フェティッシュの火曜日 2014年9月23日
 

伝説の巨大魚、タキタロウ調査隊に参加してきた

山形県の奥地にある大鳥池に潜むといわれている、伝説の巨大魚タキタロウの調査隊に参加してきました。
山形県の奥地にある大鳥池に潜むといわれている、伝説の巨大魚タキタロウの調査隊に参加してきました。
「タキタロウ」という名前を聞いて、ピンとくる人はどれくらいいるのだろうか。作曲家ではなく山形県鶴岡市(旧朝日村)大鳥の山奥にある大鳥池に潜んでいる巨大魚で、その全長は1メートルとも2メートルとも3メートルともいわれている。

タキタロウの存在は、「釣りキチ三平」という釣り好きにとってはバイブルみたいなマンガに、「O池の滝太郎」として登場したことで、一気に全国区の知名度となった。私も1975年に描かれたそのマンガで知った一人である。

そんなタキタロウの生態調査が30年振りに行われることとなり、そのメンバーを一般から募集するということで(こちら)、私も参加させていただくことになった。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

タキタロウを求めて山形へやってきた

タキタロウの調査は、9月6日(土)〜9月8日(月)の二泊三日の日程で、タキタロウが住む大鳥池湖畔にある山小屋(その名もタキタロウ山荘)をベースにおこなわれる。

初日は朝8時に朝日屋という旅館前に集合し、そこから車で30分移動。さらに徒歩で3時間半ほど山を登って、ようやく大鳥池へとたどり着くという計画表をメールで受け取り、この山形県に住んでいた頃、大鳥池のタキタロウを釣ってやろうと何度か検討したものの、行程の過酷さに断念したことを思い出した。
3時間半の山登りということで、前日に朝日屋さんへ泊まって、体力を温存する作戦にしました。
3時間半の山登りということで、前日に朝日屋さんへ泊まって、体力を温存する作戦にしました。
「タキタロウに会いたければ、私を倒してからいきなさい」と、蒼い目の猫が訴えてくるという妄想。
「タキタロウに会いたければ、私を倒してからいきなさい」と、蒼い目の猫が訴えてくるという妄想。
朝日屋さんには大きなイワナの魚拓がたくさん張られていた。タキタロウは、やはりイワナの仲間なのだろうか。
朝日屋さんには大きなイワナの魚拓がたくさん張られていた。タキタロウは、やはりイワナの仲間なのだろうか。
サクラマス(降海型の大きくなったヤマメ)も釣れるのか!となると、そっちの線も考えられるな。
サクラマス(降海型の大きくなったヤマメ)も釣れるのか!となると、そっちの線も考えられるな。
タキタロウの伝説は、この大鳥の地にたくさん残っており、タキタロウ館という資料館まである。そんな数ある伝説の中から、代表的なものをいくつかピックアップしてみよう。

