特集 2015年7月29日

ベトナムのコンビニの独特すぎる商品たち、あとオタフクソースが900円

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コンビニそのものはアメリカ生まれだが、弁当やホットスナックを売っている24時間営業の、私達が親しんでいるスタイルのコンビニは日本生まれ。

たとえば、ファミリーマートは7つの国と地域で5700店舗を越えて展開されており、取り扱う商品のラインナップを見ていると、現地に根ざすコンビニだからこそその土地での生活風景を教えてくれる。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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ベトナムのファミリーマート一号店は日本人街の中心にある

ベトナムで展開している日系コンビニはファミリーマートの70店舗とミニストップの17店舗。ほかにアメリカ資本と現地資本のコンビニがあるが、やはり自分が日本人だからか、入店した時の安心感がまるで違う。

多分に、あの眩いばかりのテカテカした白色蛍光灯に、「ここには何でもある」「空調もちょうどよい」「悪いヤツも追ってこない」という安心感が刷り込まれているのではないか。

ちなみに私は、悪いヤツに追われたことはない。

さて、そんなベトナムで、最も多い店舗数を展開しているファミリーマートの一号店は…。
日本語やSUSHIという言葉を掲げたお店が散見する、
日本語やSUSHIという言葉を掲げたお店が散見する、
ホーチミン市最大の日本人街・レタントン通りに、
ホーチミン市最大の日本人街・レタントン通りに、
ある(店舗名はサイゴンスカイガーデン店)。
ある(店舗名はサイゴンスカイガーデン店)。
ここで早速、日本と違う点は、常に守衛がいるということ(右端の彼)、ベトナムのあらゆるお店はバイクの見張り番も兼ねて守衛を置いている。

ちなみに写真の彼はファミリーマートの守衛ではないらしい、きっとサイゴンスカイガーデン(ビルそのもの)の守衛だろう。
それでは、入ってみましょう!
それでは、入ってみましょう!

まずは日本っぽいものからご紹介

お決まりの入店音(「大盛況」)は、ない。間取りも、日本のコンビニに比べてこれといって大きな違いはない。

しいて言えばホットスナック類がレジにはなく離れ小島になっている点くらいだが、客数の多いこの店舗でレジに置いてはきっと邪魔になるのだろう。

これはこれでおもしろいのであとで取り上げるとして、まずは近場にある弁当類が置いてある商品棚に向かう。
見た限り日本っぽいなー。
見た限り日本っぽいなー。
おにぎりたち。
おにぎりたち。
おにぎりの具材は6種類と日本に比べると少ない。カニカママヨネーズ、ツナマヨネーズ、鮭マヨネーズ、鮭、梅、明太子…マヨネーズ比率高いな。ベトナムでもマヨネーズは浸透しているので、現地の人にとって手をつけやすい具材なのかもしれない。

ただ、これらはご飯と海苔が分かれているタイプで、最初から一体となっているさらに割安なタイプも4種類ほどあった。ちなみにどれも一個50~100円と安い。
弁当が三種類ほどと少なめ。
弁当が三種類ほどと少なめ。
ベトナムには弁当文化があり(スチロールの箱にご飯とおかずを詰め合わせるだけの簡素なものだけど)、コンビニ以外に競合がものすごく多いと思う。

とはいえ、手前の照り焼き弁当は200円。日本スタイルの弁当をこの値段で提供できることは、価格面においてはものすごいことだ。

ここまでは日本でも見掛けるものばかり…が、そろそろ見慣れぬものを紹介しよう!

ベトナム人の生活に根ざした、独特すぎる商品たち

「軍艦巻き」だー!
「軍艦巻き」だー!
寿司! 寿司は寿司だけど、日本のコンビニで売られている寿司といえば納豆巻きなどの巻き寿司くらいしか思い浮かばない。しかし、ここでは軍艦巻きが売られている。

想像だけど、きっとベトナムで寿司が有名すぎるからではないだろうか。日本のコンビニだとなんとなくおにぎりと同じ分類にある寿司だけど、ベトナムだと寿司が独り歩きしすぎて、寿司は寿司として求められている気がする。

