フェティッシュの火曜日 2015年10月6日
 

92歳の古書店主が語る戦後の本屋の風景

92歳の店主のいる古書店に行った。戦後すぐ青年たちが買い求めた本とは…!?
92歳の店主のいる古書店に行った。戦後すぐ青年たちが買い求めた本とは…!?
大阪をぶらぶらしていると「大阪で一番年よりの文学青年」がやってるという古書店があった。へんな本屋だな〜とヘラヘラしてたらなかなかすごい人が出てきた。

92歳の店主が語る戦後まもなくの本屋の風景とは。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

大阪で一番年よりの文学青年が…?? 路地に入れという青空書房
大阪で一番年よりの文学青年が…?? 路地に入れという青空書房

「大阪で一番年よりの文学青年」の店

大阪でイベントがあった(ショートショートフィルムフェスティバルという短編映画祭にぼくらのプープーテレビが出たのだ)。

本番まで時間があったのでたこ焼きでも食おうと音響の池田くんをさそって天五の商店街にむかった。うまい屋のたこ焼きはソースなしでもうまいのだ。

天満の駅からぶらぶら歩いていると看板が目についた。大阪で一番年よりの文学青年がやってる古書店だそうだ。行き先は路地を指している。

あの店なんだったんだろう。ビールを飲んでちょっといい気分でいたぼくは「池田くん、ちょっと取材してみよか」と冷やかし気分で行ってみることにした。
青空書房は路地にある家だった
青空書房は路地にある家だった

メモだらけの入り口

路地に入ると家がならんでいる。その中の一件が青空書房だった。入り口には絵手紙のような味わい深そうな文がこれでもかと貼り付けられている。みつを的な詩だろうか。

「ばんめしかいにいってきます」

メモだった。味わい深さを前面に出してきたメモだった。これ大丈夫かな。あかん方向に極まってる人の店なのかもしれないな、と心配になる。
はらへったからめしくいにゆく…ばんめしかいに行ってます…??
はらへったからめしくいにゆく…ばんめしかいに行ってます…??
外出時に貼っておくメモだろうか、なぜとっておいてあるのだろうか
外出時に貼っておくメモだろうか、なぜとっておいてあるのだろうか
奥ではおじいさんが本に作業をしている
奥ではおじいさんが本に作業をしている

はたして店なのかここは

メモと人生訓のようなものが呪符のように貼り付けられた入り口をくぐると、長屋に本がぎっしり詰められている。

奥にはおじいさんがいて何か書いている。さらに奥にはうすぐらい寝室が見える。あっ、生活感。どころではないな、家だここは。

並んでいる本は特におかしくないが、たまにラノベらしきタイトルもまぎれている。近くの人が持ち込んだのかな。

ここは店なのか、それともただの本好きのおじいさんの家なのか。あの〜、ちょっと話をきかせてもらえませんか?
店主のさかもとけんいちさん。インターネットのこういうサイトなんですが…「みんなが自由に見られるものやったらいいですよ」
店主のさかもとけんいちさん。インターネットのこういうサイトなんですが…「みんなが自由に見られるものやったらいいですよ」

やさしいおじいさんだった

恐る恐る奥のおじいさんに取材をお願いすると「みんなが見られるものやったらいいですよ」と受けてくれた。

「古書店のなかではわたし大阪で一番高齢だと思うんです。92。東京でもおらんと思うね。現役では」

そう語る店主のさかもとけんいちさん。耳はだいぶ遠くなったというが、ゆっくりとあの字のまんまの声でしゃべる。

「92歳で現役でやってんのはずーっと長いこと貧乏とつきあってるおかげです(笑)もう貧乏の勤続年数は長いんです。きっちり70年」

さかもとさん、大阪の人が言うところの「ようしゅんどるの〜」的な、人生のおダシがしゅんしゅんにしみまくってる人だった。
さかもとけんいちさん92歳。おそらく日本で一番年よりの古書店主ではないかとご自身は言う。
さかもとけんいちさん92歳。おそらく日本で一番年よりの古書店主ではないかとご自身は言う。

戦争が終わってメシがない、岩波文庫だけある

「70年前にちょうど戦争が終わって商売できそうなところはどこみても焼け野原(大阪空襲)。ヤミ市という形で焼け野原にテント張って店出しとった。

わたしが戦争から帰ってきたら親が病気してましてね。とにもかくにも食わさないかん、でもわたし持ってんの岩波文庫100冊だけ。赤帯(外国文学)と黄帯(日本古典)と青帯(思想書)。カタイんですけどね。それをなんばの今ある高島屋の前で露天で並べたら、一日で全部売れた」


戦争が終わってみんなメシを求めてるときに、手元にあるのは岩波文庫100冊だけ。冗談みたいな状況だがそれが売れる。

「それはわたしね、日本を復活させた原動力だと思う。そういう読書欲が溢れかえっていた。すっごい勢いでもう即日売れた」

みんな腹も空かしてたが、頭もそうだったのだ。

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