・約2万年前の氷河期に、大規模な土砂崩れによって川がせき止められてできた大鳥池にのみ生息している巨大魚である。

・大鳥池の南東に位置する以東岳直登尾根上から、何度かその魚影を目撃されている。

・1983年(昭和58年)から3年間、大規模な調査が行われたが、その姿は確認されなかった。

・特徴は口は下あごが上向きに発達していて、尾びれが大きいこと。

・何人もの釣り人が挑んでいるが、未だにタキタロウを釣った人はいない。

・タキタロウと断定はされていないが、近年でも70センチを超える魚は何度か捕まっている。

・脂が乗った赤身で(白身という説もある)、その味は絶品(網などで捕まえて食べた人はいるらしい)。

・イワナなどの魚を主に食べるが、ヘビやカモシカも食べると言われている。

・イワナやヒメマスが巨大化したものという意見もあるが、地元の人に言わせると、タキタロウはタキタロウである。
朝日屋でごろんと横になり、持参した釣りキチ三平を読み返すという贅沢。
朝日屋でごろんと横になり、持参した釣りキチ三平を読み返すという贅沢。
夕飯に出た刺身、実はこれがタキタロウだったらどうしようと思った。
夕飯に出た刺身、実はこれがタキタロウだったらどうしようと思った。
こちらが朝日屋の目の前にあるタキタロウ館。釣り堀やキャンプ場が併設されている。
こちらが朝日屋の目の前にあるタキタロウ館。釣り堀やキャンプ場が併設されている。
イルカみたいな扱いのタキタロウ顔ハメパネル。顔の方向を間違えた。
イルカみたいな扱いのタキタロウ顔ハメパネル。顔の方向を間違えた。
タキタロウ館にある想像模型(剥製ではない)。右下の熊がタヌキくらいにみえるサイズだ。
タキタロウ館にある想像模型(剥製ではない)。右下の熊がタヌキくらいにみえるサイズだ。
これは実際に大鳥池で捉えられた魚の剥製。大物のイワナだろうか。
これは実際に大鳥池で捉えられた魚の剥製。大物のイワナだろうか。
口の形に特徴があるらしく、それっぽい写真もいくつか残っている。
口の形に特徴があるらしく、それっぽい写真もいくつか残っている。
タキタロウ館を出ると、さっきの猫が待っていた。なでることはやぶさかではない。
タキタロウ館を出ると、さっきの猫が待っていた。なでることはやぶさかではない。
二泊三日の調査を通じて、ここ大鳥の人たちにとってタキタロウという魚は、ネッシーとか雪男、あるいはカッパやツチノコみたいなカテゴリーのUMA的存在ではなく、かつてのニホンオオカミやニホンカワウソのように、確かに存在した生き物であり、そして今も生き残っているのだと信じられていることを知ることになる。

その剥製などが残念ながら残っていないのは、タキタロウがとてもおいしいから、皮まで全部食べてしまうからだろう。魚は腐りやすいしね。

地元主導の生態調査です。

30年振りとなる今回の調査は、大鳥地域づくり協議会という地元の集まりが中心となっている。

目撃者の一人でもある佐藤征勝さんの発案を、地域おこし協力隊という制度で大鳥に赴任してきた、田口比呂貴さん、砂山元さんらの若い世代が背中を押すことで実現したそうだ。

今回はタキタロウの捕獲が目的ではなく、あくまでその生態や周辺環境の調査が目的であるため、網などの漁具などは使用しない。地元テレビ局の取材も入るが、主体は調査隊側なので、過剰な演出なども一切無しだ。
調査隊の隊長を務める工藤悦夫さんは現役のマタギ。春になると熊を追いかけているそうだ。
調査隊の隊長を務める工藤悦夫さんは現役のマタギ。春になると熊を追いかけているそうだ。
その栄えある調査メンバーは、大鳥在住の5名に加えて、インターネットでの募集をみて集まった方々。当初は5名の採用を予定しつつも、2人も集まれば御の字と考えていたそうだが、予想を上回る8名の応募があったそうだ。

応募してきた水質調査の専門家、医者、ボート持参の釣り師、山登りのベテランなどで定員は埋まりそうになったのだが、地元メンバーによる話し合いによって、「是非、皆で行こう!」ということになったため、特に専門性のない私も参加できることになったのである。
朝日屋から車で30分移動した駐車場からは、荷物を分散して徒歩で大鳥池を目指すこととなる。
朝日屋から車で30分移動した駐車場からは、荷物を分散して徒歩で大鳥池を目指すこととなる。
募集要項に「大鳥池まで登山(片道 約3時間半)ができる健康な方」とあったのが、今更ながら不安だったりする。
募集要項に「大鳥池まで登山(片道 約3時間半)ができる健康な方」とあったのが、今更ながら不安だったりする。

