チャレンジの日曜日 2014年12月14日
 

書き出し小説大賞・第63回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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書き出し小説秀作発表第六十三回目である。

さて、ついに今週18日と発売が迫った単行本!実は先日見本誌が届きその素敵な仕上がりにニンマリの毎日である。まずはできてたホヤホヤの画像をどうぞ!
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さらにニュース!単行本発売を記念したスペシャル企画が、発売元の新潮社サイトで公開中である。題して書き出し小説・出張版。ここでは「本屋」をモチーフにした書き出し小説を募集中。最優秀者には素敵なプレゼントもご用意。こちらもふるって参加願いたい。それでは今週もめくるめく書き出しの世界をご堪能ください。

書き出し自由部門

さっきまで乗っていた観覧車は、街の景色に戻っていた。
TOKUNAGA
夕暮れのシルエットかイルミネーションか、不可逆な時間への切なさも感じるきれいな秀作。
ストーブから近い順に仏像が熱い。
TOKUNAGA
3番目の地蔵くらいから手で触れる。
24種類もあるのに、すべて同じ味がした。
大伴
その24種類、食べ物じゃない気がする。
ほこりが西陽にきらきらするほどソファを叩いて、ここに座れと彼は言う。
xissa
少女漫画のキラキラ演出ってひょっとして埃かもしれない。
口ヒゲの濃い小学生に敬語を使って、その日はなんとなく終わった。
茂具田
無為な一日の無為なエピソードがさらに無為を際立たせる。
骨盤のカーブをなぞる様な手つきで団地の鉄筋を撫ぜた。
TOKUNAGA
官能建築小説。
町はどこも死んだ水の匂いがした。ホテルでノミに刺された私は、黒いストッキングを穿いていた。
xissa
色彩を拒絶した灰色の世界。
だて巻き王子の冒険には小粋な人情話がつきものだった。
Mch
大人も楽しめる児童向け読み物、って感じがよい。
お友達を紹介して生計を立てている。
柴咲ハコ
人はここまで開き直れる。
三塁上で落ち着きのない祖母の姿を見て、僕は直後のホームスチールを予感した。
千百十
クロスプレーの祖母が心配。
「だーれだ?」大きく傾いたビル清掃のゴンドラを見つけたところで両目をふさがれた。
紀野珍
ふさがれた状態で周囲から悲鳴!?
古いアスペクト比のコマーシャルが終わる頃、郷愁に浸るおれがいた。
人が生きてる
「アスペクト比」に郷愁を見出した作者の感性に脱帽。
分島さんが「葵ちゃん」と叫ぶと、田んぼにいる蛙が皆こちらを向いた。
prefab
人名がいいのだろうか、「間」がいいのだろうか、説明できない可愛さが印象に残る作品。
「フェミニズムねえ…」ステラおばさんはマグカップを見つめ、寂しそうに笑った。
まむーん
こちらもサラっとしつつ、妙にじんわりくる味わい深い作品。
想い出もトサカの色も随分、褪せた。
義ん母
縁日で買ったヒヨコがいまや老鶏……と解釈した。
ゆるキャラが、人を着だした。
豆腐鉄工所
近い将来、あると思います。

今回はTOKUNAGA氏の作品が三本。さすがミスター書き出しだけあって貫禄の出来。とくに冒頭作は人がふだん無意識にスルーしている時間感覚がふっと思い起こされて軽い目眩さえ覚える秀作。Mch氏のだて巻き王子、最初に浮かんだのはやなせたかし氏のイラストキャラだが、もう少し大人向けの気もする。もし実写なら誰をキャスティングするかなんて想像するのも楽しい。prefab氏とまむーん氏の作品は妙に印象に残る。どちらも強烈なインパクトはないもののすっと入ってくるのは作者の中に情景やキャラがはっきり出来ているからではないだろうか。凝った作品より肩の力の抜けた作品が素直に目に飛び込んでくる場合もある。

つづいては規定部門。今回のモチーフは「プレゼント」であった。ひと足早い言葉のクリスマスプレゼントをどうぞ!

