特集 2015年6月24日

俳人・歌人のたたずまいなスマホケース

是は何ぞ?
是は何ぞ?
電車内や街角で、ケータイ、あるいはスマホに見入る人の数は相当なものである。自分も含めて。

ヘタをすれば車内全員スマホ中ということもある。そんな現代の風俗の中、ひとり涼しく立ち振る舞えないものだろうか。

(これは去る6月5日に東京カルチャーカルチャーで開催された「おバカ創作研究所vol6」にて披露したお題工作「スマホケース」を、読み物記事として構成したものです)
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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制作理由はぜんぜん涼しくない

一概に「現代人はスマホばっかいじりやがって」とかそういうことではない。私だってスマホ一本で本日の仕事全部済ませるときもあるし。

しかし他の人がいっせいに下を向いてスマホをいじっていると「あぁ、現代って」とか嘆いちゃったりして、誠に勝手なものである。
こんな感じでいじられるとなおのこと。
こんな感じでいじられるとなおのこと。
皆、用事があるからスマホをいじっている。当たり前の光景なのだが、その中にあってせめて自分だけは、理知的な佇まいをキープできないものだろうか(皆がバカっぽいという意味ではない。ああ何を言ってもカドがたちそうだ。わかってネ)。
そこで、芭蕉ですよ!
そこで、芭蕉ですよ!
せわしい世間の波に飲み込まれないようにありたい、すなわちひとり涼しく、茶室で一服しているような、風通る縁側で鹿威しに耳を傾けているような。コーン・・・サワサワサワ。という感じでスマホをいじりたい。そんなスマホケースを作れないもんじゃろか。

というわけで、いろいろ買ってきたで候。
100円ショップで太い筆、電器店でスタイラスペンを購入。
100円ショップで太い筆、電器店でスタイラスペンを購入。
これから何をするかというと、「太い筆の中にスタイラスペンをねじこむ」のだ。BoAか。何を言っているのか。
やにわに筆を切断す。
やにわに筆を切断す。
入らなかったら一から考え直し・・・!
入らなかったら一から考え直し・・・!
あな、ピッタシなりや。
あな、ピッタシなりや。
太い筆の中は空洞に違いなく、必ずやペンが入るものと予測はしていたのだが、実際入るのがわかってホッとしました。

それでも、ペンの途中から断面が三角形になって入らなくなったので、切断および削る必要があった。
先っちょだけ必要なので、もったいないが切断!
先っちょだけ必要なので、もったいないが切断!
入りきらない部分を削る!私は今スタイラスペンを削っている!最先端のガジェットを!
入りきらない部分を削る!私は今スタイラスペンを削っている!最先端のガジェットを!
最先端のガジェット、断面はいたって原材料そのものチック!なんか普通!まあそうだよね。
最先端のガジェット、断面はいたって原材料そのものチック!なんか普通!まあそうだよね。
つまり今、筆風のスタイラスペンを作っているのである。

となれば、先端を筆に忍び込ませねばならぬ。
ペン先を出すには、先っちょはカットだ。
ペン先を出すには、先っちょはカットだ。
そして引っこ抜く。
そして引っこ抜く。
ボリュームダウン。
ボリュームダウン。
ペン先に巻き付けてカモフラ。
ペン先に巻き付けてカモフラ。
より筆らしくカット。
より筆らしくカット。
広がらないよう、スタイリング剤(木工用ボンド)で固める。
広がらないよう、スタイリング剤(木工用ボンド)で固める。
美容室風に筆先を固めている間に、今度は本体を制作しよう。芭蕉と来て筆と来たら、材料はアレしかあるまい。
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工程は全然風流じゃない

スマホケース本体はこれで行こうと思う。俳句や短歌を書き連ねる、あの「短冊」だ。
大手販売店にはなく、これも100円ショップで(2枚セット)。すごいな100円ショップ。
大手販売店にはなく、これも100円ショップで(2枚セット)。すごいな100円ショップ。
あっ、幅が少し足りない!
あっ、幅が少し足りない!
iPhone6では、横幅が少しオーバーしてしまうのだった。このままでもいいかもしれないが、やはりスマホが隠れるくらいの、ぴったりのケースを用意すべきであろう。