いざ、大鳥池へ

大鳥池への三時間半の登山道は、まあまあきつくはあったものの、とても気持ちがいいものだった。大鳥池から水が流れてきているという大鳥川の渓流を眺めながら、ブナの原生林を歩く山道は、一歩進むごとにタキタロウへと近づいていくのだ。

私は登山をまったくしないし、どう考えても運動不足なのだが、、それでもなんとか登ることができたし、先導する年配の方も大荷物でサクサクと登っていたので(後で話を聞いたらマタギだったので当然なのだが)、ちょっときつめのトレッキングレベルのコースなのだと思う。

途中に何か所も美味しい水場があるし、景色は文句なく美しいし、歩みの目的はタキタロウだし、私にとっては日本有数の楽しい登山道だ。
写真だとまったく伝わらないんだけれど、緑濃き森の谷間に流れる渓流が美しいのですよ。花崗岩なのか白い岩肌が素敵。
写真だとまったく伝わらないんだけれど、緑濃き森の谷間に流れる渓流が美しいのですよ。花崗岩なのか白い岩肌が素敵。
まだ雪が残っている場所もあった。冬になると何メートルも積もるのだとか。
まだ雪が残っている場所もあった。冬になると何メートルも積もるのだとか。
足元にはブナの実がゴロゴロと落ちている。
足元にはブナの実がゴロゴロと落ちている。
ジャブジャブと湧水が出ている場所が途中に何か所もあり、これがとってもうまい。伝説の巨大魚であるタキタロウを育てた水だと思うと、またありがたみが増すというもの。
ジャブジャブと湧水が出ている場所が途中に何か所もあり、これがとってもうまい。伝説の巨大魚であるタキタロウを育てた水だと思うと、またありがたみが増すというもの。
川を渡る吊り橋が2か所あるのも、冒険っぽくていいと思う。
川を渡る吊り橋が2か所あるのも、冒険っぽくていいと思う。
ほどほどに揺れてくれる吊り橋は、なかなかの怖さでした。
ほどほどに揺れてくれる吊り橋は、なかなかの怖さでした。
タマゴタケらしきキノコを発見!このあたりはもう少しすると、キノコがたくさん採れるそうです。
タマゴタケらしきキノコを発見!このあたりはもう少しすると、キノコがたくさん採れるそうです。
ちょっと喉が渇いたなと思う場所には、美味しい湧水があるという素晴らしい登山道。
ちょっと喉が渇いたなと思う場所には、美味しい湧水があるという素晴らしい登山道。
巨木と言えるような木が多いため、なんとなく自然対人間のスケール感がおかしくなる。
巨木と言えるような木が多いため、なんとなく自然対人間のスケール感がおかしくなる。
現役のマタギから、熊を追うためのとんでもないルートを聞くという贅沢な時間も。私はマタギになれないことがよくわかった。
現役のマタギから、熊を追うためのとんでもないルートを聞くという贅沢な時間も。私はマタギになれないことがよくわかった。
それにしてもきれいな川です。この上流に池があるというのがイメージできないけど。
それにしてもきれいな川です。この上流に池があるというのがイメージできないけど。

大鳥池に無事到着

予定通り3時間半の山登りを終えると、急に視界が開ける場所に出て、ここが山の中だとは思えないような大きな湖が現れた。

大鳥池という名前ではあるが、これはもう湖だろう。ここにくるまでの労力もあり、ここなら伝説の巨大魚タキタロウがいてもおかしくないような気がしてしまう。いや、いるんだけどさ。
どうにか大鳥池に到着!
どうにか大鳥池に到着!
とりあえず目視でタキタロウを探してしまう。
とりあえず目視でタキタロウを探してしまう。
この調査における基地となるのが、大鳥池を見下ろすタキタロウ山荘。

