特集 2015年12月19日

サンタクロースがトレードマークのお粥専門店へ行った

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「中華街にある美味しいお粥で有名なお店謝甜記。お店のトレードマークが何故かサンタクロースになっています。是非その由来を調査していただきたいです。」という投稿が、tokuさんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

調査してみたら、創業当時、近くのBARが出していたサンタを譲り受け「謝甜記もサンタ同様、世界中が認知する存在になる」という理由でサンタをトレードマークということがわかった。

はまれぽ.com クドー・シュンサク
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サンタクロース。クリスマスにプレゼントを持ってやってくる赤が似合う謎のおじさん。
12月にもなれば、街のいたるところに人形やオブジェが配され、ジョン・レノンの歌が流れたりすると「そーゆー季節か…いいね…」と、やけにひたりモードになったりもする。

それが桜や紫陽花、向日葵や椿が咲く季節も、あの格好であの佇まいで年中街に居るという。
理由はなんだろうか。新しい担当の編集部・宮城という伊達メガネくんから有力な答えがあると。「謝甜記(シャテンキ)なので、シャテンキ…シャテンキ…シャンテクイ…シャンテクロ…サンタクロ…」。

創業昭和26年の老舗「謝甜記」

宮城:「さっきの理由、違いますかねぇ」
クドー:「そうかもね」
宮城:「全然思ってませんよね」
クドー:「もっとメルヘンだといいね」
宮城:「今日、赤いTシャツ着てきたのはサンタのイメージですか?」
クドー:「それは違う」

まだ噛み合わないが、怪獣のような妖怪のような担当よりは話しやすい。
中華街へと入り、見えてきたのはサンタクロースの看板。
笑ってますな
笑ってますな
それでは
それでは
おじゃまします
おじゃまします
店内はこんな感じ
店内はこんな感じ
お店の方にオーナーさんとの待ち合わせの旨をお伝えすると、あと30分したら来るとのこと。お話はオーナーさんからお願いしますとの運びなので、謝甜記の名物メニューをいただきながら待つことに。
野菜たっぷり「青菜粥(やさいかゆ:710円)」
野菜たっぷり「青菜粥(やさいかゆ:710円)」
海鮮たっぷり「什錦魚生粥(ごもくかゆ:710円)」
海鮮たっぷり「什錦魚生粥(ごもくかゆ:710円)」
絶妙な塩分と、ほんのりごま油と、生姜がピシリとアクセント。刻んだ揚げパンの食感が変わっていくのも良い。美味いです、お粥屋さんのお粥。途中、付け合せのネギ醤油を足して味を変えながら楽しむのも良いですね。
お粥と相性最高の「炸餃子(あげ餃子:440円)」
お粥と相性最高の「炸餃子(あげ餃子:440円)」
中の餡にしっかり味が付いていて、厚めの皮はサックリでモッチリ。揚げだが、サクッとかるい口当たりで食べやすい。
こうも餃子が美味いと、お粥もよろしいですが、頭を通り過ぎるのはこれだったりする…
「それ美味そうやねキミ」
「それ美味そうやねキミ」
ポスターを刺すように見ていると「お待たせしました! ごめんなさい! 時間を間違えてました! ん? ビールですか? 飲みますか? わはは!」と豪快気味なオーナーの方が到着。しかも、豪快気味なオーナーさんと…
おそろい気味の赤
おそろい気味の赤

「これもウチの名物なんで食べていってくださいよ! すぐ持ってきますんで。私はウチの二号店の横の喫茶店で待ってますから、ゆっくり食べてから来てください!」とのこと。
オーナーさんは店を後にし、喫茶店へ。オーナーさん、豪快気味で展開が早い。それが心地よくもあった。
「梅醤炸花鶏(梅みそ付鳥の唐揚げ:1300円)」
「梅醤炸花鶏(梅みそ付鳥の唐揚げ:1300円)」
にんにく醤油香るサックサクのチューリップ状の唐揚げ。それを特製の梅みそにつけていただく。伊達メガネくんと目を合わせ「美味いな!」と声をあげてしまう。唐揚げの仕上がりも秀逸だが、独特の甘みを持つ梅みそのさっぱりとした酸味とみそのコクが相まったタレは非凡な美味。なぜか、伊達メガネくんと仲良くなったような雰囲気にさえなった。
店内に飾られている先代の写真
店内に飾られている先代の写真
味のレベルの高さに感服です。店を出て、オーナーさんの待つ喫茶店へ。
謝甜記のサンタクロースの理由、伺いたいと思います。
「シャテンキ…シャンテクイ…シャンテクロ…」
「シャテンキ…シャンテクイ…シャンテクロ…」
いよいよ、トレードマークをサンタクロースにした理由をお伺いします。
いったん広告です

