フェティッシュの火曜日 2015年11月3日
 

突撃!隣の昼ごはんin ベトナム

右上の男性は私ではありません。
右上の男性は私ではありません。
一緒にヨネスケになりませんか?

というメッセージが届いた。

いよいよスパムのバリエーションもここまで来たかと思ったら、送り主はハノイで出会った知人で(普段はホーチミンに住んでます私)、ちゃんと読んでみるとれっきとしたお願いごとだった。

ベトナム人向けのレシピ共有サイトのビジネスを考えている、そのための市場調査を兼ねて隣の晩ごはん的イベントを行いたい、ハノイとホーチミンは食文化が違うからそっちも行かなければ!ということらしい。
1984年大阪出まれ、2011年からベトナム暮らし。日本から3600km離れた土地で、ダチョウに乗ったり、ドナルドのコスプレをしたり、札束風呂に入ったりしている。
> 個人サイト べとまる

どう食文化が違うかっていうと

ベトナム料理は一辺倒ではなく、大きく北中南部で味は変わる。おおざっぱに言えば、北部は薄くて中部は辛くて南部は甘い。北部は塩辛いとも言われるが、塩を多めに摂る日本人にはあまり気にならないはず。それぞれ、ハノイにダナンにホーチミンと日本から直行便が出ている三大都市があるので訪ねてみてほしい。
北中南を代表する料理。左から、北部はご存知のフォー、中部は汁なし麺のミークアン、南部は砕いた米に豚肉の照り焼きをドンとのせたコムタムスーン。
北中南を代表する料理。左から、北部はご存知のフォー、中部は汁なし麺のミークアン、南部は砕いた米に豚肉の照り焼きをドンとのせたコムタムスーン。

以前やったといえばやったな

実は、今から半年ちょっと前に同じ企画をやった。やったというか、当時はちょうど旧正月(実質的にベトナムの正月)で、家庭料理というかおせち料理という年に一度のスペシャルランチで微妙にはずしてしまったのだ(当時の記事)。ヨネスケも袴姿に下駄をはくタイミング!それはそれでおもしろかったんだけど、いつか隣の晩ごはんにリベンジしたいと思っていた。

知人「まぁ、昼に行くから昼ごはんなんですけど!」

OKはしたが、また微妙にはずした。

巨大しゃもじに畏敬の念を表明する

知人の名前は掛谷さん、実を言うと全く顔を覚えていなかった。一度しか会ったことがなく、その日から一年半も経っており、しかも当時は30人以上と挨拶するような場だったから。まぁ、日本人同士だし、カフェも席の位置も伝えているからすぐに分かるだろう。でもお互い目印くらいは伝えておくべきだったかな〜。
が、そんな心配の一切を吹き飛ばす姿で来てくれた。
が、そんな心配の一切を吹き飛ばす姿で来てくれた。
私「なんですかそのしゃもじ!」
掛谷さん「ヨネスケですし。空港面倒臭かったです」
表裏には「昼ごはん」と「晩ごはん」と書いてある。
表裏には「昼ごはん」と「晩ごはん」と書いてある。
私「確認ですけど、市場調査ですよね?ここまでする必要あるんですか?」
掛谷さん「これがあると楽しいじゃないですか!その場の反応も違ってくるし」

おもわず畏敬の念を感じてしまった。私も普段から小道具やコスプレをつくるけど、それはインターネットにのせて人に見せる前提があるからだ。にもかかわらず、そんな前提が無くともナチュラルにこういったことが出来る人に出会うと、この場で自分の欲望(主に自己承認欲求)について心から懺悔したくなる…!
私「懺悔したくなる…!」掛谷さん「?」
私「懺悔したくなる…!」掛谷さん「?」

我々の隣の昼ごはんはアポ取りから入ります

今回、正月料理のときに訪問させてもらったアンちゃんに、ご近所さんへのアポをお願いしてもらった。アンちゃんの家にも行くが、一軒だけじゃ市場調査としてはちょっと数が足らないので、三軒ほど回るのだ。

本家(テレビ番組)ではアポなしでやっていたとしても、それを現実で、しかも外国でやるとより大変だ。

想像してほしい。ご飯を食べているときにインターホンが鳴って、ドアを開けるとでっかいトングを持った外国人が「Can you show me your lunch?」と聞いて来たら、迷わず私はドアを閉めたらチェーンキーガチャー!だろう。一人暮らしのおばあちゃんだったら、そのまま念仏を唱えながら警察を呼ぶかもしれない。
でも大丈夫、我々はアポを取っているからね!
でも大丈夫、我々はアポを取っているからね!
ちなみに今回、アンちゃんの要望で、写りの悪い(と本人が思う)画像にはモザイクを施しています。
段ボールが大量に積まれた道を抜けると…。
段ボールが大量に積まれた道を抜けると…。
雪ぐ…いや!幼女が突っ伏していました。
雪ぐ…いや!幼女が突っ伏していました。

市場調査、本格スタート!

