フェティッシュの火曜日 2014年9月30日
 

鍋だけがスッポン料理じゃないだろう

スッポンの血の炒め物
スッポンの血の炒め物
スッポンはおいしい。熱々のすっぽん鍋などたまらないだろう。煮込めば煮込むほど、濃厚かつ上品な旨みが出汁へ浸み出す。肉の質や味は豚とも鶏ともつかず、代わるものが無い。皮やエンペラのプルプルした食感もなかなかオツである。鍋の具としては最高の食材かもしれない。

だが待ってほしい。こんな優良食材、鍋以外の料理にしてもおいしいはずだ。「スッポン料理=鍋」という既成概念を砕くことはできないものか。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。
> 個人サイト Monsters Pro Shop

まずはスッポンを捕獲しよう

ウナギといえば蒲焼き。それと同じくらい、スッポンの食べ方といえば鍋というイメージが強い。いろいろと調べてみると、から揚げや刺身などを提供しているスッポン料理店もありはするようだが、やはり鍋の一強感は否めない。

確かにすっぽん鍋は美味い。掛け値なしに美味い。じゃあ、それ以外のメニューはまずいのかというと、そんなことは無いはずだ。自分で何品か作って試してみよう。
スッポンが食べたくなったらとりあえず川へ。
スッポンが食べたくなったらとりあえず川へ。
個人的な話になってしまい恐縮だが、最近やけにスッポン運が良い。小動物の撮影や魚釣りのために川へ入ると、探してもいないのに各地でスッポンに遭遇しまくるのだ。

僕は味だけでなくスッポンの容姿や仕草も大好きなので、見かけるたびについつい捕獲してしまい、この春〜夏だけでその数は確実に30匹以上に達している。

もっとも、その大半は観察した後に逃がしているのだが、たまには食べるために持ち帰ることもある。
夜の川を覗き込むと、こんな感じで水底に鎮座している。
夜の川を覗き込むと、こんな感じで水底に鎮座している。
スッポンの捕まえ方だが、いつも彼らを目当てで川へ入っているわけではないので、タモ網を持っているとは限らない。よって、素手での捕獲が基本となる。僕の場合は。
我流の捕獲方法(1)背中を軽〜く踏みつけて押さえ込む。
我流の捕獲方法(1)背中を軽〜く踏みつけて押さえ込む。
(2)お尻の方から腹面へ手を差し入れる。
(2)お尻の方から腹面へ手を差し入れる。
(3)後ろ足の付け根にあるくぼみに指をかけて掴む。
(3)後ろ足の付け根にあるくぼみに指をかけて掴む。
(4)捕獲完了。この方法なら噛みつかれることは無いが、2キロクラスの大物相手だと後ろ脚で引っかかれて怪我をするので注意しよう。
(4)捕獲完了。この方法なら噛みつかれることは無いが、2キロクラスの大物相手だと後ろ脚で引っかかれて怪我をするので注意しよう。
当然、素手での掴み捕りでは深場にいるスッポンを捕らえることはできないし、手が滑ってせっかくの獲物を取り逃がすことも多い。

でも、この方法がなんだかんだで一番楽しいし、スッポンへのダメージも少ないので、僕はけっこう気に入っている。
わざと手を噛ませてみたが、顎の力が強く、なかなか痛い。子供の頃なら泣いていたかも。
わざと手を噛ませてみたが、顎の力が強く、なかなか痛い。子供の頃なら泣いていたかも。
まあ、大きなスッポンに噛みつかれるとかなり痛い思いをするので、扱いに慣れるまではこの捕り方はオススメできないが・・・。

ちなみに、噛みつかれた場合はそっと水中に置いてやると、わりとすんなり離してくれる。
無事に確保!食うぞ〜。
無事に確保!食うぞ〜。
どんな捕り方であれ、生け捕りにしたスッポンは肉や臭みを消すためにしばらく泥抜きをしてやる。この期間が中々じれったくもあるが、スッポンの美味さを活かすには外せない手間である。スローフードである。
・・・とその前に、綺麗な水の中でしばらくキープして泥抜きを。
・・・とその前に、綺麗な水の中でしばらくキープして泥抜きを。

