ひらめきの月曜日 2014年10月27日
 

深夜の街をみんなで徘徊する謎イベント

深夜の街を行くナゾの集団についていった
深夜の街を行くナゾの集団についていった
深夜、静まり返った東京の街を集団で練り歩いている人たちがいるという。いったい何を企んでいるのだろうか? 10月某日、そんな深夜徘徊の集いが開かれるということで、おそるおそる参加してみることにした。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

深夜徘徊の首謀者を直撃

深夜徘徊、少年警察活動規則においては「不良行為」に該当するそれを、集団で行っている人たちがいるという。もしやとんでもないテロリスト集団なんじゃないか? 

その真偽を問いただすべく、まずは首謀者に話を聞いてみることにした。深夜徘徊イベントってなんなんですか?
「深夜徘徊は自分との対話です」
「深夜徘徊は自分との対話です」
なぜかアイドルっぽく登場してくれたのは、深夜徘徊の仕掛け人である宮原さん。元ニートで今は「いっぱんじん連合」という一般社団法人の代表理事を務めている。

「僕自身、大学生の時に深夜徘徊の魅力にハマり、週に一度は深夜徘徊をして朝や昼間まで歩き続けるのがクセになりました。昼間の街にはない刺激と冷製の世界に自らを放り込むことで、自分との対話ができます。いわば、座禅や瞑想と同じです」

うむ、どうやらちょっとあやしいだけで、アブナイ人ではなさそうだ。

しかし深夜徘徊の魅力については正直までピンとこない。そこで、じっさいにイベントに参加させてもらうことにした。
集合は深夜0:00過ぎ、東京駅。終電もなくなってしまったので、もう後戻りはできない
集合は深夜0:00過ぎ、東京駅。終電もなくなってしまったので、もう後戻りはできない
あ、でもどうしても辛くなったらタクシーで逃亡するという手段もあるな
あ、でもどうしても辛くなったらタクシーで逃亡するという手段もあるな
すでに20人ほどの参加者が集まっていた
すでに20人ほどの参加者が集まっていた

男女20名ほどの参加者

スタート地点となる東京駅改札口にはすでに20人ほどが集まっていた。これみんな、深夜徘徊の参加者のようだ。なお、半分は女性である。お肌のゴールデンタイム(22:00〜2:00)を逃してまで深夜徘徊に臨まんとする、並々ならぬ意気込みを感じる。
出発前に配られる「深夜徘徊のしおり」。スケジュールや注意事項の他、コースの地図や見どころも書かれている
出発前に配られる「深夜徘徊のしおり」。スケジュールや注意事項の他、コースの地図や見どころも書かれている
道中の腹ごしらえと糖分補給にとお菓子ももらえる
道中の腹ごしらえと糖分補給にとお菓子ももらえる
出発前に宮原さんから簡単な注意事項とスケジュールの説明があり、0:50、いよいよ徘徊がスタートした。ここから始発が動く5:00頃まで、約11kmの道のりをゆっくり歩くという。

注意事項については「のんびり楽しくマナーと交通規則をを守って歩こうね」というくらいで、特に小難しいルールはないようだ。ちなみに職質されたら宮原さんを呼んでくれとのこと。生粋の深夜ハイカーである代表はこれまで幾多の職質をくぐり抜けてきたプロでもあるというから頼もしい。

「徘徊中は無理に誰かとコミュニケーションをとろうとしなくても大丈夫です。一人で静かに歩きたい人はぜひそうしてください」と宮原さん。なるほど、思い思いの徘徊スタイルで、深夜の街を満喫するのが当イベントの趣旨のようだ。

こうしたイベントでいわゆる「ぼっち」になりがちな自分にとっては、そういう気遣いは有難い。これで心置きなくぼっちになれる。
グループを作って会話しながら歩く人、輪から少し距離を置き、ひとり黙々と歩く人、その徘徊スタイルはさまざま
グループを作って会話しながら歩く人、輪から少し距離を置き、ひとり黙々と歩く人、その徘徊スタイルはさまざま
丑三つ時の東京と深夜ハイカー
丑三つ時の東京と深夜ハイカー

趣向を凝らしたコース設定

今回の深夜徘徊は東京駅から丸の内、日比谷公園を抜け、東京湾岸沿いを通って天王洲アイルを目指すコースだ。なお、毎回コースは変わるらしい。事前に宮原さんをはじめとするスタッフがきちんと下見をしているというだけあって道中には見どころが多く、単純に散歩コースとしても楽しいものになっている。
こちらは有楽町の東京国際フォーラム。ところどころ、東京の名所を通過するコース設定が心憎い。
こちらは有楽町の東京国際フォーラム。ところどころ、東京の名所を通過するコース設定が心憎い。
静まり返る巨大施設
静まり返る巨大施設
参加者を先導しつつ、道中の見どころについて解説する宮原代表。これまで14回も開催しているというだけあって、さすがにこなれている
参加者を先導しつつ、道中の見どころについて解説する宮原代表。これまで14回も開催しているというだけあって、さすがにこなれている

