田んぼにはカエルと
その子供であるオタマジャクシがたくさん
その子供であるオタマジャクシがたくさん
水を湛えた田んぼをのぞき込むと、人影に驚いたオタマジャクシたちが散り散りに逃げていく。「エビ」っぽい影は見当たらないが、代わりに妙なオタマジャクシが目にとまった。
これもオタマジャクシ…?
これもオタマジャクシ…?
他のオタマジャクシのように一目散に逃げたりしないが、チョロチョロとせわしなく泳いでいる。いや、こいつオタマジャクシじゃないな。
カブトエビだった。ちなみにカブトエビは英語では「オタマジャクシエビ」の意である「タッドポール・シュリンプ」と呼ばれている。
カブトエビだった。ちなみにカブトエビは英語では「オタマジャクシエビ」の意である「タッドポール・シュリンプ」と呼ばれている。
大きな頭から尻尾が伸びたシルエットこそオタマジャクシに似ているが、よくよく見ると全く別の生物だ。いかにも古生物、あるいはSF映画に出てくる宇宙生物といった造形。これこそカブトエビである。
よく目を凝らすとかなりたくさんいる。
よく目を凝らすとかなりたくさんいる。
ちなみに日本にはそれぞれ原産地を異にするアジアカブトエビ、アメリカカブトエビ、ヨーロッパカブトエビの三種が分布している。関西地方にはアジアカブトエビとアメリカカブトエビが生息しているが、結局今回見つけたカブトエビがどちらの種であるかは判別がつかなかった。

格好いい上に可愛い

カブトエビの何がいいって見た目がいいのだ。抜群に格好良く、かつ相当に可愛い。だからわざわざ会いに来たのだ。田んぼで作業をしている農家の方に断り、そっと手に取ってまじまじ見てみよう。
大きな甲羅と二本の尻尾がかっこいい。
大きな甲羅と二本の尻尾がかっこいい。
さすが生きた化石と称されるだけのことはある。「はじめまして、デボン紀から来ましたカブトエビです」とか言われても違和感無い。ちなみに、エビと名は付くが実際はミジンコに近い原始的な甲殻類である。

内臓や脚を覆い隠す大きな甲羅のような殻とそこから伸びる細長い尻尾はカブトガニを連想させる。実際に並べて見比べると結構違うのだが…。
裏返すと苦手な方にはたまらない感じのビジュアル。
裏返すと苦手な方にはたまらない感じのビジュアル。
このカブトエビ、さほど俊敏ではないので捕まえるのはたやすい。だが、いざ水中から掬い上げるとビチビチとせわしなく動くので撮影が難しい。
横から見るととこんな感じ。
横から見るととこんな感じ。
と、彼らを愛でているうちに一つの欲求が湧き上がってきた。食欲と、味を知りたいという好奇心である。なんかクリスピーで美味しそうじゃない?生きた化石の味って興味湧かない?

農家の方に味見のためにいくらか採集させてもらえるようお願いすると「へー、別にいいけどこれ美味いんか!」とまさかの感嘆をいただく。いや、知らないっすけど…。
大きめの個体でこの程度のサイズ。飼うには手ごろだ。
大きめの個体でこの程度のサイズ。飼うには手ごろだ。
なお、カブトエビは水田に生えるウキクサなどの雑草を食べてくれるので、農家の方々には「田の草取り虫」と呼ばれて重宝されていることがある。許可を得たとしても、あまり大量には採っていかないようにしたい。大量に採ろうとする人なんていない気もするが。

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