フェティッシュの火曜日 2014年10月14日
 

君は山形県庄内地方の麺、麦切りを知っているか

うどんでも、冷麦でも、蕎麦でもない、おいしいご当地麺を食べてきました。
うどんでも、冷麦でも、蕎麦でもない、おいしいご当地麺を食べてきました。
麺類好きが住む日本には、その土地に根付いた郷土の麺というものが数々ある。最近知ったのだが、山形県の日本海側に位置する庄内地方では、「麦切り」というものをよく食べるらしい。

庄内出身の人から麦切りとは何かと聞いたところ、小麦粉を塩水で捏ねて細く切ったものだそうだ。麦を切ったから麦切り。それってうどん、あるいは冷麦とは違うのだろうか。

どうにも気になったので、山形まで麦きりを食べに行き、さらに地元の製麺所で作り方を習ってきた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

庄内地方で人気の麦切り屋さんへ

山形県には4年間住んでいたことがあるのだが、内陸部だったためか麦切りという麺料理の存在は、全く知らなかった。

内陸部は蕎麦・中華そばが中心の麺類文化圏であり、うどんといえば家で食べる乾麺が中心(めんつゆにサバの缶詰とか納豆を入れたりする)。あとは芋煮の仕上げに入れるくらいか。

そんな山形の日本海側でのみ愛されているという麦切りを食べにやってきたのは、鶴岡市にある寝覚屋半兵エ。麦切りのおいしい店はどこかと庄内地方在住の2人に尋ねてみたら、声を揃えてこの店の名が帰ってきたという有名店だ。
生……なんとかと、麦切りの店。
生……なんとかと、麦切りの店。
広い駐車場がいっぱいになるほどの繁盛店らしい。
広い駐車場がいっぱいになるほどの繁盛店らしい。
休日の昼飯時に来たということもあってか、のれんの外にまでお客さんが溢れている。

とりあえず店内に入ってみると、先にメニューを注文してから、番号札で席の空く順番を待つという合理的なシステムが出来上がっていた。さすがは行列のできる繁盛店である。
並ぶ前に注文をするシステム。名前の由来は麦切りと直接関係なかったので省略。
並ぶ前に注文をするシステム。名前の由来は麦切りと直接関係なかったので省略。
メニューの種類に悩む要素はほとんどなく、麦切りか蕎麦の2択のみで、あとは量の問題のようだ。どちらも冷たいやつである。

山形では大人数で蕎麦を食べる場合、大きな板や木箱に蕎麦を乗せた「板蕎麦」と呼ばれるものを注文するのだが、この店でも同様に3人前以上だと板(というか四角いお盆)に乗ってくるらしい。

そして板には麦切りと蕎麦を相乗りさせるのがこの店のおすすめのようで、3人前だと麦切りと蕎麦のどっちを多くするかを問われる。呉越同舟ならぬ麦蕎麦同板だ。

これが山形県庄内地方の麦切りだ!

しばらくして席を案内され、そこで大人しく待っていると、デーンとお三人様用の麦切りと蕎麦の相乗りというか合い盛りがやってきた。

私は子供の頃、楕円形の皿(主にヤマザキのパン祭りでもらうやつ)の中央にご飯を盛り、左右にカレーとシチューをよそって食べるのが好きだったので、この合い盛りというスタイルには引かれるものがある。
左の多い方が麦切り、右が蕎麦。
左の多い方が麦切り、右が蕎麦。
さてやってきた麦切りをみると、なるほど細い。最近よくみかける讃岐系のうどんよりもだいぶ細いが、かといって冷麦よりはだいぶ太いという、あまり見かけない直径である。

そしてお隣に盛られた蕎麦は、そば粉の割合が低めの冷麦寄りの蕎麦のようだ。
色も太さも似ている二人。
色も太さも似ている二人。
伸びないうちにさあ食べようと思ったら、薬味にワサビとカラシが用意されていて混乱する。ワサビはわかるけど、カラシってなんだ。おでんか。

店員さんに聞いてみると、あくまでお好みではあるけれど、ワサビは蕎麦用で、なんとカラシは麦切り用とのこと。ショウガでもワサビでもなくカラシなのか!

こういう本当に微妙な食文化の違いが、遠くまで来ることの醍醐味なのかもしれない。
しかも黄色い練りカラシではなく、ソーセージが似合いそうな粒マスタードだ。
しかも黄色い練りカラシではなく、ソーセージが似合いそうな粒マスタードだ。

麦切りの喉越しが素晴らしい

麦切りも蕎麦も、つけるつゆは共通のようだ。一応薬味が混ざらないように気を使って、麦切りの上の方にカラシをちょこんとつけてから、下半分をつゆにザブンとダイブさせ、一気にズルズルっとすする。

なんだか刺身を食べるとき、ワサビを醤油に溶いてはいけないよと語るCMを思い出した。
ズルズルズル……。
ズルズルズル……。
勢いよくズルズルっとすすってみると、これが私の知っている範囲のうどんにはない味だった。なるほど、これは麦切りという独立した一つの麺だ。きっと自家製麺なのだろう。

ツルツルっと喉を通っていくこの絶妙な細さと表面の滑らかさ、そして固くはないんだけれど噛めばシコシコとした腰を感じる適度な弾力。

ご当地うどんといえば、名古屋のきしめん、山梨のほうとう、群馬のひもかわなど、一般的なうどんよりも太いことにアイデンティティを求めた麺が多い中で、あえての細麺という伝統を貫く独自路線。
試しに蕎麦と一緒に食べてみたけど、完全に麦切りの勝ち。今度来るときは、麦切りだけでいいかも。
試しに蕎麦と一緒に食べてみたけど、完全に麦切りの勝ち。今度来るときは、麦切りだけでいいかも。
麦切りの喉越し最高。これはツルツルという言葉が日本一似合う麺かもしれない。この喉越し重視の麺には、やっぱりカラシが合うような気が何となくするようなしないような。

おでんの具にチクワブという小麦粉の塊があるから、やっぱり麦切りにはカラシが合うのかもしれない。うん、カラシだ。郷に入れば何とやら。
しばらくすると蕎麦湯が運ばれてきた。これは麦切りだけの店だとできないサービスだ。
しばらくすると蕎麦湯が運ばれてきた。これは麦切りだけの店だとできないサービスだ。
ちなみに冬になると、豚肉を煮た熱いつゆを掛けた肉麦切りというメニューもあるそうで、このツルっとした麺が熱いつゆに入ると、一体どうなっちゃうんだろうという期待が高まる。冬にサザンやチューブが出す曲に思いを馳せるが如し。

同じくつゆに豚肉を入れる武蔵野あたりの肉汁うどんと、いつか食べ比べをしてみたいところである。
  キュウリの漬物が甘くて驚いた。一回の食事で何度もびっくりできてお得である。
キュウリの漬物が甘くて驚いた。一回の食事で何度もびっくりできてお得である。
寝覚屋半兵エ
山形県鶴岡市馬町字枇杷川原74

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