特集 2015年2月9日

かわいさとおっさんが交錯する動物、マレーグマ

今、2つの要素がせめぎ合う
今、2つの要素がせめぎ合う
地球上に存在するさまざまな動物たち。それぞれにその特徴から抱かれるイメージがある。かっこいい、強そう、かわいい…といったものだ。

そのイメージが、見ている間にリアルタイムでめまぐるしく変化する動物がいる。マレーグマだ。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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親子連れにスルーされるマレーグマ

クマの中でも最も小さいとされるマレーグマ。よく知られたクマだが、どの動物園にもいるわけではなく、意外にも関東では上野動物園でしか飼育されていない。
関東唯一のマレーグマ飼育園
関東唯一のマレーグマ飼育園
暖かいところに住むクマ
暖かいところに住むクマ
東南アジアに生息するためか、冬眠しないので冬でも元気な姿を見ることができる。門から少し進んだところ、クマゾーンの一角にマレーグマの運動場がある。
確かにマレーグマの表示があるのだが
確かにマレーグマの表示があるのだが
到着したのだが、姿が見えない。少し目をやって「あれ?いないねえ」と、通り過ぎて行ってしまう親子連れも何組かいた。

おかしいな…と思ってよく見てみる。いた。
なんでそこなの?
なんでそこなの?
はじっこの細い通路の突き当たり、隅のところにマレーグマはいた。

楽しそうな仕掛けもたくさんある運動場なのに、どうやらここが好きらしい。しばらく眺めていたのだが、細い通路をうろうろしつつ、運動場にはなかなか出てこない。
クマにしてはちゃっちゃ過ぎるだろ、カワウソだから
クマにしてはちゃっちゃ過ぎるだろ、カワウソだから
運動場の一角には、コツメカワウソの飼育ゾーンもある。マレーグマの展示場だと知りつつクマを見つけられない親子連れが、カワウソを見て「あ、いたいた!ちゃっちゃいね、マレーグマ」と言いながら行ってしまう様子も見かけた。

それはないだろう。お父さん気付いてよ。

アニマルとおっさんとの融合

そうしたことも起きてしまうくらい、はじっこ好きなマレーグマ。それでもさらに待っていると、運動場にあがってきた。
あっ、来た来た!
あっ、来た来た!
マレーグマ、かわいいね
マレーグマ、かわいいね
かわいいよね?
かわいいよね?
かわいい…?
かわいい…?
………?
………?
歩いてきたマレーグマをじっと見ていると、いかにもクマっぽかったり、かわいく見えたり、あれっ?となったりと、どんどん印象が変化していくのだ。
うん、りりしい
うん、りりしい
…あれ?
…あれ?
うん、クマっぽい
うん、クマっぽい
…なんかおっさんっぽくない?
…なんかおっさんっぽくない?
マレーグマはずっと動き回っていて、秒単位で受ける印象が変わる。りりしさが間抜け面に、アニマルがおっさんにと、万華鏡のように移ろっていく。
こちらはザ・子熊、ツキノワグマ
こちらはザ・子熊、ツキノワグマ
例えば隣の飼育スペースにいたツキノワグマは、首尾一貫して子熊の愛らしいイメージを放ち続けていたのだが、マレーグマはそうではない。
クマ
クマ
おっさん
おっさん
クマ
クマ
おっさん
おっさん
ここまで写真を載せたマレーグマは全て同じ個体で、アズマというオスのクマだ。りりしいクマ性と間抜けなおっさん性が、くるくると変わる。

