フェティッシュの火曜日 2014年9月23日
 

伝説の巨大魚、タキタロウ調査隊に参加してきた

ボートを浮かべての本格的調査

調査一日目午後の作業は、2艘のボートの準備と点検をした後に、2つの班に分かれて、エコーサンダー(いわゆる魚群探知機みたいなもの)による魚影の調査と、水温や酸素濃度などを調べる水質調査をおこなっていく。

大鳥池はボートの使用が禁止なのだが、今回は調査のために特別な許可が出ている。使用するボートは、一つは大鳥小屋に前からあるものだが、もう一つは参加メンバーが個人所有のゴムボートを持参してきたものを、ここまで担いできたものだ。

ちなみに釣りキチ三平では、ボートがないからと丸太を削って舟を作っていた。やはりタキタロウ調査には、ボートが必須なのである。
こちらは大鳥小屋に元々あるボート。大鳥池でボートに乗れるというだけでもすごいことだ。
こちらは大鳥小屋に元々あるボート。大鳥池でボートに乗れるというだけでもすごいことだ。
隊員が持参してきたゴムボートを膨らませる。船が二艘になったことで、調査可能な幅が大きく広がった。
隊員が持参してきたゴムボートを膨らませる。船が二艘になったことで、調査可能な幅が大きく広がった。
そして地元テレビ局のYTSさんが3人がかりで持参してきたボートも。特番用の撮影ではなく、地方ニュースのワンコーナーらしい。テレビって大変。
そして地元テレビ局のYTSさんが3人がかりで持参してきたボートも。特番用の撮影ではなく、地方ニュースのワンコーナーらしい。テレビって大変。
ヘビを見かけると、「きっとこれがタキタロウのエサなんだよ!」と考えるタイプの人種が、調査隊には集まっている。
ヘビを見かけると、「きっとこれがタキタロウのエサなんだよ!」と考えるタイプの人種が、調査隊には集まっている。
佐藤事務局長が知人から借りてきたエコーサンダー。これで湖の底深くを泳ぐタキタロウを探すことができる。
佐藤事務局長が知人から借りてきたエコーサンダー。これで湖の底深くを泳ぐタキタロウを探すことができる。
水を汲むための取水器。これに計器やカメラをつけることで、温度や映像を一緒に記録していく。
水を汲むための取水器。これに計器やカメラをつけることで、温度や映像を一緒に記録していく。
私の配属は水質調査を担当する2班の記録係である。このタキタロウ調査に応募してきた、慶應義塾大学先端生命科学研究所の伊藤卓朗博士と一緒にボートへと乗り込み、耐水ペーパーに数値を記録するのである。

具体的な作業としては、伊藤さんが計器を付けた取水器を1メートル沈めるごとに、その水深でデータが安定するまでの4分間を測って、その時間をメモしていくだけ。

水温などは後ほどログをパソコンで確認するそうなので、難しいことは特にない。このボートに乗った人にしか見られない特別な景色を眺めながら、この場にいられることの喜びをのんびりと噛みしめていた。
すごい、俺、今、大鳥池に浮かんでいる!
すごい、俺、今、大鳥池に浮かんでいる!
オール担当は地元の方。私なんかより全然うまい。
オール担当は地元の方。私なんかより全然うまい。
パノラマで見ると、山で囲まれた湖であることがよくわかる。クリックで拡大。
パノラマで見ると、山で囲まれた湖であることがよくわかる。クリックで拡大。
最初に水質調査をする場所は、西の倉と呼ばれる絶壁の手前。大鳥池は最深部の水深が68メートル(現在は水門で水位を上げているので71メートル)で、この辺りの湖底は急激に深くなっていく斜面になっている。

この場所こそが30年前の調査で一番怪しいのではと予想された場所であり、陸からはまったく近づくことができないため、人の気配を嫌うタキタロウが潜むには最高の場所だ。
計器を1メートルずつ沈めていき、水温や残留酸素量、ペーハー値などを調べていく。
計器を1メートルずつ沈めていき、水温や残留酸素量、ペーハー値などを調べていく。
4分30秒ごとに時間をお知らせして記録するだけの簡単なお仕事です。カップラーメン食べたい。
4分30秒ごとに時間をお知らせして記録するだけの簡単なお仕事です。カップラーメン食べたい。
我々2班の調査は、タキタロウそのものを探すのではなく、タキタロウが住んでいるであろう環境を調べることで、どんな場所をタキタロウが好むのか、どんな水質の場所なのか、そして巨大化する謎を追うための材料を地道に集める作業だ。

