特集 2015年10月23日

絶滅危惧種のアザラシを探す

ハワイアンモンクアザラシを探す旅に出ました!
ハワイアンモンクアザラシを探す旅に出ました!
アザラシという生き物がいる。水族館や動物園で見ることができるので、誰もが知る動物だと思う。2002年に多摩川に出現した「タマちゃん」もアザラシである。

そんなアザラシの一部はいま絶滅の危機にある。中でも「ハワイアンモンクアザラシ」は、もっとも絶滅の危機にあるアザラシの一種。ぜひそんなアザラシを生で見てみたいと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

ハワイのアザラシ

誰もが知る動物「アザラシ」にはいろいろな種類が存在する。多摩川に出現した「アゴヒゲアザラシ」や、体重が3トンを超える「ミナミゾウアザラシ」など、10属19種のアザラシが世界のどこかに生息しているそうだ。
アザラシです!
アザラシです!
アザラシの一部はいま絶滅の危機に瀕している。ハワイに生息する固有種「ハワイアンモンクアザラシ」もその一種だ。乱獲や生息域に基地ができたりなどで、数を減らし現在では1100頭ほどしかいないそうだ。
ということで、ハワイに来ました!
ということで、ハワイに来ました!
名前からもわかるように「ハワイアンモンクアザラシ」は、ハワイにしか生息していない。以前から生で見てみたいと思っており、機会をうかがっていた。そんな時に、家族の事情でハワイに行くことになり、ハワイモンクアザラシを見る夢がかなったわけだ。
ということで、生息地に行きます!
ということで、生息地に行きます!

日本人のいないハワイ

ハワイと言われると「ホノルル」を思い浮かべると思う。私は初めてのハワイだったのだけれど、ホノルルは日本人だらけで、英語を話せなくても、日本語が通じ、海外に来ているのに、暑いこと以外は日本と変わらなかった。
ホノルルは日本人だらけ
ホノルルは日本人だらけ
ハワイアンモンクアザラシが生息しているのは、ホノルルのある「オアフ島」の最西端である「カエナポイント」という場所。ホノルルと違い日本人が全くいない場所である。なぜなら観光地ではないから。普通は行かないのだ。
そんなカエナポイントにバスで目指します!
そんなカエナポイントにバスで目指します!
オアフ島を走るローカルバスは、どこまで乗っても「2.5ドル」。今回はホノルルから2時間ほどバスに揺られたが「2.5ドル」。貧乏根性としては嬉しい出来事だ。窓の外を流れる景色も、どんどんとのどかになり、ホノルルで見られた、日本語の看板もやがて消えていった。
窓の外は南国
窓の外は南国
サーフボードを持った若者グループが乗ってきて、どこかで降りていき、老夫婦が乗ってきて、どこかで降りていった。始発から終点まで乗っているのは私だけだった。現地の人もあまり行かない場所なのかもしれない。少なくともバスでは。
到着しました!
到着しました!

ここから地獄です

どこで降りたかバス停の名前を書きたいけれど、車内放送もなく、バス停にも特に名前はなく、とりあえず終点で降りた。バスの中はエアコンが効きすぎて寒かったけれど、降りると暑い。その温度差でメガネが曇りそうだった。
歩きます!
歩きます!
左手に海を見ながらアザラシのいるポイントまで歩く。びっくりするが、その場所まで片道20キロ以上あるのだ。日差しが強く、自販機もお店もない道をひたすら20キロ歩く。しかもサンダルで。遠くに目指すものが見えているのも辛い。
ここに行きます!
ここに行きます!
サンダルで、
サンダルで、
ひたすら歩きます!
ひたすら歩きます!
ハワイでアザラシについて聞き込みをした時は、誰もが「車で行け」と言っていた。私もそのつもりだったが、レンタカーが2万円弱して、私は3万円しか持っていなかったので、2万円を使うとその後のハワイでの生活に困るので歩きを選んだ。これが間違いだった。
炎天下で、
炎天下で、
死にそうになる
死にそうになる
よく「死にそう」みたいな表現を使うが、今回のは本気だ。お店があると思って、水も1リットルしか持っていない。でも、お店はない。人もいない。目的地は見えているが全然近づかない。引き返そうにも、もう10キロ以上歩いている。
このまま死ぬのかな、と本気で思っている
このまま死ぬのかな、と本気で思っている
南国ってパラダイスで天国だと思っていた。しかし、本当の意味での天国が見えた。全てはハワイアンモンクアザラシを見るという長年の夢のため。ここで一つの教訓を得た。「夢なんて持つもんじゃないな」ということである。
ずっとこんな風景
ずっとこんな風景

