特集 2015年10月14日

まずい魚展に行って旨い魚を食べた

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愛知県の蒲郡にある水族館で「まずい魚展」という展示が開かれているという。

まずい魚…?美味いとかまずいとかそういう視点で水族館って行っていいのか。楽しそうだ、行ってみた。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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> 個人サイト owariyoshiaki.com

不味い魚とかマズイ魚とか

あっ、小規模。
あっ、小規模。
早速まずい魚展にやってきて、えっ。ってなった。予想よりも小規模。テレビとかでも報道されていたらしいのでもっとドドーンとあるものかと勝手に思っていた。
不味いって意味と、拙い(まずい)って意味の魚の展示か。
不味いって意味と、拙い(まずい)って意味の魚の展示か。
勝手に肩透かしを食らった気分になっていた、まずい魚展だが見てみると色んな意味で面白い。
担当さんは焼き魚で食べたと書いてあるタカノハダイ通称ションベンタレ。
担当さんは焼き魚で食べたと書いてあるタカノハダイ通称ションベンタレ。
「シマシマだな」くらいの感想しかないこの魚が「ションベンタレ」と言われるくらい臭い。体の味で悪口を言われるって、どうしようもないのにね…。と思う。

また、説明書きではただ単に不味いというだけでなく、季節とか処理で大変美味しいというフォローも入っている。
美味いけど毒があったりする魚。
美味いけど毒があったりする魚。
安心してください、担当さんは昔食べたけどピンピンしてるらしいですよ。
安心してください、担当さんは昔食べたけどピンピンしてるらしいですよ。
他には味は美味いけど毒があることもあるから食べたらまずい事になる。という意味でのまずい。という魚や。
担当さんが食べたらお刺身は味がしないけど、ちゃんと調理したらかなり美味しいとか。
担当さんが食べたらお刺身は味がしないけど、ちゃんと調理したらかなり美味しいとか。
地域によって全く評価が違うという魚など、魚の生態というか味だけにとどまらず人間自体の味覚を試してくる。みたいな展示だった。

ちなみに自分が一番おもしろいと思ったまずい魚はこれ。
そもそも何で食べたのか?
そもそも何で食べたのか?
ヒトデ。熊本県くらいでしか食べられないし、実際あんまりおいしくないらしいし食べるのおかしいでしょ。みたいな書き方がされていたけれど。
以前当サイトでライターをやっていた友人のほそいあやさんは「超レア!珍味!」と言って熊本に喜んでヒトデを食べるためだけに行っていたので、味とは…?価値観とは…?と考えさせられてしまった。

美味い不味いで魚を見てもいいのか

ツボダイは焼いて食べる魚。ホッケの750倍くらいの衝撃的なウマさ。水槽のツボダイも焼いて食べたい。
ツボダイは焼いて食べる魚。ホッケの750倍くらいの衝撃的なウマさ。水槽のツボダイも焼いて食べたい。
まずい魚展以外にも魚を見ていると面白い。展示の解説が生態みたいなところではなく、インパクトが有るところばかりを推してくる。
逃げてー!ツボダイさん、この水槽から今すぐ逃げてー!!!
逃げてー!ツボダイさん、この水槽から今すぐ逃げてー!!!
今までなら興味を惹かれなかったであろうツボダイという魚がこの水族館で見ると非常に魅力的に見えてくる。こいつ、ホッケの750倍のウマさ…?こいつが…?
オオグソクムシはむしろマズイ部類。
オオグソクムシはむしろマズイ部類。
深海魚水槽には美味いやつばっかり入ってる。
深海魚水槽には美味いやつばっかり入ってる。
ツボダイだけでなく展示の説明で味について解説されているものがすごく多い。いいのか、水族館の展示を「美味そう」「不味そう」で見ていっていいものなのかと聞いてみると。

水族館の人「興味持って楽しんでくれるのが一番なので、いいと思いますよ」
いいのか!!!?
いいのか!!!?
いいっぽいぞ!!!!!
いいっぽいぞ!!!!!
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魚の美味しそうさも生態の一部ではないか

