ひらめきの月曜日 2014年7月21日
 

高温・有毒のオナラを浴びてきた

ダブルの刺激で敵を撃退!
ダブルの刺激で敵を撃退!
「ヘッピリムシ」と呼ばれる虫がいる。漢字で書くと屁っぴり虫。ヘップリムシとも言う。かっこよく言うと屁こきBUG。読んで字のごとく、外敵に襲われると悪臭を伴うガスをオナラのように噴き出す虫たちの俗称である。

そして、その中にとびきり凄まじい屁をヒる猛者がいる。奴の名は「ミイデラゴミムシ」。キング・オブ・ヘッピリムシだ。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。

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嗅ぎたい!浴びたい!

このミイデラゴミムシは昆虫図鑑や生物の雑学に関する本、テレビ番組などでしばしば紹介される。オナラと言うのはそれだけキャッチ―な要素なのだ。僕も幼いころから写真で、図解で、映像で彼の放屁を何度も見てきている。

で、今回は実際に野外でミイデラゴミムシを探し出し、オナラをこの身に喰らってその悪臭と高熱がいかほどのものであるかを知ろうと思い立ったのだ。
ミイデラゴミムシを探すなら、狙い目は川のそばや田園地帯などがオススメ。
ミイデラゴミムシを探すなら、狙い目は川のそばや田園地帯などがオススメ。
ところで、ミイデラゴミムシにはヒートオナラ以外にもう一つ特筆すべき特徴がある。彼らの幼虫は湿潤な泥中に棲むケラという昆虫の卵しか食べないのだ。偏食家もいいところである。

つまり、ミイデラゴミムシの生息にはケラの存在が必須であり、ケラのいない場所には彼らも絶対にいないということ。

よってミイデラゴミムシを効率よく探すには、ケラが特に好んで生息する水田や川原といった水辺を目指すことになる。
夜間に路上や側溝を見て回る。
夜間に路上や側溝を見て回る。
めぼしい水辺を見つけたら、ただただ足元を見ながら練り歩く。ただし、ミイデラゴミムシは夜行性なので探索は夜間に限る。

餌を求めてひたすら地面を徘徊しているので、落とし穴式のトラップも有効だろう。だが、今回はそんなものに頼るまでもなかった。
おお、こいつこそ!
おお、こいつこそ!
土の上をうろちょろしている虫が小さな虫が目に留まる。黒地に黄色というなかなか派手なカラーリングのこの虫こそ、今回のターゲットたるミイデラゴミムシである。開けた場所へ誘導し、じっくり観察させてもらおう。
屁っぴり虫ことミイデラゴミムシ!
屁っぴり虫ことミイデラゴミムシ!
体長は2センチほどしかない。黄色と黒の配色バランスが絶妙でなかなかおしゃれ。しかも、よくよく見ると眼がくりっとしていて意外とかわいらしい顔をしている。

本当にこんなにかわいい虫がそんなに凶悪な屁をかますのだろうか?いや、ぶちかますのは確実なのだが、どうにも信じられない。これはもう実際に受けて確かめるしかあるまい。

熱い!臭い!皮膚が変色する!

この虫のオナラは外敵を撃退する「防犯スプレー」のようなものなので、指で摘まむなどして脅かせばその忌まわしき魔弾はただちに撃ち放たれ、我が願いは刹那の内に成就するであろう。

だがせっかくの機会である。どうせならオナラが発射される瞬間を記録したいと思い立ち、iPhoneのビデオカメラを起動した。

さあ、決定的瞬間を動画でご覧いただこう。
どうだろう。僕の指先がミイデラゴミムシを押さえ込んだ瞬間、煙のようなものが立ち上り、同時に「プッ!」という破裂音が聞こえたと思う。

体格の割には相当ご立派なサウンドである。カメムシなど悪臭を発する虫は珍しくないが、これほど立派な「オナラらしいオナラ」を披露してくれるものはそういない。

だが、少々残念なことにこのオナラはちょうど親指と人差し指の間を抜ける形で放たれてしまった。音は聴き取れたが、これではその熱さまでは確認できない。

逃げたミイデラゴミムシを追跡してもう一度トライだ。
ミイデラゴミムシ、今度は確実に僕の指を捉えてくれた。放屁の直後、僕がとっさに手を引っ込めている点に注目してほしい。

これはオナラの音にいまさら驚いたわけではない。あまりの熱さに反射的に手を離してしまったのだ。何これ、超熱いんですけど。

動画ではうまく聴き取れないが、浴びた瞬間に「熱っ!」と小さく叫んでしまった。オナラが高温であることは知識として知っていたが、いざ体験してみるとびっくりしてしまうものだ。

だが、サプライズはこれで終わりではない。
オナラを浴びた指先の皮膚が変色している!!
オナラを浴びた指先の皮膚が変色している!!
火傷などしてはいないかと被弾箇所を見てみると恐ろしいことになっていた。皮膚がくすんだ紫色に変色しているではないか!え?え?何これ、大丈夫?内出血?炎症?壊死?

