特集 2015年4月2日

目指せ夢の万犬券!犬が時速70kmで走るドッグレース

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ドッグランという言葉なら、聞いたことがある。大きな公園にでもありそうな、ペットの犬を走らせる場所だ。

ドッグレースは何かと聞かれると、なんとなく意味は分かる。犬を競争させるやつだろう。だが、日本では聞いたことがないし、仮にやったらやったでいろいろと怒られそうだ。

しかし、ここはベトナム!
あるのだ、ベトナムにはドッグレースがあるのだ!

賭け金と夢を犬の小さな背中に乗せて、万馬券ならぬ万犬券目指していざトライ!
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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ドッグレースは、ブンタウというベトナム南部に位置する海辺の町にある。ベトナムでの長い旧正月が明けた3月は観光客で賑わうらしく、ビーチには全国からやって来た観光客と、ブンタウ特産のイカやカニなどの海産物を炭火で焼いた香ばしい匂いで溢れ返っていた。

このビーチで、波打ち際でキャッキャとはしゃぐベトナムガール達を見ながらイカやカニを貪り食べる行為は最高に魅力たっぷりなのだけど、今回の目当てはドッグレースだ。そのへんの話は自分のサイトにでも書くのでお時間がございましたらそっちを見てください。
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ここがドッグレースの入口であるとともに、天国と地獄の分かれ道。なお、毎日、夜の19時半から22時頃まで開催され、合計12レースあるという。
なんとなくコロシアムの受付口を思わせるチケット売り場。
なんとなくコロシアムの受付口を思わせるチケット売り場。
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入場する際にまず60,000ドンを払わされる、350円くらい(取材当時)。ブンタウなら安い定食が三回分は食べられるので、日本人の感覚的には1,000円くらいかも。
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といって手にしたチケットには50,000ドンと書いてある、どういうこと!?

ここで覚えておくとベトナム観光で役に立つかもしれないこと。ベトナムは戦後からインフレーション真っ只中で、旧正月を挟む度にグンと物価が上がる。そこでしょっちゅうチケットの料金を書き変える訳にもいかず、スタンプで済ませるのだ。窓口のお姉ちゃんにケチをつけても「そんなこと言ったってオメー!」と逆ギレされるかもしれないので注意しよう。


さて、それではいよいよ、万馬券ならぬ万犬券を目指していざ行かーん!
レース場を照らす照明が、まるでセレブか政治家が当てられるマスコミフラッシュの如し。
レース場を照らす照明が、まるでセレブか政治家が当てられるマスコミフラッシュの如し。
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ここが…!
ここが…!
ここがドッグレース場か~!
ここがドッグレース場か~!
と驚いてみせたものの、実を言うと私は日本でも競馬を観に行ったことがありません!だから、日本とベトナムはおろか、競馬場とドッグレースの比較もできなかったりします。

あぁ、でも、そんな私でも、3つくらい分かる違いがあった。


1.ベトナムのドッグレース場は、競争犬に触れられる。
門をくぐるとすぐに競争犬をお披露目、触れられるらしい。
門をくぐるとすぐに競争犬をお披露目、触れられるらしい。
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ドッグレース場は結構サービス精神が旺盛らしく、なんと競争犬に触ることが出来る!日本の、というかおそらく何処でも、大切な競走馬に触れられる競馬場など無いだろう。まぁ、大切なのは馬だろうが犬だろうが間違いないはずなのだけど。

ちなみに犬種は、調べたところグレイハウンドっぽい。世界最速の犬種とのこと。
2.ベトナムのドッグレース場の来場客は、半分以上は女性、しかも若い
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レース場を眺める来場客はほとんど女性、しかも若い人が目立つ。この一列の女性率は高すぎるけど、それでもやはり女性客の方が多いと感じた。

3.というより、家族連れが多すぎる
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勝手なイメージだけど、競馬場はもっとスポーツ新聞を片手に爪楊枝をくわえて「チッチッ」と、やさぐれたおじさん達が集まっていると思っていた(本当に勝手なイメージです)。