から揚げが絶品すぎる

十分に泥抜きを終えると、いよいよ料理に取り掛かれる。
スッポンをさばくコツは愛着を持たないこと。一思いに、手際よく締めてやること。
スッポンをさばくコツは愛着を持たないこと。一思いに、手際よく締めてやること。
首を刎ねて血を綺麗に抜き、解体していくのだが、そういう作業のハウツーについては詳しい書籍やウェブサイトが多数存在しているのでここでは省略。興味のある人はそっちを見よう。
下ごしらえが済んだ状態。内臓もそのほとんどを食べられる。
下ごしらえが済んだ状態。内臓もそのほとんどを食べられる。
はじめのうちはなかなか難しく、面倒くさく感じられる作業だが、慣れてしまえば魚をさばくよりも楽である(見た目にあまりこだわらなければ)。廃棄する内臓も少ないし、鱗が台所中に飛び散ることもない。
魚のように鱗を落とす作業はないが、体表を覆う薄皮は臭みの原因になるのでしっかり剥がしておかなくてはならない。血を抜いた後に熱湯を回しがけするとスルスル剥けて楽しい。
魚のように鱗を落とす作業はないが、体表を覆う薄皮は臭みの原因になるのでしっかり剥がしておかなくてはならない。血を抜いた後に熱湯を回しがけするとスルスル剥けて楽しい。
さて、下ごしらえが済んだので本日作るメニューを決めていこう。いろいろな案が浮かぶが、まずは基本中の基本であるスッポン鍋を作り、その味を確認してみよう。
ああ、こんなの美味いに決まっとる・・・。
ああ、こんなの美味いに決まっとる・・・。
シンプルにしょうゆだけで味付けしたとは思えないような、深く、濃い味わい。スッポン特有の食感も楽しい。やはり美味いな、スッポン鍋・・・。

この美味さの最大の理由は言うまでもなく、スッポンの全身からあふれる強烈な出汁にある。だからこそ、シメの雑炊までも絶品になってしまうのだ。
間違いのない味。約束された味。たいへんおいしゅうございました。
間違いのない味。約束された味。たいへんおいしゅうございました。
また、出汁をとるために長時間に渡って煮込んでも、肉の味が抜けきってしまわないところもスッポンの長所である。一体、ヤツの身にはどれほどのうまみが溜め込まれているのだろうか。

・・・そして、この「うまみ爆弾」をそのまま衣で包み、油で揚げてしまったらどんな味になるのだろうか・・・。
スッポンのから揚げ
スッポンのから揚げ
というわけでから揚げを作ってみた。鍋以外のスッポン料理の中ではわりとメジャーな位置にいるメニューらしい。そういえば、ある食通の知人は「から揚げにして一番美味い食材はスッポン」と絶賛していた。

たしかに見た目はかなり美味そうなオーラを放っているが、これまでじっくり煮込まれた肉しか食べたことがないので具体的な味が想像できない。期待半分、不安半分である。
溶けてにかわのようになってしまうのではと危惧していたエンペラも綺麗に揚がった。
溶けてにかわのようになってしまうのではと危惧していたエンペラも綺麗に揚がった。
まあ、それも一口食べればわかること。熱いうちにかぶりついてみる。
いただきます!
いただきます!
・・・幸せって、こういうことなんやね。
・・・幸せって、こういうことなんやね。
・・・これは美味い。尋常の美味さではない。

口では説明しがたいが、強いて言うなら「ブリッブリでデュルンデュルンでジョクッ!ジュワァ〜・・・」である。いかにもコラーゲンが豊富ですといった感じの皮の下には、歯ごたえのしっかりしたジューシーな肉が詰まっている。この肉からあふれる肉汁が暴力的に美味いのだ。エンペラも揚げてみたが、くにゅくにゅモチモチでおいしい。とにかく美味い。鳥類の肉では絶対に味わえないおいしさである。

この場合、「自分で捕って自分で料理した」という要素もいい調味料になっているのかもしれないが。

ところで、周囲にスッポンにやたら遭遇するという話をすると、決まって「料理屋さんに売ればいいのに」などと言われる。僕は漁師ではないけれど、もしそんなことが可能ならそれも悪くないなーと思っていた。だが、このから揚げを食べて考えが変わった。こんな美味い物体、誰が売ってなぞやるものか!