登山客や釣り人のための山小屋なのだが、想像していたよりも立派な建物で驚いた。ここまで建築資材を運ぶのはさぞや大変だろうと思ったのだが、人でも馬でもなく、ヘリコプターで運んだそうだ。
管理の行き届いた素敵な山小屋でした。近くにキャンプ場もあるよ。
管理の行き届いた素敵な山小屋でした。近くにキャンプ場もあるよ。
遊漁券を購入すれば、タキタロウを狙って釣りをすることも可能。
遊漁券を購入すれば、タキタロウを狙って釣りをすることも可能。
ただしボートの使用が禁止されているため、限られた場所からしか狙うことはできないようだ。
ただしボートの使用が禁止されているため、限られた場所からしか狙うことはできないようだ。
山小屋から大鳥池へと降りた場所には、今まですぐ横を登ってきた大鳥川へとつながる水門があった。

現在はこの水門によって、灌漑用水として3メートル水嵩を上げているそうだ。そしてこの水門のあたりで、タキタロウが遊んでいるのを見たという人もいるらしい。
水位が低い方がタキタロウの捜索はしやすいのだが、国の管轄なので致し方なし。
水位が低い方がタキタロウの捜索はしやすいのだが、国の管轄なので致し方なし。
水門側から大鳥池を眺める。いやもうドキドキしっぱなしなんですよ。
水門側から大鳥池を眺める。いやもうドキドキしっぱなしなんですよ。
せっかくなのでパノラマでどうぞ。クリックで拡大。大鳥池を上から見ると、クマの皮の敷物みたいな形だそうです。
せっかくなのでパノラマでどうぞ。クリックで拡大。大鳥池を上から見ると、クマの皮の敷物みたいな形だそうです。

タキタロウ調査は真面目に楽しく行います

山小屋での食事というと、普通は持参が基本らしいのだが、今回は特別に三食全部を山小屋の管理人であり朝日屋の二代目でもあり調査隊の事務局長でもある佐藤征勝さんが用意してくれた。至れり尽くせりである。

お昼ごはんを食べて一息ついたところで、自己紹介と午後の調査に向けたミーティングを行う。

ここにたどり着くことである程度の達成感を味わってしまったのだが、タキタロウ調査はここからが本番だ。
お昼ごはんは朝日屋から持ち込んだお弁当。山で食べるには最高。
お昼ごはんは朝日屋から持ち込んだお弁当。山で食べるには最高。
缶詰は食べ放題。30年前の調査にはなかったであろう、タイカレーの缶詰を発見。
缶詰は食べ放題。30年前の調査にはなかったであろう、タイカレーの缶詰を発見。
前回30年前の調査隊メンバーであり、旧朝日村で最後の村長を務めた佐藤さんが、この山小屋の管理人だ。
前回30年前の調査隊メンバーであり、旧朝日村で最後の村長を務めた佐藤さんが、この山小屋の管理人だ。
工藤隊長から調査の目的とその計画の説明がおこなわれた。
工藤隊長から調査の目的とその計画の説明がおこなわれた。
タキタロウ調査のミーティングに自分が参加しているというのが、今更だけれどなんだかおかしい。
タキタロウ調査のミーティングに自分が参加しているというのが、今更だけれどなんだかおかしい。
山小屋の本棚に釣りキチ三平を発見!もちろんタキタロウの話の巻である。イシダイ釣りの話だったらズッコケる。
山小屋の本棚に釣りキチ三平を発見!もちろんタキタロウの話の巻である。イシダイ釣りの話だったらズッコケる。
今回の調査に当たって、ミーティングなどはそれはもう真剣で真面目なものなのだが、佐藤事務局長から「一緒に楽しく、ルンルン気分で参りたいと思います!」との挨拶もあった。

どうやら真面目にやりつつも楽しくやりましょうというのが地元メンバーのスタンスのようで、あくまで部外者である一般応募メンバーとしては、そのように我々を受け入れてくれてくれたことが大変ありがたかった。

30年振りの調査になんだかウキウキしている佐藤さんのやさしい笑顔が、赤城山で埋蔵金を探してた頃の糸井重里さんとかぶって見えた気がする。

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