が、このドッグレース場はむしろファミリー層で賑わっているじゃないか!
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何のジョークかホットドッグを売る屋台もあるし、
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敷地内の一部は完全に屋上遊園地と化している。
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囲いの中ではドッグレース場らしく子犬とたわむれることができ…って、
死んでないよね…!?
死んでないよね…!?
と心配したが寝ているだけらしい、だったら何故引っ張りだす。
というか、そもそも競争犬の犬種(グレイハウンド)と全然関係ないやないか。
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話は戻ってドッグレース本編へ。
話は戻ってドッグレース本編へ。
これが、馬券ならぬ犬券(けんけん、と呼びましょう)を購入する窓口。すでに床に犬券が散らばっている光景を見て、ここでやっとイメージ通りの競馬と一致した。ただ、窓口の前で捨てるというシチュエーションはちょっと想像が及ばない。
場内からは見えづらいのか、モニターにはスタートラインの映像が映されていた。
場内からは見えづらいのか、モニターにはスタートラインの映像が映されていた。
ただ、2番のみが単色ではないところが気になる。紫でも黄色でも他の色で代用できなかったのか。ストライプとかもう、最後の手段じゃないのか。
別のモニターにはオッズらしきものが映されていた。
別のモニターにはオッズらしきものが映されていた。
観客 「ウワアアアァァァァァ!!」
ネルソン「!?」
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しまった!いつの間にやらレースが始まってそして終わっていたようだ!
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と思うやいなや!
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払い戻しの窓口に、
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殺到する人・人・人!
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嬉しい気持ちは分かるけど、
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別に走らなくてもいいんじゃない!?
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次のレースはちゃんと楽しもうと、観客席へ移動。
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おぉ!この高さなら一望と言えないまでも見渡せそうだ。
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ちなみにこちら、30円ほどで売っていた本日のプログラム表。競争犬のコンディションや実績が記載されていて、そのデータを元に順位を予測するんだそうな。見たところ漢字が多いので、中国人観光客が多いか、もしかしたら華僑の資本が入っているのかもしれない。
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それにしても、
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日中は草サッカーでもするのかな。
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もっと近付いてよく見ると、
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場内にもビリッビリに破られた犬券が捨てられてある。負けた馬券は捨てる、という行為はやっぱり何処の国でも同じなのかもしれない。
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そして私自身も犬券を購入!賭け方は、単勝、複勝、三連単の3パターンがあるそうで、賭け金は20,000ドン(110円程度)から、上限は基本的になしだそうです。


さて、いよいよレースの始まりだー!
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ここからは動画でお楽しみください。犬、速すぎ。
15秒あたりから犬が映り込まないので、スパーンとカットしています。
これは別レース、観客の熱気も併せて見てほしい。
速すぎて、最後に犬の先導役のダミーの方を追いかけてしまいました。
観客 「ウワアアアァァァァァ!!」
ネルソン「…」


観客 「ウワアアアァァァァァ!!」
ネルソン「……」


観客 「ウワアアアァァァァァ!!」
ネルソン「ハッ、負けた…


友人 「ウワアアアァァァァァ!!
ネルソン「!?
!
友人 「勝ちましたよ!勝ちましたよネルソンさん!
ネルソン「なんだってー!?
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なんと同行していた友人がさり気に当たった!
自分は負けたが、もしかしたらおこぼれに与れるかもしれない…!
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ネルソン「いくら勝ったの?」
友人 「80,000ドン(450円)です」

ネルソン「いくら賭けたの?」
友人 「20,000ドン(110円)です」

ネルソン「ま、そうだよね…」
友人 「ま、単勝ですからね…」


最後に、来場客の皆さんにお話を伺ってみました。
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ネルソン「いつも来てるの?」
お姉さん「いえ、実は初めて」
ネルソン「へー!地元の人じゃないんだ」
お姉さん「そうね、サイゴン(ホーチミン市)から」
ネルソン「観光?」
お姉さん「うん」
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ネルソン「二人は何処から?」
彼女 「私はブンタウ、彼は…」
彼氏 「僕はサイゴンだよ」
ネルソン「お、ちょっとした遠距離恋愛か!」
二人 「笑」
ネルソン「これまでどれくらい来てるの?」
彼氏 「僕は初めてなんだけど、彼女がすっごい来てる!」
彼女 「私はもう十何回くらい来てるかな、前から絶対彼を連れて来たかったの」
ネルソン「めちゃくちゃ好きなんだね笑、魅力は何?」
彼女 「んー、走る犬の姿がかっこいいじゃない!」
ネルソン「そうか、そうなんだ」


ちなみに動画から時速を割り出してみたところ、450mのトラックを22秒程度で走り抜けているので、時速はなんと73kmという計算になりました。長距離だとスタミナもあるのでまた違ってくるでしょうが、これだけの速度で走り抜ける犬の雄姿は、確かにかっこいい。
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ただし、
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場内でも容赦なくうんこするけどな。

ドッグレース場は地元住民の憩いの場と思いきや正反対で、サイゴン以外にハノイ(北部の首都)から家族が来ていたり、ベトナム国内では有名な観光地・ブンタウのさらに一大観光施設という印象だった。

このドッグレース、調べてみると日本では戦後に開催を目指す動きがあったが頓挫したらしい。アメリカでも40年前に隆盛を誇ったが、今はカジノなどに取って代わられ、現在では衰退の一途を辿っているとのこと。

現代においてはかなり珍しいものなので是非その目で見てほしい。ブンタウ、ホーチミン市から高速船で1時間半である。
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