ちしきの金曜日 2015年2月6日
 

コブダイのコブの中身はどんな味?

コブダイという魚がいる。大きく育つと名前の通り、たんこぶをこさえたようにおでこが突き出るという面白フィッシュである。

体が大きい上に強面で迫力があり、それでいてどこかユーモラスなのでテレビ番組などでその水中映像を目にすることも多い。

ぼくは彼らを見るたびにこう思ってしまうのだ。お前ら美味いのか?コブの中身は何だ?美味いのか?
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。
> 個人サイト Monsters Pro Shop

瀬戸内海に多いらしい

気になるなら実際に食べてしまえという話になるわけだが、コブダイなんて珍しい魚はそうそう市場や店先に並ぶものではない。稀に市場へ並ぶこともあるらしいが、少なくとも僕は30年近い人生の中でそのような僥倖に遭遇したことは未だ無い。

ならば、自分で釣って食べてしまえという話になるわけだが、コブダイなんて珍しい魚はそうそう釣れるものではない。…と思っていたら、これが案外釣れてしまうらしいという噂を聞いた。瀬戸内海へ行けばの話だが。
瀬戸内海といえば明石の鯛が有名だが、おかしな鯛もたくさんいるのだそうだ。
瀬戸内海といえば明石の鯛が有名だが、おかしな鯛もたくさんいるのだそうだ。
コブダイは日本国内だと九州から東北まで広く分布している魚なのだが、どういうわけか瀬戸内海にとりわけたくさん生息しているようなのだ。
そう聞いては向かわずにはいられない。いざ瀬戸内へ。
釣具屋さんで聞いたポイントで竿を出す。餌は貝でもゴカイでもエビでもタコでも何でも食べてくれるらしい。
釣具屋さんで聞いたポイントで竿を出す。餌は貝でもゴカイでもエビでもタコでも何でも食べてくれるらしい。
と意気込んでいる折りに、釣り仲間に「今度、瀬戸内へコブダイ釣りに行こうと思うんだよね〜」と話したところ、「あ、俺この間行ってきたよ。」という者が現れた。しかも三人も。やはり、コブダイは釣り人の憧れということか。

だが、誰もまだ芳しい成果を上げてはいないようだ。銀行マンの友人Mくんは昨夏から何度も挑戦し続けているのに、なんとか小さな赤ちゃんコブダイを一匹釣っただけだとか。
やっべえ。さっそく雲行き怪しくなってきた。
ある事件が起きて以降、コブダイを釣る際は釣竿をロープで固定しておかねばならないことを覚える。
ある事件が起きて以降、コブダイを釣る際は釣竿をロープで固定しておかねばならないことを覚える。

場所を変えるといきなり…!

聞けば、彼らもまだ諦めてはおらず、心の底でリベンジを誓っているらしい。それならばと、みんなでワイワイ瀬戸内ドライブついでに挑戦してみることにした。
道中、釣具店などで情報収集しながら最初のポイントへ到着。しかし、僕がフグを一匹釣っただけで、二時間経っても一向にドラマは起きない。あー、これダメなパターンだ。
空気を読んで釣れてくれたヒガンフグ。正直、かなりうれしかった。
空気を読んで釣れてくれたヒガンフグ。正直、かなりうれしかった。
流れを変えなければ。ということで、第二候補のポイントへ移動する。先客のおじさんが釣り竿を振っていたので、「ここ、コブダイって釣れますか?」と聞いてみると、「ここも釣れるけど、今日は○○の港の方がいいんじゃないかねー。」と教えてくれた。まったくノーマークだったポイントだ。

「たぶん、釣れるよ。」というおじさんの声に励まされ、さっそく移動する。

本当に釣れたらいいなーとのんびり釣りの支度をしていると、背後から「ヤバイヤバイ!!」という声が聞こえた。しかも、そのトーンが鬼気迫っている。
「ヤバイ!マジ?マジ!?」と若者全開のMくん。
「ヤバイ!マジ?マジ!?」と若者全開のMくん。
一足早く準備を終えて仕掛けを投げ込んだMくんが何か魚を掛けたのだ。
しかも、相当の大物と見える。

その場にいた全員が「コレ、アレだ!」と確信する。移動した直後だぞ。いくらなんでも展開が急すぎる。
なんか潜水艦みたいなのがおるー!!
なんか潜水艦みたいなのがおるー!!
獲物は激しく抵抗しているが、とても残念なことにMくんは非常に釣りが上手い。針を外そうとしたってそうはいかない。そして、魚にとってさらに悪いニュースがある。Mくんの使っている釣り糸はマグロなんかを釣るような、成人男性がぶら下がっても切れないオーバースペックな品。引きちぎることはできないだろう。勝負あったな!
コブがある!夢にまで見たコブがある!!
コブがある!夢にまで見たコブがある!!
綱引きに負けた魚が水面に浮かぶ。水を割って飛び出した頭部の異様なシルエット!コブダイだ!しかも大型の!!
Mくん、悲願達成!初めて見る生コブダイに僕たちも大興奮。
Mくん、悲願達成!初めて見る生コブダイに僕たちも大興奮。
タモ網に収まり、堤防に引き上げられたのは70センチを楽に越える立派なコブダイ。
超かっこいい。何だこの魚、すげえな。

コブはプニプニでプヨプヨ!!

コブもすごいが口元もなかなか。リーゼントの不良少年に凄まれているようだ。
コブもすごいが口元もなかなか。リーゼントの不良少年に凄まれているようだ。
最大の特徴である額のコブはもちろんだが、大きく開く厚い唇と、そこから覗く先の丸まった大きな粗い歯も、顔立ちの猛々しさに拍車を掛けている。その一方で、メタリックグリーンを基調とした虹色に輝く瞳と、鮮やかな山吹色に染まった背びれはエキゾチックな魅力を湛えている。

体色がめまぐるしく変化する点も印象的だ。水面で格闘しているときは全身赤褐色であったのが、水から揚げると見る見るうちに淡く桃色がかった灰色へと褪せていく。体力の消耗によるものだろうか。
口を「むっ!」と閉じる。結構かわいい顔してるかも。眼が綺麗な虹色なのもチャームポイント。
口を「むっ!」と閉じる。結構かわいい顔してるかも。眼が綺麗な虹色なのもチャームポイント。
そういえば、Mくんに釣り上げられる過程では序盤こそ激しく突っ走っているように見えたが、水面まで寄せられて以降はほとんどグロッキー状態だった。陸に揚げられた際ものた打ち回るようなことは無く、「ワシの負けや。もうどうとでもしてくれ。」と言わんばかりにおとなしく横たわっていた。
どうやら、針に掛かるとファーストダッシュに全力を注いでしまい、すぐに力尽きる短距離ランナータイプの魚らしい。

さあ、見た目に関してはこの辺りにしておこう。そろそろあのコブを触ってみたい。あのコブを!
締められてなお、大勢に自慢のコブをもてあそばれるコブダイ。プニプニとした、硬い水風船のような感触。
締められてなお、大勢に自慢のコブをもてあそばれるコブダイ。プニプニとした、硬い水風船のような感触。
ワクワクしつつ人差し指をコブに押し付けると、予想外の感触が伝わってきた。やわらかい弾力がある。プニッとしてプヨーンなのだ。
もっとなんというか「しこり」のような硬い手触りを予想していたので、これには少し驚いた。

 ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