調査調査と言いながら何をするの?というと、掛谷さんが用意したインタビューに答えてもらったり、台所や冷蔵庫の中を見せてもらったりする。ちょっと質問の多いヨネスケだ、本家もただでさえ多いけど。
幼女が私を直視する。
幼女が私を直視する。
想像以上に巨大しゃもじの出番はない。
想像以上に巨大しゃもじの出番はない。
掛谷さんが、おばちゃんにいろいろと質問した。

掛谷さん「食材はどういうところで買ってますか?」
おばちゃん「市場だねぇ、朝行ってその場で選ぶよ」

掛谷さん「献立を決めてから食材を選んでますか?」
おばちゃん「日によっては市場に無いものもあるし、その日に並んでいる食材でつくるものを考えるかな」

掛谷さん「市場には朝昼晩行く感じ?」
おばちゃん「ウチは朝にたくさんつくってそれを三食食べる感じだよ、毎回行くとめんどうだからねぇ〜」
ちなみに市場ってこんな感じです。
ちなみに市場ってこんな感じです。
そばで話を聞いていて、牧歌的でベトナム人らしいなぁ、と思った。というのも、ベトナム人からすると日本人は「計画性がある」と感じるそうだ。

それは裏返すと「ベトナム人は行き当たりばったり」とも言える(計画性があることは行動や決定に時間が掛かるとも言えるけど)。献立を市場の食材で決めるとは、そうするしかないとしても、非常にベトナム人らしい。

台所を拝見させていただきます!

話は聞けた、お次は台所だ。許可を得て拝見します。
どれどれ!
どれどれ!
ベトナム料理の命、香草がある。
ベトナム料理の命、香草がある。
これは、昨夜の夕食であり今日の昼食とのこと。
これは、昨夜の夕食であり今日の昼食とのこと。
焼き芋、魚の煮付け。そして上にあるものはバインセオ。観光ガイドブックには必ず載っている、いわゆる「ベトナム式お好み焼き」というやつだ。知っている人は「全然見た目が違う!」と思われるかもしれないけど、二つ折りを開くと確かにこんな感じになる。

ご覧の通り、ベトナム料理も家庭料理になると日本とそれほど変わらない。ヌクマム(魚醤)がベースという違いはあるけど、外で食べるベトナム料理が口に合わずとも、家庭料理はいけるという人も実際に多い。
鍋のフタがやたら使い込まれている、30年物らしい。
鍋のフタがやたら使い込まれている、30年物らしい。
私「冷蔵庫も見てもいい?」
おばちゃん「いいよー」
これは…!
これは…!
ほぼ氷…!!
ほぼ氷…!!
氷祭り…!!!
氷祭り…!!!
私「なんで氷?というよりこれ冷凍庫!」
おばちゃん「あぁ、氷売ってるからねぇ」

氷業者ということか。

小さいカフェの多いベトナムでは、氷は各店舗でつくらずに氷業者に配達してもらうケースが多い。街中を走っていても、荷台に載せた袋からボッタボッタと水を滴らせながら走るバイクをしょっちゅう目撃する。

冷凍庫の購入と電気代にお金を使うより、その方が安上がり。ただ、ここは小さな規模なので、近所のカフェや家庭に少し売っているという程度なのだろう。
おしぼりを凍らせていた、これいいな。
おしぼりを凍らせていた、これいいな。
ありがとうございました!
ありがとうございました!
と、一軒目はこんな感じでした。
出ようとすると大量の消火器を発見。
出ようとすると大量の消火器を発見。
アンちゃん「この家は消火器をつくって売ってるの」
私「!?…世の中いろんな仕事があるのねぇ」