ところでこの文章(段落)では10回以上も寿司って言ってる、すごい。

そして次の見慣れぬもの!
「ブン」だー!
「ブン」だー!
何コレ…糸コンニャク? …と、違います。

これは、米粉麺のブン。ベトナムの麺といえばフォーが有名だけど、それ以上に食べられているものは間違いなくこのブンだ。

米飯をよく食べるベトナムだけど、同じ位置づけで食べられることが多い。
手に持つとプルプルしている。
手に持つとプルプルしている。
袋越しにさわった感触はそれこそ糸コンニャクに近い。ただ違う点は、軽さだろうか、このまま力強く握るとブチブチとちぎれてしまいそうな弱々しさを感じる。小さなハムスターを手のひらの載せているような。
南国らしくトロピカルフルーツもあるが、
南国らしくトロピカルフルーツもあるが、
マンゴーは少し青味がかるほど若く、
マンゴーは少し青味がかるほど若く、
エビ塩が付いている。
エビ塩が付いている。
そう、ベトナムではオレンジ色に熟したマンゴーは「気持ち悪い」とすら言う人もおり、熟す前のマンゴーにエビ塩を付けて食べるスタイルが一般的だ。

シャリシャリしないリンゴを食べているような感覚で、日本人としてはもったいないという気もする。
完熟マンゴーもシェイクにして飲むので、味が嫌いという訳ではないみたいだけど。
コーヒー大国らしくインスタントコーヒーも豊富。
コーヒー大国らしくインスタントコーヒーも豊富。
東南アジアで最もビールが安い国だけあって缶ビールは70円。
東南アジアで最もビールが安い国だけあって缶ビールは70円。
バイク大国のベトナムでは欠かせないマスクも売ってある。
バイク大国のベトナムでは欠かせないマスクも売ってある。
どうだろうか、パッと見では日本っぽいがところどころで全然違うのだ。
ここだけ切り取ると完全に日本なのに…。
ここだけ切り取ると完全に日本なのに…。

意外に手に入る日本製品! が…ものによって価格は4倍

ベトナムに住んでいると日本の製品が手に入らないと思われることが多いが、意外にそうでもない。

ただ、そうなった時期もここ三年くらいで、まさにその状況を大きく変えてくれた存在がファミリーマート。が、それも、お金に糸目を付けなければ…という条件が付いてくる。

簡単な話、高い。日本の製品は輸送費や関税も絡んで来るので、3~4倍の値段が掛かるのだ。とくとご覧になってほしい!今、10000ドンは56円だ!いいね!?
缶コーヒーは280円!
缶コーヒーは280円!
オタフクソースは930円!
オタフクソースは930円!
神の河(720ml)は4100円!
神の河(720ml)は4100円!
と、キリがないのでこのあたりにしておくが、言いたいことは伝わったはず。

この通り、ベトナムで日本の製品を手に入れることはやはり難儀する。小銭は必ず募金しますというくらいお金に余裕のある人でない限り、在住者が喜ぶ日本からのお土産は基本的に「保存の効く日本の食品」だと思ってほしい。
在住者の間では、「日本の食品をお土産でもらうとfacebookで自慢する」というお約束があるほどだ。まぁ、お約束じゃないけど、自慢している人は結構いる。私もする。

反対に、ベトナム製品はやはり安く、お菓子もインスタントフォーも30円程度で買える(対して日本の「一平ちゃん」は520円だった)。
だからといって万が一にも「フォーが安く食べられるなんて羨ましい!」などと言われようものなら、鬼の形相で「日本の製品は美味すぎるんじゃ!バカ!」と反論させていただきたい次第なのですけども。
あ、でも、バラマキ系のお土産にはちょうどいいと思います。
あ、でも、バラマキ系のお土産にはちょうどいいと思います。
この通り、軒並み高い日本製品だが、現在は現地でも安く提供できる自社企画商品を開発しているそうだ。日本の品質で安く購入できる、これほど現地在住者にとって嬉しいことはないので心待ちにしよう(これを読んでいる大半の人が該当しないと思うけど)。

余談だけど、ベトナムと日本の中間くらいの値段で買えるものが韓国製品。食生活が似ているのかラインナップが被っており、特にパン粉などの食材関連では重宝する。
韓国のり専用のコーナーまである。
韓国のり専用のコーナーまである。

