ちしきの金曜日 2015年10月30日
 

余市蒸留所の異次元っぷりに驚いた

西洋城郭のような建物が並ぶ余市蒸留所は、非日常な空気が漂う異次元空間でした
西洋城郭のような建物が並ぶ余市蒸留所は、非日常な空気が漂う異次元空間でした
北海道、積丹半島の付け根に位置する余市町に、ニッカウヰスキーの蒸留所が存在する。昭和初期に開設された、歴史ある蒸留所だ。

たいていの蒸留所では施設の見学ができ、試飲をすることが可能である。北海道旅行の最中、単にウイスキーを飲みたいという理由で余市蒸留所に立ち寄ってみたのだが、そこには創建当初の建物がそのまま残っており、モダンかつメルヘンな雰囲気を醸していた。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

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住宅街の中に広がる異次元空間

私は以前、国内最古の蒸留所であるサントリーの山崎蒸留所を訪れたことがある。そこでは施設見学ツアーや試飲ができ、低価格で限定ウイスキーや原酒などを楽しむこともできる、まさに酒飲みの天国というべき場所であった(参考記事→「山崎蒸留所は酒飲みの天国だった」)。

しかしながら、その構内は近代的な工場のような印象を受けた。余市蒸留所もまた同様に工場然とした雰囲気なのかと思っていたのだが、それが全然違っていて驚いた。
何の変哲もない住宅街から、水路を隔てた向こうに広がる余市蒸留所
何の変哲もない住宅街から、水路を隔てた向こうに広がる余市蒸留所
なんとも非日常な光景である
なんとも非日常な光景である
私が余市蒸留所を訪れたのは敷地の南側からだったのだが、どこにでもあるようなごく普通の市街地の中、突如として水と木に囲まれた倉庫群が姿を現し、一気にテンションが振り切れた。

木々の隙間から見える古めかしい木造の倉庫は浮世離れしており、周囲の町並みとは明らかに異質な雰囲気があった。この蒸留所だけヨーロッパから空間を切り出してきたかのような、そんな印象を受けたのだ。

その異次元っぷりに驚きつつ、敷地の周囲をぐるっと回って北側の正門へと向かう。蒸留所沿いの路地には石壁や石造の建物が連なっており、やはり周囲の住宅街とは一線を画している感じがした。
石壁が連続する路地は日本らしからぬ光景だ
石壁が連続する路地は日本らしからぬ光景だ
周り込んで辿り着いた正門。まるで城のようである
周り込んで辿り着いた正門。まるで城のようである
高々と掲げられた社名は、左横書きで記されていた
高々と掲げられた社名は、左横書きで記されていた
この正門が建てられたのは昭和15年(1940年)頃だという。戦後に至るまで、日本語の横書きは右から左へ書くのが一般的であったが、ここでは現在と同じように左から右へ書いている。実に先進的だ。

ちなみにニッカウヰスキーという社名になったのも同じく昭和15年。それまでは大日本果汁という社名でリンゴジュースなどを販売していたという。その元の社名を略してニッカ(日果)と改め、ウイスキーの製造販売を開始したのだ。あえてカタカナにしたのは、確実に左から右へ読んでもらう目的もあったという。右から読むとカッニとなって読み辛く、社名としても不自然だしね。

その威容をしばらく眺めていると、開門の時間となってゲートが開かれた。早速正門をくぐって敷地内に進んでみると、実に不思議な形状の建物が並んでいた。
メルヘンな屋根が印象的な、巨大な石造の建造物である
メルヘンな屋根が印象的な、巨大な石造の建造物である
この不思議な建物は乾燥塔だ。ウイスキーの原料である発芽した大麦をピート(泥炭)の煙であぶる為の施設である。このピートの匂いがウイスキー固有の香りとなるのだ。

正門と同じく昭和15年(1940年)頃に建てられたもので、第一乾燥塔と第二乾燥塔の二棟が仲良く並んでいる。余市蒸留所のシンボル的な存在だ。
扉は開いているものの、立ち入れるのは入口のすぐ側までだが――
扉は開いているものの、立ち入れるのは入口のすぐ側までだが――
そこにはピートが展示されていた。触っても良いとのことだ
そこにはピートが展示されていた。触っても良いとのことだ
ピートは植物が堆積してできる燃料で、いわば泥状の石炭である。日本では北海道で採れるので、その点でも余市はウイスキーの蒸留所に最適な土地なのだろう。

私はこれまでピートを写真でしか見たことがなかっただけに、こうして実物を見て触れるのはなかなか貴重な体験であった。ちなみにその手触りは、燃料なだけあって少し油っぽい感じがした。
第二乾燥塔の正面に建つのは、昭和10年(1935年)頃建造の蒸溜棟だ
第二乾燥塔の正面に建つのは、昭和10年(1935年)頃建造の蒸溜棟だ
糖化・発酵させた麦汁を蒸留する為の施設である
糖化・発酵させた麦汁を蒸留する為の施設である
蒸留所の主役といえば、やっぱりポットスチル(単式蒸留機)でしょう
蒸留所の主役といえば、やっぱりポットスチル(単式蒸留機)でしょう
このスライムのような形状のポットスチルに発酵した麦汁を入れ、加熱して蒸留する。そうしてできた度数の高いアルコール(ニューポット)を樽に入れて熟成させ、ようやく一人前のウイスキーとなるのだ。

建物は軒並み洋風で、作ってるものもウイスキーという洋酒ではあるものの、ポットスチルにしめ縄が飾ってあったりと、西洋一辺倒でもないところに気さくさを感じた。
ちょうど炉に石炭をくべるところであった
ちょうど炉に石炭をくべるところであった
炉から降り注ぐ真っ赤な燃えカスが美しい
炉から降り注ぐ真っ赤な燃えカスが美しい
このように、余市蒸留所の工場施設は昭和初期のものが現役で使用されている。ウイスキーの製法は昔から変わらないとはいえ、古い建物を維持しながら使い続けるというのは並大抵のことではないだろう。
古風な石造建造物の間にちらりと見える現代設備もなかなかソソる
古風な石造建造物の間にちらりと見える現代設備もなかなかソソる

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