土曜ワイド工場 2015年1月17日
 

知らないおじさんが居間の壁を金づちで連打していた話

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みなさまはじめましてこんにちは、あおむろと申します。突然で申し訳ございませんが、今日は折り入ってみなさまに聞いていただきたいお話がありますので、少しの間お時間を頂戴できますでしょうか?

今から数年前、私が大阪府の門真市という所で一人暮らしをさせていただいていた時の話をさせていただきますね。
1982年生まれ、関西在住。漫画家・イラストレーター・宅録音楽家。わりと大規模なたこあげ大会で総合優勝した経験を持つが、その才能を活かせず悶々とした日々を送っている。
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あおむろひろゆき実録『家』
第一章〜金ちゃんとの出会い〜


当時私は会社に入って2年目。慣れない社会人の世界に揉まれ必死な日々を過ごしつつも、実家を出て初めての一人暮らしを楽しんでいました。ある日、朝礼前に営業部長に呼び出されます。
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『ハイッ!お呼びでしょうか』
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「あーキミ確か一人暮らししとったなあ」
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『ハイッ!』
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「俺こないだ家買うてお袋も一緒に暮らすようになってんけど、そのお袋が住んでた家が空き家になってもうてな。もしよかったら月5万円で貸すさかい住まへんか?」

上司からの突然の誘いに戸惑いつつも、当時隣人トラブル(隣の部屋のおばさんが毎晩キューティーハニーの歌を大声で歌う)に悩まされていたのと、家の広さも倍以上になる上に家賃も安くなるので、『ぜひお願いします』と即答したのでした。そして一ヵ月後に引越しをします。




 
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引越し先は平屋の一戸建てて、真ん中を壁で区切って、私ともうひと家族が住むことになりました。



 
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間取りはこんな感じです。荷物が来るまでの間、何も無い部屋をウロウロして『ここには本棚を置こう』とか『ここの照明は間接照明やな』とか、あれこれ妄想を膨らませてたんです。

それでね、奥の部屋に神棚があるんですけどね…。
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なんか供えてあるんですわ。




 
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兜と変な形の刀とビールとおつまみ供えてあるんですわ。

「あれっ?この家、何か出ちゃう系?」と思い、家を貸してくださった営業部長に電話をします。


 
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『あっ、お疲れ様です!お休み中のところすみません!少しお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?』


「なんや。神棚のことか?」
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『はい!あれ何ですか!』


「今はまだ知らなくていい」ガチャッ プー プー


結局それらが何なのか、満足のいく説明のないまま私の新生活が始まりました。

そうこうしているうちに引越し屋さんが到着し、荷物が運び込まれます。てきぱきと運び込まれ、あっという間に部屋にダンボールが山のように積みあがります。

そして引越し屋さんを見送った後に、ひとつずつダンボールの整理をしてたんですけど、その日めちゃ早起きをして引越し準備をしたこともあって、眠たくなってきたんですよ。気づいたら、いつの間にかソファーで寝ていました。
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それで、だいたい眠りについて30分くらい経った頃でしょうか…。







ガンガンガンガンガン!!!!!!



何か部屋の中でものすごい音がするんです。瞬間的に『出たな妖怪』と思いました。

こういう時は冷静な対処が必要です。まずはゆっくりと目を開けます。

 
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なんかオッサンがカナヅチで壁叩きまくってるんですわ。




 
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こんな妖怪、水木しげるの妖怪図鑑に載ってなかったし、ひょっとしてリアルなオッサン?何でオッサンがここにいるの?なんで壁連打してるの?と完全にパニックに陥りつつも、いつの間にかまた眠ってしまいました。


そしてそれからまた30分くらいして目が覚めた時には、もうカナヅチ音はせずに、部屋には静寂が訪れています。




 
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でも部屋の真ん中にオッサンが思いっきり普通に座っていました。

 
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そしてこのオッサンが耳を疑う発言をします。

 
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イヤイヤイヤイヤイヤ!

それお前が言ったらあかんセリフ!
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「ぼく、金ちゃん!」


「ぼく、金ちゃん!」じゃねーよ!怪しさの針振り切ってるよ!



 
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『私は、あおむろと申します』


そして、パニックに陥りながらも金ちゃんと会話をしていく中で謎がひとつずつ解けていきます。

まず、金ちゃんは妖怪ではなく、大工さんでした。60年前にこの家を建ててから、今でも定期的に家のメンテナンスを兼ねて、こうして巡回しながら家の修理をしているそうです。

営業部長からはこの家の事を「築15年」と聞いていたので、『あれっ?』と思いましたが、こうして家を守っている金ちゃんの姿が素敵に思えたので、少し暖かい気持ちになりました。


とりあえず今日の作業は終わったみたいなので、帰っていただくことにします。


 
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なかなか立とうとしないので、『そろそろお帰りになられては?』と提案したのですが…


 
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金ちゃん、帰る気ゼロ!


たまらず営業部長に電話します。

 
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『あ、もしもし!あの』



「金ちゃん来た?ごめん言うの忘れてた」
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『いや、言うといてくださいよ!』



「ごめんごめん!」
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『それで、金ちゃん全然帰る気配ないんですけど…』



「あー、せやねん!金ちゃんにおつまみとビールあげて!そうせな帰らんで!」

 
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これかよ!

 
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『あの、それで兜と包丁は…』


「それはまた言うから」ガチャッ プー プー


電話はまた一方的に切られてしまいました。


指示通り、おつまみとビールを与えるとおもむろに本棚によじ登り、グビグビと飲み始めました。
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すがすがしいくらい思いっきり本棚をぶち壊しました。


 
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そしてグシャグシャになった本棚をしばらく無言で見つめた後、彼はこう言って帰りました。

 
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「ほな、今度は本棚直しにくるさかい」


 
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お話はまだまだ続きます。


この続きはまた今度。


ご清聴ありがとうございました。
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