チャレンジの日曜日 2015年8月30日
 

書き出し小説大賞・第80回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
> 個人サイト バカドリルHP 天久聖一ツイッター

第80回書き出し小説秀作発表である。

まずは朗報!第三回書き出し小説大賞授賞式を今年も開催します!日時は10月12日(体育の日)場所はいつものお台場カルチャー×カルチャーを予定しております。まだ予定なので詳細は追ってご報告致します。
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内致しましょう。

書き出し自由部門

ミステリーツアーはガイドの失踪で幕を開けた。
Mch
交番に届けられていた下着は、少し広がっていた。
えむ毛
彼の七草は、みんなと少し違っていた。
にら将軍ハルナ
怒りに身をまかせトランポリンをした。
ヘリコプター
内側のカーブにヤスリをかけて三日月は完成した。
もんぜん
デパートの傘袋に、二本の沢庵が入っている。
TOKUNAGA
振りかぶってから、することがない。
義ん母
ブランケットと交換して、私の手持ちの女子力はゼロになった。
長谷川
気を一点に集中させれば、名前を書く欄が浮かび上がった。
義ん母
活字離れした若者は、やがて星座になった。
ヘリコプター
ロケット風船を膨らませたが七回には間に合わず、結局試合終了まで卒業証書のように抱き抱えていた。
prefab
ついに歯科助手の群れと出会えた。
もんぜん
相対音感の豚になって、絶対音感の女王様にぶたれたいのだ。
ロサンゼルス
師匠の噺はうまくない。だけど料理はめちゃくちゃうまい。
ウチボリ
コインランドリーで洗濯物を待ってる間、飛蚊症で遊ぶ。
人が生きてる
ぬを説明していたら、詩になった。
義ん母
物真似は、次々とカルテに記録された。
TOKUNAGA
中庭で朝のペタンクが始まり、百合子はミルクティーの残りをくいと飲み干した。
suzukishika
その男は寄り目だったが、私を睨んでいることははっきりとわかった。
おかめちゃん
走馬灯が終わり、NG集がはじまった。
大伴
Mch氏「ミステリーツアーは〜」冒頭から掴みに掛かるゲーム系ミステリ。参加者の「ざわっ!」が伝わってくる。えむ毛氏「交番に届けられた〜」被ったのか穿いたのか? その一点が気になる。ヘリコプター氏「怒りに身をまかせ〜」マンガの主人公が慟哭する場面でよく使われる縦の効果線がそのまま活きる設定。もんぜん氏「内側のカーブ〜」ユーモアとリリカルが同居したきれいな秀作。prefab氏「ロケット風船〜」帰りの電車でも離さなかった。ロサンゼルス氏「相対音感の豚〜」同氏は他の投稿作にも独特のダークさと世界観がありました。ウチボリ氏「師匠の噺は〜」師匠の天然ぶりが伝わると同時に弟子の無邪気さも伝わる。TOKUNAGA氏「物真似は〜」症状だったのかと分かる後半の切り返しがすごい。suzukishika氏「中庭で朝の〜」設定は上流階級でありながら拭いきれない貧しさを感じる秀作。大伴氏「走馬燈が終わり〜」ここNGに使われるだろうなと思いながら生きると人生に余裕が生まれると思う。今回の自由部門は義ん母氏が三入選の快挙。おめでとうございます。

それにしてもあらためて、毎回こんな秀作を届けてくれる常連のみなさんはすごい! 人を楽しませ自分も楽しむことがお金とはまた違った報酬になっていることを切に願います。

