特集 2014年9月18日

そこらへんの人に怖い話を聞く

お寺の住職さんにもきいた
お寺の住職さんにもきいた
特に夏らしいことをしないまま秋が近づいてきている。最後になにか、夏らしいことをしたい。夏と言えば怖い話だ。しかし怖い話をする相手はいない。

そこでちょっと思い切って、そこらへんの人に怖い話を聞かせてもらうことにした。

いきなり近づいてきた見ず知らずの人(私)にどんな怖い話をしてくれるだろうか。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

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そこらへんの怖くない人にきく

涼しくなってきたがたまに暑さがぶりかえす9月頭。残暑のこる絶好の日に、上野公園にいたそこらへんの人に話を聞いてみることにした。

そこらへんの人といっても、声をかけやすい優しそうな人がいいだろう。怖そうな人は怖い話をしてくれないだろうから。
怖くなさそうな2人を発見
怖くなさそうな2人を発見
楽しげに話していた2人組みに声をかけてみる。特に警戒もされず、なにか無いかなあと考えてくれた。しかし2人とも、幽霊を見たり怪奇現象を体験したことは無いらしい。
以前住んでいたところの話をしてくれた
以前住んでいたところの話をしてくれた

しょっぱな詳細書けない話!

少し考え込んだあと「これ書けないかもしれないんですけど。。」と右側のクールな感じの青年が語りだした。出会って2分にしてその前置きにグッと興味がひかれる。

話はこうだった。
そこらへんの怖い話1 「事件現場」

・3年前に住んでいたある街での話
・バイトが終わった明け方4時頃、地元の知り合いに誘われて近くのある家を見にいった。
・そこは有名な未解決の殺人事件現場だった
・のぞいていたら人がでてきた!
・警察の人だった。今でも捜索をしているようだ。
おお…と思わずうなる。話にでてきた事件は、あまりにも有名でそれ自体ゾッとした(事件名は伏せます)。

現場から人が出てきたという部分では「危険危険!」と興奮し、知り合ったばかりの彼の安否を心配。怖い話は簡単に感情移入ができるのだ。

もしこれが怖い話の本とかだったら物足りないオチだが、逆にリアルでジワジワくる話だった。
「こういう時のために怖い話一つくらいもっといた方がいいですよね」と悩む彼。こういう時あまりないだろうけどね
「こういう時のために怖い話一つくらいもっといた方がいいですよね」と悩む彼。こういう時あまりないだろうけどね
もう一人の話はこうだった。
そこらへんの怖い話2 「家のドア」

・自分は怖い体験がないので後輩の話
・後輩が早朝、ランニングをしに家を出ようとした。
・玄関のドアを開けると知らない人が向こう側からも開けようとしていた
・空き巣だ。走って追いかけたが逃げられた
短い話ながら想像してみるとけっこう怖い。これが家ではなく会社のドアとかなら「おっとっと…まるで自動ドアですね」というほんわかシーンになるが、それとは話が違う。

しかもひるまずに空き巣を捕まえようとしているところがすごい。ここにはいない後輩に「追いかけたのかよ!」とついつっこんでしまった。

カメラ好きの人にきく

次はカメラの撮影の練習をしていた4人組。「いいカメラを持っている人は優しい説(自分調べ)」を信じて声をかけた。
「聞いた話でいいなら」と一人がOKしてくれた
「聞いた話でいいなら」と一人がOKしてくれた
なぜかカメラで撮影されながら怖い話を聞く
なぜかカメラで撮影されながら怖い話を聞く

この人の落語見てみたい

噴水を背に、まるでデートのような形で話を聞いた。

話のオチは実は聞いた事があるものだったが彼の語り口の描写はなんとも細かく、うまい落語を聞いているかのように引き込また。お金を払いたくなるほどだった。(かわりにお菓子あげた)

