特集 2015年8月10日

サトウキビから砂糖を作る

砂糖の原料。沖縄から取り寄せました。
砂糖の原料。沖縄から取り寄せました。
砂糖の原材料はサトウキビや甜菜です。これらの材料から甘い汁を絞り出して作られます。

詳しい作り方を調べてみると、手順は割と単純で、家にある道具でなんとかなりそうでした。というとで、材料を取り寄せて砂糖を手作りしてみました。

一応出来たのですが、非常に大変でした。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

ほぼ竹の硬さのサトウキビ

取り寄せたサトウキビを袋から出してみるとその硬さに驚きます。
武器になりそうなぐらい硬い。
武器になりそうなぐらい硬い。
手に取って2本を叩き合わせると、コンコンと硬く打楽器でも打っているかのような音がします。
ザックリと書かれた食べ方説明書き。
ザックリと書かれた食べ方説明書き。
食べ方の説明書きを見ると、まず両側を切るとなっていましたが包丁では歯が立たず、ノコギリなどを使わないと切れない感じの硬さだったので、まずは外の皮を剥きます。
時々ズバッと剥けて刃が進むので要注意。少し手を切りました。
時々ズバッと剥けて刃が進むので要注意。少し手を切りました。
ネットで皮の剥き方をしらべてみたところ、包丁では無理なので一度ハンマーで叩き割って端から剥くという派手なものから、歯で端をかじって引き裂くというワイルドなものまで各種出ました。

一応繊維に沿って軽く叩きながら刃を入れて行けば、節の所など結構力は要るもののなんとか剥くことが出来ました。
切れることは切れるが、繊維が強くサクッと簡単にはいかない。
切れることは切れるが、繊維が強くサクッと簡単にはいかない。
外の皮が剥けたら白い部分を切り分けて搾れるように細かくしていきます。
短冊状に切った物をフードプロセッサに入れたら引っ掛かって粉砕出来ず。5mmぐらいまで小さくみじん切りに。
短冊状に切った物をフードプロセッサに入れたら引っ掛かって粉砕出来ず。5mmぐらいまで小さくみじん切りに。
ある程度小さくみじん切りにしたらフードプロセッサにかけて更に小さく粉砕します。
小さめのボール1杯分ぐらいの粉砕サトウキビ。
小さめのボール1杯分ぐらいの粉砕サトウキビ。
粉砕出来たらフキンに包んで搾って汁を取り出します。

ザックリ書きましたが、30cm程度のサトウキビ4本をこの状態にするまで2時間近くかかっています。

手搾りの限界

一度に全部は搾れないので、少しずつフキンで包んで搾ります。全部を絞って出てきた汁がこちら。
私の手の力ではこの程度が限界。
私の手の力ではこの程度が限界。
100mlにも満たない程度の量しか搾れませんでした。通常サトウキビはローラーで搾って汁を取り出すものですが、それでもそれほど多くの汁は取れないようです

手搾りではこの程度が限界なのでしょう。
3回やってこれが精いっぱい。
3回やってこれが精いっぱい。
更に絞りカスに少し水を入れて暫く置いた後、再び搾る事を繰り返すこと2回。3番搾りまで絞っておよそ400ml程度のサトウキビ汁がとれました。この時点で舐めてみると、水で薄まった為か甘さはほんのりと感じるぐらい。そしてやたらに青臭いです。

ここまででおよそ3時間。まだ先は長い。

いつまで経っても固まらない

続いてはサトウキビ汁を煮詰めて水分を蒸発させて砂糖を取り出します。
湯銭だと100度以上にはならないが、その分時間がかかる。
湯銭だと100度以上にはならないが、その分時間がかかる。
砂糖の作り方をネットで調べた際。砂糖は160度以上になると焦げるので湯銭で水分を蒸発させると良いとありました。確かに焦げ付かないのですが、いつまで経っても汁が煮詰まっていきません。

およそ2時間半湯銭で加熱したところ、ようやく汁がねばりはじめる。
ブドウ糖粉末。ドラックストアで売っています。
ブドウ糖粉末。ドラックストアで売っています。
調べた作り方の情報によると、ここでブドウ糖やショ糖の微粉末を入れると結晶化が促進されて良いとあったので、それに習い少量振り入れました。
いつまで経ってもべた付くサトウキビ汁。
いつまで経ってもべた付くサトウキビ汁。
そして更に2時間ほど湯銭で加熱。ねばりは増えるもののいつまで経っても結晶化して粉状になる気配がなくベタベタとねばっています。

