ひらめきの月曜日 2014年10月6日
 

便所サンダルに魅せられて

便所サンダルが空を飛ぶ。
便所サンダルが空を飛ぶ。
よく居酒屋のトイレなんかに置かれているゴム製のサンダル。

いわゆる便所サンダルである。

どこにでもあるので特に気にしたことがない、多くの人にとってはそんな存在ではないだろうか。

この便所サンダルに魅せられた人たちがいた。

これを読むときっと新しい世界の扉が開くと思いますよ。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。
> 個人サイト むかない安藤 ツイッター

便所サンダルを集める人

最初に話を聞いたのは便所サンダルを集めているコレクター、水守さんである。一見どこにでもいるおしゃれな若者なのだが、便所サンダルに出会ってからというもの、その人生が大きく変わった。
サンダルを見つめる目に熱がこもる。
サンダルを見つめる目に熱がこもる。
水守さんは言う。

「便所サンダル、私たちはベンサンって呼んでいるんですけど、基本となるのがこのニシベケミカルのダンヒルです。」

淡々とした語り口の中にも確かな自信と対象(ここでは便所サンダル)への愛着を感じる。

※この記事では僕も取材させていただいた方々に敬意を表す意味で、便所サンダルを「ベンサン」を表記させていただきます。

ところでいま水守さんの話の中に知らない言葉が二つ出てきた。「ニシベケミカル」と「ダンヒル」である。
書かれているのは「SANDAL」「V.I.C」そしてサイズの「L」のみである。
書かれているのは「SANDAL」「V.I.C」そしてサイズの「L」のみである。
「ニシベケミカル」は奈良にあるサンダルの製造メーカー。もともとは航空機用のゴム部品を製造していたらしいのだが、終戦を迎え、そのゴム加工技術をサンダルに転用した。

「ダンヒル」というのはこのベンサンのモデルネームである。どこにも「ニシベ」とも「ダンヒル」とも書かれていないのだが、ベンサン好きにはそれで通じるのだという。
一方、こちらは少しファッションに寄った感のある丸中製作所の「パール」。日本製。
一方、こちらは少しファッションに寄った感のある丸中製作所の「パール」。日本製。
「わたし一度ハマり出すと際限ないんですね。いまたぶん20〜30足くらいコレクションがあるんですが、ベンサン.JPさんとかに言わせると個人でも100足とか余裕で、それを思えば私なんてまだスタートラインに立ったばかりです。」

次々と新しい単語が出てくるので気が抜けないが、「ベンサン.JP」さんについては別途取材してあるので後ほど。
ベンサンを運ぶためだけに買ったというキャリア。
ベンサンを運ぶためだけに買ったというキャリア。
次々出てくる。
次々出てくる。
「ひとことでベンサンって言ってもほんといろいろな形と色があってやばいんですよ。」

いろいろな形ってどういうことだろう。やばい、という言葉が本当のやばさをもって迫ってくる。
「たとえばこれなんてほら、ここに大きく空間があるので履き心地がぜんぜん違うんです。」
「たとえばこれなんてほら、ここに大きく空間があるので履き心地がぜんぜん違うんです。」
水守さんおすすめのベンサンをいくつか履かせてもらったのだが、確かに見た目以上に履き心地に違いがあった。日本製のベンサンは履きこむにつれ足になじんでくるらしい。

そんな水守さん、今日は数あるコレクションの中から、とっておきの一足を履いてきてくれた。ニシベのダンヒル、メタリックグレーカラーである。
「もったいないのでめったに履きません。」
「もったいないのでめったに履きません。」

見つけたら全部買っておく

この「もったいないので」という部分が悩ましいところなのだという。

「本当のベンサン好きは観賞用と外履き用に加え、人に貸す用(布教用、という言葉を使っていた)で、同じサイズと色を3足ずつ買うらしいんですが、いかんせんわたしに今そこまでの財力がなくて。」

水守さんが履いているメタリックカラーのベンサンは、知り合いが地元のショッピングモール(浜松ピアゴ)で売られているのをたまたま見つけて電話をくれたものなのだという。

「ある分ぜんぶ買っといて!っていいました。」

即座に買い占めてもらったとのこと。デイトレーダーのようである。
これもベンサン。水守さんにはガラスの靴に見える。
これもベンサン。水守さんにはガラスの靴に見える。
水守さんはちょっと前まできれいな金髪だったのだが、ベンサンを集め始めてからというもの、美容室へ行く代金までもベンサンの購入につぎ込んでしまったため染め直せずにいるのだとか。ベンサンの魔力を感じるエピソードである。

人を狂わすベンサンの魅力。次はベンサンを販売する側の話を聞いた。

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