カレーにしても超おいしい!おいしいが・・・

とりあえず、鍋とから揚げという確立された料理は、まったく非の打ち所のない美食となった。ここからはちょっと新奇性のあるスッポンメニューも作ってみたい。

まず、出汁の効いた鍋の残り汁で雑炊を作った際に思いついたメニューが「カレーライス」である。あの出汁は米との相性も抜群なので、ルーを溶いて炊き立てのご飯にぶっかければ、それだけできっと美味いに違いない。スッポンに合うのが和の味付けだけだとは思えない。異国のスパイスを効かせてもいいはずだ。
スッポン鍋(水炊き)の残りに市販のカレールーを溶くだけ。野菜は入れずにおいた。
スッポン鍋(水炊き)の残りに市販のカレールーを溶くだけ。野菜は入れずにおいた。
実際調べてみると、ネパールやインドの一部地域でもスッポンをカレーの具材にすることはあるらしい。もちろん、今回作るようないかにも日本的なカレーライスとは大きく異なるものであろうが。

今回試したスッポンカレーの作り方はごく簡単である。まずはスッポンを水炊きにして味わい、その残りに市販のルーを溶くだけだ。
スッポンカレー
スッポンカレー
そうして出来上がったカレーがこちら。スープの出汁が強いので、水で作る場合よりもルーは少なめ。かなりサラサラしている。まあ、スッポンの脚やエンペラが顔をのぞかせている点以外、見た目はごく普通のカレーである。

匂いを嗅いでみても、カレーフレーバーが強すぎてスッポンの存在感はあまり感じられない。
カレーの味がしみた肉も美味い!爪のインパクトが少々強いが。
カレーの味がしみた肉も美味い!爪のインパクトが少々強いが。
エンペラのプリプリ感も意外とカレーになじむ。
エンペラのプリプリ感も意外とカレーになじむ。
カレー(美味い)とスッポン(美味い)の組み合わせでまずくなる理由が無いよな。
カレー(美味い)とスッポン(美味い)の組み合わせでまずくなる理由が無いよな。
結論から言うと、スッポンカレーはとてもおいしかった。カレーのスパイシーさの中にスッポン出汁由来の滋味が感じられる。もちろん身もカレーに合っていて美味い。普通のカレーライスと比べると、はるかに味に深みが増している。

・・・だが、ちょっとイメージしていた美味さとは違う。思いのほかスパイスの力が強烈で、あの濃厚な出汁の味を塗りつぶそうとしているように感じられる。あの出汁はもっとわかりやすく、ダイレクトに活かせる料理に使用すべきなのではないか。

じゃあ、残りのカレーはアレにしよう!
スッポンカレーうどん
スッポンカレーうどん
スパイスに押し負けないよう、さらにスッポンの出汁を追加し、調味料で味をととのえる。そこへゆでた麺を投入すれば、この上なく贅沢なスッポンカレーうどんの完成だ。
あー、そのままご飯にかけるより、こっちの方がスッポン感を楽しめるかも。
あー、そのままご飯にかけるより、こっちの方がスッポン感を楽しめるかも。
カレーうどんにしてしまったほうが、より強く出汁の味を感じられ、「スッポン料理を食べてるなあ」という実感を味わえる。

それでも、カレーライスほどではなくともパンチのある味わいなので、スッポン鍋を食べて「まだ全然食べ足りないぞ!」という時はシメに雑炊ではなくカレーうどんを作るのもありかもしれない。

チーイリチャー(血の炒め物)が大当たり!