二軒目のお宅へ

実は、一軒目のお宅はアンちゃんの家の隣の隣だった。そして二軒目は逆方向の隣の隣だ。50歩以内で終わる市場調査、どれも一般家庭だもんな。超効率的だ。
アンちゃん「入るよー」
アンちゃん「入るよー」
ここでどうでもいいことだけど、
ここでどうでもいいことだけど、
しずかちゃんが怨霊っぽくなっていた。
しずかちゃんが怨霊っぽくなっていた。
アンちゃん「ちょうど料理中だから台所に来いって」
私「ほうほう!」
油のはねる音がする。
油のはねる音がする。
お!揚げ春巻きですね。
お!揚げ春巻きですね。
ベトナム料理の代表格のひとつに、野菜主体の生春巻きが挙げられがちだけど、もちろん揚げ春巻きだってある。こちらはミンチやエビがたっぷりと入っていて、日本で食べられる揚げ春巻きによく似ている。
掛谷さん「うまい!」
掛谷さん「うまい!」
お姉さん「あはは!冷凍食品だけどね」
全員  「…」

そうだ、家庭料理なんて実際はそんなもんだ。
冷蔵庫を拝見〜。
冷蔵庫を拝見〜。
かにかま!?
かにかま!?
ふりかけ!?
ふりかけ!?
私「え、なんで?なんで日本の食材??」
お姉さん「分かんない、おばあちゃんに聞いてみて」
教えて!おばあちゃん。
教えて!おばあちゃん。

かにかまは孫の夢をのせて

おばあちゃん「ありゃね、孫が寿司握ってんだよ」
全員「孫が寿司!?」

おばあちゃん「握りたいって言ってね、買ったのさ」
私「ちなみに、お孫さんは今おいくつで?」

おばあちゃん「6歳」
全員「6歳!?」
孫ってさっきから壁に掛かってる小坊主か!
孫ってさっきから壁に掛かってる小坊主か!
今呼ぶよ、そう言って無理矢理連れて来られた孫。
今呼ぶよ、そう言って無理矢理連れて来られた孫。
孫「ナンマンダブ!」
孫「ナンマンダブ!」
孫「お巡りさーん!」
孫「お巡りさーん!」
逃げて行った…(セリフはアテレコです)。

私「…お孫さんが寿司職人になりたいって言ったらどうします?」
おばあちゃん「そりゃやりたいことをやらせるよ〜」
私「おばあちゃんは何になってほしいと思ってる?」
おばあちゃん「医者!」

即答!
私「料理の話を続けますね…(孫、いつの間に?)」
私「料理の話を続けますね…(孫、いつの間に?)」

ほとんどの一般家庭は朝に昼夜分もつくるっぽい

一軒目でした質問とその答えはほとんど同じ。朝に市場で食材を買って、昼の分も夜の分もつくっておく。ただ、この家庭の場合は、いつもはほとんどの料理をつくっているおばあちゃんが、孫が何を食べたいのかリクエストを頻繁に聞いているとのこと。

掛谷さん「どういうリクエストがあるんですか?」
おばあちゃん「揚げ春巻きとか…牛肉やマグロ…」

孫、野菜大っ嫌いだな!

掛谷さん「食材が売ってなかったら?」
おばあちゃん「しょうがないからおいしそうなものをつくるよ、なるべく孫の好みに合わせるけどね」

このほか、特別な料理としては、ミークアンやブンボーフエをつくるとのこと。いずれも中部の麺料理だが、ホーチミン市内でも食べられる場所は多く、定番のベトナム料理だ。一般家庭にとっての特別な料理が、外食で定番のベトナム料理。ベトナムの家庭でつくられる料理は、非常にドメスティックであるらしい。
ま、美味しいんだけどね。
ま、美味しいんだけどね。
おばあちゃん「ちょうど今日の昼食のブンチャーヨー(揚げ春巻きと米粉麺)だよ、食べていくだろ?」

本当はこのあとアンちゃんの家で食べる予定があるけど、品を出されてから聞かれたら断れるはずもなし!
ちょっと多いわーと米粉麺を減らすアンちゃん。
ちょっと多いわーと米粉麺を減らすアンちゃん。
掛谷さん「あ、俺も減らそう…」
おばあちゃん「あんた男だろ!男は減らすな!」
道理で奥のお孫さんはふくよかで…女の子もだけど。
道理で奥のお孫さんはふくよかで…女の子もだけど。
ちなみにこのブンチャーヨー、本来はレタスやもやしや香草が入っているもう少しヘルシーな料理です。一切の野菜を抜いているところは、孫仕様とのこと。伝わらないことを承知で書くけど、絶対に良くないぞ!
でもありがとうございました!
でもありがとうございました!