水族館で魚を美味しそうって言うとマナーがない。みたいな風潮があるので言うのを多少はばかっていたのだけれど、竹島水族館では積極的に生き物の味について言及してくれている。
率先して言ってくれている。大きな魚見て「釣りがいありそう」とか言うのも怒られそうな雰囲気あるよね。
率先して言ってくれている。大きな魚見て「釣りがいありそう」とか言うのも怒られそうな雰囲気あるよね。
魚は無表情で泳ぎ続けているので味を封じられると感想が「変な形」とか「色が綺麗」とか「デカイ」という見たまんましか言えなくなる。
お掃除ロボット ルンバだ!
お掃除ロボット ルンバだ!
おいしくないとか…
おいしくないとか…
それが味の説明をされると身近さが違う。この魚は刺し身が美味い。と言われ、そういう目で見ると「でもウロコが凄くて捌くの大変そう…」みたいに違う視点で特徴が見えてきたりする。
ホントなんでも食べるもんだな。
ホントなんでも食べるもんだな。
深海に生息。って解説だといかんともしがたい距離と気圧の壁を感じるけれども、白身で美味い。って解説だと食卓と自分、くらいの近さで魚を考えられる。

水族館も人。

水族館の人も「少しでも身近に、興味を持ってくれるように味とかも書いていて、スタッフが実際に食べているんです」と言っていて、ブログがあるっていうから後から見てみたらクリオネ食べててビックリした。流石にその味は知りたくない。
グルメハンターさんちゃんの珍生物試食記録
http://blog.livedoor.jp/huntersanda/
ウツボの前にいるカラフルなヒモみたいなやつが主役。
ウツボの前にいるカラフルなヒモみたいなやつが主役。
特技:性 転 換
特技:性 転 換
味以外にもまさに生態!みたいなところを面白く書いてくれている。性転換って何だよ。って思って検索したら、この魚、一匹の雄と数匹の雌で群れを作っていて何らかの理由で雄がいなくなっちゃったら、群れの中の雌が雄に性転換するらしい。

なにそれすごい。書き方の印象でふざけてる感じがあるが興味を持ってもらう効果はバツグン。まさに飼育員さんの水族館自慢、真剣にフザケてるという言葉通りである。
エイが近い。近いというか、触っていい。
エイが近い。近いというか、触っていい。
掲示内容だけでなく施設の内容もサービス精神旺盛すぎるのである。水族館の人気者、エイが近い。近いというか触れる設備。って、こんなのあっても触るの怖いよ!触りたくないよ!!
子どもたちガンガン触る。まじかよ。
子どもたちガンガン触る。まじかよ。
こんなの誰も触らないでしょ、普通に考えて…。って思っていたら、子どもたちはバンバン、ぐんぐん触る。

私がビビって、うわッ、触ってる…。って言うと子どもたちが調子に乗って「こんなん全然平気やで、裏っ返しとか出来るし!」とか言って裏返し始める。「やめてあげてやめてあげて!」と、子供よりもエイの心配をしてしまう。

係員さんに聞いてみると「人間と同じでよっぽど嫌なことされない限りは危害加えたりしないですよ」って言っていたが、俺なら相当嫌だと思う。いきなりひっくり返されたら危害加えちゃおうと思っちゃうと思う。エイは寛大。
そこか~~~。子供に掴まれてたところか~~~。
そこか~~~。子供に掴まれてたところか~~~。
それ以上に考えていたのは、エイの展示であったイラストである。そこかエイヒレってそこか。めっちゃ多くない!?アイツからめっちゃおっきいエイヒレ取れるじゃん。という思いである。
しっかりとしたアシカショーとかもある(この写真から尋常じゃない距離の近さを感じ取ってもらえれば幸いです)。
しっかりとしたアシカショーとかもある(この写真から尋常じゃない距離の近さを感じ取ってもらえれば幸いです)。
ここまで全然派手なところ書いてこなかったけれども、他の水族館では華形のアシカショーとかもある(しかも激近)。しかしそれ以上に印象に残ったのがアシカや魚を通して伝わる舞台裏の人の部分だった。
タコ…?だったっけ…?
タコ…?だったっけ…?
こんなこと言われたら、あぁ~こころがぴょんぴょんするんじゃー(ネットスラング)
こんなこと言われたら、あぁ~こころがぴょんぴょんするんじゃー(ネットスラング)
どういう設備が、どういう生き物がいるからこう見せよう。っていう構成ではなくて、こういうところが楽しんでもらえるだろうからこういう展示をやってみようという人を感じる水族館。

悪ふざけの域に入るか入らないか、これをやっているのは市営水族館の職員、公務員である。このふざけ、サービス精神に合う合わないはあるかもしれないけれどこんなに正しいふざけは無いと思う。

あぁ、良かった、竹島水族館。魚、食べたい…。
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美味いと言われる魚が食べたい