コンビニらしかぬ商品から見える、在住日本人の生活

ところで前述した通り、このレタントン通りは日本人街であり、ホーチミンでおそらく最も多くの日本人が住んでいる。全くの想像だけど500人くらい。そうした背景もあり、在住日本人の需要に合わせた商品もある。
納豆や、
納豆や、
日本米や、
日本米や、
薄切りなどに加工された肉や、
薄切りなどに加工された肉や、
有機無農薬で栽培された野菜など。
有機無農薬で栽培された野菜など。
日本から納豆を輸入すると高額だけど(実際に置いてある)、この納豆はベトナム現地で日本人の手によってつくられている。食肉もベトナムでは薄切り肉に加工できるスライサーがあまり普及していないらしく、野菜についても食の安全が叫ばれており、(多くの場合)現地に住む日本人が輸入に頼らず日本の品質をつくりだそうとしているのだ。
ファミリーマート・サイゴンスカイガーデン店は、そうした人達の商品の受け皿という役割も果たしている。

他にも、
お土産や、
お土産や、
バスアイテムや、
バスアイテムや、
なんとゴルフ用具まで置いてある!
なんとゴルフ用具まで置いてある!
お土産は、ホーチミンの日本人向けの売り場の中で最も安く買える場所とのこと。「日系のコンビニでベトナムのお土産を買う」という行為は一見すると珍しいが、実は賢い買い物なのだ。
また、現地では駐在員や経営者によるゴルフコンペが度々開催されるのだが、在住初心者にとって位置が分かりやすくて物が揃うファミリーマートは、自然と集合場所に指定されることが多い。そんな需要を見込んでの商品なのだろう。

日本のコンビニで食品を買う人はなんとなく家庭を持たないイメージがあるが、日本人街の中心にあるこのサイゴンスカイガーデン店に関しては、安心品質のスーパーというイメージもあり、家族の生活を一通りカバーした商品を扱っているのだ。

ホットスナックなどコンビニらしいものもある

ベトナムらしいもの、または割高な日本製品を紹介したが、コンビニ文化独特のものもある。フライや肉まんといった、ホットスナックだ。そもそも肉まんは、ベトナムでは当たり前のように見掛ける食べ物だ。
写真右手にある離れ小島がホットスナック類。
写真右手にある離れ小島がホットスナック類。
レジに設置しきれないのだろう、離れた場所に置いてある。
レジに設置しきれないのだろう、離れた場所に置いてある。
さて、これ、日本だと店員さんに注文して包んでもらうが、レジに備え付けられていない。
どうするのかなぁと思って前でマゴマゴしていたら、気付いた。
どうするのかなぁと思って前でマゴマゴしていたら、気付いた。
セルフサービスか…!
セルフサービスか…!
あとでファミリーマートの方に聞いたところ、「会話での注文が難しい」という声がありセルフサービスにしたとのこと。スペースの問題ではなかったのね。しかし、ホットスナックのセルフサービスはあまり聞いたことがないな、ちゃんと出来るかな、とハラハラしながら肉まんのボックスに手を伸ばす。
包み紙を取り、
包み紙を取り、
包む!(一人撮影なので掴んでいる写真は撮れず)
包む!(一人撮影なので掴んでいる写真は撮れず)
よ、よし、無事に取れたぞ。落として食べないのに弁償とか嫌だからな。そういえばコンビニのホットスナックといえば何かもうひとつあったような…。
あ、
あ、
おでんだ…!
おでんだ…!
ベトナム風おでんが何者なのか全く想像がつかないが、辛いと注意書きがあるあたりよっぽど辛いんだろうな。その上でやみつきとあるから、日本人の舌に合わない訳ではないらしい。
こちらが具のラインナップ。
こちらが具のラインナップ。
とうもろこしに…!?
とうもろこしに…!?
タニシ入り魚ボール…!?
タニシ入り魚ボール…!?
ローカライズだ、ローカライズの結晶だ。海外で日本の物を普及させるためには、その土地に合わせたローカライズが必要になってくる。聞けば、味付けはベトナム人に任せているというではないか。日本の物を現地の人間に任せるということは、重要だと分かっていても度胸の要ることに違いない。