三軒目、アンちゃんの家で昼ごはんをご馳走になる

と、そういう話(見出し)になってたんだけど、すでにブンチャーヨーで結構な満腹感を抱えてしまった!
お邪魔しまーす。
お邪魔しまーす。
あっ、
あっ、
ベトくんだ!
ベトくんだ!
ベトくんは以前、正月のときに13歳とは思えない卓越したピアノ演奏を披露してくれたアンちゃんの甥だ。

私「ちょうどみんな食事中か、写真撮ってもいい?」
アンちゃん「いいよ」

ガタッ
サササササ!
サササササ!
そして誰も(ベトくん以外)いなくなった。
そして誰も(ベトくん以外)いなくなった。
何だ、このおばちゃんたちの、写真で魂が吸い取られると信じている明治の人のごときリアクションは。

お母さんは料理担当、お父さんはリサーチ担当

ほかの二軒と同様に話を聞いた。
お母さんの要望によりモザイクを施してあります。
お母さんの要望によりモザイクを施してあります。
こちらも朝のうちに昼夜分つくるところなど、おおまかなスタイルは共通。ほかに違いを挙げれば、市場で売られている食材から献立を決めるのではなく、前日のうちにある程度は決めておくということ。そして、お父さんが毎日ネットニュースをチェックしており、話題になっている健康に良い食材悪い食材をお母さんに伝え、それを献立に反映しているとのことだった。

また、お母さんはコックさんをしていたことがあり、料理のレシピをご近所に教えたりもするのだとか。

冷蔵庫の中を見せてもらう。
スイカの切り出し方が新鮮だった。
スイカの切り出し方が新鮮だった。
この氷容器どこにでもあるんだな。
この氷容器どこにでもあるんだな。
そのほか、漬物などの保存食がメイン。
そのほか、漬物などの保存食がメイン。
どこの家庭の冷蔵庫も、肉や魚や野菜などの食材は入っていなかった。おそらく、朝のうちに買った食材はほとんどその日に使い切り、どうしても余った肉や魚については、冷凍庫に入れて凍らせておくんだろう。
おいしかったアンちゃんの家の昼ごはん。ブンチャーヨーもあったので完食できなかったことが残念だ。
おいしかったアンちゃんの家の昼ごはん。ブンチャーヨーもあったので完食できなかったことが残念だ。

調査で分かったベトナムと日本の家庭料理の違い

今回三軒回ってみて、一部ながらも、ベトナムの家庭料理の特徴がなんとなく掴めた気がしました。
・食材は朝に市場で買う
・その日の食材はその日のうちに使い切る
・献立からつくるというより食材からつくる
・外国の料理のつくり方はほとんど知らない
・料理の上手い人はレシピを近所に共有している
ずっと話を聞いていて、ベトナムと日本で決定的に違うなと思ったことがひとつある。日本ではカレーやオムライスなど何がしかの献立を決めて、それに必要な食材を揃えて調理をすることが多いけど、ベトナムでは手に入れた食材を好きなように調理する。つまり、レシピの存在感が日本に比べて薄いんだなと思った。

そこで、ベトナム人がレシピを必要とさせるものがあるとすれば、今はまだ未知である外国料理の存在だろう。最近のホーチミンでは日本食も含めて外国料理のお店がふえており、消費されるばかりでなく、いずれは自分の手でつくってみたいと思う人もふえるはず。
全然関係ないけど見せたかった7しかない時計。
全然関係ないけど見せたかった7しかない時計。

そうは言っても日本が特殊すぎるだけなのか?

結局どっちやねんと言われそうだが、どこかで「東京ほど各国の料理が食べられる場所はない」と聞いたことがある。どんな国のものもカスタマイズして取り入れてしまう日本人の雑食性。それに伴って必要とするレシピもふえていったのではないかという気もする。

ベトナム人向けのレシピ共有サイト。ベトナム人の食に関する保守性が、良い意味で崩れはじめたときに一気に流れが来るんじゃないだろうか。どのような展開になるのか楽しみです。掛谷さん、ご武運を!

あ、そういえば結局、アンちゃんからの顔出し許可は一枚たりとも出ませんでした。
そんなことより踊りましょう!と言って突然回りだすアンちゃんとお母さん。ではありません、嘘です。
そんなことより踊りましょう!と言って突然回りだすアンちゃんとお母さん。ではありません、嘘です。
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