規定部門・モチーフ「プレゼント」

それは着払いで届いた。
紀野珍
朝起きると近所に捨ててあった自転車が枕もとにあった。
ぴすとる
サンタの手口は家庭の数だけある。
Mch
いちばん大きな包みは、箱ティッシュ五個だった。
大伴
本当に発送をもって発表にかえているんだ、と知った日の興奮は忘れがたい。
紀野珍
クリスマスイヴの夜勤で、少し照れたやっさんが肉マンを差し出して「今日はそういう日だからよ」と言ってくれた。
もんぜん
26日まで残り3秒。煙突に向けて放たれたトナカイからのラストパスを、サンタはダンクでねじ込んだ。
えむ毛
「におうとうれしくなるの」。娘からのプレゼントはポップコーンの空き容器だった。
山本ゆうご
「プレゼントって言っても、俺のサインボールしかないんだけどなあ。」五年後、あいつは覚えてなかった。
ウウタルレロ
プレゼント用という言葉が、プレ前頭葉というなんだか前頭葉になりきれない感じの言葉に変換される。
不眠
机の下で渡したら、椅子の下に置かれた。
suzukishika
冬物のポケットから千円。助かります、去年の俺よ!と大盛り注文した。
いがそ君
「ぷれぜんてっど、ばーい」と、娘が初めてしゃべった。
大伴
試合の前に花束を贈呈してくれた美女が決勝戦の相手とは、この時は露ほども知らなかった。
あつし
持ち主不在の花束は、一席分の座席を取りながら山手線を移動していく。
夏猫
欲しくない物をもらっても、喜んだ顔をできるようになり、そしてしなくなった。
ocamo
「給料ふた月分、サプライズ抜きで」無駄のない注文が返ってきた。
魚漫
交差する二筋の飛行機雲が、プロポーズに対する彼女の答えだった。
おかめちゃん
一族に代々伝わる水晶髑髏が次期当主の私にプレゼントされた。
キンゴロー
自分にラッピングしている男が最上階のボタンをあごで押した。
松っこ
「良い意味で」という言葉を、最後に贈った。
TOKUNAGA
喜ばれるものばかりがプレゼントではない。「がっかり」もまたひとつのサプライズである。今回は書き出し小説らしくがっかり系プレゼントが多かったが、そのがっかりをどう味付けするかが勝負だったように思う。では上から順番に。
大伴氏のティッシュ5箱。たぶん持った瞬間分かる。もんぜん氏の作品、やっさんのキャラが微笑ましい。バレンタインにもくれるのだろうか。山本ゆうご氏、得意の娘ネタ。かわいい。不眠氏、言葉いじりもここまでいくと採用してしまう。suzukishika氏の作品はいろんな解釈ができて面白い。単に冷たくあしらわれたようにも取れるし、二人がひと目をはばかる関係のようにも読める。実際はどうなんだろう? いそが君、あるあるのひとつだけど「助かります」の敬語に笑ってしまった。夏猫氏の作品は自由部門に来ていたのだが、こっちでもいいような気がして規定で採用。きれいな秀作だと思います。ocamo氏、文末のフェードアウトぶりが哀しい。松っこ氏の作品、これ、エレベーターに同乗してる人の視点だと思うと笑えると同時に怖い。

それでは次回のモチーフを発表する。

次回モチーフ
「2014年」
今年最後のモチーフは2014年。この一年に起こった出来事を書き出し小説で振り返りたい。また今回は時事ネタに限定する。来年にはつかえなくなるであろうネタを、今年のうちに使い切って欲しい。今年ほど各方面で強烈なキャラが登場した年も珍しい。またメジャーなニュース以外でもそういやあった!という細かいニュースでもいい。つまり次回はネタ大会ということです。年忘れ、思いっきり笑える作品を募集します。
締め切りは12月26日正午、発表は28日を予定しています。下の投稿フォームから自由部門、規定部門を選択してお送りください。力作待っています!
最終選考通過者

yuuma//laughraven/蜜虫/うにねこ/プレミアムバザー高田/りっちゃん/ammo/真夜野ふみ/そー/二段階右折/
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