特集 2014年10月29日

高円寺タウンマガジン「SHOW-OFF」14年の歴史

バックナンバーの一部
バックナンバーの一部
高円寺の季刊タウンマガジン『SHOW-OFF』。無料ながら中身が充実している。この冊子は今年で14年目を迎えた。なぜ無料なのに成り立っているのか。廃刊のピンチはなかったのか。激動(?)の歴史を編集長に聞いた。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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ノーギャラだけど楽しいので文句はない

個人的にフリーペーパーが大好きで、90年代は豪華連載陣だったパルコの『GOMES』や、いろんな人の家に居候して家主と対談する『居候ライフ』などを愛読していた。

僕が住んでいる高円寺にも『SHOW-OFF』という無料のタウンマガジンがある。高円寺といえば──。
古着屋に
古着屋に
ライブハウスに
ライブハウスに
飲み屋
飲み屋
『SHOW-OFF』はこうした街の息づかいを切り取るような内容で、読み物として面白い。自分でも「看板ムスメを探せ!」というコーナーを連載している。唯一のノーギャラ仕事だが、楽しいので文句はない。

よく14年間も続いているなあ

発行部数は1万部。飲食店、古着屋、美容室などに置かれている。
『SHOW-OFF』inカフェ
『SHOW-OFF』inカフェ
話題の「看板ムスメを探せ!」
話題の「看板ムスメを探せ!」
小心乙女が怪しい店に一人で入る連載
小心乙女が怪しい店に一人で入る連載
配布場所一覧
配布場所一覧
しかし、無料なうえに造本にもお金をかけていそうな、この冊子。よく14年間も続いているなあと常々思っていた。このあたりの歴史を編集長に聞いてみたい。

表紙の著名人もノーギャラ

訪れたのは南口にある編集部。
11月に開催される「高円寺フェス」の看板も
11月に開催される「高円寺フェス」の看板も
編集長の佐久間ヒロコさんが出迎えてくれた。
マニキュアがカラフルである
マニキュアがカラフルである
好きな芸能人はB21スペシャルの「ミスターちん」だという佐久間さん。それはさておき、テーブルの上にはずらりと並んだバックナンバー。おお、14年間の歴史を感じる。
右上は10周年の大判特別号
右上は10周年の大判特別号
表紙を飾るのはいずれも高円寺にゆかりのある著名人たちだ。
うん、なかなかに濃い
うん、なかなかに濃い
そういえば、彼らもノーギャラなんですか?

「そうなの。皆さん、意外と好意的に出ていただいて。もちろん、ライター、カメラマン、デザイナーといったスタッフの方々もノーギャラ。その代わり好き勝手やっていいですよ、というスタンスですね。読者も『みんな、自由にやりたいことをやってるんだなあ』という空気を読み取っているはず」

この雰囲気を守るために、広告もあまりたくさん取らないし、クーポンなどの提案も断っているという。

「正直、制作費は今でも持ち出し。主催イベントなんかの助成金を回して、ぎりぎり成り立っているかんじです」
懐かしい記事も出てきた
懐かしい記事も出てきた
「コンセプトは、あまりハードコアじゃないサブカルというかんじ。記事内容も基本的にはお任せ。以前、ライターの女の子が『SM特集をやりたい』って言ってきたんですが、それはちょっと高円寺っぽくないかなと思ってNGにしたぐらいですね」

1号でやめようと思っていたら、ことのほか評判がよくて

そもそも、創刊のきっかけは?

「当時、私が高円寺で『HOT WIRE』というカフェをやっていて、そのお店の本を作ろうと思ったの。で、やり始めるといろんな人が協力してくれて、だったらタウンマガジンにしちゃえということになったんです」
これ1冊しか残っていないという創刊号
これ1冊しか残っていないという創刊号
「作るのに半年以上かかったから、発行は冬なのに表紙の女の子は夏の服装(笑)。最初の何号かは表紙のモデルは一般人でしたね。当時は古着屋が全盛期で200軒ぐらいあったはず」

ちょっと中を見てみよう。
高円寺らしい特集
高円寺らしい特集
「今ではやらない」というタトゥー記事
「今ではやらない」というタトゥー記事
ああ、これは読んでみたい
ああ、これは読んでみたい
「1号でやめようと思っていたら、ことのほか評判がよくて。『広告出すから続けなよ』という声に押されて今までやってきたかんじですね」

創刊時は16ページだったが、ボリュームは少しずつ増えていき、現在は36ページだ。「捨てられたくない」という思いから、表紙につるつるのコーティング加工を施してある。

しかし、1万部も刷ると配布するのが大変なのでは?

「ほんっと大変ですよ。私ともう一人のスタッフの二人だけで毎回配ってるんだから。高円寺以外では新宿と御茶ノ水のディスクユニオンさんに置いてますよ」

無料だと「何となく読んでみようか」ってなる

廃刊のピンチはなかったのだろうか。

「表紙が決まらなくて焦ることはたまにあるけど、期日通りに出なかったことは今までないですね。むしろ、私が疲れて何度も『やめる』って言ってるんですが、そのたびにデザイナーさんとかに『いやいや、続けましょうよ』って説得されて(笑)」
なるほど、なるほど
なるほど、なるほど
佐久間さんいわく、「最近になってようやく、今の態勢ならこの先も続けられる」という確信を得たという。
数字の2が転んでいるのもご愛敬(右上)
数字の2が転んでいるのもご愛敬(右上)
過去の中で印象に残っている記事を聞くと、「あ、『高円寺で一番入りづらい店』っていう記事を書いた人がいて。あれは店にバレたらまずいなあと思った記憶が(笑)」。
こちらがその記事である
こちらがその記事である
「私、もともと紙が好きなんです。だから、フリーペーパーにも愛着がある。お金を出して買う雑誌は、それを読みたい人しか読まないけど、無料だと『何となく読んでみようか』ってなるでしょ。返本もないから配りきれるし、そのあたりが強みですね」

今後、やりたいことはありますか?

「うーん、あっ、この近くに飲食店がごちゃっと固まった路地があるんですが、あそこを盛り上げたいですね。提灯とかぶら下げてお祭りをやるとか。お祭り大好きなんですよ(笑)」
ここが、その一画
ここが、その一画
「高円寺にはこれまでもいくつかフリーペーパーが創刊されて、そのたびにおびやかされてきましたが、残っているのはウチだけですね。くだらないことを一生懸命やり続けるのが大事ってことでしょうか(笑)」

「高円寺フェスもよろしくね」

なお、同編集部では「高円寺フェス」(http://koenjifes.jp/)も主催している。佐久間さんによれば、今年の見どころは「高円寺商店街のゆるキャラ発表」。審査委員長は『SHOW-OFF』の表紙にも登場しているみうらじゅん氏。

開催は11月1日(土)、2日(日)。大道芸、プロレス、トークショーなどなど、内容も盛りだくさんだ。この機会にぜひ高円寺に足を運んで、そして『SHOW-OFF』を手に取ってみてほしい。
応募890作品の中から選ばれるのは!?
応募890作品の中から選ばれるのは!?

<取材協力>
高円寺タウンマガジンSHOW-OFF
http://showoff.jp/
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