わが家のハンガーは二極化している
まず、ぼくのハンガーと妻のハンガーを紹介したい。
これがぼくのハンガー。上部が洗濯バサミのようになっていて、物干し竿を挟み込むタイプ。
対する妻のハンガーは、引っ掛けるだけのフックタイプ。取り込むとき、竿をスライドできるのが良いらしい。
見て分かるとおり、ぼくのハンガーは圧倒的に風に強い。位置がズレないので、終始、洗濯物同士の間隔を保ちながら乾かすことができる。
しかし、その融通の効かなさが妻にとってはデメリットだという。スライドできることを優先させ、そう簡単に洗濯物が風で飛ぶわけがないと、鷹をくくっているようだ。
一度、妻にぼくのハンガーを隠されたことがあったが、執念で見つけ出したことがある。お互い、ハンガーにおいては譲る気配がない。
そんな家庭事情があって、ぼくは、妻のハンガーが風で飛ぶという事実をつかみたい。そして、ぼくのハンガーじゃないと、絶対にだめなんだと言い切りたい。
ハンガーにもいろんな種類がある
検証を前にいろんなハンガーを改めて見てみる。
フック領域という言葉は完全オリジナル。価格は記憶違いがあるかもしれないので、参考までに。
ちなみに3番のハンガーは、編集部の古賀さんが使っているもの。この話をすると、わざわざ自宅から持って来てくれた。ありがたく、妻のハンガーの一味として加えさせてもらう。
それにしても、こんなにまじまじとハンガーを眺めたのは初めてだ。フックタイプのものは妻のハンガーとひとくくりにしていたが、その形状は、ものによって全然違う。
フックの曲がり方に注目
フックの下部から見ると、2番は中央から垂直に針金が延びたのちにぐるりとカーブしているのに対し、3番4番5番は、下部からいきなりカーブしている。
それぞれの重量差に加えて、形状の微妙な違いが、干した時の飛ばされにくさにも影響しているかもしれない。
風をもとめて海に来た
なるべく風の強いところで検証するため、茅ヶ崎の海までやってきた。
パイプハンガーを組み立てて物干し竿を作る
初めて来たサザンビーチは、まだ海開きしておらず閑散としていた。浜風をひとりじめできるようで嬉しい。
晴れているし絶好の洗濯日和である
できた!
肝心の洗濯物だが、茅ヶ崎駅前にあったコインランドリーでしっかりと洗い、脱水まで済ませてある。
横浜銀行の隣にあるコインランドリーです
ぱたんぱたんとシワを伸ばしながら干してく
さぁ準備は整った
形の違うハンガー5つに、同じ形状のTシャツ5枚。
同じ服を何枚も買う癖があるぼく。よもやこんなところで、その習性が役に立つとは思わなかった。いま干しているTシャツは、自宅にあと7枚もある。
飛べ!洗濯物!
検証に先立ち、ルールを作ることにした。
・制限時間は洗濯物が乾くまで
・それまでに飛ぶかどうかでジャッジする
というわけで、検証スタート。
風が強く洗濯物が優雅にゆれる
期待通り、干した瞬間から、強い風が洗濯物を揺らしてくれている。手で支えてないと、台ごと倒れてしまうほどだ。
干したあとの洗濯物を、ずっと眺めるのも初めてのこと。いつも干しっぱなしでごめんよ。今日はしっかり見ていてあげる。つらくなったら飛びなさい。
最初に飛ぶのはどれだ?
スタートから1分ほどで、最初の脱落者が出た。
編集部の古賀さんが持って来た3番のハンガーである
呆気ない。
ビーチという爽やかな舞台でも、落ちた洗濯物はとても哀れだ。風に踊る洗濯物には勇ましささえ感じるのに、落ちた途端に悲しくなる。
洗濯物に、栄枯盛衰の概念を感じた
その直後に2番のハンガーも飛ばされた
開始から3分ほどで5つのうち、2つのハンガーが飛ばされてしまった。やはり、妻のハンガーは、風にめっぽう弱い。この調子でどんどん飛ばされてしまえばいい。
残ったのは3つ
意外と粘る妻のハンガーたち
重量の軽い2つが早々に脱落したことで、残りも時間の問題かと思われたが、ここからが長かった。
びゅんびゅん舞うが、飛ばない
波打ち際に移動した。背後で遊ぶ子供たちと同じく、こちらも無邪気であり真剣なのである。
強めの風が来ると「ついに来たか」と期待するのだが、あと一歩のところで飛んでくれない。
洗濯物があおられることと、実際に飛ぶことの間には、目に見えぬ大きな壁があるようだ。
ぼくのハンガーは絶大なる安定感を誇っているが、他が飛んでもらわないと困る
より強い風に期待する
ハンガーは回る
テトラポットのそばまでやってきた。右にいるのは早々にハンガーが飛ばされた古賀さん。
風は少し強くなったような気がするが、やはり残り3つは飛んでくれない。
すごい勢いで左右にスライドするが飛ばないのだ
5番のハンガーはフックの部分だけ回転してる
ここへ来てようやく気づいたが、5番のハンガーはフックの部分と木でできた本体が独立しているため、クルクルとよく回っている。
これによって、風が来ても受け流すことができ、飛ぶギリギリのところで耐え続けているのかもしれない。これは盲点であった。
ついに飛んだ!?
時間はどんどん過ぎて行く。開始から45分が経った。
時間はどんどん過ぎて行く。開始から45分が経った。
飛んだ! いや、落ちた!
回転とスライドを繰り返していた5番のハンガーから、洗濯物がするりと落ちた。だんだん乾いてきたことで、水分がなくなり摩擦力が弱くなったのかもしれない。
5番の本体部分は木でできていてすべりやすい。正確に言うと、ハンガーは飛んでいないが、洗濯物が落下してしまっては元も子もない。これは立派な脱落とする。
しかし、それ以上は飛んでくれない
高く掲げてみたが無駄だった
結局、洗濯物はすべて乾いてしまった
これで検証は終了。よく晴れた日ということもあって、わずか1時間ほどで洗濯物は乾いた。残念ながら、妻のハンガー4つのうち、1つが残ってしまう結果となった。
なぜ飛ばなかったのか
ぼくのハンガーと、妻のハンガーが1つずつ残った
・ハンガーは重いと飛びにくい
・フック部分が回転するタイプは飛びにくい
・本体がすべりやすいと洗濯物が落ちやすい
・ぼくのハンガーは最強
改めてハンガーと向き合ったことで、ハンガーへの探究心が湧いてきた。もっと他に、風に強いハンガーや、その他いろんな機能を備えたものがあるのかもしれない。
ホームセンターや雑貨屋では、もっと注意してハンガーを見てみようと思う。
わが家のハンガー論争はつづく
妻にこの結果を伝えると、「ほら全部は飛ばないでしょ」と言われた。どうにも納得できない返答である。いつか、風の強い地域に引越し、ぼくのハンガーの偉大さを見せつけてやりたいものである。