はっけんの水曜日 2015年9月2日
 

思い出の鉄アレイ 〜あの日伸びた両手〜

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みなさまこんにちは、あおむろです。セミの鳴き声もぱったりと止んでしまい、秋がやってまいりました。食欲の秋、読書の秋、そして運動の秋…。

というわけで、運動にちなみまして、鉄アレイのせいで両手が伸びさせていただいた話をさせていただきますね。
1982年生まれ、関西在住。漫画家・イラストレーター・宅録音楽家。わりと大規模なたこあげ大会で総合優勝した経験を持つが、その才能を活かせず悶々とした日々を送っている。
> 個人サイト あおむろひろゆきのページ

話は私が22歳の時まで遡ります。

当時私は大阪にて初めての一人暮らしをスタートさせました。今まで地元を離れたことが無かったため床屋さんはずっと同じところに通っていたのですが、新たにこちらでも自分に合いそうなお店を見つけないといけません。

ホットペッパーを穴が開くほど読みまくり、良さげなお店があったのでさっそく髪を切りに行きます。

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そのお店はわりとこぢんまりとしていて、髪川さん(仮名)という若者がひとりでお店を切り盛りしていました。
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「あの、この髪型にしていただきたいのですが…」(タッキーの切り抜きを見せる)
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「ウイッス!オラショ!」



髪川さんはとても人当たりがよくて会話も面白いのですが、はさみを一回入れるごとに「ョイショオォオラッショオォォォ!」という掛け声を発するので、鼓膜がどうにかなってしまいそうでしたが、自分も髪川さんみたいにかっこよくなりたい…という思いから、この床屋さんに通い続けました。

ちなみに髪川さんは毎回お会計の後出口までお見送りをしてくだる時に「今度コンパしましょラッシャシタァァァ!!!」と言うので、“コンパ??行きますけど?”と思っていたのですが、具体的に誘われたことは一度もありませんでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
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あと余談ですが、どの髪型をオーダーしても最終的になんか四角い髪型にされていました。


結局その地での一人暮らしは隣人トラブル(隣の部屋の女性が毎晩大声で倖田來未の「Butterfly」を歌いながら壁をひっかく)もあり約1年で終わってしまい、髪川さんのお店に通うことも無くなってしまいます。

その5年後の話です。

ふと会社の帰りに立ち寄った本屋さんの隣に新しくできた床屋さんがあるのを見つけました。見ると、その昔通った床屋さん(髪川さんのお店)と全く同じ店名で全く同じ外観だったので、これは絶対髪川さんのお店だ!と思い、ちょうど髪も切りたかったのでお店に入ります。


そこはまぎれもなく、髪川さんのお店でした。話を伺うと、この5年の間にいろいろあったらしく、新天地で新たなスタートを切りたいという思いがあり、たまたま良い物件があったのでここで店を始めたんです、ということでした。

思わぬ再会、とても嬉しかったのですが…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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なんか髪川さんの方向性が著しく変わってるんですよ。
 
 
 
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5年前はこんな感じだったはずなのですが…
 
 
 
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西洋の絵本に出てくる少年が寝る時にかぶるやつみたいな帽子かぶってるんですよ。


とりあえず何があったのか分かりませんが、人は変わるものです。私自身もこの5年の間に随分と変わってしまいました。髪川さんも色々あったのでしょう。そこは敢えて何も聞かないでおきます。
 
 
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ちなみに髪川さんの方向性の変化は髪を切る時にかけていただくシャカシャカした布にも表れていて、昔は無地の黒っぽいやつだったのが、お野菜がいっぱいプリントされたやつになっていました。
 
 
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それでまずシャンプーをしていただくんですけどね、なんかめちゃくちゃ痛いんです。

髪がギッシギシいうとるんです。

あれ、これ、なんかちょっとおかしいぞ…と思って、「すみません、今シャンプーしていただいてるんですよね?」と聞きます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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「ううん、今ね、きな粉塗ってるとこ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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え?ってなりますよね。

え、ちょっと待って、って思いますよね。


話を伺うと、ここ最近の髪川さんは健康に目覚めたので、それを仕事にも活かしたいと考え、自分でオリジナルメニューを考えているそうです。

きな粉についても色々説明をしていただきました。なんとこのきな粉、自分で毎朝挽いてらっしゃるそうです。すごい。髪の毛びっくりするくらいギシギシですけどキューティクル大丈夫かな…。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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ちなみに5年ぶりに来たのですが、やっぱり四角い髪型になりました。

きな粉の件はわりと衝撃的だったのですが、髪川さんの健康や仕事に対する真剣な姿勢に圧倒されてしまい、3か月後に再びお店に来てしまいます。
 
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「あ、あの、今日はこの髪型でお願いします」(加瀬亮の切り抜きを渡す)



髪川さん「ッシャェラォイショッラァァァァ!」
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まずはシャンプーです。またきな粉塗るのかな…と思っていたら、今日は塗りません。普通にシャンプーをしています。

あれ、髪川さんきな粉やめちゃったのか…と少し残念な気持ちになっていた折、紙コップを渡されます。

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髪川さん「ハイッ、これ飲んでよ!」

私「ん??何これ… はい、ゴクゴク」
 
 
 
 

 
 
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な、な、何これクサッ!ニガッ!マ、マズーッ!!!クサッ!クサクサッ!



髪川さん「え、まずい?ハハ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

髪川さん「それ、シャンプー!!!ハハ!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

髪川さん「食べれるシャンプーなの!俺作ったの!すごいっしょ」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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むちゃくちゃクサくて苦くてマズいです
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
二度とこの店には来るまい…と誓ったわけですが、やっぱり気になっちゃうんです。

このお店はどこに向かっていくんだろう…。それを見届けるべきなんじゃないか。歴史を目撃する人がいないと、それは歴史にすらならないんじゃないか。ならばとことん見届けよう。髪川さんの向かう未来を…。
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というわけで、また3か月後に来ました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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なんかシャンプーの時にむっちゃ重いダンベルを持たされました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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確実に両手が伸びるであろう重さのダンベルを持たされ、それについての説明も受けましたが全然内容を覚えていません。

その日のお会計の値段がいつもより4000円ほど高かったので、明細を教えてもらったのですが…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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髪川さん「お持ち帰り用のダンベル代ですわ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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言うまでもなく、その日以来お店には行かなくなりました。
 
  
 
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半年後にお店の前を通った時には店先に「テナント募集中」の貼紙が貼ってあり、店の脇には小さなダンベルがひとつ、帰らぬ主人を待つ犬のようにひっそりと佇んでいました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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髪川さん、今どこで何をしていますか?

きな粉塗ってますか?

シャンプー飲んでますか?






ダンベル、売ってますか?







秋の夜、思わず星空に問いかけてみたものの、鈴虫の鳴き声がむなしく響くだけ。





季節の変わり目でございます。皆様におかれましてはくれぐれも体調を崩されぬよう、お気を付け下さい。

それでは、また。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
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