というわけで、家にたまたまあった色紙を、幅の通りに切って使うことにした。なんだかんだで手間のかかることよのう。
計測と下書き。なんの根拠もなく2mmほど幅を大きくしてみた。
計測と下書き。なんの根拠もなく2mmほど幅を大きくしてみた。
パーツが細かいのは、スマホの厚みの分、何度か折り曲げるから。
パーツが細かいのは、スマホの厚みの分、何度か折り曲げるから。
ヒンジ部分は最初、金属の蝶番にしようと思ったが・・・。
ヒンジ部分は最初、金属の蝶番にしようと思ったが・・・。
家にあった奉書紙がいいのではということに。紙で行こう!
家にあった奉書紙がいいのではということに。紙で行こう!
奉書紙を適当な大きさに切って、糊で普通に貼っていく。
奉書紙を適当な大きさに切って、糊で普通に貼っていく。
縁の金紙のない部分は、型紙をあてて金のインクで補修。がしかし。
縁の金紙のない部分は、型紙をあてて金のインクで補修。がしかし。
もともとの金紙の部分とあきらかに光沢が違う!ということで・・・。
もともとの金紙の部分とあきらかに光沢が違う!ということで・・・。
全部はがしました。
全部はがしました。
なんとも地味でわかりにくい作業が続いて、大変申し訳なく候。寄り目になるくらいの空間で、超いらん手間が続く、この無間地獄かな。風流から程遠いことであるなあ。
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理想の果てに煩悩

そろそろ仕上げに入るとする。またぞろ地味な作業が続くので、驚くがいい。
さっき塗った金に、ツヤ出しメディウムをさらに乗せる。
さっき塗った金に、ツヤ出しメディウムをさらに乗せる。
ヒンジ部分も、裏地に合わせて着色。女郎花?黄檗色?のような色。
ヒンジ部分も、裏地に合わせて着色。女郎花?黄檗色?のような色。
あまった紙から裏地をはがして、目隠しシールにせんとす。
あまった紙から裏地をはがして、目隠しシールにせんとす。
金色の紐をシールで背面に貼る。
金色の紐をシールで背面に貼る。
ボンドの乾く間に、重要な小道具を作らんとぞ思ふ。
これまた家にあった適当な色のキャンバス地にて。あるものを丸く縫うの図。
これまた家にあった適当な色のキャンバス地にて。あるものを丸く縫うの図。
ついに完成せり!さても地味なビジュアルであるが・・・俳人風スマホケース、「須磨捕携守」(今考えた)ここに誕生なり。
筆型スタイラスペンを実装可能。
筆型スタイラスペンを実装可能。
金色(こんじき)の紐を解けば・・・。
金色(こんじき)の紐を解けば・・・。
短冊、長々と展開す。
短冊、長々と展開す。
できたはいいが、完成写真だけだとただの地味な紙工作だ。これはこうして使うのである。
ほら一句ひねっているかのように!「スタイラス 軌跡読み込む EVERNOTE」(古池や~を元ネタに)と思わず一句!ダジャレ!
ほら一句ひねっているかのように!「スタイラス 軌跡読み込む EVERNOTE」(古池や~を元ネタに)と思わず一句!ダジャレ!
手製の茶人帽(作る際に初めて名前知った)と、ありあわせの甚平でさらに虚心坦懐、明鏡止水の境地に・・・。
手製の茶人帽(作る際に初めて名前知った)と、ありあわせの甚平でさらに虚心坦懐、明鏡止水の境地に・・・。
どうだ。と聞かれても甚だ困るだろうが。

この須磨捕・・・いやもういいわスマホケースがあれば、他人から「ああ、今日も横並びでスマホいじりか、などと嘆いても詮無いこと・・・おや?その中にあってあの方は、風流に句をひねっておられるぞ!日本もまだ捨てたもN・・・」と、思われるかもよっ!

【告知】

1)展示と販売のお知らせ:

・西荻窪の「ギャラリーカドッコ」さんにて、企画展「ホシ・ツキ・セイザ」に、バッグを出展いたします。
会期は6月30日~7月8日です。詳しくは、こちらまで!

・渋谷奥の雑貨屋さん「いろどりや」にて、作品展示と物販をいたします。
タイトルは「妄フェス!~夏の妄想フェスティバル~」
フェス行きたさをそのままぶつけました。
会期は7月18日~8月2日です。詳しくは、こちらまで!

2)イベントのお知らせ
7月30日(木)夜、東京カルチャーカルチャー(カルカル)にて『また、つまらぬ物を作ってしまった』DVD-BOXの発売を記念し、ラーメンズ片桐仁さんとトークイベントをいたします!震えるぜ!
詳細はカルカルサイトにて追ってお知らせします。
http://tcc.nifty.com/
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