一瞬焦るが、落ち着いて確認すると特に痛みも無い。どうやらただ単に皮膚の表面にシミが出来ているだけらしい。多少気味は悪いが一安心だ。

ところで、オナラといえば臭いはどうだろうか。他にインパクトの強い現象が多すぎて忘れていた。
あー、まあそれなりに臭いな。
あー、まあそれなりに臭いな。
変色した指先を鼻にあてがい思い切り嗅ぐと、確かに独特の臭気を感じる。ちょっと正露丸のそれに近いか。

ちなみにミイデラゴミムシに限らず、ゴミムシ類の多くは音や熱こそ伴わないもののやはり護身のために似たような臭いを出す。

ゴミムシを捕まえるときは気を付けようね!

もう一回体験したい

無事に音も、熱も、臭いも確認できた。まあ個人的にはこれでほぼ満足なのだが、なかなか面白かったのでもう少しだけオナラをエンジョイしてみたい。

だが、先ほどの個体はもう二発も命がけの必殺技をぶちかましているわけだ。あの小さな体にしてみれば結構な負担かもしれない。そう考えるともうそっとしておいてやりたくなってしまう。

というわけで、また別の個体を探すことにした。
側溝の中でハナムグリを食べるミイデラゴミムシ。
側溝の中でハナムグリを食べるミイデラゴミムシ。
水の干上がった側溝を照らすと、立て続けに二匹のミイデラゴミムシを発見した。どうやら側溝は天然の落とし穴になっているようだ。いまさら探し方のコツを掴んでしまった。

ちなみに片方は食事中で、もう片方はこれからカタツムリを食べようとしているところらしい。さすがに食事中にちょっかいを出すのは気が引けるので、後者をターゲットに選んだ。
こちらはカタツムリを襲っている。
こちらはカタツムリを襲っている。
さあ、行くぞ!今度はいくら熱くても怯まないからな!
一匹目を触ってみて彼らのボディーが意外と頑丈であること、それからオナラは多少熱くても火傷をする心配は無いことを確認できたので今度はやや強引に押さえ込んでみた。

その結果、一度に何発もまとめて被弾してしまった。思ったより屁ストックは多いらしい。しかも放屁可能角度はかなり広いようで、動画からも色々な方向へ発射できているのが分かる。ああ、おもしろかった。

オナラは毒を伴う化学的爆発、シミも化学反応

ところで、ミイデラゴミムシのオナラの正体はもちろん人間のそれとは根本的に違うものである。

その正体は体内で過酸化水素とヒドロキノンを化学反応させることで発生するベンゾキノンと水蒸気の爆風なのだ。

その温度は100℃以上に達し、外敵の昆虫や小動物に大きなダメージを与える。…って本に書いてあった。しかもベンゾキノンは生物にとって大なり小なり有毒な物質らしい。

こう書かれるとめちゃくちゃかっこいいな。僕も欲しいぞ、その放屁システム。
翌日の様子。くすんだ紫色だったシミは茶色になっている。
翌日の様子。くすんだ紫色だったシミは茶色になっている。
そういえば、オナラを浴びた指先にシミが出来たのも実はなかなかケミカルな現象だったようだ。皮膚にベンゾキノンが付着するとタンパク質が化学反応を起こして変色してしまうらしい。

つまり皮膚の表面に汚れが乗っているわけではないので、洗ってもなかなか落ちない。日々少しずつ薄れていくのを待つしかないのだ。僕の場合は5日でほぼ元通りになった。
5日後。うっすらとシミは残るが、ほぼ元通りに復興している。
5日後。うっすらとシミは残るが、ほぼ元通りに復興している。

最近、漫画デビューもしたらしい

余談だがミイデラゴミムシについて調べていると、最近人気の「テラフォーマーズ」というSF漫画にこの虫が登場することを知った。どういうことかと試しに読んでみると、なんとミイデラゴミムシの遺伝子を組み込まれたキャラクター(人間)が手から発射するベンゾキノンを武器に火星で未知の敵と戦っていた。

すごくおもしろかったのだが「この人、正露丸臭を撒き散らしながら戦うのか…。」と変な考えが頭をよぎり、ちょっと笑ってしまったのは内緒だ。
こちらも同じシステムでオナラをするホソクビゴミムシ。臭いの正露丸っぽさはベンゾキノン発射をしない他のゴミムシ類の方が強い気がする。
こちらも同じシステムでオナラをするホソクビゴミムシ。臭いの正露丸っぽさはベンゾキノン発射をしない他のゴミムシ類の方が強い気がする。
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