コラボ企画 2014年10月10日

ネットからテレビのなかを動かした

デイリーポータルZが読者とともにテレビに進出しました
デイリーポータルZが読者とともにテレビに進出しました
むかし見ていたテレビ番組で、ご意見をLINEで募集していますと言っていた。
なにか送ってみようと思ったのだが特に言いたいことはないのでそこで手が止まってしまった。しかたないのでスタンプをペタペタ送ってみたのだが、当然番組で紹介されることはなかった。

僕のような意識の低い人間でも参加できるテレビの視聴者参加企画はできないだろうか。毎月コラボをしているスカパー!にお願いして実現に至ったのだ。

ネットの歴史に新たな1ページを作った瞬間です。大きく出たぞ。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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これぐらい簡単な参加が理想

視聴者参加といっても意見を書いたりするのは面倒なので、ボタンを押すだけぐらいでいい。その結果も放送中のスタジオのなにかが揺れる程度でいいと思う。
押したら、揺れる、というあたりまえのことが遠く離れた場所でおきたら愉快だろう。

ボタンを押した自分の力がテレビの世界にちょっと作用しているところが見られれば満足だ。
参加企画というか、テレビに映りたくて中継のまわりでうろうろする気持ちに近い
参加企画というか、テレビに映りたくて中継のまわりでうろうろする気持ちに近い

揺らせ!スカッピー!の全容

こんなボタン押すだけ企画をスカパー!に相談したらほいほいと話が進んで実現することになったのだ。
番組はBSスカパー!(ch241)のリニューアル記念特番だ。スカパー!に加入してなくても見られる番組である。おお、どうしよう。

とりあえず細かいルールを決めた。
・ボタンは連打OK
・押された情報はデイリーポータルZのサーバに記録される
・たくさん押されると揺れる台を用意する
・台の上に人形を乗せて生放送のスタジオに置いてもらう
つまりサイト上のボタンを押すとテレビの中の人形がふらふら揺れるのだ。
宇宙規模の全体図
宇宙規模の全体図
台の上に置いたのはBSスカパー!のキャラクターであるBスカッピー。企画名は「揺らせ!Bスカッピー!」になった。
我々はただネットからテレビの世界にいたずらしたいだけだったが、キャラクターが立つことで一気にオフィシャル感が出た。
放送は10月4日の「チャンネル生回転TV ALLザップ」内、22時30分ごろである。
彼がBスカッピー
彼がBスカッピー
しかもスカパー!でBスカッピーを揺らして台から落としたら30万円相当の視聴者プレゼントを用意してくれた。なんだか急に押しかけたのに晩ごはんまでごちそうになっちゃってすいません奥さん、みたいな気持ちである。

結果はどうなったか・動画でご覧ください

成功である。ネットで押した力がテレビに伝わった。
なにもないところでものが揺れるのは、仕掛けが分かっていても不思議な感覚である。遠くにいる人の圧を感じる。デジタルなポルターガイストみたいだった。
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テレビってだけで緊張した

アイデア一発でさっそうと実現したように書いてしまったがまったくそうではない。
本番前数日間は失敗したらどうしようかと考えすぎて、失敗しても成功してもいい思い出!生きてるって素晴らしい!みたいな思考回路に陥っていた。

やっぱりいちばんの心配はテレビの生放送という点だ。デイリーポータルZのUSTREAMでは音はこれぐらいでいいですか?と視聴者に聞いたりしているが(ソーシャルPAと呼んでいる)、そんなノンビリした世界とは違うのだ。
まず人が多い(リハーサル中です)
まず人が多い(リハーサル中です)
いかにもテレビのスタジオである。そしてスタッフが多い。ネットの世界での撮影はたいてい1人か2人なのでこんなに人が大勢集まるとそれだけで萎縮する。
そしてここにBスカッピーが置かれる
そしてここにBスカッピーが置かれる
あの華やかな場所でBスカッピーは揺れてくれるだろうか。いたずら気分で企画したが当事者なのでそれどころではなくなった。
「揺らせ!Bスカッピー!」は22時30分からなのに、当日スタジオ入りしたのが16時、その前々日にも打ち合わせのためにスタジオに行っている。

人形を揺らすことを考えていた時間だけ背が伸びる体質だったら身長30mぐらいになってる。

揺らす装置はおなじみのテクノ手芸部

ボタンを押された状況に応じて台を揺らす装置はテクノ手芸部に頼んだ。スカパー!とのコラボでは3回めの登場である。
リハーサルを心配そうに見つめるテクノ手芸部のふたり。かすやきょうこさんとよしだともふみさん。
リハーサルを心配そうに見つめるテクノ手芸部のふたり。かすやきょうこさんとよしだともふみさん。
当初、揺らすだけの装置の予定だったが。実施1週間前になってやっぱり落ちるぐらい揺れるモードも作って欲しい、でも上に乗るBスカッピーはまだできてないんだよねーという仕様変更があったため、打ち合わせにお菓子を持っていくなどの対策をとった。
9月26日 もなかをもってしても雰囲気は明るくならず(モノクロは心象風景です)
9月26日 もなかをもってしても雰囲気は明るくならず(モノクロは心象風景です)
とはいえ次の週にはきちんと仕上げてくるのはさすがである(気を使ったキャプション)
ボタンの押され具合に応じて台の天板を揺らす装置は完成した。
ボタンの押され具合応じて、小揺れ→中揺れ→大揺れと三段階に揺れる。ボタンがたくさん押されたときに大揺れになり、そのときBスカッピーが倒れる、はずである。

