特集 2015年5月21日

ダム放流コレクション2015春

みんな放流を観に行こうホントすごいから
みんな放流を観に行こうホントすごいから
春は何と言ってもダム放流のシーズンである。

今年も、各地のダムが春の訪れを告げるように競って水門を開け、勢いよく水を放った。特に、今年はこれまでほとんど水を流したことのなかった水門を開けるダムも増え、百花繚乱の華やかさである。

そこで、今年ここまでに素敵な放流を見せてくれたダム、そしてこれから放流を予定しているダムをご紹介したい。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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今年も行われた点検放流

ちょうど1年前、ダムの放流を観に1200人もの人が集まった記事を書いた(→こちら)。

簡単に説明すると、大雨の時期を前にダムの水門が問題なく動くかどうか、開け閉めして点検するのだ。水門を開けると当然水が放流されるので、せっかくだからみなさん観に来ませんか、というイベントである。
このぶっつり途切れたところから水がジャンプしてくる
このぶっつり途切れたところから水がジャンプしてくる
こんな風に
こんな風に
特に矢木沢ダムの放流は道路のすぐ脇で水がジャンプ台から空中に放たれるので迫力がすごいし、風に煽られた水が道路に降り注ぐ、真夏のフェス的な体験ができる。以前はほとんど知られていなかったけど、このところのダムブームとSNSによる拡散で、大勢の人が群馬の山奥に押し寄せた。

その熱狂の放流が行われた矢木沢ダムと奈良俣ダムから先月下旬、今年もまた点検放流を行うというプレスリリースが出された。残念ながら今年は仕事が休めず行けなかったのだけど、去年あれだけ盛り上がったので今年はどうなるか楽しみにしていたところ、主催者発表で去年を上回る1400人もの人が集まったという。もはや立派な地域振興イベントだと言える。
職場の同僚が行って興奮して帰ってきた
職場の同僚が行って興奮して帰ってきた
この人だかりがみんな笑顔でみんなずぶ濡れ
この人だかりがみんな笑顔でみんなずぶ濡れ
というわけで、点検放流と言えば矢木沢ダム、奈良俣ダムの代名詞とも言える状況だったのだけど、昨年の盛り上がりはほかのダム管理者にとっても衝撃だったようで、今年はそれに待ったをかけるダムが現れたのだ。
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東北の雄が点検放流に参戦!

まずは岩手県に設置されている東北の雄、湯田ダムが点検放流(湯田ダムでは試験放流と言ってます)のプレスリリースを発行。

このところ続いた想定外の大雨に備えて、建設以来およそ50年間ダムのいちばん上にあってほとんど使ったことのない「クレストゲート」を開けて水を流し、水門の動作や水の流れ方を調べるというのだ。
写真を見て一目惚れした湯田ダム
写真を見て一目惚れした湯田ダム
実は湯田ダムは去年初めて試験放流を行ったのだけど、6月の平日、しかもプレスリリース発行からわずか4日後だった(それでも数十人が観に来たらしい)。

しかし何と、今年は10日前にプレスリリースを出し、ゴールデンウィークまっただ中の5月2日の実施。放流量も倍以上に増えた。これはもう完全に観光客を見込んでいると言って間違いないだろう。

実際、当日の湯田ダムには100人を超える人が集まった。
生きているうちにこの光景が観られるとは...!
生きているうちにこの光景が観られるとは...!
ああ素晴らしい、素晴らしいなあ
ああ素晴らしい、素晴らしいなあ
去年に続く2回目、休日に実施、放流量の増加と、きっと湯田ダムの試験放流は来年以降も行われて、今後ゴールデンウィークの風物詩になっていくのではないかと思う。

ゴールデンウィークの風物詩と言えば

点検放流ではないけど、東北地方で毎年ゴールデンウィークに多くの観光客を集める放流が行われているダムがあるので紹介しよう。

宮城県に設置されている鳴子ダムは毎年細かく水位調整して、ちょうどゴールデンウィークに満水になるように操作している。満水になるとどうなるかと言うと、こうなるのだ。
水門がないのであふれた分が流れ出ている
水門がないのであふれた分が流れ出ている
あくまで個人的な感想だけど、鯉のぼりがなければなあ
あくまで個人的な感想だけど、鯉のぼりがなければなあ
鳴子ダムの放流は「すだれ放流」と言われていて、ダムが完成した昭和33年からほぼ毎年行われているという。雪解け水を貯水池に貯めて、ちょうど観光客が多くなるゴールデンウィークに合わせて満水にしているのだ。ゴールデンウィークが過ぎたら少しずつ貯水池の水位を下げて、夏の台風シーズンに備えている。

冬の間に雪が少なかったり、ゴールデンウィークに大雨が降りそうになるとすだれ放流ができない場合もあるけど、ほぼ毎年行われているのでぜひ生で見てください。

さて、話を点検放流に戻すと、今年は関東地方でほかにも貴重な放流が計画された。
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キャットウォークから放流を見る!