カレーを作ったことによって、あまり強い味付けでは、スッポンの持ち味を薄めかねないことがわかった。いわゆる「素材の味」を極力活かしたいのであれば、シンプルな鍋ものやから揚げに勝るものなしということなのかもしれない。

いやー、あっさり結論が出てしまったな。めでたしめでたし。

・・・いや、まだここでは終わらない。今回はもう一品、スッポンのある部位を使って料理を作る。「血液」だ。
スッポンの生き血。飲む以外に良い利用法はないものか。
スッポンの生き血。飲む以外に良い利用法はないものか。
スッポンの生き血といえば、絞りたてを酒で割って飲むのが鍋と並ぶ定番メニューとなっている。

しかし、やはり癖の強いものなので苦手な人も多いだろう。僕もあまり好きではなく、スッポンを食べるときはいつも誰かに譲ってしまう。

よって、一人でさばく場合は仕方なく捨てていた。だが今回、ついにこの血を活用できるある料理を思いついたのだ。
絞った血に塩を加え、ゼリー状に固める。これで中型のスッポン二匹分。
絞った血に塩を加え、ゼリー状に固める。これで中型のスッポン二匹分。
そのメニューとは、沖縄料理の「チーイリチャー」である。聞いたことのない方も多いだろうと思うので説明させてもらうと、「チー」は「血」のことで「イリチャー(イリチーとも)」は「炒め煮」のようなニュアンス。つまるところ血液の炒め物である。

本来、豚の血液を豚肉や豚の中味(内臓)、野菜と炒めたものなのだが、今回は豚の代わりをスッポンに務めてもらうのだ。
まずはスッポンの内臓と肉の細切れをたっぷりのニンニクで炒める。
まずはスッポンの内臓と肉の細切れをたっぷりのニンニクで炒める。
ポイントは集めた血をそのまま鍋に流し込むのではなく、塩を加えてゼリー状に凝固させること。これをよく揉みほぐしてから投入すると炒めやすい。また、個人的にはニンニクをこれでもかと入れまくるのが好み。
続いて揉みほぐした血と野菜を投入し、水気が飛ぶまでしっかり炒める。
続いて揉みほぐした血と野菜を投入し、水気が飛ぶまでしっかり炒める。
スッポンのチーイリチャー
スッポンのチーイリチャー
炒める際にもニンニクのみじん切りを入れたが、盛りつけ時にはさらにおろしニンニクをたっぷり添える。豚のチーイリチャーは肉体疲労時に食べるとたまらなく美味いのだが、これはどうだろう。
でーじご飯が進むやっさ。
でーじご飯が進むやっさ。
これがおいしい!!予想以上においしい!!

たっぷり入った血と肝、そして肉の濃厚な味わいと腸やエンペラの食感が絶妙なハーモニーを。ハーモニーを!

素材の味が強いことに加えて、ニンニクも大量に入っているので非常にパンチが効いていてご飯が進む。進みまくる。

今まで遠慮していたスッポンの血がこんなに優秀なおかずに変身するとは・・・!

今後、スッポンをさばく際に絞った血は、すべて炒めようと思います。
沖縄の食堂で食べた豚のチーイリチャー。カレーのようにご飯にかけて食べることも。
沖縄の食堂で食べた豚のチーイリチャー。カレーのようにご飯にかけて食べることも。

スッポンはどう料理してもうまいのだ

今回、いろいろと料理を作ってみてスッポンという生物が持つ食材としてのポテンシャルの高さを再認識できた。そして、スッポン鍋がいかに完成された料理であるかということも。

だが、工夫次第ではいくらでも応用が利きそうな食材である。今後はもっといろいろな料理に活用していきたいと思う。

ちなみに、スッポンのチーイリチャーとから揚げは、今後かなりの頻度で我が食卓に上ることが確定しております。
スッポン捕りの最中に遭遇したミシシッピアカミミガメ。お前もまずくはないんだけどなあ。
スッポン捕りの最中に遭遇したミシシッピアカミミガメ。お前もまずくはないんだけどなあ。
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