ものすごく盛り上がったときにモーターから煙が出たりすると伝説の生放送として名を残すことになるが、スカパー!の受付にも出禁リストとして名を残すことになるので避けたいところである。
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そういえばデイリーポータルZのサーバは大丈夫なのか

この企画、テレビを見ている人が一斉にボタンを押すのである。テレビといったら視聴率1%が1万人の世界だ(地上波の場合)。
かつてUSTREAMで似た企画を行ったことがある。見ている人がボタンを押すとその数に応じてすね毛を剥がす装置を作ったのだ。そのときは500人が一斉にボタンを連打したらあっさりとサーバが落ちた。
2011年.そのときのゲストは津田大介さんでした
2011年.そのときのゲストは津田大介さんでした
今回、サーバが落ちるとBスカッピーが揺れる前にどれぐらい押されたのかがわからなくなってしまう。

電話番号の下1桁が奇数の人だけ押してくださいという制限を設けようとしていたのだが(押す人の電話番号なんてわからないけど雰囲気で)、エンジニアがサーバ20台体制を作ってくれた。なんだ20台って。パレードか。

いま心配なのはあとから20台体制の社内費用くださいと言われることだけである。
急な増強にも対応、インフラは安心のニフティクラウドです(この一文で社内費用をなしにしてくれますように)。

Bスカッピーが滑る!

本番直前、Bスカッピーを立たせてテストで軽く揺らしてみる。すると倒れはしないもののジェイムス・ブラウンのようにするすると横に滑ってゆく。
揺らす前
揺らす前
揺らした後
揺らした後
すぐにセンターから外れてしまうのだ。まずい。台の脇のほうにひっそりと立つBスカッピーになってしまう。

原因は足の裏に貼った文字であった。
足の裏にプレゼント応募のキーワードが貼ってある
足の裏にプレゼント応募のキーワードが貼ってある
文字で滑るようになっていた。2日前のテストではなかったことである。大慌てでBスカッピーのバランスと台の傾く角度を調整してなんとか滑らないようにした。


現場で調整するなんて本当のエンジニアっぽくなってきたが、トラブル内容が人形が勝手に動くというオカルトなものであった。

BSスカパー!の公式アカウントに「テストを重ねる」と書かれていたが、必死に人形の動きをなだめていた。
BSスカパー!の公式アカウントに「テストを重ねる」と書かれていたが、必死に人形の動きをなだめていた。
衛星放送やサーバ20台などテクノロジー満載の話題で来ていたが、ここにきて急にスピリチュアルな話になった。
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ところで僕の作業は

この当日、僕の作業はボタンを出すことだけだった。 「揺らせ!スカッピー!」のコーナーがはじまったらボタンがついているページに差し替えるのだ。
ボタンがない状態のページ、これを…
ボタンがない状態のページ、これを…
「揺らす」というボタンがある状態に差し替える
「揺らす」というボタンがある状態に差し替える
手作業とはいえ、クリック数回でできる作業である。しかしこれをしないと揺らすためのボタンが現れないのだ。簡単だけど企画の根幹を握る。オーケストラでいうティンパニーみたいな役割である。
しかし基本は待つ仕事(右2人がスカパー!チーム、左3人がデイリーチーム、デイリー笑ってない)
しかし基本は待つ仕事。右2人がスカパー!チーム、左3人がデイリーチーム。デイリーチームが笑ってない。
当日の手順はパワーポイントでまとめてあったのだが、事前にノートに手で書いて暗記していた。受験生か。
秘密のノート
秘密のノート

そして本番へ

そして22時をすぎて本番が近づく。このまま黙って帰っちゃおうかと思っていたが予想通り本番の時間はやってくる。
本番のスタジオに設置される
本番のスタジオに設置される
コーナーが始まる
コーナーが始まる
って、ふざけてる場合ではなくファイルのコピーをするんだったんだ
って、ふざけてる場合ではなくファイルのコピーをするんだったんだ
このあと本番では無事成功するわけだが、そのあいだはいっぱいいっぱいになってて写真を撮ってない。
本番直前に段取りを確認している写真の次が…
本番直前に段取りを確認している写真の次が…
帰りに撮ったスナックの看板の写真だった
帰りに撮ったスナックの看板の写真だった
でも大丈夫。ライター住さんに一部始終を動画を撮ってもらってたのでそちらでご覧ください。
感動的なBGMとともに

またやるかもよ

ネットと連携して揺れる台座は完成したので、また生放送に投入する可能性はある。

今回、ボタンを押しそこねた人は次の放送でぜひ押していただきたい。意識が低いテレビとネットの連動企画をぜひ体験して欲しい。何にも考えなくて大丈夫。泥酔しててもOK!
自分のクリックでテレビの中のものが揺れるのはおもしろいですよ。
本番直前、自分が台から落ちてた
本番直前、自分が台から落ちてた
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