特集 2014年12月27日

高知の路面電車は謝りながら走る~好きなところに行く~

「ごめんごめん」
「ごめんごめん」
行ったことのない場所に行きたい。47都道府県の中で、未踏の地が4つある。青森、島根、鳥取、高知。今回の旅先に選んだのは、暖かそうな高知県だ。イメージとしては、路面電車、鰹のタタキ、桂浜。そして、お酒を飲み干さないと置けない天狗のお面のような器も、いつか体験してみたいと思っていた。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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一番の繁華街は「はりまや橋」の西一帯

羽田から1時間半。高知龍馬空港に着いた。気温は8度で、それほど暖かいわけではなかった。
空港ロビーで龍馬さんと
空港ロビーで龍馬さんと
直通バスに揺られること40分、高知駅に到着。ひときわ目を引く大屋根の構造材には杉の木を使用。森林面積が84%と全国一の高知ならではの趣向だ。
右には路面電車の発着駅
右には路面電車の発着駅
駅前には、坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太という土佐勤王党のお三方。
それにしてもでかい銅像だ…
それにしてもでかい銅像だ…
ちょうどお昼時。まずは、食事をいただこう。今回の旅ではスマホ検索を封じてみる。インフォメーションのお姉さんに、どこかオススメはあるかと尋ねると「『ひろめ市場』ですね。地元の人もよく行きますよ」とのこと。
地図に丸印を付けてくれた
地図に丸印を付けてくれた
どうやら、市内で一番の繁華街は駅から600mほど南にある「はりまや橋」(H部分)の西一帯らしい。
さらにその先には高知城
さらにその先には高知城
このエリアを起点に今日明日の行動を考えよう。
きわめてよい風景である
きわめてよい風景である

路面電車を乗りこなし、気分はすでに地元民

路面電車を降りて街を歩いている時に発見した。行き先に「ごめん」と表示した路線があることを。
けなげである
けなげである
「後免」という地名があることから、このようなかわいい車両が存在しているのだ。

さらに、「いの」行きもあった。両者がすれ違うと、「ごめん」「い(い)の」という牧歌的なやりとりが生まれる。
漢字では「伊野」
漢字では「伊野」
なお、インフォメーションのお姉さんから「乗り換える時は運転士にそう伝えると小さな券がもらえます。これで市内均一200円で乗れるんです」という情報を得ている。
あらためて払う必要がない
あらためて払う必要がない
路面電車を乗りこなし、気分はすでに地元民である。市内のおおまかな地図も頭に入ってきた。
中心部には、こうしたアーケード街がいくつかある
中心部には、こうしたアーケード街がいくつかある
大通りから一本入ると、よい雰囲気の路地にたくさん出会える。散歩が楽しい街なのだ。
どことなく郷愁を誘う街並み
どことなく郷愁を誘う街並み
江戸期の「はりまや橋」を再現したもの
江戸期の「はりまや橋」を再現したもの
お遍路さんもいます
お遍路さんもいます
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けっこうな割合で、皆さんお酒を飲んでいる

そうこうするうちに、目指す「ひろめ市場」に着いた
60以上の飲食店や雑貨店が集結
60以上の飲食店や雑貨店が集結
中に入って、胸が高まった。これは涅槃である。お昼から賑わっているうえに、けっこうな割合で、皆さんお酒を飲んでいる。
「たっすい」とは土佐弁で「味が薄い」の意
「たっすい」とは土佐弁で「味が薄い」の意
「いかんいかん!」とつぶやきつつ、広場内をぐるりと回る。
さっそく鰹の登場
さっそく鰹の登場
名物の芋けんぴはタワーに
名物の芋けんぴはタワーに
飲まざるを得ない演出
飲まざるを得ない演出
日本酒はワンショット100円
日本酒はワンショット100円

鰹のタタキ、うつぼのタタキ

吟味に吟味を重ねた結果、注文したのは鰹のタタキ定食、青さのりの天ぷら、生ビール。
締めて1460円
締めて1460円
正直に言うと、鰹のタタキは好物というわけではない。しかし、食べてみて驚いた。感動的においしいのだ。旅の高揚を差し引いても、これはすごい。

同じタタキで、うつぼもあった。恐る恐る食べてみると、やわらかいチキンのような不思議な食感で、こちらもうまし。
うつぼのタタキ800円
うつぼのタタキ800円
ドロメ(生しらす)400円
ドロメ(生しらす)400円
マイゴとは土佐弁でいう「巻貝」
マイゴとは土佐弁でいう「巻貝」
なお、今回の旅は感動ポイントで俳句(のようなもの)を作ることにしている。
鰹、鰹…
鰹、鰹…
考えること5分。名句ができた。
高揚を感じ取ってもらえれば
高揚を感じ取ってもらえれば