ということで湯銭と同時にこちらも導入。
タルハナ作るときも乾燥に苦労したなあ。
タルハナ作るときも乾燥に苦労したなあ。
ドライヤーで表面からも水分を飛ばします。さらに1時間ほど格闘した結果、多少表面がベタつくもののひとまず固まった状態にはなりました。
砂糖というより砕いたキャラメル風。
砂糖というより砕いたキャラメル風。
ボールの表面に貼りついた物をはがしたところこんな状態です。まだかなりベタつきがあり、砂糖と言うより飴。舐めてみると黒糖味の飴です。結晶化に失敗したのか、まだ水分の除去が足りないのか。
また溶けた。
また溶けた。
しかたがないので更に、120度程度の低温のオーブンに入れて加熱してみます。溶けては伸ばしを繰り返すこと約1時間。
固まった?いや、コゲた?
固まった?いや、コゲた?
ようやく触ってもそれほどベタつかない程度になりました。ここまでで約9時間半。長かった。

でもまだ砂糖ではなく飴状態です。さて、どうする。

粉砕!

こうなったらこれを使います。
黒糖飴を砕いただけじゃないかと言わないでください。
黒糖飴を砕いただけじゃないかと言わないでください。
乳鉢で粉末状にすりつぶす事にしました。若干違うような気もしますが、これでなんとかします。

そして、その結果できたのがこちら。
見た目は間違いなく砂糖。さて、味は?
見た目は間違いなく砂糖。さて、味は?
かなり細かい粉末の黒砂糖ができあがりました。早速舐めてみます。
間違いなく黒砂糖!やさしい甘さだね!
間違いなく黒砂糖!やさしい甘さだね!
出来上がった砂糖は黒砂糖の味でした。甘く、黒砂糖を舐めた時のすこし酸っぱいようなクセもありちゃんと砂糖になっていました。

サトウキビからの砂糖つくり、思っていた以上に大変でした。

ちなみに、甘酒から砂糖を作ってみたら

サトウキビからは一応砂糖を作る事が出来ました。ところで、自然の力で出来る甘いものは他にもあります。それがこちら。
優しい甘さの夏の栄養ドリンク。甘酒。
優しい甘さの夏の栄養ドリンク。甘酒。
甘酒です。米のデンプンを麹の力で糖化させて作る甘酒。この糖分も砂糖に出来るか同じ手順でやってみました。
甘酒も時間がかかるので最後はオーブンに頼る。
甘酒も時間がかかるので最後はオーブンに頼る。
調べてみると、甘酒を煮詰めて飴やジャムを作る人は結構いるようで、クックパッドなどにそのレシピが色々でていました。

ということで、フライパンで煮詰めて飴状にした物を更に低温のオーブンで加熱。固まってきたら伸ばして更に加熱を繰り返した結果こんな風になりました。
砂糖と言うよりチョコ。
砂糖と言うよりチョコ。
一応塊にはなったものの、コゲてしまったようです。サトウキビの時よりも黒く焼けた香りがします。それでいて、サトウキビの時よりもベタつきが残った感じ。

一応乳鉢ですり潰したものがこちら。
甘酒の面影無し。ほぼココアパウダー。
甘酒の面影無し。ほぼココアパウダー。
一応舐めてみます。
だめだこりゃ!
だめだこりゃ!
甘酒から取り出したものは少し甘いが、苦くてとても酸っぱいです。砂糖と言うには程遠いものでした。食べない方がいいし、作らない方がいいです。

甘酒は飴かジャム止まりで。

砂糖は買うに限る

今回のサトウキビからの砂糖造りで出来た砂糖はおよそ大さじ2~3杯程度。30cmのサトウキビ4本から家にある道具で作れるのはその程度でした。沢山絞れる機械の力凄い。

そして、自分ではこれだけ苦労してほんの少ししか作れない砂糖が、近所のスーパーにキロ単位で売っています。しかも安い値段で。

栽培する人、作る人、運ぶ人、売る人。色々ありがとうと思う砂糖の自作でした。
沖縄で作られる粉末黒砂糖。300gで300円程度。簡単に手に入るが、大事に使わないといけない気になる。
沖縄で作られる粉末黒砂糖。300gで300円程度。簡単に手に入るが、大事に使わないといけない気になる。
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