特集 2015年2月4日

BRTに乗って奇跡の一本松を見に行ったらベルトコンベアがすごかった

でかい
でかい
東日本大震災の津波で、街の中心地が壊滅的被害をうけた岩手県の陸前高田市。

震災から4年近くたった現在は瓦礫の撤去もあらかたおわり、復興作業のまっただ中であった。

BRTに乗って、津波に流されず一本だけ残った「奇跡の一本松」を見に行ったところ、ベルトコンベアがすごいことになっていたので、つつしんで皆様にお知らせしたいと思う。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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BRTってなんだよ

先の震災で不通になった大船渡線の一部を、鉄道として復旧する前に、線路のあった場所をアスファルトで舗装し、バスを走らせることで仮復旧したのが大船渡線のBRTだ。

BRT(バス・ラピッド・トランジット)とは、主に日本では専用のレーンを走るバス路線のことを、そういうふうに言う場合が多い。

とにかく盛駅の様子を見ていただきたい。
大船渡市の盛駅、一応ファサード
大船渡市の盛駅、一応ファサード
盛(さかり)駅は、大船渡線の端っこで、三陸鉄道南リアス線と接続している。で、駅構内はこんなことになっている。
おわー、線路が道路になってる!
おわー、線路が道路になってる!
跨線橋の下をくぐるようにアスファルトで舗装された道路、そしてバス。本来なら、鉄道の線路があるはずの場所が道路になっているのだ。
ほら
ほら
上の写真は右側の三陸鉄道のホームは、鉄道で、左側の大船渡線の部分がアスファルトで舗装されているという……このおもしろさ、ちゃんと伝わってますでしょうか。

見慣れた駅のホームだけど、よく見るとなんか違和感あるな、あ、道路だ。みたいな。

このBRTの駅は今まで見たおもしろ違和感の中でも屈指のわかりにくさかもしれない。 (ちなみに一番わかりにくいおもしろ違和感は、世田谷のおおくら大仏)
同じホームで電車とバスに乗れる! ってわざわざビックリマークつけるほどのことでもないか
同じホームで電車とバスに乗れる! ってわざわざビックリマークつけるほどのことでもないか
BRTの専用道は、かさあげしてアスファルトで舗装してあり、わざわざ跨線橋を使わなくても、ホームに行けるようになっている。
陸前高田に向けて出発
陸前高田に向けて出発
BRTはバス専用レーンを走行するため、交差点もなく、渋滞もないので、時間に正確である。しかも、線路のないところでは、一般道を走ることも可能なので、わりと小回りがきくのだ。
BRTの踏切、バスが近づくと、遮断機がヒョイッとあがる
BRTの踏切、バスが近づくと、遮断機がヒョイッとあがる
BRTの踏切は、遮断機がバスレーンをふさぐように降りる。ふつうの踏切は、自動車の道路をふさぐように遮断機がおりるものだが、BRTは逆だ。

残念ながら、遮断機がおりてるシーンを写真に撮りそこねてしまったのだが、専用レーンを走るバスが近づくと、上の写真の遮断機のようにヒョイッとあがる。

これは、バス専用レーンに、関係ない自動車がうっかり入ってくるのを防ぐためなのだ。

バス停みたいだけど、駅

そうこうするうちに、バスは陸前高田の街に近づいてきた。
市街地だった場所は広い空き地に……
市街地だった場所は広い空き地に……
市街地のほとんどが津波で流されてしまった陸前高田の町。瓦礫も撤去され、とにかく今は空き地しかない。

陸前高田市内に入ると、バスは専用レーンをはずれ、高台に移転した市役所などをまわり「奇跡の一本松駅」に到着する。
助詞が駅名に入ってるのは、他に思いつくのは南阿蘇水の生まれる里白水高原駅ぐらいしかない。もしかしたら、JRの駅ではここだけかもしれない
助詞が駅名に入ってるのは、他に思いつくのは南阿蘇水の生まれる里白水高原駅ぐらいしかない。もしかしたら、JRの駅ではここだけかもしれない
乗ってきたのがバスなので、バス停のような気がするけれど、鉄道事業者の設置するれっきとした駅である。

