特集 2014年7月29日

赤潮は夜になると光る

海が光ってるぞ!
海が光ってるぞ!
夏になるとたまに海が青く光ることがある。

イカ釣り漁船でも舟幽霊でもない、夜光虫である。

ずっと見たいと思っていたその景色を、ようやく見ることができたのでお届けします。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

昼に見るときれいなものじゃないです

先に種明かしをしてしまうと、海を光らせるという「夜光虫」は実はプランクトンの一種で、昼間には赤潮と呼ばれているらしい。

赤潮。

そう、小学校の頃に習った富栄養化した海に発生するあれである。ようするにあまりきれいな水では赤潮が発生しないため、夜になっても光ることはないのだ。そんなものがばんばん発生しているうちの近所の海もどうかと思うが、これが夜になると一転、美しく光るというのだからこれはみんなに自慢したくなる。
昼間見るとこんな感じ。赤茶色。
昼間見るとこんな感じ。赤茶色。
数日間風が弱くて気温の高い日が続くとこの赤潮が発生しやすいような気がする。ここ2年くらい、とくに夏場を気にして見てきた感じからすると、梅雨の間の蒸し暑い晴れ間に赤潮がよく見られた。ただ、条件さえ合えば真夏でも発生するので、海水浴に出かけた海が赤茶色にどんよりとしていたらぜひ夜まで待ってみてほしい。光るかもしれないから。

夜は暗い、を再認識する

ところで、僕はよく夜にジョギングをするので季節を問わず外をうろうろしていることが多いのだけれど、月のない夜の海は本当に真っ暗である。
大幅に補正しているので明るく見えるけど。
大幅に補正しているので明るく見えるけど。
実際はこのくらいである。足元すら見えない。
実際はこのくらいである。足元すら見えない。
夜光虫の光っていない普段の海はこんな感じ。
懐中電灯は必須。音のする方を照らすと波がすぐそばに見える。
懐中電灯は必須。音のする方を照らすと波がすぐそばに見える。
いくら普段から赤潮が発生している海とはいえ、毎夜毎夜光るかというとそんなことはないのだ。9割9分こんな感じ、真っ暗である。

怖い。風のない蒸し暑い夏の夜、夜光虫が光りそうな条件において、出ると言えばもう一つあるだろう。

お化けである。
夏の夜といえば。
夏の夜といえば。
お化けだよね(写真にお化けは写っていません)。
お化けだよね(写真にお化けは写っていません)。
海の近くに引っ越してきてからというもの、僕にとって夏の夜といえば夜光虫かお化けである。どちらもめったいに見られないが、一度見ると心に大きな爪あとを残すこと請け合いだ(お化けは見たことないからわかんないですがたぶん)。
撮る写真すべてが「あなたの知らない世界」みたいになるから帰って消したくなる。
撮る写真すべてが「あなたの知らない世界」みたいになるから帰って消したくなる。
舟幽霊、海坊主、鬼火、舟幽霊、海坊主、鬼火…。ジョギング中も頭のなかはリズミカルに恐ろしい幻影にとりつかれる。ジョギング管理アプリを見ると後半にいつもペースが上がっているのはこのためだと思う。それなら夜走るなよ、とも思うが、夜走るメリットはそれなりにあるのだ。これはまたいつか詳しく書きたい。

こうして毎夜毎夜恐ろしさ半分、夜光虫への期待半分でジョギングをしていた。

そしてついにその日がやってきた。

これ見るまでに2年くらいかけています

いつもならば真っ暗闇の中、音でしか波打ち際を感じられない夜の海が、この日に限ってなんとなくぼんやり光っていたのだ。これはまさか鬼火…。
なんとなく青白く光っているように見える。
なんとなく青白く光っているように見える。
よく見ると波頭がところどころ青い。
よく見ると波頭がところどころ青い。
少し離れたところに人が何人か立って海を見ているのが見えた。普段ならば懐中電灯で照らすところだけれど、今日はなぜか海が明るくて人影が見える。

遠くの海岸線を見て驚いた。
完全に光ってる。
完全に光ってる。
波が砂浜で崩れると、2秒間くらいふわっと青い光が広がる。外から照らした人工的な光ではなく、中からじんわりと発せられるやわらかい光。それでも光量はけっこうあって、これで足元が見えるんじゃないかと思うほどである。
すごい。
すごい。
これが夜光虫である。

青い光はゆらゆらと光っては消える。ホタルよりもさらにのんびりとした光り方である。プランクトンとはいえ生き物、生きている光だ。見とれているうちに潮が満ちてきたのか、くるぶしくらいまで海につかっていた。

実はこの日は昼間から近所の友人が赤潮情報をTwitterで流していて、夜には光るかも!と言われていたので期待していたのだけれど、20時ごろ走ったついでに見に行った時にはまったく光っていなかったのだ。上の写真はその2時間後くらい。夜光虫は物理的な刺激、波打ち際で波が崩れた衝撃等で光るので、赤潮のかたまりがたまたま波打ち際に流れ着いたのかもしれない。このあと1時間くらい光ってまた消えていってしまった。
幻想的。
幻想的。
夜光虫を知らなかった昔の人は、きっと妖怪のしわざだと思ったのではないだろうか。だって夜に海が光っているのだ、そんなもの尋常じゃない。ぜった魂か鬼か舟幽霊である。

現代社会に生きていてよかった、とこれほどまでに思ったことはなかった。

うまく出会えたらラッキー

夜光虫情報はだいたい一夏に4、5回だろうか、「今日見られたよ!」という投稿が近所の友人から発信されているのを見る。そのくらいの頻度なので、うまくその日のその時間に見に行くことができたら、これはラッキーなことだと思いますよ。
帰りはやっぱり暗くて怖かったけど。
帰りはやっぱり暗くて怖かったけど。
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