ゴールデンウィークが明けて、とつぜん点検放流の告知をしたのは鬼怒川にある川治ダムと川俣ダム。どちらも巨大なアーチダムで、特に川治ダムは関東地方最大のアーチダムとして名高い。
上に開いた穴から滝のように流れ落ちる(はず)
上に開いた穴から滝のように流れ落ちる(はず)
そんな川治ダムは数年おきにクレストゲートからの点検放流を行っていて、今回は2年ぶりの実施。でも次いつ観られるか分からない貴重なシーンであることは間違いない。

しかも、今回はなんと、貴重な放流をアーチダムの壁面につけられたキャットウォークから見られる見学会も実施された。

点検をやるから周りから勝手に見てていいですよ、ではなくて、案内するから迫力のある放流を見てってよ、という感じである。もちろん無料。ものすごいサービスである。
なんという名瀑!!
なんという名瀑!!
下を見るとキャットウォークに人が! あそこから見たい!
下を見るとキャットウォークに人が! あそこから見たい!
見学会に参加すると、職員さん(僕のグループは管理所長さん自ら)が説明しながらダムの中を案内してくれた。そしてキャットウォークに出ると、息を呑む光景が目に飛び込んできた。
僕今年本厄らしいんですが夢が叶いすぎてて怖い
僕今年本厄らしいんですが夢が叶いすぎてて怖い
ダムを追いかけてもう15年以上になるけど、ここから放流を見たい、というのは現実味がなさすぎて想像したことがなかった。最近のダム業界、脱ダム宣言とかで風当たりが異常に強かった頃の揺り戻しが来てるかのようにアグレッシブである。

結局、この日は平日にもかかわらず80人以上がキャットウォークから放流を見たらしい。きっと次回もあるのでぜひチェックしておいてほしい。

また、点検放流ではないけれど、群馬県の渡良瀬川にある草木ダムでは、ふだん下流に水を流している放流管が工事のため、5月25日頃まで非常時以外は使われないクレストゲートから常時放流しているという(→プレスリリース)。これも珍しいのでぜひ観に行ってもらいたい。
(参考画像)これは2006年に発電所が工事だったときのもの
(参考画像)これは2006年に発電所が工事だったときのもの

この先もまだ予定があるぞ

もう春も終わりに近いけど、滅多に見られないクレストゲートからの点検放流を行うダムはまだあるので紹介したい。まずは5月22日(って明日です)に川治ダムの上流にある川俣ダムが点検放流を行う(→プレスリリース)。
いちばん上の水門が開くのを正面から見られる!
いちばん上の水門が開くのを正面から見られる!
川俣ダムもおよそ10年ぶりくらいの点検放流である。急だし時間もないけど、急いで有給申請を出すか体調の悪い架空の親戚を作ろう。

そして、こちらは少し先だけど6月28日に埼玉県と群馬県の境、神流川にある下久保ダムで5年ぶりの点検放流が行われる(→プレスリリース)。

しかも、過去に1度しか行われていない非常用と常用、両方のゲートを開く4門同時放流が行われる予定になっている。
こんな放流まず見られないよ(写真は5年前の4門同時放流)
こんな放流まず見られないよ(写真は5年前の4門同時放流)
ほかのダムがひと通り点検放流を終えたあとの、満を持してというタイミングである。きっと中の職員さんは相当気合が入っているのではないかと思う(勝手な想像です)。ぜひみんなで見に行ってみよう。

まさかこんな時代が来るとは

というわけで、今年行われた、そしてこのあと行われるダムの珍しい放流をご紹介した。

お前は国交省や水機構の広報か!と思われるかも知れないけど、今年は特に点検放流が各ダムで企画されていて、たぶん「100%業務」だったものが「半分くらい地域振興」の意味合いを持ち始めた歴史の転換点だと思う。

なぜなら、告知をしたり見学会を開いて見物人が何百人来てもダムには1円の収入にもならない。だけどダムを使って地域を盛り上げたい、という思いが高まってきているのだと思う。だからぜひ多くの人に足を運んでもらいたいのだ。

実際、目の前で巨大な構造物から水が吹き出す光景は、ものすごいエネルギーを感じられて心と身体に響くので、いちど生で観ることをおすすめしたい。5月病も吹っ飛ぶか、もしくは何もかもがどうでも良くなるよ。
そしてこのタイミングで告知...そんなダムの魅力が詰まったダムDVD第二弾が出ました!いま話題のドローンでの空撮も入ってます
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