まずは一本松を見に行くか

奇跡の一本松駅は、もともと、臨時駅として設置されたものの観光客が増えたので、去年から常設化された。

周囲には数件のレストランなどが立ち並び、人通りも交通量も多い。

案内にしたがって奇跡の一本松へ向かう。
案内にしたがって行くと
案内にしたがって行くと
これかー、奇跡の一本松
これかー、奇跡の一本松
津波に流されず、一本だけ残った奇跡の一本松。しかしその後、根元が腐ってしまい、枯死したため、現在は防腐処理をほどこされて、中に金属の芯材を埋め込まれている状態のモニュメントである。
かっこ良くいうと、サイボーグということになるだろうか。
サイボーグのようには見えないなー
サイボーグのようには見えないなー
震災前の一本松の様子をとらえた貴重な写真
震災前の一本松の様子をとらえた貴重な写真
一本松が枯死した際、一部には、わざわざお金をかけて保存しなくても、石碑を建てるだけでいいという意見もあったらしい。
しかし、よそ者のいち観光客の率直な意見としては、やはりサイボーグでもいいから具体的な形が残っている方がやっぱり見に行きたくなるというもの。
後ろのユースホステルと共に震災遺構として整備されるらしいので期待したい。

で、本題のベルトコンベアがすごいという話

奇跡の一本松が「復興のシンボル」だとすると、今まさに復興作業で頑張っているものが、このベルトコンベアである。
こういったベルトコンベアが市内を縦横無尽に
こういったベルトコンベアが市内を縦横無尽に
張り巡らされている
張り巡らされている
一本松の対岸あたりから、ちょうど真上あたりを通過して市内の工事現場まで張り巡らされており、川をはさんだ向こう側の山を削りとって土を運んでいるらしい。
橋といっても、交通用の橋ではなく、土砂を運ぶためだけの吊り橋だ
橋といっても、交通用の橋ではなく、土砂を運ぶためだけの吊り橋だ
一本松の観光もそこそこに、すっかりこのベルトコンベアが気になってしまった。
すごい
すごい

かさ上げ工事の土砂を運んでいる

これらのベルトコンベアは、気仙町にある120メートルの愛宕山を削って、住宅などの移転先を造成するとともに、生じた土砂を、市内のかさあげ工事に使うためにベルトコンベアで運んでいる。
ゴチャゴチャした感じもかっこいい
ゴチャゴチャした感じもかっこいい
セクシーさを感じる橋脚
セクシーさを感じる橋脚
陸前高田市は、市街地全体を11メートル程度かさあげする計画で、そのための土砂をトラックで運び出そうとすると、10年ちかくかかる計算になるらしい。しかし、ベルトコンベアで運ぶとそれが3年程度ですむという。
申し訳ないけど、ちょっとかっこいい
申し訳ないけど、ちょっとかっこいい
このベルトコンベア、全長で3キロほどしかなく、全長14キロ以上あった神戸のベルトコンベアなどに比べると短いものの、だだっ広いところにむき出しで3キロもベルトコンベア連なっているのはちょっとした圧巻である。

たいして上手くもない写真を何枚もはりつけている点で、その興奮っぷりを推し量っていただきたいと思う。
この広い土地、ぜんぶ11メートルかさあげするらしいです
この広い土地、ぜんぶ11メートルかさあげするらしいです
これらのベルトコンベア、本来であれば、今年(2015年)の春頃には土砂の運び出し作業が終了し、撤去が始まるはずだったのだが、工事が遅れているため、撤去は秋以降になるらしい。

来年にはもう無いかもしれないので、見に行くなら、今年中に行ったほうがいい。
もうちょっと写真撮影の技術があれば……
もうちょっと写真撮影の技術があれば……

復興のシンボルはなにか

BRTも一本松もベルトコンベアも、震災前にはなかったものだ。(厳密にいうと一本松は震災前からありますね)

それぞれが地域交通の足であったり、観光の目玉であったり、復興工事のための設備であったりと、その目的は違えど、いずれも復興にむけてのシンボルであることにはかわりない。と、思う。

でも、いちばん興奮したのはベルトコンベアだったなー。
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