駅前の巨大な銅像は発泡スチロール製

満腹になったところで、次は桂浜へ。しかし、「はりまや橋」交差点まで戻ってバス停の時刻表を確認すると、20分近く来ないようだ。

と、そこへタクシーの運転手さんが声をかけてきた。「安くするから乗ってきなよ」。
結果的に面白い話を聞けることになる
結果的に面白い話を聞けることになる
世間話の流れで、駅前の巨大な銅像に驚いたことを伝えると、「あれね、発泡スチロール製なんですよ。台風が来ると飛んでっちゃうから、倒しとくの(笑)」。

ああ、たしかにあれだけのサイズのものを金属で作るのは大変だ。

「イベントなんかで他県に貸し出すこともよくあって。そういう時は、『ただ今、龍馬『脱藩中』っていう紙が貼られるき」

結局、タクシー代は3260円。これを3000円にまけてくれた。
武田さん、ありがとう
武田さん、ありがとう
桂浜に着いたのは日没の30分ほど前。月の名所として名高いが、沈む夕日もきれいなのではないだろうか。
「よさこい節」にも唄われる
「よさこい節」にも唄われる
大海原に向かって龍馬ポーズでキメているところを写真に撮ってもらおうと、近くにいたおじさんにスマホを渡して頼んだが、操作方法がよくわからないようで、下のようなグラビアカットが撮れていた。
次のページで水着になる
次のページで水着になる
周囲には観光客らしきカップルの姿がちらほら。そして、桂浜の日は暮れた。
この絶景を俳句に詠みます
この絶景を俳句に詠みます
帰りはバスで。車内で一句したためた。
振動でピントが合わない
振動でピントが合わない
「リョーマの休日」とは、今日あちこちで見かけた高知県観光キャンペーンのポスター。先の「龍馬『脱藩中』」といい、高知県民はとことん龍馬が好きなうえに、茶目っ気があるというか、ウィットに富んでいるようだ。
リョーマは一日にして成らず
リョーマは一日にして成らず
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あきらめていた「天狗面の器」に遭遇

宿は武田さんが薦めてくれた「No.1高知」という威勢のいい名前のホテルにした。そして、夜の街に繰り出す。

路面電車、鰹のタタキ、桂浜は堪能した。「天狗面の器」は、武田さんによれば「高級料亭のお座敷遊び用」とのことで、あきらめていた。

しかし、ふらっと入ったスナックで遭遇する。
じゃじゃーん!
じゃじゃーん!
しかも、ダメ元で聞いてみると、新品の箱の封をほどいて出してくれたのだ。

「『可杯(べくはい)』といって、これでワンセット。左上のコマを回して、指された人がコマに描いてある絵と同じ杯でお酒を飲むんですよ」とマスター。
回すのにはテクニックがいるコマ
回すのにはテクニックがいるコマ
天狗はたっぷりお酒が入り、飲み干さないと机に置けない。また、ひょっとこは底に穴が開いているため、指で穴を押さえながら飲み、やはり飲み干すまで置けないのだ。
本来は芸者さんが歌う「可杯」専用の歌
本来は芸者さんが歌う「可杯」専用の歌
ひょっとこは手を放すとこうなる
ひょっとこは手を放すとこうなる
その時、常連客からクリスマスケーキの差し入れが。そうか、今日は12月23日。クリスマスイブイブだ。
なぜか、火を吹き消す大役に任命される筆者
なぜか、火を吹き消す大役に任命される筆者
楽しい。お酒も進む。今、高知を、満喫している。ここで、最後の一句。
魂の句である
魂の句である

サバに関する思わぬトリビアをもらう

少々飲みすぎたようだ。気づくと、ホテルの部屋で目が覚めた。チェックアウトをして、昼食の店を探す。
アンテナが反応した店
アンテナが反応した店
当たりだった。ごくふつうの定食屋かと思いきや、ご当地メニューがある。
いのしし鍋焼ラーメン500円(ライス付き)
いのしし鍋焼ラーメン500円(ライス付き)
いのししの肉は野趣あふれる味わいだった。ふだんはかなりの少食だが、高知に来てからは、ずいぶん箸が進む。
推理ドラマの犯人を当て合う常連客と女将
推理ドラマの犯人を当て合う常連客と女将
別のテーブルからは「関サバは清水のと違って、顔が尖ってるんだよ。あれは、うまいんだ」という会話も。

以前までは針金を刺して神経を抜いていたが、今はエアーでシュッと抜けるらしい。サバに関する思わぬトリビアをもらったところで、そろそろ帰途に就くとしよう。

お酒への支出金額が全国トップ

何人かの人に「高知の見どころはどこですか?」と聞いたが、皆さん口を揃えて「あんまりないよねえ」とおっしゃる。いやいや、すばらしい街ですよ。人はいいし、ご飯もおいしい。お酒への支出金額が全国トップというデータもある。ビバ、高知。また来ます。
コンビニやスーパーでよく見かけた“ご当地パン”
コンビニやスーパーでよく見かけた“ご当地パン”
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