さきほどの話は30秒から1分程度だったが彼は6分ほどもかけて話してくれた。
そこらへんの怖い話3 「赤ずくめの女」

・都内を走るタクシー運転手の体験談。
・雨が降る夕方、新宿だか池袋らへんの駅前で客待ちをしていた。
・大きい帽子を目深にかぶった、全身真っ赤な服の女性が一人乗り込んできた。
・行き先を聞くが暗い感じで「とりあえず進んでください」と言う。場所を特定するでもなく、つど方向を指示されるがままに運転する
・東京の西の方、山が見え、民家がなくなってきたあたりまで進む。雨はあがったが日は既に落ちて暗い。自殺じゃないかと不安になる。
・あるところで止まり女性は普通に支払いを済ませた。帽子で顔はよく分からない。
・運転手はすぐに出発せず、なんとなしに女性を目で追った。するとその先に小さくて古ぼけたアパートがあった。
・しばらくするとアパートの一室に明かりがついた。あんなところに住んでるのか、と思い引き返そうと後ろを振り向く。
・すると後部座席に傘が忘れられているのを発見。部屋分かっちゃったしすぐそこだし、と女性の部屋に届けることにする
・階段をあがり、部屋の呼び鈴を押すが女性は出て来ない。雨でぬれてシャワーでもあびているのか。。
・ドアノブに傘をかけて帰ろうとする。そのときドアののぞき穴から部屋の明かりみたいなものがもれているのに気づき、覗いてみる。
・ぼんやりとうつるその部屋、全体的に真っ赤だ。服も赤かったし、気味が悪い。
・駅に引き返す途中、小腹がすいたのでタクシー運転手たちがよく寄るドライブインで仲間にこの奇妙な話をする。
・するとその女性は有名であることが判明。彼女はある障害をわずらっているのだという。
・それは「うさぎ病」という病。瞳が真っ赤になる病気なのだ。人に変に見られるため目深に帽子をかぶり人と交流せず暗い性格になったのだという。
・ちょっとまてよ…のぞき穴から見ていたのは、部屋の様子ではなく、彼女がこちらをじっと見ている「赤い目」だったのでは。。
鳥肌がたった。夏だ、いま私は夏を感じてる!
鳥肌がたった。夏だ、いま私は夏を感じてる!
その女の人、全身赤い服着てるって逆にすごい目立ちたがり屋なんじゃ…と気になる点が浮かばなくもないが、それより初対面相手にこんなに真剣に語ってくれる人がいたというのに感動した。

怖い話を聞くことは人の優しさを知ることでもあったようだ。

女性にも聞こう

次はほんわかとした雰囲気ただよう女性3人組。隣に自分と同じくらいの年齢の女性たちもいたが、自分と同じくらい夏バテしてそうな気だるさを感じたのでこちらにした。
霊的なものは体験無しとのこと。3人のうち2人が話してくれた。
霊的なものは体験無しとのこと。3人のうち2人が話してくれた。
そこらへんの怖い話4 「踊りませんか」

・中学時代、家の近所を歩いていたときのこと
・外国人のおじさんが突然「ぼくダンスやってるんだ、踊ろうよ!」と話しかけてきた。
・ボディタッチしてくるので「ごめんなさい、急いでるんで」と断ると、「ぼく日本語わからないです」と日本語で言ってきた。うそつけ!
同じく突然話しかけている自分が言うのもなんだが、じっさいこんな男が近所にいたら嫌すぎる。

その外国人が本当に日本語が苦手で、学びたての言葉(ぼくダンスやってるんだ、踊ろうよ!)を使いたかったのかもしれないがボディタッチとは図々しい。怒りがこみあげてくる怖さだ。
もう一人もエロ外国人の話だった
もう一人もエロ外国人の話だった
そこらへんの怖い話5 「アリガトウ、じゃねえよ」

・高3の塾の帰りのこと
・駅のエスカレーターに乗っていると後ろの人がお尻をトントンとたたいてきた。
・ふりかえると小さめで濃い顔の外国人。ピッタリと横について歩きながらまだお尻を触ってくる
・「アナタはビューティフル。アイラブユー」とか言ってる
・住所やメアドなどいろいろ聞いてくるが怖いのではぐらかす
・乗り換えの電車がきたが、このまま家までついてこられるのは困る、どうしよう…
・しかし彼は電車には乗らず「今日はアリガトウゴザイマシタ」とお礼を言った
・そして最後にすごい勢いで胸を触っていった

2話連続でエロ外国人

痴漢の話だった。今だから笑って話してくれたものの、当時は悲しくてそのあと泣いてしまったそうだ。つらい思い出だ。

男に生霊をとばして、その濃い顔を顔なのか分からないくらい薄くしてやりたい。女性にはこういう系の怖い体験が一つはあるので、みんなでその憎さを共有した。腹立つなあ…

最後は住職さん

もっとスッキリと、夏を感じられる話はないかとお寺が密集しているエリアに移動した。お寺の住職さんなら怖い体験をしていそうだと思ったのだ。20軒くらい周ってようやく一人つかまえて聞くことができた。
「な~んにもない!」
「な~んにもない!」

お経と滝行で怖くない

なんにも無い、で終わってしまった。「お経をずっと唱えているし、毎年山(身延山)に滝に打たれにいってるから」だそうだ。

あとで兄の知り合いの住職さんにも聞いたが同様の答え。確かに自分がもし幽霊だったら住職さんにはまず近づかないわ、と初めて幽霊目線になった。

という感じで、「結局人間が一番怖いな」という感想でこの年の夏は終わった。

たった数分で心が通う。怖い話すごい

いろいろな怖い話を聞くことができて新鮮だった。みんな初対面だったけど、どんなジャンルであっても緊迫感があり、ひきこまれ、一気に心の距離が縮むのが面白かった。

でもいきなり声をかけたのに相手してくれるようないい人たちが、痴漢にあうといった怖い思いしたのは聞いてて嫌なもんだ。そう考えると、幽霊が出てくる怖い話の方が後味はよく平和なんだなと思った。
これは去年の夏体験した怖い記事。→肝試しで一番怖いコンニャクを調べる
これは去年の夏体験した怖い記事。→肝試しで一番怖いコンニャクを調べる
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