深夜ならではの風景

深夜の街の風景はとても穏やかで、同時に何かが起こりそうな危険な香りを秘めている。なるほど、静寂とスリルが入り混じるこの感覚は深夜徘徊ならではのものだろう。ひとりだとちょっと怖いが、みんなで歩けば安心だ。
でも、交番の前を通る時はドキドキする
でも、交番の前を通る時はドキドキする
暗がりの中で不気味な存在感を放つポルシェ
暗がりの中で不気味な存在感を放つポルシェ
月夜に照らされ、ひと際艶めかしい女神像
月夜に照らされ、ひと際艶めかしい女神像
深夜ハイカーを導くように点る街灯を頼りに
深夜ハイカーを導くように点る街灯を頼りに
ただ、ひたすらに歩く
ただ、ひたすらに歩く
そんな我々を見守るように、温かな明かりを灯す東京タワー
そんな我々を見守るように、温かな明かりを灯す東京タワー
歩くこと約2時間30分。ようやくコースの半分を消化したところで休憩となった。ゆっくりとはいえ、すでに5kmくらいの道のりを歩いている。ぼちぼち疲れも見え始める頃合いだが、参加者はまだまだ元気な様子。途中でイヤになってタクシーで帰っちゃう人とかいるんじゃないのかと思ったが、そんな気配はまるでない。
休憩ポイントの竹芝ふ頭公園にて。休憩もそこそこに東京湾の夜景をカメラにおさめる参加者たち
休憩ポイントの竹芝ふ頭公園にて。休憩もそこそこに東京湾の夜景をカメラにおさめる参加者たち
わずかに点るホテルの明かり。きっと、とんでもなく卑猥なパーティーが催されているに違いない
わずかに点るホテルの明かり。きっと、とんでもなく卑猥なパーティーが催されているに違いない

無限のように感じられる時間

夜の澄んだ空気を感じながら、暗闇の世界をひたすら歩く。なんだか時間は無限にあるように思えてきて、日々の悩みや先送りにしている様々な事柄について、ゆっくりと思いめぐらすことができる。なにかと忙しい昼間には、こうした時間はなかなか持てない。なるほど、深夜徘徊の魅力が少しずつ分かってきたぞ。
15分の休憩後、後半戦のスタート
15分の休憩後、後半戦のスタート
後半戦はふ頭沿いを歩く。工場や倉庫が立ち並ぶエリアにはますます人気が感じられず、静寂の中に深夜ハイカーたちの足音のみが響く。
芝浦の倉庫群を抜け
芝浦の倉庫群を抜け
運河を横目に歩く歩く
運河を横目に歩く歩く
交番もみんなで通れば怖くない
交番もみんなで通れば怖くない
そうこうするうち、最後の休憩ポイントへ
そうこうするうち、最後の休憩ポイントへ
ゴールまで残り2〜3kmというところで、最後の休憩ポイントである芝浦の埠頭公園に到着した。
子ども向けの遊具が充実した公園
子ども向けの遊具が充実した公園
深夜のハイテンションにまかせて、遊具を満喫する参加者
深夜のハイテンションにまかせて、遊具を満喫する参加者
滑り台にはしゃぐ大人たち
滑り台にはしゃぐ大人たち
深夜のテンションがそうさせるのか、子どもに戻ったように夜の公園ではしゃぐ参加者たち。眠気も手伝い、まるで夢の中にでもいるような光景が広がっていた。
じっさい夢の中にいる参加者もいた。時刻は4:00。さすがに眠くなるのも無理はない
じっさい夢の中にいる参加者もいた。時刻は4:00。さすがに眠くなるのも無理はない
ともあれゴールはあとわずか。気力を振り絞り天王洲アイルへ向かう
ともあれゴールはあとわずか。気力を振り絞り天王洲アイルへ向かう
夜のヒマワリに勇気をもらいつつ
夜のヒマワリに勇気をもらいつつ
深夜の行軍はつづく
深夜の行軍はつづく
気づけば時刻は5:00。少しずつ空も白み始めてきた。スタッフの方によれば、「深夜徘徊は夜明けまでにゴールしてなんぼ。途中で明るくなると負けた気がする」とのこと。なるほど、深夜ハイカーにもそれなりの流儀や哲学があるようだ。急がねば。
間もなく夜明け
間もなく夜明け
心なしかピッチが上がる
心なしかピッチが上がる
するとほどなく、運河を見渡すデッキに到着。先頭を行く宮原氏の足が止まる。

「みなさん、ここがゴールです」

唐突過ぎるその宣言に戸惑いつつも、湧きおこる拍手。全10.8km、推定総歩数1万3503歩、消費カロリーおにぎり4.3個分の深夜徘徊は、こうして幕を閉じた。
ついにゴール。寂しいような、ホッとしたような
ついにゴール。寂しいような、ホッとしたような
これまでの長い道のりを振り返りつつ、足を休める参加者
これまでの長い道のりを振り返りつつ、足を休める参加者
最期には閉会式が行われ、参加者たちの労をねぎらう「修了証書」が配布された。一人前の深夜ハイカーとして認められた気がしてなんだか誇らしい。なお、2回目以降の参加者には段位が与えられていた。なんとも気の利いた演出である。コース設定から、休憩ポイントの選定、こうした細かいサービスも含め、なんともホスピタリティが行き届いたイベントだった。テロリストとかいってごめん。
2回目ということで初段認定された女性参加者。羨ましい
2回目ということで初段認定された女性参加者。羨ましい

深夜という自由を満喫。それが深夜徘徊

というわけで、深夜徘徊イベントは楽しかった。楽しいだけでなく、思考をクリアにし、抱えていたストレスもいくぶん軽くなったようだ。

仕事、家事、家族、友人…。
昼間は何かしらの事象や人間関係に拘束されている我々も深夜なら自由になれる。たまにはそんな貴重な時間を使い、深夜の街に身を投じてみるのも悪くないかもしれませんよ。
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