良かった、竹島水族館がすごく良かった。この後は完全に蛇足です。
魚を買いに百貨店に訪れたのであったが。
魚を買いに百貨店に訪れたのであったが。
強いサービス精神と水族館を楽しんだ私であったが、魚を見て、この魚は美味しいよ!って見せられると凄く魚が食べたくなってしまった。
ホッケの750倍。
ホッケの750倍。
水族館の方にお話を聞くと「私は食べたことないですが、いろいろ食べている人はツボダイが美味しいと言っていたのでおそらくツボダイが美味しいんじゃないですか?」とのことであった。

ちなみに「まずい魚展よりもまずい魚もいるみたいですけれど単純にマズイだけじゃなく、一般的に食べられているとか、理由があるっていう条件もありますからね」っていう大人っぷりも聞いた。完全に大人で真剣なふざけ具合。とても良い。
カワハギと遊んでみよう!
カワハギと遊んでみよう!
本当にちょっとカワハギさんが寄ってきてくれたんですよ!!!
本当にちょっとカワハギさんが寄ってきてくれたんですよ!!!
それに反して頑張ったけれど、ツボダイが見つけられなかった私。ツボダイは結構レアな魚で幻とか言われていたりするらしい。

結局、一緒に遊んでもらったカワハギさんみたいなウマヅラハギやつを買ってきた(ウマヅラハギさんも美味いって書いてた気がするんだけど見つけられなかった)。

あっ、さっきの魚だ感がすごい

買ってからアレなんだけれど、魚の既視感が凄い。さっき、見たよな…。
なんか見覚えが微妙にある雰囲気…。
なんか見覚えが微妙にある雰囲気…。
釣り堀とか海釣りとかならまだアレなんだけれど、水族館のガラスの向こう側ってちょっとしたマスコット感があるのでさっきまでスポットライト浴びていたのが今、こういう状況…。という諸行無常感を感じる…。が、こうなっては仕方がない…
美味そう。
美味そう。
と、惜別というか後悔を感じていたのは調理までで、鍋にしたらウマズラハギさんは完全に美味しそう…。としか思えなくなった。
美味い。ウマヅラハギさん完全に美味い。
美味い。ウマヅラハギさん完全に美味い。
調理後の姿からは完全に美味さしか感じられないし、あの一緒に遊んでくれたカワハギさんとは違うんだ…。と思った。初めて食べたけれど本当に美味しいですね、ウマヅラハギ。魚なのに出汁の出具合が半端じゃなくてマジでビビった。

そして、ウマヅラハギさんのうまさを感じるほどに思いが募るツボダイさん。ツボダイさん、あぁ、あなたはなぜツボダイなの。と思ってググってみたら楽天で売っていた。買った。

大仰なツボダイだけれどホッケの1.27倍くらいは美味しかった

スペースよ。
スペースよ。
幻の魚を注文したら翌日に配達される楽天市場。昔のアマゾンくらいに商品に対して箱がでかい。ちなみにツボダイが800円位で配送料が1000円。箱もデカイ甲斐がある。
見たことある…。
見たことある…。
ホッケの750倍は美味しい魚は冷凍で届けられた。食物として見るのは初めてなのに見たことのある姿。魚介類は生きている時と食材として扱われている時の見た目に違いがあまりないので一旦生きていたのを見ると、生き物を食べるんだなぁという事を実感する。
いざ
いざ
ツボダイを焼く。商品説明には自然解凍してから焼いてね。と書いてあったが、ネット上では解凍すると旨味が逃げる。とあったので冷凍したまま焼いた。ネットには真実が書いてあるのだ(解凍が面倒だった)。
冷凍のままでちゃんと焼けた。やはりネットには真実が…。
冷凍のままでちゃんと焼けた。やはりネットには真実が…。
焼けたツボダイは脂がしたたって非常に美味しそう。
美味い。ホッケの750倍とは言わないけれど1.27倍くらいは美味しい。
美味い。ホッケの750倍とは言わないけれど1.27倍くらいは美味しい。
食べてみると脂が乗ってジューシーながらもしっかりとした身がホクホクとして美味い…。

これが、この間見たたくさんの魚の中でもかなり美味しい魚…。泳いでいた姿やいろいろ食べた水族館の人でも美味いと言っていたなど、実際の味よりも情報を食べている感じが濃い。

これでまた泳いでるツボダイを見たら違う目でツボダイが見られそうである。


真剣にふざける水族館、真面目に説明されている時よりも生物に対して興味を持てた。真面目にふざける飼育員さんたちから楽しそうな雰囲気が伝わってくるのが大きかったと思う。

水族館という魚を見る場でも、魚を通してその場の人が伝わってくる。魚の生態自体が面白いという部分もあるんだけれどそれを伝えられるのは結局は人なんだなぁ。と思う水族館でした。

入館料500円と激安なので皆様愛知に来た際はどうぞご検討ください。
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