はっけんの水曜日 2015年11月25日
 

「チャンピオン」や「りぼん」から国語辞典にのせたい言葉を探す

国語辞典にのせたい言葉をさがすぞー! 漫画から
国語辞典にのせたい言葉をさがすぞー! 漫画から
言葉は、大河の流れに翻弄される木の葉のように、たえず揺れ動き、さまざまに向きをかえ、時には裏返り、その見た目を変化させる。

そのひとつひとつを丁寧にすくいあげ、記録として残すのが国語辞典の役目のひとつでもある。

われわれがなにげなく日々使う言葉、とくに漫画にはどんな言葉が使われているのか、現役の国語辞典編纂者と国語辞典のプリンスにすくい上げてもらった。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。
> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

用例採集ってなんだ

国語辞典編纂者が、国語辞典を作るさいに「用例採集」という作業を行っていることは、昨年紹介した。
「『用例採集』ってなんだよ」というひとは、上の記事の1ページ目だけをざっと読んでいただきたいところだが、せっかくなので改めて簡単に説明したい。

国語辞典を作るとき、または改訂するときは、事前に決めたルールのもと、掲載するべき言葉と削除する言葉を選ぶ。

そのさい、新しく使われはじめた言葉(「キター」や「ツィート」など)や、従来の意味とは違った意味で使われはじめた言葉(「替え玉」など)を、新聞、雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、市中の看板などから、どんなふうに使われているのか実例を集めるのが、用例採集という作業だ。

用例採集は、日常で使う言葉の、ふだんは気にもかけない側面をのぞき見るような楽しさがあっておもしろいのだ。

国語辞典に詳しいひとと漫画に詳しいひとに集まってもらった

そんな用例採集を漫画雑誌から行ったらどんな言葉が拾えるのか?

国語辞典の専門家、漫画誌出版社の人に集まってもらった。
三省堂国語辞典編纂者の飯間浩明先生
三省堂国語辞典編纂者の飯間浩明先生
以前、用例採集の記事にも登場していただいた、国語辞典編纂者の飯間浩明先生。飯間先生は『三省堂国語辞典』の編纂者であり、いままさに国語辞典づくりに携わっておられる、いわばプロである。

今日は、プロの立場で、漫画雑誌から「三省堂国語辞典にのせてもいいかな?」と思えるような言葉を拾っていただく。

そしてもうひとり、辞書マニア代表として参加していただいたのは見坊行徳さん。
辞書好きなひとは「見坊」という名字でピンとくるのでは?
辞書好きなひとは「見坊」という名字でピンとくるのでは?
見坊さんは、早稲田大学在学中に国語辞典サークル「早稲田大学辞書研究会」を立ち上げ、早稲田大学で使われている言葉をまとめた「早稲田大辞書」を上梓したほどの辞書マニアである。

さらに、見坊さんは『三省堂国語辞典』の初代編集主幹、見坊豪紀(ひでとし)先生のご令孫である。いわば、国語辞典界のプリンスといっても過言ではない。
見坊豪紀先生の「用例採集カード」。おやっと思った言葉をこのようにカードにまとめ、国語辞典を作るさいの基礎資料としていた。見坊豪紀先生の残した用例採集カードは実に100万枚以上もある
見坊豪紀先生の「用例採集カード」。おやっと思った言葉をこのようにカードにまとめ、国語辞典を作るさいの基礎資料としていた。見坊豪紀先生の残した用例採集カードは実に100万枚以上もある
そして、漫画雑誌に詳しい専門家として、秋田書店の滝川さんに来ていただいた。
「カラスヤポータルZ」の「滝G」こと秋田書店の滝川さん
カラスヤポータルZ」の「滝G」こと秋田書店の滝川さん
上記の三人に、ぼくを合わせた四人で、漫画雑誌を黙々と読み、気になった言葉を拾い、その言葉は『三省堂国語辞典』にのせられるのか? を検討してみた。
このあたりの漫画雑誌から用例採集します
このあたりの漫画雑誌から用例採集します

発音がわからない「T」

まずは見坊さんから、見坊さんは漫画のセリフではなく、グラビアページの「T170、B85、W58、H83」という表記が気になったという。
まず気になったのはこの部分ですね。何を表してるかはお察しの通りだと思うんですが、わたしはこの「T」というのが慣れていなくて、身長っていう意味ですよね。
『ヤングチャンピオン』2015年19号グラビアページ
『ヤングチャンピオン』2015年19号グラビアページ
身長ですよね。こういう書き方って漫画雑誌特有なんでしょうか。
グラビアのページによくのってますね。
これ、重要だなと思いました。三国(『三省堂国語辞典』のこと)の「T」の項目はいまTシャツぐらいの意味しかのってないです。単なるアルファベットのTだと日本語になってませんが、それをどう読むかで日本語として国語辞典にのせる意味が出てくるんです。
確かに「身長」の意味はのってない
確かに「身長」の意味はのってない
確かに「身長」の意味はのってない
ただこの「名詞化してるアルファベット」もいろいろあって「チビT」と書くばあいは「ちびてぃー」と読むんですが、「決勝T」の場合「けっしょうてぃー」とは読まないんですよ。かならず「けっしょうとーなめんと」と発音するんです。だから、わたしたちはそういう概念を今度から「書き言葉専用の言葉」というふうに表示しようって考えてるんですけどね。
そもそも、これほかは「バスト」「ウェスト」「ヒップ」と読むんですよね、じゃあ「T」はなんて読むんだろうって話ですね。「トール」でいいのか「しんちょう」と読むのか。
とくにここらへんではルビふらないので、読み方は不明ですね……。
『ジャンプ』だと総ルビだったはずなので、もしこういうページがあればルビふってくれるんでしょうけど……。
三国の、B、W、Hの項目は、それぞれ「胸まわり」「腰まわり」「しりまわり」と、意味がちゃんとのっている。しかし、Tに「身長」の意味はのっていない。飯間先生が「重要だ」とおっしゃったのはそのためだ。

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