土曜ワイド工場 2015年5月16日
 

二俣川の運転免許試験場ちかく「キッチン合格」の物語

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「二俣川駅から運転免許試験場へ向かう坂の途中にある「キッチン合格」という喫茶店。試験場が近くにあるのでゲン担ぎのお客さんを当て込んであの名前にしたの?」という投稿がだいさんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

調べてみると…40年以上前に立ち食いそばから始まった「キッチン合格」。店名の由来は「運転免許試験場が近いから」。親子二代で二俣川の胃袋を満たし続けている、ということがわかった。

はまれぽ.com 秋山 千花
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

「合格」の由来と込められた気持ち

神奈川県で免許を取得した方なら一度は訪れたことがあるだろう二俣川の運転免許試験場。
最寄り駅は相鉄線・二俣川駅
最寄り駅は相鉄線・二俣川駅
キニナル投稿にある「キッチン合格」は、相鉄線二俣川駅北口から商店街を抜け、運転免許試験場へと向かう緩やかな坂の途中にある。
通りの名前もそのまま「運転試験場通り」
通りの名前もそのまま「運転試験場通り」
運転免許試験場を目指してひたすら道なりに
運転免許試験場を目指してひたすら道なりに
すると見えてくるのが・・・
Y字型の分岐点とその中央で個性を放つ黄色い建物
Y字型の分岐点とその中央で個性を放つ黄色い建物
そこに大きく浮かび上がる「合格」の二文字
そこに大きく浮かび上がる「合格」の二文字
そう、これが今回のキニナルお店「キッチン合格」。
正面には赤い日よけの入り口が2つ
正面には赤い日よけの入り口が2つ
「黄色は元気をくれる色。この黄色い建物を見るとほっとするって言ってくれるお客さんがたくさんいるの」と誇らしげに語るのは、40年以上の長きに渡りこの地で飲食店を営んできた井上靖子(いのうえ・やすこ)さん。
大切に育てて来た自慢の店は、神奈川新聞の記事にもなったのだとか
大切に育てて来た自慢の店は、神奈川新聞の記事にもなったのだとか
もともと専業主婦だった靖子さんが、自身の離婚を機に飲食店を始めたのは30代のころ。

決して大きくないカウンターだけの店で、少しでも多くのお客さんに来てもらいたいという思いで始めたのが立ち食いそば「合格そば」だったという。

「日本そばもやったし、ラーメンもやった。やらなかったのは、寿司屋くらいかしら」と笑う靖子さん。立ち食いそば店、中華料理店を経て、50代のころにカツカレーや定食などを提供する「キッチン合格」の形に落ち着いた。

女手ひとつ3人の子どもを育て上げるのは相当な苦労だったに違いない。それでも「うちの子たちは頭がいいから、みんな私立の学校に行ったのよ」と冗談めかして当時を振り返る靖子さんの表情は清々しい。

「イヤなことがあったらその都度チャンネルを変えていけばいいだけ。イヤなことは引っ張らないで、いいことだけを引っ張ったらいい」と靖子さんは言う。
カウンター中央には合格を祈願する宮島のしゃもじ
カウンター中央には合格を祈願する宮島のしゃもじ
「合格」という店名をつけたのも、もちろん靖子さんだ。
「試験場が近くにあったから『キッチン合格』。『不合格』じゃ、誰も入って来ないから」と、その由来はものすごくシンプル。

2013(平成25)年に神奈川県立がんセンターが移転してくる以前は、店舗から目と鼻の先の場所に運転免許試験場の駐車場があった。そのため、客の中には試験場を訪れる免許所得の受験者も多かったという。

「合格の祈りを込めて作る味、往きも帰りも食べて合格」

壁にかけられた額縁の言葉から、靖子さんの受験生たちへの想いが伝わってくる。店の壁の中央でその存在を大きく主張する合格祈願のしゃもじは、広島にいる次女からの贈り物だ。

「あのしゃもじの下の席でカツカレーを食べると、運転免許試験に合格するのよ」とは「キッチン合格」ならではのゲン担ぎ。
壁には、お客さんと撮ったたくさんの写真
壁には、お客さんと撮ったたくさんの写真
中には、免許試験の際に訪れ、免許の書き換えの度に尋ねて来るお客さんもいるという。何年かに1度訪れる場所。たまにしか行かない場所だからこそ、そこに長く知った店があるのは嬉しいものだ。

「この写真は、私の財産。ほかにもたくさんお客さんとの写真があるんだけど、死んだら全部棺桶に入れてもらうの」と話す靖子さんの口ぶりから「キッチン合格」の長い歴史を築き上げて来た誇りと、それを支えて来たお客さんへの感謝の想いが伝わってくる。
店内のあちらこちらに思い出がいっぱい
店内のあちらこちらに思い出がいっぱい
靖子さんとお客さんの思い出のたくさんつまった「キッチン合格」そのカウンター席に座り靖子さんは言う。

「40年、あっという間。あれよって言う間に月日は経つからね」

そう、今、靖子さんは厨房には立っていない。

「昨年の桜のころには、まさか引退するなんてことは考えていなかった」と少し寂しそうな表情を浮かべる。彼女の見つめる視線の先で、長女・真由美さんが夜の仕込みのために忙しく動き回る。

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