フェティッシュの火曜日 2015年1月27日
 

10万本の印鑑を見に行く

人生で一番、印鑑を見た日。
人生で一番、印鑑を見た日。
ちょっと前、仕事でご一緒させてもらった先輩ライターの方から、「すごいはんこ屋さんに行ってきた」という話を聞いた。
曰く、福岡にあるそのはんこ屋さんは、とにかく置いている印鑑の数がすごい。10万本。あと、店主のおじさんが面白い。そういう話である。
おじさんが面白いのはさておき、10万本の印鑑がお店に並んでいるのは見たい。どういうビジュアルなのか想像がつかない。
よし、見に行ってこよう。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。
> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

謎の、すごいはんこ屋さん

そのはんこ屋さんは、博多からJR鹿児島本線で2駅の箱崎という町にあるらしい。
駅を降りて、スマホのナビに案内されるままに住宅街をうろうろ歩いたが、見つからない。

えー、これまずいな。取材をお願いした時間に間に合わないぞ、と焦り始めたころ、ようやく『はん』という真っ赤な看板を見つけた。
普通のマンションの1階に。
しれっとマンション入れ込み型。
しれっとマンション入れ込み型。
しかも、一度見つけたら「なんでこれ見逃してたんだ」というぐらい、店頭からあやしげなオーラが出ている。
いきなり謎の陳列物。(謎の解明は最後のページで)
いきなり謎の陳列物。(謎の解明は最後のページで)
店の内外には正体不明の置物しか見えないが、『はん』と看板も出ているし間違いなかろう。

ここが目的地の10万本印鑑のお店『はんのひでしま』さんのはずだ。

10万本の密度

おそるおそる店内に入って、すぐ納得した。

あ、これ10万本だ。数えてないけど、10万本ぐらいあるわ絶対。
店の壁=印鑑。
店の壁=印鑑。
茶色い壁に見える部分が、全部印鑑。
念のため近寄って確認したが、間違いなく印鑑。
印鑑の壁、近寄るとこんな感じ。
印鑑の壁、近寄るとこんな感じ。
木彫りの印鑑が、店の端から端まで、床から天井までみっちり詰まっている。
というか、印鑑ってこういうものだっけか、と自分の見ているものが分からなくなってくる。
印鑑のゲシュタルト崩壊である。
そそりたつ印鑑たち。たぶんこの棚で2万本ぐらい。
そそりたつ印鑑たち。たぶんこの棚で2万本ぐらい。
なんか棚から突起がびっちり並んでいる様子はENIAC(世界最初のコンピュータ)とか真空管コンピュータみたいですごくかっこいい。
日頃あまり印鑑で見たことない漢字が並んでるので、見続けると止まらない。
日頃あまり印鑑で見たことない漢字が並んでるので、見続けると止まらない。
そして、入口から奥に向かって、棚の『あ』の漢字から順に「へぇー、こんな名字もあるのか。珍しいなあ。へぇー」と流し気味にさーっと見始めて、10分ぐらい経ってハッと気付くと、まだ『安藤』とか。『い』に辿り着いてない。マジか。

お釈迦様の手のひらから出られない孫悟空って、たぶんこういう気分だったんじゃないか。
僕はいったいどこに迷い込んでしまったのか。
僕はいったいどこに迷い込んでしまったのか。
この、とてつもないところに来てしまった感。
10万本の密度というか圧力に負けたのか、印鑑酔いでクラクラする。今までそんな酔い方したことないけど。
茶色くないとか、字が大きいとか、間違いなくオアシスだよ。
茶色くないとか、字が大きいとか、間違いなくオアシスだよ。
印鑑と印鑑の隙間に隠れるように、『請求書』とか『FAX済み』みたいな業務用の角印も置いてあった。
なんというか、印鑑砂漠に突如現れたオアシスのようで安心する。

店に入って、いま20分ちょい。業務用角版に心を癒されるほどの疲労っぷりである。
ただ印鑑を見ているだけなのに。

 ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