特集 2014年12月19日

国宝「玉冠(たまのおかんむり)」はイルミネーションになるんじゃないか

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琉球国王の冠は光らせるとイルミネーションにピッタリだと思うのだがどうだろう。気になったので実際に作ってみることにしました。
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皆さんは沖縄国王の冠、「玉冠(たまのおかんむり)」をご存じだろうか。
wikipedia「尚円王」より。頭にかぶっているのが玉冠(たぶん)
wikipedia「尚円王」より。頭にかぶっているのが玉冠(たぶん)
この冠は琉球国王が即位儀礼や国内行事などで着用したもので、1996年に那覇市に寄贈、現在は那覇市歴史博物館に収蔵されている。博物館ではレプリカが常設展示されているので沖縄に住んでいる人は見たことがあるという人もいるのではないだろうか。
博物館内は撮影禁止なのでパンフレットから
博物館内は撮影禁止なのでパンフレットから
上の写真が玉冠のレプリカの写真なのだが、黒色の縮緬を張った冠に色とりどりの飾玉があしらわれたものである。
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そしてタイトルを読んだ人ならば大体察していると思うのだがこの冠、玉が電飾で光ったらイルミネーションになるんじゃないだろうか。

よし。やってみようじゃないか。

玉冠の土台を作る

というわけでまずは玉冠を作らなければならないのだが、僕は生まれてこの方、玉冠というものをつくったことがない。何から始めればいいのかわからずいきなり途方に暮れてしまった。
普通のやつと金色のやつ買った
普通のやつと金色のやつ買った
しかし途方に暮れているだけでは、何も進まない。よく分からないなりにとりあえず工作用の画用紙を買ってきた。
まず頭が通る輪っかを作って
まず頭が通る輪っかを作って
冠の形を作っていく
冠の形を作っていく
こういう時に役に立つのは幼稚園や小学校の学芸会の工作の知識である。あの頃は図画工作なんて何の役に立つのかと思っていたが、こんな事ならもっと真面目に図画工作の授業を受けていればよかったと思う。
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画用紙で骨組みを作って、そこに黒い布を張っていく。
ここまで全くノープラン
ここまで全くノープラン
ここまで来てなんなのだけど僕はそこまで図画工作の成績が良かったわけじゃなかった。案の定、布を張る下りでものすごく苦戦した。
きっと玉冠を作った職人は通知表の図画工作が5だったに違いない
きっと玉冠を作った職人は通知表の図画工作が5だったに違いない
それでも布を張ったらそれなりに形になった気がする。裏側は色々な所が飛び出ているのでお見せできないけど。

イルミネーション部分を作る

続いて玉冠のメイン部分、イルミネーションの作成だ。
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市販のイルミネーションを購入することも考えたのだが、今回はデイリーでも同じみであるArdiuno(アルドゥイーノ)を使ってみることにした。このArdiunoはかいつまんで説明するならばパソコン上で簡単なプログラムを書いてマイコンに転送することで、色々なセンサーからの入力を検知したり、LEDやモーターなどを動かすことができるという優れものなのだ。

そして右のテープみたいなやつはフルカラーのLED。ArdiunoのプログラミングでLEDをどのタイミングで何色に光らせるのか指定することが可能になるのだ。このあたりは僕にとって王冠を画用紙で作るよりは易しい作業である。
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ここで那覇市歴史博物館からもらった玉冠のパンフを見てみると、玉冠についている玉は合計7色。金や銀などの金属、珊瑚や琥珀、水晶などの宝石が玉としてあしらわれているようだ。
RGBでそれぞれの飾玉の色を指定していく
RGBでそれぞれの飾玉の色を指定していく
というわけでせっかくなのでLEDに上記の宝玉の色に対応するように発光色を指定してみる。