さて、ちょうど昼飯時だったので、食べてみたいものをカゴに入れてレジへ。すると、これまた興味深いものを発見した。
レジ向こうのタバコ売り場。
レジ向こうのタバコ売り場。
18歳以上は吸うなという注意書き、20歳じゃないんだねぇ。文化の違いだねぇ。
18歳以上は吸うなという注意書き、20歳じゃないんだねぇ。文化の違いだねぇ。
ATM。
ATM。
サラッと怖いことが書いてあった、カードを30秒放置すると回収されるらしい。何で。
サラッと怖いことが書いてあった、カードを30秒放置すると回収されるらしい。何で。
これはベトナムの特定のATM共通の仕様なんだろう、気をつけよう。

さて、家に帰って実食しようじゃないか。
おでんがひっくり返らないかが心配だけど。
おでんがひっくり返らないかが心配だけど。

実際にベトナムのコンビニ・フードを食べてみる

購入した商品を机の上に広げる。
コンビニらしいフードたち。これとおでんで550円ほどなのだから安い。
コンビニらしいフードたち。これとおでんで550円ほどなのだから安い。
おでんのツユは案の定こぼれていた、道の悪いベトナムなのでこれはしょうがない。
おでんのツユは案の定こぼれていた、道の悪いベトナムなのでこれはしょうがない。
中身は…あぁ、絶対辛い色だ。
中身は…あぁ、絶対辛い色だ。
ここであることに気付く。そういえば、冒頭で紹介したブンを買ったんだ。あの米粉麺。そのブンは何処にもない。

実は以前、おでんにブンを入れて食べているベトナム人の青年を見掛けて、試してみたいと思っていたのだが…ちょっとこれはファミリーマートさんに気を遣って書きづらくなるじゃない…か!いや待て!
あぁ、
あぁ、
最初から入っている仕様なのか。
最初から入っている仕様なのか。
ん、じゃあ具材のラインナップにブンがあればそれでよくないか? それともベトナム語でブンを入れるかと聞かれていたのかな。いつもおにぎりを温めるかと聞かれて「ヤー(はい)」というクセが付いているので、気付かずお願いした可能性があるな。そのつもりだったから結果的にいいんだけど。とりあえず、食べるか。食べた。

おでんはトムヤンクンに似ている
味のたとえがタイ料理というのも歯切れが悪いが、日本料理にないものはないのだからしょうがない。そこから香草の要素を抜いたような味で(入っているかもしれないが)、舌は平気だけど喉を通した途端に辛くなる。やみつき、注意書き、これはどちらも理解できるわ。イクラ入り魚すり身がプチプチして美味しかった。

軍艦寿司はラップにくるまれている
いきなり味の表現じゃないけど、それ自体は普通のサラダ巻きとトビコだった。むしろ普通であることがこの国(きっと海外全般)では珍しいことなんだ。それよりも驚いた点は、寿司をくるんだラップに切れ目が入っていて、簡単に割れる点。これ、日本でも活かせそうな技術だけどなぁ。もしかしてすでにあるのかなぁ。
よく見ると切れ目が入っていて、
よく見ると切れ目が入っていて、
パキッ!と割れる、気持ちいい。
パキッ!と割れる、気持ちいい。
肉まん、おにぎり、サンドウィッチはちょっと物足りなさがある
具の存在感を感じられなかったり、ベトナム米だからか形が崩れやすかったり、日本の物の方がシッカリしているなという印象があった。ただ、現地で手に入れられる材料やそもそも日本人ではなくベトナム人を中心に提供しているということを考えると、違いは当たり前だ。ベトナム人に求められるものが日本人にも求められるかという話なので、期待そのものが筋違いとも言える。それでも、価格を考えるとお得なのだけど。

海外在住者としてはむしろ日本のコンビニの定期チェックが楽しみ!

今回、このようなテーマで企画しておいてなんだけど、「ベトナムのコンビニって何かおもしろいものあったっけ?」と娯楽性という点では疑い半分で取材した。

改めて自分の目線を日本人になるよう努めて、商品を観察してみると「おもしろいな」と思ったんだけど、それだけ現地在住者の自分にとってベトナムのコンビニが当たり前に生活に根ざしているということなんだろう。

ちなみに、海外在住者の私は、帰国の度に日本のコンビニがどう進化しているのか覗くことがとても楽しみです。完全に外国人観光客目線になってしまっている。

最後に、今回特別に撮影許可をいただいたファミリーマートベトナムさま、ありがとうございました!
実食風景はリアクションが下手すぎてカットしました。
実食風景はリアクションが下手すぎてカットしました。
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