世界を視野にした想いとサンタクロース

宮城:「まさかオーナーの方がサンタに似てるからとかですかね?(笑)」
クドー:「どっちにする?」
宮城:「…シャンテクロで」

オーナーさんが待つ喫茶店まで歩きながら、伊達メガネくんはまだ答えを探す。系列店が見えてきて、サンタクロースも見えてきた。
いました
いました
こういうのもいました
こういうのもいました
斜め向かいにも、もう1店舗。
巨大なサンタクロース人形
巨大なサンタクロース人形
ほっぺ赤いね
ほっぺ赤いね
喫茶店へ入り、早速オーナーさんとお話。「サンタクロースの話ね。あれはウチが創業してすぐの話なんだがね」と早い展開をみせるオーナーさん。
有限会社謝甜記オーナーの謝成發(しゃせいはつ)さん
有限会社謝甜記オーナーの謝成發(しゃせいはつ)さん
謝甜記の創業は1951(昭和26)年。中華街大通りにまだ20軒ほど(現在は70軒以上)しか店が無かった当時、謝さんのお父さんが創業した。学生だった謝さんは謝甜記の看板を出し入れするお手伝いをしていたという。

開店から1年が経とうとしていたころ、謝甜記の向かいで営業していた外国人向けのBARが、クリスマスシーズンにサンタクロースを出していた。シーズンが終わり、必要ではなくなったサンタクロースの看板をひょんなことから謝甜記がもらうことになった。
「それをウチの看板として使うことにしてね」
「それをウチの看板として使うことにしてね」
理由は単純だと謝さん。「サンタクロースのように、世界中に認知されている存在、そんな店になろうという想いですね。サンタクロースはプレゼント、ウチは美味い料理を提供して世の中に幸福をもたらすという気持ちで、サンタクロースにしたわけですよ」。
伊達メガネくんが唱えた「シャンテクロ説」は全然当たっていなかった。
しかし創業当時からしばらくは苦労したとのこと
しかし創業当時からしばらくは苦労したとのこと
「結局はお粥なんで、わざわざ外食でお粥食べようなんて人がいなかったわけでね。ただ、元々は点心の専門店をやっていて、お粥に必要なあげパンを作ることは先代の強みだったわけだから、それを生かして新しいお粥の店を始めたってわけです。10年は厳しい状況が続きましたが、信念を持って味に妥協しないでやっていると、日本ペンクラブ(第一線で活躍する作家、詩人、文学者、評論家などの有志のあつまり)の人たちがウチの店のいい印象を各方面に広めてくれて。それからはウチの本当の味が浸透しましたよ」
以前は木製のサンタクロースもあったという
以前は木製のサンタクロースもあったという
大きなサンタクロースの人形は、2年前に特注したフィリピン製の物で価格はおよそ30万円。たまに酔っ払いが倒していくのでやめてほしいと呼び掛けている。
そして所々に配されているイラストキャラクターのサンタ。始めは手を「ピースサイン」にする予定だったが、一転、指は1本立てになったという。謝さんいわく、理由は単純明快。
「1番になるってこと!(笑)」
「1番になるってこと!(笑)」
お粥をいただいた本店のサンタの看板は2代目で42年選手。その前の創業から1年後に使った看板は21年店の顔として謝甜記を世に広めた。現在本店では謝さんのお姉さん夫婦と息子さんが厨房で謝甜記の味を守る。
謝さんに最後にふたつ、質問を投げかけてみた。
まずひとつめは、「サンタクロースに会ってみたいですか」という質問。回答はこちら。
「ウチには煙突が無いから入って来られないよ(笑)」
「ウチには煙突が無いから入って来られないよ(笑)」
最後にもうひとつ、伊達メガネくんが途中でひらめいた「オーナーさんがサンタクロースに似ているから看板に使っているという推測はどうですか」という質問。回答はこちら。
「……」
「……」
それでも赤は、似合ってますよ。

ロマンが輝かない独身のクドーの推測は「お粥の白と雪の白をなぞらい、幸せを厨房から運んでくるサンタクロースメルヘン」というものでしたが、謝さんは、昔の中華街の思い出の話に切り替えていました。
幸福な味のお粥、ごちそうさまでした。世界に認知されても充分おかしくない、味わいのような、気もします。

店舗情報

謝甜記
住所/横浜市中区山下町165
電話/045-641-0779
営業時間/10:00~15:00、16:30~20:30
土曜 10:00~21:30、日曜・祝日 10:00~20:30
定休日/火曜
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