ハワイをなめるな

歩いても歩いても変わらない景色。目に見えてこんがり焼けていく肌。どんどんと減っていく水。ハワイアンモンクアザラシが数を減らしている理由がわかった気がした。最初は日本とは違う山の風景に感動したけれど、感動している場合ではない。
最初は感動した山
最初は感動した山
浜辺を歩く
浜辺を歩く
途中から歩くことに目的がおかれ、アザラシを探すことを忘れていたので、急いで浜辺を歩いた。ただ浜辺は体力の消耗が激しい。母親がハワイに行きたい、と言っていたので来たのだけれど、ハワイ、全然楽しくない。死にかけている。
どうにか国立公園の入り口まで来ました
どうにか国立公園の入り口まで来ました
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衝撃の真実

オアフ島の最西端に行くには、途中から国立公園を歩く。道の舗装も終わりここからは誰もが歩くしかない。ちなみに入り口までは車で来ることができる。私は3時間半をかけて20キロを歩いたけれど、車なら30分ほどだそうだ。
ここからは道路が舗装されていません!
ここからは道路が舗装されていません!
ここまでが20キロで、国立公園をさらに4キロ歩く。すべては長年の夢だった「ハワイアンモンクアザラシ」を見るため。国立公園の舗装されていない道を4キロ歩くのはキツい。さらにその前に20キロすでに歩いているので、もう意味が分からない。
ひたすら歩く
ひたすら歩く
聞いた!
聞いた!
海岸沿いを歩いて探してもあまりにアザラシの気配がないので、向こうから歩いてくる外国人に「ハワイアンモンクアザラシの場所まであとどれくらいですか?」と聞いた。あとどのくらい歩く必要があるのか知りたかったのだ。そこで返ってきた答えは驚きだった。
驚きの言葉でした!
驚きの言葉でした!
「今日、行ってもいないよ」と言うのだ。「マジで?」的なことを私が答えると、「ここがもっとも見ることのできるポイントだけど、すごく難しい」と教えてくれた。そのあともいろいろ教えてくれたが、意訳すると、

「絶滅危惧種だよ、簡単に見れないよ、え、今日1日だけで見ようと思ったの? 1回来ただけで見られると思ったの? あ、そうなの、無理だよ、アハハハハハハハ」
現実は厳しい!
現実は厳しい!

奥の手を使います

アザラシがいないので、
アザラシがいないので、
引き返します
引き返します
途中でヒッチハイクに成功した
途中でヒッチハイクに成功した
バスにまた乗り、
バスにまた乗り、
ホノルルの水族館に来ました
ホノルルの水族館に来ました
中に入り、
中に入り、
あ、いた、、、
あ、いた、、、
これが
これが
ハワイアンモンクアザラシです!
ハワイアンモンクアザラシです!
私の泊まっているホテルから徒歩で20分くらいの場所にある「ワイキキ水族館」で、ハワイアンモンクアザラシを見ることができた。お店も多く水に困ることはなく、日本語も通じる。そんな場所にいるのだ、ハワイアンモンクアザラシは。
かわいい!
かわいい!
最初からここにいると知っていたのだけれど、せっかくなら野生の個体を見たいと思った。それが間違いなのだ。野生でも水族館でもハワイアンモンクアザラシはハワイアンモンクアザラシ。変わりないのだ。
ずっと見ちゃう!
ずっと見ちゃう!
カエナポイントまでの苦労はなんだったのだろう。楽に見ることができる。近くで見ることができる。かわいいね、と思う。増えろ、増えろ、と心から思う。そして、間違いなく増えたのは私の歩行距離だった。
すごい歩いた
すごい歩いた

意味のない遠回り

以前から見たくてたまらなかった「ハワイアンモンクアザラシ」をついに見ることができた。見る前に全然必要ない徒歩の時間があったけれど、結果的に見れたのでよしとしようと思う。

それとアザラシについて教えてくれたり、ヒッチハイクに成功したり、ハワイは優しい人ばかりだった。そして私もそんな優しい人の一人である、と特に前後のつながりはないけれど、断言したいと思う。
楽しかったです!
楽しかったです!
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