30年前の調査結果によると、表面は20度くらいある水温が、ある程度の水深までいくと一気に下がり、そして4度くらいで安定するらしい。実際に深い場所から取水したばかりの水を触らせてもらったのだが、びっくりするくらい冷たかった。氷河期に封じ込まれたタキタロウだけに、やはり暑がりなのだろう。

それにしても伊藤さんは「タキタロウの調査に行くから」といって、これらの機材を職場などから借りてきたのだろうか。

エコーサンダーによる調査

大鳥池の周辺は携帯の電波が全く入らないため、水門前の調査本部と2艘のボートの連絡は、無線機を使って行われた。

1班のエコーサンダーによる調査は、事前に決めたルートをボートで移動しながら、モニタにあらわれる魚のマークを探すというもの。

イワナやヒメマスの生息範囲は水深20メートルくらいまでなので、30メートル、あるいは40メートル以上の深さで反応がでれば、それはタキタロウに間違いないそうだ。
エコーサンダーによる調査をする1班。おじいちゃんと孫が遊んでいる訳ではない。
エコーサンダーによる調査をする1班。おじいちゃんと孫が遊んでいる訳ではない。
前回の調査で作られた地図を見ながら、これは30年前の続きなんだなと、改めて思う訳です。
前回の調査で作られた地図を見ながら、これは30年前の続きなんだなと、改めて思う訳です。
初日からそんなすぐに魚影は見つからないだろうと思っていたのだが、しばらくするとタキタロウらしき反応が出たようで、工藤隊長の興奮した声が無線機から聞こえてきた。その声は離れた場所のボートから、無線機を通さず直にも聞こえてくる勢いだ。

そして深い場所で魚影の報告がされるたびに、調査本部の無線から「それはタキタロウに間違いない!」という佐藤事務局長の喜びの声が返ってくる。30年振りに訪れた素敵な時間だ。

調査の終盤には、すっかりご機嫌となった佐藤事務局長から、「皆さんのなかで、コンニャクを背負ってきてくれた人はいないでしょうか。コンニャクが見当たりません。朝日屋で入れたコンニャクです。コンニャク!」なんていう連絡が来て、ボートの上で大笑いしたりもした。

そレに対して、隊員からは、「いやー、今夜食うコンニャクがないと困りますからねー」 なんていう答えが返ってきた。調査報告書には絶対載らない余談である。

山小屋の夜が楽しかった

初日に予定された調査を無事消化し、夕方からは各班からの報告を元にミーティングをおこない、用意していただいた夕ご飯をいただいた。

そして消灯までの間、各自が考えるタキタロウ像や、マタギが見てきた大鳥の自然や歴史など、たくさんの話を聞かせていただいた。なんでも春に大鳥池へとくると、湖面に浮かんだ氷の上に、熊が乗っていることもあるのだとか。南極越冬隊の話を聞いているみたいだ。

私は登山をしないので、山小屋に泊まるのは初めてなのだが、山小屋の夜ってなんだか楽しい。
ミーティングは毎食前に、至って真面目に行われます。
ミーティングは毎食前に、至って真面目に行われます。
夕飯は山形名物の芋煮でテンションが上がる。コンニャクは無事見つかったようで、ちゃんと入っていた。
夕飯は山形名物の芋煮でテンションが上がる。コンニャクは無事見つかったようで、ちゃんと入っていた。
芋煮でお腹いっぱいになったところで、中華丼が出てきたよ。
芋煮でお腹いっぱいになったところで、中華丼が出てきたよ。
わざわざビールを運んできた人から、「帰りの荷物を軽くするのに協力してよ」と一杯いただく。いかすぜ。
わざわざビールを運んできた人から、「帰りの荷物を軽くするのに協力してよ」と一杯いただく。いかすぜ。
今回使用しているエコーサンダーでは、魚の大きさや形まではわからないのだが(大小の魚マークで表示されるのだが、何センチだと大マークなのかが不明)、それでもタキタロウが住むといわれている深い場所に反応が出たのだ。それも大きな魚のマークが。

それは大鳥に住む人にとって、間違いなくタキタロウの存在を示したものなのである。そしてこの大鳥池周辺の環境が、今も変わらずに守られているということだ。

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