まぁLEDなので表現できない色もあるわけで、金色→黄色、銀色→白色、透明色→白、黒→なしと適宜近い色に置き換えてみた。
プログラム部分にも色々苦労があったのだが、本筋とは関係無いし誰も興味は無いと思うので割愛させて頂く。インターネットにはそういった情報が膨大にあるのでこういうときはものすごく便利だ。
プログラムを書き込んで
プログラムを書き込んで
LEDが光った!
LEDが光った!
LEDの点灯は割とスムーズに成功した。ここまで何も考えずに材料を揃えて王冠を作ってきたのだが、ここら辺まできてようやく最終的な形が見えてきた気がする。あと一息だ。
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テープ状のLEDをハサミで切って、導線をハンダ付けして上から金色の紙を貼り付ける。
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そのLEDを王冠に貼り付けます。さぁどうだ。全然ノープランだったのに結構様になってきたじゃないか。自分の才能が怖い…!
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完成までもう少し。ここでもう一工夫したい。
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写真で見て頂けると分かるのだが、玉冠を突き抜けるように簪が刺さっている。その部分を作成中。簪部分をよく見て欲しい。なんだかスイッチみたいじゃないだろうか。というわけで簪部分にはスイッチを仕込んでみた。スイッチの機能については完成品の紹介にて詳しく説明します。
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細かい配線をして…
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玉冠(イルミネーション)の完成である。さらりと解説したが、実際は王冠を作りはじめてから二週間くらい時間が経っているのだ。完成にこぎ着けることができて感動もひとしおである。図工の成績が悪くてもやればできるじゃないか。

玉冠(イルミネーション)を灯してみる

さて、出来上がった玉冠
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さっそく電源を入れて皆さんにその姿を見て頂こう。
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…!
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おお…!

いかがだろうか?とてもゴキゲンな冠の誕生だ。これを歴代の琉球国王が身にまとえば、きっと琉球史ももっと明るくなっていたに違いない。

しかしデイリーをご覧の皆様はもっとすごいArdiunoを使った工作を見ているはずで、中には「ただLEDが光ってるだけじゃん」とお考えの方もいるだろう。そんな皆さんは次の動画に刮目頂きたい。いよいよ簪に仕込んだスイッチの機能が明らかになる。



この玉冠は
簪部分のスイッチはロータリーエンコーダーというやつです。
簪部分を回すことでイルミネーションの間隔を自在に変える事ができるのだ。今思えば全く必要無い機能だが、これで少しは電子工作っぽくなったんじゃないかと思う。後悔はしていない。

すごいものを意図せず作ってしまった。ここまで動作を確認して、自分で自分を誉めそやしていたのだが、悲しい事もあった。
かぶれない…!
かぶれない…!
僕の頭のサイズには小さすぎたのだ。最初に画用紙で輪っかを作った時には確かにかぶれていたはずなのに。

…まぁいい。王冠のサイズが小さすぎることなんて瑣末な問題に過ぎない。次はいよいよこの王冠を持ってイルミネーションになるのか検証しに行こう。

玉冠はイルミネーションになったのか

琉球国王といえばその居城の首里城である。時刻は23時。深夜の首里城公園にやってきた。当然首里城の中には入れないのだが、首里城のランドマークである守礼門までであれば24時間見学が可能なのだ。
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守礼門の元で冠をかぶって、そのイルミネーションぶりを検証してみよう。
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この時間なので誰もいないだろうと思ったのだが、観光客がいた。冠を持った僕はものすごい不審な人物に見えたに違いないのだけど、お願いしてカメラのシャッターを押してもらうことに成功した。

二週間の制作期間をかけた超大作。ついに守礼門と玉冠の夢の共演がここに実現するのだ。

…で、とってもらった写真が次の写真である。
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…。

イルミネーション…それはきらびやかな光が織りなすファンタジーなはずである。しかし、写真に写った僕はものすごい輝く玉を頭上に掲げる不審者だった。そう。制作段階から「ちょっとLEDが明るく輝きすぎなんじゃないのか」というのは気になっていたのだ。しかし、まさかこんな風に写るなんてあんまりだ。

納得がいかない僕は撮影してくれた観光客に丁重にお礼を述べて、その後試行錯誤の末「動画で撮ればなんとかなるんじゃないか」という事に思い至った。

そうして撮影された動画が以下である。
…動画で撮っても全く同じ結果に終わってしまった。

結局の所、この記事で皆さんにお伝えしたいことはイルミネーションはただ光るだけではいけない、ほどほどの明るさじゃないときれいに撮影できないということである。皆さんも人生において一度くらいは何かをイルミネーションにする機会があるかもしれない。その時はこの記事を思い出して欲しい。

玉冠はイルミネーションにならなかった

これどうしよう。
これどうしよう。
というわけで「玉冠はイルミネーションになるんじゃないか」という試みは残念ながらうまくいかなかったが、この記事で少しArdiunoに詳しくなった。このマイコンを使えばもっと色々なことができるに違いない。

沖縄の天ぷらは衣が厚すぎて中身がイカか魚か見分けるのが難しいのだが、それをどちらか測定する機械なんかも作れるんじゃないだろうか。ネタの幅が広がったということで、次回にまたご期待いただければ幸いである。
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