つづいては規定部門、今回のモチーフは「再会」でした。書き出し作家たちによるリスタートストーリーをお楽しみください。

規定部門・モチーフ「再会」

盛大に見送られた後、ケータイを取りに戻った。
えむ毛
5年ぶりに会った友達にカラーボールを投げることになるとは思わなかった。
もんぜん
この人すべて「懐かしいなぁ」で片付けようとしてくる。
g-udon
二次会になって互いの薄毛に触れはじめた。
山本ゆうご
およそ半世紀ぶりに再会し、先ず小銭の両替を頼まれた。
あつし
一次面接で見たタンクトップが今日もいた。
名前澤
信者と教祖として再会した。
正夢の3人目
モザイクがかかり声は加工されていたが、初恋の人だとわかった。
たこフェリー
顔を伏せているのは、二十年前に倒したはずの怪人だった。
紀野珍
地獄で再会した父は、私よりもすこしだけ若かった。
大伴
「せっかく見逃してやったのに」男はぼやきながら殺虫剤を手に取った。
コータ
中古で買ったRPGの主人公は僕の名前で、ヒロインの名前は初恋の女の子だった。
権藤 a.k.a. こめ
突然の別れの4時間後、必然の遅番シフトで彼女と再会した。
猫背脱却物語
「この人、さっきも見なかった?」友人の歌唱力よりも、カラオケビデオに出演する役者が気になって仕方がない。
柴咲ハコ
細い裏声が、俺を四股名で呼びとめた。
xissa
ラブホテルで軽く会釈をした。
トミ子
夢の中の妻が遠い。初夜に見た夢から今までずっとだ。
ボーフラ
物置を開ければ、昔より伏し目がちなファービーがそこにいた。
早百合
トイレの後、間違えて入った部屋にいたのは一人泣きながら大塚愛「さくらんぼ」を歌う元カノだった。
ワラツカミ
一年ぶりに洗った上履きの白さに思わず息をのんだ。
TOKUNAGA
古い献立帳をめくればいつだって母に会えた。
Mch
「お待たせしましたぁ。ピザトーストのお客さま・・・ああっ!? 大佐殿!」
正夢の3人目
15年前に生き別れた母は、「再現VTRで15年前に生き別れた母を演じた」人その人であった。
新井一十三
昼までに四回会った。
suzukishika
再会というそれ自体がドラマティックはモチーフだけにそれを逆手に取った作品が集まった。一番多かったのが別れた直後の再会ネタ。えむ毛氏の「盛大に〜」はその中でも最もシンプルに笑いを取った。もんぜん氏の「5年ぶりに〜」は望まない形の再会ネタ。このタイプの作品は深刻さに伴い、切なさ→悲しみ→笑いに発展するようだ。互いに思い入れのない無感動系もある。名前澤氏の「一次面接で〜」はそこに浮かぶビジュアルも含めて秀逸な作品。紀野珍氏の「顔を伏せて〜」トミ子氏「ラブホテルで〜」は気まずい再会。せっかく更正し実社会でそこそこの立場にいる怪人が、過去の黒歴史を知る元ヒーローと再会する場面など想像すると楽しい。早百合氏「伏し目がちなファービー」が無理矢理イメージを喚起させる。ワラツカミ氏「トイレの後〜」涙の「もう一回!」が聞こえてきそう。suzukishika氏「昼までに〜」午前中で四回は多すぎ!

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
セレブ
セレブ。いつの間にか世間に浸透した言葉のひとつである。素直にイメージするとお金持ちでオシャレな一部の特権階級だが、どうも実体はそう思われたがっているただのバカという印象もある。どうせならセレブになりきった一人称で書くのが楽しいと思う。もちろん外からの視点でもいい。あなたなりのセレブライフを妄想して書き上げていただきたい。おっと実際にセレブの方は事実をそのままお書き下さい。
締め切りは9月11日、発表は9月13日を予定してます。下の投稿フォームから自由部門、規定部門を選択してお送り下さい。力作待ってます!
最終選考通過者
ビールおかわり/小夜子/TL125/マークパン助/コンパスゼット/真夏の入道雲/新井一十三/みぃさや/ウウタルレロ/まじいい/プレミアムバザー高田/merumo/茂具田/kwsk/ふじーよしたか/松っこ/かわいい寝顔/ゆきち/乾燥肌/鷲羽/横尾モスラ/kaori-float/
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デイリーポータルZ新人賞

 
 
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