これは彼独自のキャラクターなのだろうか。メスだと少し様子が違うように見えた。
クマなりの女子力
クマなりの女子力
こちらは別の時間帯になって交代で出てきた、キョウコというメスのマレーグマ。愛嬌のある顔立ちをしている。
頭の上のたぷたぷがすごい
頭の上のたぷたぷがすごい
なんとなく妻を思い出しました
なんとなく妻を思い出しました
こちらのクマはおばちゃん体型と言えばいいのだろうか、オスのアズマとは違った印象。終始この感じで、一定のイメージを放ちながらモゾモゾ動いていた。
かっこいいアズマ
かっこいいアズマ
哀愁のアズマ
哀愁のアズマ
キョウコに対してアズマは、印象をどんどん変えていく速度が速い。猛獣でもあるクマらしさを見せたと思えば、次の瞬間には悲しさを漂わせたりもする。
親戚のおじさんに似ている
親戚のおじさんに似ている
歩く後ろ姿はひょこひょことしていて、どちらかというとおっさんテイスト。
クマ
クマ
くしゃみの出そうなおっさん
くしゃみの出そうなおっさん
クマ
クマ
好奇心旺盛なおっさん
好奇心旺盛なおっさん
こいつ、見ていて飽きないぞ。実のところアズマははじっこが余程好きなのか、私が見ていた時間の9割方は細い通路を行き来しているだけ。それでも、たまに上がってきてこうした様子を見せてくれるので、つい長居したくなるのだ。
なんとなく着ぐるみっぽい
なんとなく着ぐるみっぽい
さらに着ぐるみ感加速
さらに着ぐるみ感加速
アズマを見ている人たちのつぶやきで何度か耳にしたのは「なんか人っぽいね」「これ、中に人が入ってるでしょ」というもの。わかるわかる、そういうムードを漂わせるときがあるのだ。

隅っこ好きを体感したい

マレーグマがおっさんっぽい。この事実を逆にとらえれば、おっさんである私がマレーグマっぽくなりやすい、と言えるのではないか。
服の要素としてはマレーグマ
服の要素としてはマレーグマ
なかなか味が出せない
なかなか味が出せない
その仮説を検証すべく、黒い服を着用し、妻の首巻きを前後逆につけてたたずんでみた。

うーん、思ったよりもアズマテイストが出てこない。服装もおっさんも満たしているのに、なぜだろう。やはり彼独自のキャラクターなのだろうか。
「…何?」
「…何?」
先ほど書いた通り、見ていた時間のほとんどをはじっこで過ごしていたアズマ。通路を行ったり来たりするだけで今ひとつ面白くなのだが、ときどき隅っこに立つことがある。この瞬間が味わいタイムなのだ。
「うーん…」
「うーん…」
「んあー!」
「んあー!」
悩んでいるようなポーズを取ったり、背中を壁にこすりつけたりと、豊かな動きを見せてくれるのだ。
もだえるアズマをアニメでどうぞ
もだえるアズマをアニメでどうぞ
かゆいのかなんなのか、気持ちまではわからないが、いい表情でくねくねしている。アズマを見つめる者にとって、ボーナスタイムの趣きがある。
なんかいいねこれ
なんかいいねこれ
アズマの放つ味わいはとても出せなかったが、自分でもやってみてわかった。この動き、なんとなく癖になる。

そしてあとから驚いたのは、アズマのポーズの一致性だ。
1日目
1日目
2日目
2日目
動物園には一週間あけて2日に渡って撮影に行ったのだが、写真を整理していると別の日に撮ったものなのに、完全にポーズが同じものがあった。

偶然を超えて、アズマが隅っこを好きだと思う気持ちが成し遂げた奇跡だ。
「あ、あっ、やばいかも…」
「あ、あっ、やばいかも…」
「ウオエェェェ…」
「ウオエェェェ…」
勝手にセリフをつけたくなるアズマの動き。別に飲み過ぎたわけでもないだろうにすまん。
「あー、あんなに飲まなきゃよかった…」
「あー、あんなに飲まなきゃよかった…」

カモーン!
カモーン!
さまざまな要素が1頭の中で交錯し、次々に別のイメージを乱反射させる動物、マレーグマ。特にアズマには釘付けになった。

上野動物園には3頭のマレーグマがいて、運動場に出てくるタイミングは日によって違うようだ。当日朝に電話して聞くと出てくる予定を教えてくれます。
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